【譲渡手順】M&Aで会社を譲渡する流れと全手順。提案・価格交渉・契約・譲渡後の対応

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企業の経営者、財務担当者はM&Aで会社を譲渡(売却)する際、M&Aの流れとM&Aの手順について具体的なイメージをあまり持っていないのではないでしょうか。

そのため、今回は『【譲渡手順】M&Aで会社を譲渡する流れと全手順。提案・価格交渉・契約・譲渡後の対応』という記事のタイトルで、

  • M&Aで会社を譲渡(売却)する際の流れ
  • M&Aで会社を譲渡(売却)する際の全手順
  • M&Aで会社を譲渡(売却)する際の提案、価格交渉や契約内容
  • M&Aで会社を譲渡後(売却後)の対応

について詳しく解説します。

M&Aで会社を譲渡(売却)する際の大まかな流れ

まずは、M&Aで会社を譲渡(売却)する際の流れについて解説します。

以下で詳しいM&A(売却)までの手順を説明するため、まずは、M&Aで会社を譲渡(売却)するまでのおおまかな流れを解説します。

基本的に、譲渡(売却)までの流れを大きく分けると、以下の6つに分類できます。

  1. M&A(売却)を実行するかどうかの相談、意思決定
  2. M&Aアドバイザリーとの契約
  3. 買収相手の選定、確定
  4. M&A(売却)する際に必要な契約書や基本合意書などの資料作成
  5. 売却企業先のデューデリジェンス
  6. 最終条件交渉~クロージング

これらの6つのステップを経る(M&A(売却)を実行するかどうかの意思決定からクロージングまでのスケジュール)には、一般的に数年程度はかかります。

また、売却する会社の選定に時間をかけたり、売却先が見つからず、交渉が難航したりする場合、M&A(売却)を実行するかどうかの意思決定からクロージングまで5年以上かかる場合があります。

そのため、M&Aで会社を売却したいと考えているのであれば、なるべく早めに、M&Aの準備をされることをおすすめします。

M&Aで会社を譲渡(売却)する際の全手順

つづいて、M&Aで会社を譲渡(売却)する際の全手順について解説します。

M&Aで会社を譲渡(売却)するまでの手順を詳しく説明すると、売却するまでに以下の11の段階を経る必要があります。

⑴M&Aアドバイザーとの顧問契約(財務、法務面も含む)

まず、M&Aで売却を考える場合、基本的に、M&Aアドバイザーとの個別面談からM&Aの手順が始まる事が多いです。

この段階で以下のような事項も含まれます。

  • M&Aアドバイザーと協同で対象先を検討
  • 売り手企業に対するM&Aアドバイザーによる調査・ヒアリング・売却条件検討

また、双方納得がいく様であれば、機密保持契約をした上で、正式にM&Aアドバイザーとして就任してもらった方がよいでしょう。

⑵売却に関する提案資料の作成

売却を考える経営者はM&Aに必要となる決算書などの一連の資料を提出する準備をしましょう。

M&Aアドバイザーは、決算書などの一連の資料をもとに買い手に対する提案資料の作成を行ってくれますが、注意すべきポイントもあります、

  • 自社の企業価値はいくらくらいなる予定なのか
  • 取引手法はどういったものを選ぶのか
  • 事前に経営改善しておくべきことはあるのか
  • 売却後の事業計画はしっかり立てられているのか

などは必ず、提案資料の作成の前に確認しておきましょう。

⑶ネームクリアの確認

買い手企業にM&Aを打診をする前に、ネームクリア(ノンネームで打診した譲渡対象となる企業名を買い手候補企業に開示すること)の確認を行いましょう。

これは、売却についての情報の拡散、取引先への影響、従業員が経営陣に不信感を抱き退職するリスク、金融機関に知られ融資の引き上げが発生といったリスクを防ぐためのものです。

