原書『Contagious』は、今年の3月に発売。発売後から話題となり、ウォール・ストリート・ジャーナルやニューヨークタイムズなどでベストセラーリストに名前が載った。著者のジョーナ・バーガー氏は、新進気鋭の名門ペンシルバニア大学ウォートン・スクールでマーケティングの准教授である。32歳と若いながらも、5年間で25本の論文を発表し、高い評価を得ている。
そのジョーナ氏がおくるのが、本書『なぜ「あれ」は流行るのか?』だ。本書では、流行るがあるとわかりながらも、今までなぜそれが流行るのかが分からなかった、口コミ、流行りのメカニズムについて書かれている。
iPhoneをミキサーで粉砕するブレンドテック社や、NOというとパンダが襲ってくることで有名なパンダ・チーズ、値引き表示ひとつにしても、値引き率なのか?値引き額なのか?で違うなどなど、実践的な事例が豊富な一冊だ。
ジョーナ氏は口コミが起こる共通背景として、6つの原則として「STEPPS」とまとめている。STEPPSは、S:ソーシャル・カレンシー、T:トリガー、E:感情、P:人目に触れる、P:実用的な価値、S:物語、これらの頭文字をつなげた造語である。
話し手が好ましい印象を聞き手に与えられることを考えた「ソーシャル・カレンシー」。思い浮かべるきっかけをうみだす「トリガー」。人は気になったものを共有する「感情」の力。思わず、見て真似たくなる「人目に触れる」。誰かの役に立つかもしれない「実用的な価値」。共有するときにただ情報を伝えるのでは、なく「物語」で伝える。
考えてみれば、私たちは「誰にも教えないで、・・・」と言われると思わず話したくなるし、行ったことや買ったことが自分のステイタスにつながると思えば、どんどん話す。
これらが何故成立するのか?いままで、流行が発生したり、流行を生んだ事例については数多くの本が語っていたが、ここまで事例豊富で、そのメカニズムについて書かれた一冊はなかった。
さらに、この本の優れているのは、口コミの性質について書かれている。口コミ会社のバズ・エージェンシーの事例が最たる例だ。同社は、ラルフ・ローレンや、ホリデイ・イン・エクスプレスなど幅広いクライアントのために、数百件におよぶキャンペーンを行っていた。その中で、ほかのキャンペーンに比べて、多くの口コミを生み出すことに成功した事例があったという。本書ではそのような些細な違いの本質についても書かれているから必見だ。
本書は非常に素晴らしい一冊であり、訳も非常に丁寧で読みやすい文体で書かれている。私は原書も読んだが、日本語の本書を読む際にも思わず、行っている業務を一時中断し、30分間集中して本書だけを考え、読書に耽った。
唯一残念なところがあるとすれば、本書の表紙だ。ハッキリいって、このテーマでありながら、とても本書のSTEPPSの原理を元にしてデザインされているとは思えない。原書のあの美しいオレンジ色の表紙もしくは、洗練されたホワイトの表紙から想像もつかない・・・。だが、表紙が美しくないが故に、本書の秘密は縁ある特定のマーケティング・センスの優れた人に読まれるのではないかと思う。

無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
なぜ「あれ」は流行るのか?: 強力に「伝染」するクチコミはこう作る! 単行本 – 2013/9/1
- 本の長さ309ページ
- 言語日本語
- 出版社日経BPマーケティング(日本経済新聞出版
- 発売日2013/9/1
- 寸法13.3 x 1.6 x 19 cm
- ISBN-104532319080
- ISBN-13978-4532319083
この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています
ページ 1 以下のうち 1 最初から観るページ 1 以下のうち 1
登録情報
- 出版社 : 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版; New版 (2013/9/1)
- 発売日 : 2013/9/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 309ページ
- ISBN-10 : 4532319080
- ISBN-13 : 978-4532319083
- 寸法 : 13.3 x 1.6 x 19 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 370,579位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2013年10月16日に日本でレビュー済み
