法人保険で退職金を用意するときに考えなければならないメリットとデメリット

多くの経営者が悩む退職金対策。

実際、法人保険で退職金を用意する場合、様々なことを考えなければいけません。

そのため、今回は『法人保険で退職金を用意するときに考えなければならないメリットとデメリット』という記事のタイトルで法人保険の退職金対策のメリット、デメリットについて解説します。

目次

中小企業は退職金対策として保険に入るべきか

退職金対策として現金で貯めて退職金を払うという方法は、小規模な会社を中心に行われている方法です。

手元にキャッシュが残っている安心感もありますし、退職金制度をある意味「グレー」にしておくことで、社長の一存で退職金の金額を決めることが出来ます。

しかし、この方法はデメリットも多く、かつ危険と言えるでしょう。

現金で貯めて退職金を払うという方法は万が一の事態に備えることができませんし、退職金規定もないことが多いので、従業員にとってもメリットは少ないと言えるでしょう。

詳しくは後ほど述べますが、中小企業こそ、退職金対策は保険で賄うことをおすすめします。

実際、中小企業の場合でも多くの場合、退職金を用意している企業が多いのが現状です。

以下が保険に加入している中小企業の平均退職金金額になります。

勤続年数年齢自己都合会社都合
3年25歳16万円26万円
5年27歳32万円47万円
10年32歳91万円122万円
15年37歳175万円226万円
20年42歳298万円362万円
25年47歳445万円524万円
30年52歳617万円704万円

このように、中小企業でも30年勤続してくれた従業員には平均して、617万円の退職金を支払っています。

従業員用の退職金対策における法人保険の場合

退職金が社員用で用意する場合、ほとんどの企業では中小企業退職金共済を使用しています。

そのため、中小企業退職金共済について解説します。

中小企業退職金共済とは

中小企業退職金共済とは退職金制度(年金制度)を独自に準備することが困難な中小企業向けに準備された退職金制度(年金制度)制度のことを指します。

中小企業退職金共済は従業員や資本金などの規模が一定以下の中小企業が加入することができる退職金制度(年金制度)で、事業主(企業)が掛金を負担して、従業員が退職時に退職金あるいは年金を受け取ります。

中小企業退職金共済は中小企業退職金共済法に基づく制度で、独立行政法人勤労者退職金共済機構中小企業退職金共済事業本部(中小企業退職金共済本部)が運営主体となっています。

中小企業退職金共済に関する様々な条件

ただし、中小企業退職金共済には、加入条件があります。

①中小企業退職金共済に加入するための会社要件

以下が中小企業退職金共済に加入するための会社要件になります。

業種常用従業者数出資金・資本金
一般業種300人以下3億円以下
卸売業100人以下1億円以下
サービス業100人以下5000万円以下
小売業50人以下5000万円以下

②解約の場合、従業員の同意又は大臣の認定が必須

中小企業退職金共済を解約する場合には従業員の同意が必要になります。

従業員の同意が得られない場合には掛金の納付が困難であると厚生労働大臣の認定を受けなければいけません。解約の場合は従業員に解約手当金が支払われます。

③従業員は全員加入させる義務がある

中小企業退職金共済では従業員は原則として全員加入する必要があります。

ただし、有期労働者、季節的労働者、試用期間中の労働者、短時間労働者、休職者、定年などで近いうちに雇用関係が終了する人は加入しなくてもよいとされています。

また、事業主、法人企業の役員(使用人兼務役員など従業員として賃金をもらっている人は除く)、小規模企業共済加入者、特定業種退職金共済制度加入者(建退共、清退共、林退共)は加入できません。

従業員用の退職金対策における法人保険の4つのメリット(経営者側にとってのメリット)

経営者にとって、中小企業退職金共済で退職金対策することはメリットな面が多くあります。

①新規加入時、掛金増額時に助成される場合がある

中小企業退職金共済では一定の条件に当てはまった場合に新規加入時や掛金増額時に助成があります。

新規加入助成時

中小企業退職金共済に初めて加入する事業主に対しては、国から加入後4か月目から1年間掛金の助成が行われます。

上限は従業員1人ごとに月額5,000円となりますが月額の掛金の半分(2分の1)が助成されます。短時間労働者の場合は更に上乗せがあります。

月額変更助成

掛金の月額を増額変更する事業主に対して、国から増額月から1年間掛金の助成が行われます。

18000円以下の掛金月額を増額する場合には増額分の3分の1が助成されます。

ただし、一度掛金を下げて上げるという場合に繰り返し助成が行われないよう過去の掛金の最高額が基準となります。

②制度化されていて外部積立になるので信頼感がある

中小企業退職金共済は制度が整っていて社内ではなく外部に積み立てていく退職金・年金制度になるため、受給権者となる従業員の安心感につながります。

社内積立だと業績が悪化した時に受給権が確保されるか心配になりますし、ルールが整っていなければ本当にもらえるのか不安になります。しかし、中小企業退職金共済であれば、制度が整備されていて、外部なので安心することができます。