このように、M&Aの検討手続きは、匿名で実施されることが一般的です。

⑷ノンネームシートでの提案

買い手の希望条件に見合いそうな案件があれば、まずは簡易的な売却情報が掲載されたノンネームシートでの提案を行いましょう。

また、買収を希望する会社から、さらに詳細な情報を求められれば、秘密保持契約を結び、M&A取引において、売却対象となる企業・事業等に関する情報を詳細に記載した資料を開示しましょう。

⑸買い手によるM&Aの実行検討

買い手側企業がM&Aに興味を示したら、M&Aアドバイザーは、ネームクリアの確認を売り手に対して行う事が多いです。

売り手からネームクリアの確認が取れたら、M&Aアドバイザーは会社名や財務内容などの重要情報を渡し、買い手側で検討に入りましょう。

⑹トップ経営者同士の面談の実施

買い手側が買収への興味を示し、双方先に進めたいという事であれば、経営陣同士の「トップ面談」を行います。トップ面談では、双方質問をしあい、経営方針などに関する疑問を解消しあいます。

通常、中小企業のM&Aにおいては、2、3社程度の面談を行うことが普通ですが、売手企業と買手企業の経営者同士が顔を合わせて話ができるのは、このときだけと考えた方がよいでしょう。

限られた時間ではありますが、M&Aを決定づけるほどの影響を持つ手続きの一つであるため、トップ経営者同士の面談の実施は時間をかけて、準備をしてから臨みましょう。

⑺M&Aに関する意向表明書の受理

トップ面談で互いに納得できる相手であれば、M&Aアドバイザーが双方の間に立って、条件面の調整をしていきます。これと並行して買い手は「意向表明書」といわれる買収方法、買収価額などの提案条件が書かれた資料を提出します。

⑻M&Aに関する基本合意契約書の締結

基本合意書とは、売り手企業と買い手企業の双方が、M&Aに向けて現時点での基本的ないくつかの条件の合意事項を確認するために当事者間で締結する契約書のことを指します。

基本合意書を締結することにより、売り手企業と買い手企業の双方がこれまでの交渉で合意してきた内容の整理と合意形成ができ、取引成立に向けた以降のデューデリジェンス、最終契約や決済をスムーズに進行させると同時に同義的な拘束力を期待することができます。

そのため、財務、法務デューデリジェンスの実施をする前に、必ず、基本合意契約書の締結を行いましょう。

また、基本合意契約書には独占交渉権の付与やその交渉期間なども記載されます。

⑼財務、法務デューデリジェンスの実施

デューデリジェンスとは、投資やM&Aを行うにあたって、投資対象となる企業や投資先の価値やリスクなどを調査することを指します。

M&A案件におけるデューデリジェンスは、

  • 財務内容などからリスクを把握するファイナンス・デューデリジェンス
  • 定款や登記事項などの法的なものをチェックするリーガル・デューデリジェンス

が特に重要になり、財務、法務の両面から、漏れがないかをチェックします。

一般的に、ファイナンス・デューデリジェンスであれば、税理士(公認会計士)に、リーガル・デューデリジェンスは司法書士(弁護士)に依頼して行うのが、一般的です。

買い手企業は専門家から提出されるデューデリジェンスのレポート結果を待って、最終的に当該M&A取引を実行するかしないか、あるいは条件面の再交渉に入るかどうかの判断を行うため、企業を売却したい場合、デューデリジェンスは綿密に行なった方が結果的に早く売却までたどり着けます。

⑽最終譲渡契約書の締結

最終契約書とは、買収価格やその他の条件について、売り手と買い手との間で最終合意に達したときに交わされる契約書ことを指します。

一般的に、M&Aの形態が株式譲渡の場合は株式譲渡契約書(Stock Purchase 電子印鑑GMOサインment )、営業譲渡の場合は営業譲渡契約書(Business Transfer 電子印鑑GMOサインment)が最終譲渡契約書となります。