2022年9月24日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
発行された年月日が少々過去なので、内容は古いですが海外の著者のためネットの活用、色んな商売の実例が紹介されておりアイデア脳に沢山刺激をいただきました。本当はキンドルで読みたかったのですがなかったので星4つです
2019年1月5日に日本でレビュー済み
これまで流行ったものを考えてみると、そこに見えてくるのは「社会的伝染」という減少だ。
それは商品や機能の違いから生まれるのかというと、そいういう一面もあるだろうが、それだけでは説明がつかない。
こうした違いは、社会的影響とクチコミから生まれるのである。
ある研究によれば、クチコミは、あらゆる勾配判断の20~50%に影響を及ぼす主要因なのである。
例えば、アマゾンのレビューで五つ星の評価を受けている本は、一つ星の評価だった場合よりも、週に約20冊多く売れる。
クチコミが生まれる一つの理由に本書で上げているソーシャルカレンシーという概念がある。
内緒話を聞いたときに、内緒にせずに人に話してしまうという経験は誰しもあるだろう。
それこそが、ソーシャルカレンシーによるものだ。
人は、自分の印象が良くなるものを他社と共有したがるのである。
さらに、クチコミを生むためには、トリガーが重要である。
クチコミが起こりやすいのは、トリガーが多い商品だ。
トリガーとは思い出すきっかけのこと。
トリガーが多い商品とは日用品のことで、これらの商品は話のネタとして取り上げられやすい。
クチコミというのは、特に最近では、レビューに注目があたっており、さらに影響が増している。
マーケティングを考える上で、クチコミの特性を知ることは必要だろう。
それは商品や機能の違いから生まれるのかというと、そいういう一面もあるだろうが、それだけでは説明がつかない。
こうした違いは、社会的影響とクチコミから生まれるのである。
ある研究によれば、クチコミは、あらゆる勾配判断の20~50%に影響を及ぼす主要因なのである。
例えば、アマゾンのレビューで五つ星の評価を受けている本は、一つ星の評価だった場合よりも、週に約20冊多く売れる。
クチコミが生まれる一つの理由に本書で上げているソーシャルカレンシーという概念がある。
内緒話を聞いたときに、内緒にせずに人に話してしまうという経験は誰しもあるだろう。
それこそが、ソーシャルカレンシーによるものだ。
人は、自分の印象が良くなるものを他社と共有したがるのである。
さらに、クチコミを生むためには、トリガーが重要である。
クチコミが起こりやすいのは、トリガーが多い商品だ。
トリガーとは思い出すきっかけのこと。
トリガーが多い商品とは日用品のことで、これらの商品は話のネタとして取り上げられやすい。
クチコミというのは、特に最近では、レビューに注目があたっており、さらに影響が増している。
マーケティングを考える上で、クチコミの特性を知ることは必要だろう。
2014年4月26日に日本でレビュー済み
アメリカでは、25%以上のレストランが開業12カ月以内に、60%が開業3年以内に閉店する。
人間同士で発生する口コミのうち、ネット上で発生するのは口コミ全体の7%のみである。
Youtubeの動画の約50%は、再生回数が500回に満たない。1万回以上再生される動画は全体のたった0.33%である。
飛行機を利用してたまったマイルのうち、実際に利用されるマイルは毎年10%未満である。推計によれば、世界全体で合計10兆マイルが利用されないまま貯められている。
著者による調査。2000年のアリゾナ州で行われた住民投票で、有権者の意見が投票所の違いによってどう変わるかを調べた。この住民投票は、公立学校への財政拡大のために、消費税を上げるかどうかという賛否両論ある投票だった。調査方法は、まず有権者を2つのグループに分類し、1つ目は学校の近くに住み、学校の投票所で投票した人々、2つ目は学校の近くに住んでいるが、学校以外の投票所(教会、消防署など)で投票した人々である。この2つのグループを比較した結果、1つ目のグループは、消費税を上げることに賛成する人が2つ目のグループよりも大幅に多かった。つまり、投票所自体が、投票行動に影響したと思われる。
現在、カリフォルニア州内のネイリストの約80%がベトナム系アメリカ人である。全米では40%以上である。また、ロサンゼルスのドーナツ店の約80%がカンボジア系アメリカ人で、ニューヨーク市のクリーニング店の約65%が韓国系アメリカ人である。