③人材確保につなげることができる

中小企業では退職金・年金制度を整えるのも大変ですが、中小企業退職金共済を活用することで手軽に退職金・年金制度を準備することができます。

退職金がある企業とない企業では、人材の採用の難易度も変わってきますが、退職金があることがアピールできれば、人材の確保、人材の定着につながります。

退職金・年金制度がない企業に勤めるということは従業員にとって不安を感じさせてしまう場合があります。

④中小企業退職金共済の掛金は非課税である

意外と知られていませんが、中小企業退職金共済の掛金は、法人の場合には損金算入が可能です。

個人事業主の場合には必要経費とすることが可能で、非課税の扱いとなります。ただし外形標準課税の対象となる場合があるので、注意が必要です。

従業員用の退職金対策における法人保険の4つのデメリット(経営者側にとってのデメリット)

ただし、経営者にとって、中小企業退職金共済で退職金対策することはデメリットな面もあります。

①掛金の減額変更は従業員の同意などが必要

中小企業退職金共済では掛金を増額する場合には事業主が任意に行うことができます。しかし、掛金を減額する場合には従業員の同意か厚生労働大臣の認定が必要になります。事業主が一方的に掛金を変更すると従業員の不利益につながるためです。

経営状況が悪化した場合に掛金を減額しようと思っても機動的に変更ができない場合があります。

②退職理由によって退職金の差をつけられない

中小企業退職金共済の退職金は掛金の金額や掛金の支払い期間に応じて変化します。

通常の退職金制度であれば、自己都合退職か定年退職かなど退職理由によって退職金に差をつけて、勤続意欲を高める設計を行うことも可能ですが、中小企業退職金共済では退職理由によって退職金に差をつけることができません。

③懲戒解雇などでの退職金減額は厚生労働大臣の認可が必要で掛金も返還されない

中小企業退職金共済は支払う退職金の減額をした場合には厳格な手続きを踏む必要があります。事業主が従業員を懲戒解雇した場合などに、退職金の減額を求める場合には厚生労働大臣の認定を受ける必要があります。

更に、退職金が減額された場合でも、減額分が事業主に支払われることはなく、返還されません。

④条件に該当しなくなった場合は契約が解除される

中小企業退職金共済は中小企業向けの制度です。従業員数や資本金が増加した場合など中小企業退職金共済の加入条件に当てはまらなくなった場合には契約が解除されるため、従業員に解約手当金が支払われるか、解約手当金相当額の別の制度への引き渡しが必要になります。

従業員用の退職金対策における法人保険の4つのメリット(従業員側にとってのメリット)

中小企業退職金共済の退職金対策は従業員にとってもメリットがあります。

①自己負担がなく退職金がもらえる

中小企業退職金共済の制度があると従業員は退職時に退職金あるいは年金を受け取ることができます。

規模が小さい企業や個人事業の場合には福利厚生制度が充実しておらず、退職金制度もないという場合がありますが、退職金制度があることで安心して働くことができます。

②給付額が確定している

中小企業退職金共済は基本的に確定給付型の退職金制度(年金制度)です。

中小企業退職金共済本部により資産運用の結果が悪かったからといって退職金が減額されるということはありません。

③運用利回りが高いと付加退職金がある

中小企業退職金共済は基本的に確定給付型の退職金制度(年金制度)ですが、実際の運用利回りが予定運用利回りを上回った場合には、付加退職金が上乗せされる場合があります。

④法律に基づく制度で受給権が保護されている

中小企業退職金共済は中小企業退職金共済法に基づく制度で、社外で積み立てられていて、受給権の保護のルールが定まっているため、従業員は安心することができます。

自社内の制度の場合は経営が悪化した場合など受給権が確保されるのか不安になりますが、中小企業退職金共済の場合には安心できます。

従業員用の退職金対策における法人保険のデメリット(従業員側にとってのデメリット)

一方で、中小企業退職金共済の退職金対策は従業員にとってデメリットな面もあります。

①懲戒解雇の場合は減額リスクがある

中小企業退職金共済は懲戒解雇の場合には事業主の申請に基づいて厚生労働大臣の認可を受けた場合には退職金が減額されるリスクがあります。

何らかのトラブルを背景に事業主から嫌がらせなどのために不当に懲戒解雇された場合に、主張が認められて不当に退職金が減額となってしまう可能性が全くないとは言い切れません。