ただし、最終譲渡契約書の締結をするには、買い手、売り手ともに取締役会や株主総会での承認が得られる必要があります。

⑾M&A案件のクロージング

最後に、M&A案件のクロージングになります。

M&A案件のクロージングとは、M&Aにおいて、株式譲渡であれば無題株式の譲渡、事業譲渡であれば事業の譲渡を完了させるための手続きのことを指す言葉になります。

つまり、クロージングとは、株式の譲渡又は事業の譲渡の手続きとそれに対する譲渡代金の支払いの手続きのことになります。

中小企業のM&A案件の場合、最終譲渡契約書を締結した約1ヶ月程度後にクロージングが行われることが多いです。

上記で解説したように、M&Aで会社を売却する際の手順を詳細に解説すると、売却までに以下の11のプロセスを経る必要があります。

  1. M&Aアドバイザーとの顧問契約(財務、法務面も含む)
  2. 売却に関する提案資料の作成
  3. ネームクリアの確認
  4. ノンネームシートでの提案
  5. 買い手によるM&Aの実行検討
  6. トップ経営者同士の面談の実施
  7. M&Aに関する意向表明書の受理M&Aに関する基本合意契約書の締結
  8. 財務、法務デューデリジェンスの実施
  9. 最終譲渡契約書の締結
  10. M&A案件のクロージング
  11. M&Aで会社を譲渡(売却)する際の提案

最近のM&Aに関連した記事などでは、これらのプロセスの一部(M&Aアドバイザーとの顧問契約、財務、法務デューデリジェンスの実施)を省略しても良いと謳っていますが、はじめて、M&Aを経験される方は、必ず、上記の11のプロセスを経てから、会社売却を行った方がよいでしょう。

M&Aで会社を譲渡(売却)する際の提案、価格交渉や契約内容

3つ目としてM&Aで会社を譲渡(売却)する際の提案、価格交渉や契約内容について解説します。

まず、M&A仲介会社、M&Aアドバイザーが、貴社の企業価値について色んな手法(マーケットアプローチ法、マルチプル法、コストアプローチ法)を使って評価してくれます。

一般的には、M&A仲介会社、M&Aアドバイザーが提示してくれた企業価値評価をもとに、買い手企業ともM&Aに入ります。

ただ、M&A仲介会社、M&Aアドバイザーが自社の企業価値評価に用いた手法や提示額がなかなか納得のいかないケースもあると思います

このような、場合は、ほかのM&A会社の意見を求める(セカンドオピニオン)ことをおすすめします。

実際、会社によって、提示される金額は異なります。

より評価してくれるM&A仲介会社、M&Aアドバイザーを選ぶことは売却を成功させるのに、非常に重要な要素です。

そのため、信頼できるM&A仲介会社、M&Aアドバイザーを複数抱えておくことは、売却する際の提案、価格交渉でなにより重要なポイントと言えるでしょう。

次に、M&Aで会社を譲渡(売却)する際の契約内容について解説します。

会社を譲渡(売却)する際の契約内容でトラブルになりやすいポイントは、譲渡する財産と従業員に関してです。

譲渡する財産に関して説明すると、事業売却で移転されるものは、会社の事業だけとは限りません。

対象となる事業と共に、財産の一部を譲渡するケース(自家用車や会社内の備品)があります。

例えば、自家用車や会社内の備品などの財産の移転は、非常にトラブルのきっかけになりやすいです。

そのため、事業譲渡契約書を作成する際、具体的に財産の内容を明記しましょう。

次に、従業員についてです。

事業譲渡の際に、従業員も引き継ぎたいのであれば、従業員と個々に雇用契約を結び直す必要があります。

そのため、事業譲渡の際の契約内容に今後の従業員の雇用に関しては、必ず盛り込んでおきましょう。

ただ、従業員の方が残ってくれる方が経営は安定しやすい傾向にあるため、買収企業の多くは従業員も引き継ぎたいと考えています。

このように、M&Aで会社を譲渡(売却)する際の提案や価格交渉をうまく持っていくために、M&A仲介会社、M&Aアドバイザーを複数契約しておくことをおすすめします。

また、契約内容に関しては、譲渡する財産と従業員に関しては、トラブルを避けるためにも、必ず、契約書に盛り込んでおくようにしましょう。

M&Aで会社を譲渡後(売却後)の対応

最後に、M&Aで会社を譲渡後(売却後)の対応について解説します。

M&Aによって、会社の売却を検討している企業の経営者の中には、

  • M&A後は、会社の経営からリタイアし、第二の人生を開始したいと考えている方
  • 可能であれば、M&A後も、会社の経営陣として引き続き会社の経営を実行したいと考えている方