人間同士で発生する口コミのうち、ネット上で発生するのは口コミ全体の7%のみである。
Youtubeの動画の約50%は、再生回数が500回に満たない。1万回以上再生される動画は全体のたった0.33%である。
飛行機を利用してたまったマイルのうち、実際に利用されるマイルは毎年10%未満である。推計によれば、世界全体で合計10兆マイルが利用されないまま貯められている。
著者による調査。2000年のアリゾナ州で行われた住民投票で、有権者の意見が投票所の違いによってどう変わるかを調べた。この住民投票は、公立学校への財政拡大のために、消費税を上げるかどうかという賛否両論ある投票だった。調査方法は、まず有権者を2つのグループに分類し、1つ目は学校の近くに住み、学校の投票所で投票した人々、2つ目は学校の近くに住んでいるが、学校以外の投票所(教会、消防署など)で投票した人々である。この2つのグループを比較した結果、1つ目のグループは、消費税を上げることに賛成する人が2つ目のグループよりも大幅に多かった。つまり、投票所自体が、投票行動に影響したと思われる。
現在、カリフォルニア州内のネイリストの約80%がベトナム系アメリカ人である。全米では40%以上である。また、ロサンゼルスのドーナツ店の約80%がカンボジア系アメリカ人で、ニューヨーク市のクリーニング店の約65%が韓国系アメリカ人である。
2013年10月30日に日本でレビュー済み
無料動画サイトやSNSを活用することで、多額の広告宣伝費を投入しなくても効果的なマーケティングができる!と最近は素朴に考えがちだ。
ところが、公式動画チャンネルや公式SNSアカウントを作ってみたものの、手間がかかるわりに期待したほど情報は拡散・伝播せず。冷酷に表示される「いいね!」数の少なさが、かえって逆効果に…という現象がむしろ一般的かもしれない。
本書は ある商品やアイディアが、(マーケティング担当者が期待しているように)伝染性をもって流行するのはなぜかを解説している。情報や話題を共有するときの人間の行動は、見栄(ソーシャル・カレンシー)や不安など特定の感情や、様々なきっかけに左右され、実用性も重要で、 物語性によってさらに情報は印象深いものになる…ことが要領よく整理されているのだ。
議論のベースは行動経済学や著者自身によるものを多数含む学術調査、そして興味深く多種多様な実例であり、単なるマーケティング本の域を超えて、人間や社会の在り方をマーケティングという側面から光をあてて理解させるような迫力がある。
Youtube上の動画配信だけで話題を呼んだマーケティングの代表的な成功例としてブレンドテック社のミキサーの動画が本書で紹介されているが、試しに私自身のFacebookアカウントでシェアしてみたところ、なるほど友人達の反響は大きかった。有効なマーケティング施策の手応えを、手軽に試してみることができ、なぜ有効なのかも理解できるという楽しみ方も出来るわけで、マーケティングに関わる多くのビジネスパーソンは、読書体験をはみ出して楽しさを堪能することもできお買い得だ。ただしバイラルビデオが日本で陳腐化する迄の期間限定、早いもの勝ちである。
ところが、公式動画チャンネルや公式SNSアカウントを作ってみたものの、手間がかかるわりに期待したほど情報は拡散・伝播せず。冷酷に表示される「いいね!」数の少なさが、かえって逆効果に…という現象がむしろ一般的かもしれない。
本書は ある商品やアイディアが、(マーケティング担当者が期待しているように)伝染性をもって流行するのはなぜかを解説している。情報や話題を共有するときの人間の行動は、見栄(ソーシャル・カレンシー)や不安など特定の感情や、様々なきっかけに左右され、実用性も重要で、 物語性によってさらに情報は印象深いものになる…ことが要領よく整理されているのだ。
議論のベースは行動経済学や著者自身によるものを多数含む学術調査、そして興味深く多種多様な実例であり、単なるマーケティング本の域を超えて、人間や社会の在り方をマーケティングという側面から光をあてて理解させるような迫力がある。
Youtube上の動画配信だけで話題を呼んだマーケティングの代表的な成功例としてブレンドテック社のミキサーの動画が本書で紹介されているが、試しに私自身のFacebookアカウントでシェアしてみたところ、なるほど友人達の反響は大きかった。有効なマーケティング施策の手応えを、手軽に試してみることができ、なぜ有効なのかも理解できるという楽しみ方も出来るわけで、マーケティングに関わる多くのビジネスパーソンは、読書体験をはみ出して楽しさを堪能することもできお買い得だ。ただしバイラルビデオが日本で陳腐化する迄の期間限定、早いもの勝ちである。