厚生労働大臣の認可が必要なので簡単には減額されませんが、不当な解雇の場合には注意が必要です。

役員用退職金対策における法人保険の場合

役員用退職金対策の法人保険における4つのメリット

役員用退職金対策の法人保険には3つのメリットがあります。

①法人税を節税できる

現状の法律では、役員退職金の積み立てとして内部留保する場合は損金処理できません。

つまり、内部留保では課税されていき、支給時には高額の損金が発生することになり単年度の業績を圧迫することになります。

しかし、保険は会社の経営を守るという役割から税制上、資産形成の機能を持ちながら損金で処理できるという優遇をされています。

そのため、生命保険を活用することで保険料の全部または一部を損金で毎年処理していくと同時に、簿外に保険の解約返戻金という形で退職金の積み立てができます。

損金の分だけ法人税が減ることとなり、節税メリットが享受できます。

勇退時には、生命保険を解約をすると現金が会社に雑収入として戻ってくるので、退職金支給時の業況圧迫も避けることができます。

②税制優遇によって手取り額をあげられる

退職金は長期にわたる会社・社会への貢献の対価であるという観点から有利な税制となっています。

退職所得は他の所得と合算しない分離課税という形になります。

さらに、控除後の課税対象額を半分にできる1/2課税という制度により、所得税率は最高でも25%ですみ、控除の分だけ更に税率が低くなります。

それに対して、役員報酬として給料をもらう場合、1800万円を超えると50%(所得税40%・住民税10%)が課税されてしまいます。

また、役員報酬は、定期同額給与・事前確定届出給与・利益連動給与に該当しない場合、損金不算入となり法人税が課税されるため、個人と法人をあわせた税負担が大きくなります。

③万が一の事態から会社を守ることができる

会社が万が一の事態になるリスクはゼロではありません。

  • 経営トップ交代による売上減少などにより事業資金が不足してしまう
  • 取引金融機関からの借入金の金利変更や返済を要請され返済資金が必要になる
  • 取引先企業から仕入・価格など取引条件の変更を求められ運転資金が不足する
  • 事業承継を滞りなく行うための自社株購入資金・相続税の納税資金の準備
  • 死亡退職金の支払いための原資の確保

上記のような万一の事態に備えて、保険に入っておくことはリスクヘッジにも繋がります。

④退職金支給年度の収支の悪化を抑止できる

生命保険で損金で準備していた分は、戻る時は雑収入だから会社の資金を圧迫しないですみます。

特に、役員退職金は高額となるため、会社の資金の不足や支給した年に赤字をまねくなどの可能性があり、本来のしかるべく額を受け取りにくい状況になってしまいます。

そうした状況で有効なのが、法人保険による退職金準備となります。

雑収入分で支給を受けることで当年度の利益に影響はなく、同時に資産計上していた分が現金となり、運転資金に余裕ができるため、安心です。

役員用退職金対策の法人保険における2つのデメリット

①将来のキャッシュフロー計画などとの調節が必要

退職金対策の保険は法人契約になるため、当然のことながら経営者個人のポケットマネーではなく、会社のお金を使って退職金を積み立てていくことになります。

そのため、ご自分の会社の規模・売上・営業利益を十分考慮して適切な保険料を設定しないと、会社の重い負担となる場合があります。

そのため、会社の将来のキャッシュフロー計画を常に考えながら、保険料を設定しなければならず、若干、面倒ではあります。

②解約返戻金のピーク期間を逃すことができない

多くの役員用退職金対策の法人保険は解約返戻金の返戻率のピーク期間が長くなっているため、解約のタイミングを逃すというリスクは低いことが想定されます。

ただし、例えばご自分が退職する時期になって、後継者が見つからず、引退の時期を遅らせる必要がある場合には、解約返戻率が低い時期に解約しなければいけなくなり、損をしてしまうリスクも若干、あるため、注意が必要です。

まとめ

いかがだったでしょうか。

今回は『法人保険で退職金を用意するときに考えなければならないメリットとデメリット』という記事のタイトルで、法人保険で退職金を用意するときに考えなければならないメリットとデメリットを従業員用の保険、役員用の保険の両面から解説しました。

法人用の保険は特に、退職金対策には非常に有効ではあります。

しかし、保険自体は企業のキャッシュフローの状況や銀行の借入金などの状況も考慮して、加入を検討すべきです。

そのため、今後、退職金を用意するために法人保険を加入されることを考えている方は、自社の経営状況を踏まえた上で、加入することをおすすめします。

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