の両方がおられると思います。

そのため、それぞれのケースについて解説します。

会社売却後はリタイアしたいと考えている場合

結論から言うと、経営者(経営陣も含む)が会社売却後はリタイアしたいと思っていても、必ずしも、リタイアできるとは限りません。

というのは、貴社を買収した企業は、M&Aによって初めて貴社を経営することになるため、会社・企業文化の相違、システムの相違などにより、M&A後は戸惑うことが数多く存在します。

また、買収後に貴社を買収した企業の担当者が対象会社の役員として出向したとしても、必ずしも、従業員の人心を掌握できるとは限りません。

そして、人心を掌握できなかった場合、企業価値の毀損は避けられません。

そのため、リタイアしたい場合でも、少なくとも一定期間(少なくとも1年以上)は、対象会社の顧問として在任、現場の監督などにより業務の引き継ぎを行い、急激な体制変更による企業価値の毀損を避けることが買収企業から求められる事が一般的です。

よって、買収後も一定期間はリタイアはできないと考えた方がよいでしょう。

M&A後も、会社の経営陣として引き続き会社の経営を実行したいと考えている場合

次に、M&A後も、会社の経営陣として引き続き会社の経営を実行したいと考えている場合について解説します。

結論から言うと、会社の経営陣として引き続き会社の経営を担うことは可能ですが、M&Aによって、自社株式を売却してしまっているため、会社のオーナー経営者ではなく、雇われ経営者になってしまいます。

雇われ経営者であるために、経営に問題が発生すると、経営者である自分に責任が追及されるケースもあります。

また、引き続き会社の経営を担うとは言っても、経営者保証(連帯保証)を解除してもらえるかどうか、売却後の自身の処遇によっても経営の自由度は大きく異なります。

そのため、売却後の経営者保証(連帯保証)、自身の処遇に関しては、買収企業と事前に協議した上で、今後の経営責任はどうするのかを決めてから、引き続き会社の経営を担うという意思決定をすることが懸命でしょう。

このように、会社売却後はリタイアしたいと考えている方は、買収後も一定期間はなかなかリタイアはできないと考え直したよいでしょう。

また、M&A後も、会社の経営陣として引き続き会社の経営を実行したいと考えている方は、売却後の経営者保証(連帯保証)、自身の処遇に関しては、買収企業と事前に協議した上で、今後の経営責任はどうするのかを決めてから、引き続き会社の経営を担うという意思決定をしましょう。

まとめ

今回は『【譲渡手順】M&Aで会社を譲渡する流れと全手順。提案・価格交渉・契約・譲渡後の対応』という記事のタイトルで、

  • M&Aで会社を譲渡(売却)する際の流れ
  • M&Aで会社を譲渡(売却)する際の全手順
  • M&Aで会社を譲渡(売却)する際の提案、価格交渉や契約内容
  • M&Aで会社を譲渡後(売却後)の対応

について詳しく解説しました。

上記でも解説したように、M&Aで会社を譲渡(売却)する際は非常に時間がかかるため、会社の譲渡(売却)を考えている人は何より早く準備に取り掛かりましょう。

そして、上記で解説したM&Aで会社を売却する際の正しい手順を踏まえた上で、M&Aで会社を譲渡後(売却後)の対応を売却する前から、事前に協議しておくが何より、売却の成功率を高めます。

そのため、M&Aで会社を譲渡したいと考えている方には、売却の準備に早く取り掛かり、売却先を見つけた段階から、売却後の対応をしっかり、交渉していくことを強くおすすめします。

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