動画広告は他の広告と比べて単価は安い・コスパは良いのか
動画広告の運用を検討している担当者にとって、「動画広告はコスパがよいのかどうか」というのは、もっとも気になる点でしょう。そこでまずは、動画広告の費用対効果について見ていきましょう。
結論からいうと、動画広告はクリック率やコンバージョン率が高く、他の広告以上に大きな効果が期待できます。
クリック率が高い
動画広告の特徴としては、クリック率(CTR)の高さが挙げられます。商品やサービスを動画でプロモーションするため、ユーザーが受け取る情報は格段に多くなります。商品の良さやメリット、ブランドのイメージをより具体的かつ的確に、伝えられるでしょう。
また人間は動いているものを目で追う習性があり、さらに動画広告であれば音声を上手く組み合わせて、視覚・聴覚を刺激するような表現が可能になります。
アメリカの動画マーケティング専門企業「adform」の調査によると、パソコンのバナー広告のCTRが0.11%、スマートフォンのバナー広告のCTRが0.27%である一方、動画バナー広告のCTRは0.42%と、3パターンのうちもっとも高い数値を示すことが分かっています。
コンバージョン率が高い
クリック率だけでなく、コンバージョンにつながりやすいのも動画広告の特徴です。動画は、視聴者に与えるインパクトも大きく、見せ方次第では文章や画像以上に、商品を魅力的に表現できます。そのため、記憶にも残りやすく、より購買意欲を刺激する要因となるのです。
動画広告の費用対効果を高めるポイント
動画広告のコストパフォーマンスは、以下の点を意識することで高めることができます。
シナリオ作りが肝心
動画広告において、シナリオ作りは非常に大切です。動画のシナリオだけでなく、ユーザーの行動までを想定しておく必要があります。
動画広告というと、映像のクオリティにばかり目が行きがちですが、動画広告はあくまで潜在顧客の興味を引くための手法です。動画を最後まで視聴してもらった後、ユーザーにどのような行動をとってもらうか、がもっとも重要な部分となります。
「ランディングページや自社サイトにアクセスしてほしい」のであれば、その目的から逆算して、シナリオを設計することを心がけましょう。
徹底したペルソナ設定
動画広告の費用対効果を高めるのであれば、自社の商品やサービスを、どんな層に届けたいかという点を、じっくり検討しておくことが重要です。性別や年齢、何に興味を持っているのかなど、具体的に想定しておきましょう。
映像には目を引く工夫を施す
費用対効果の高い動画広告には、大まかな傾向があります。例えば、人の顔が映っている動画は、そうでないものと比較して視聴時間が長くなると言われています。
また視聴者の負担を減らす策として、字幕を入れるというのも効果的です。特にSNS上で流す動画広告の場合、スマートフォンのデフォルトの設定がミュートになっていることがあります。
字幕がなければただ無音の映像が流れているだけになるため、ユーザーの意識を引き寄せることはできないでしょう。一見些細な工夫ですが、これらの有無で動画広告の効果は大きく変動します。
YouTubeなどは特にいえることですが、基本的に動画プラットフォームを利用するユーザーは、特定の動画を見るためにアプリを開いています。そのため、受け手のことを考えていない動画広告は、鬱陶しいと思われ、スキップされてしまうこともあるのです。
動画広告を制作する際には、視聴者の立場に立ってみることも大切です。
動画広告の費用の内訳
動画広告を運用する際の費用を見てみましょう。
広告出稿費
広告をメディアやSNSに出稿するための費用です。動画広告は一般的に、「CPV」と「CPM」といった指標で単価が決定されます。詳しくは次の項目で解説します。
動画制作費
動画広告には、制作費がかかります。クオリティや委託する企業によって、費用は大幅に変動するため一概には断定できませんが、おおよそ50〜100万円くらいと考えておくとよいでしょう。
機材を安価なものにしたり、素材を自社で用意する場合などは、多少費用を抑えられるかもしれませんが、企画や編集は必須となるので、最低でも20万円程度はかかると見ておきましょう。
広告として提示する情報は、時間が経過するにつれて古くなることや、誤りがあることも考えられるでしょう。しかし一度作ってしまった動画は、そう簡単に修正や変更を加えることができません。そのため、動画広告を制作する際は、多少費用はかかっても、慎重に作っていく必要があります。
費用の具体的な目安は、以下のようになります。
- 企画、コンセプト設計:3〜15万円
- シナリオ作成:5〜10万円
- 撮影費(人件費や機材使用量):数十万円
- アニメーションや音響:10万円前後
- 動画編集:5〜25万円
できる限り費用を抑えるには
動画広告を運用する際には、「できるだけ制作費用をかけたくない」と考える方も多いでしょう。可能な限り費用を抑えるためには、クオリティにこだわりすぎないことが大切です。
例えば、一部の業務を自社内で行ったり、素材をあらかじめ用意しておいたりすることで、数万〜数十万円程度の費用を削減できます。静止画を組み合わせて音声をつけ、スライドショーのような動画を作るのも一つの方法です。ナレーションや字幕を上手く編集できれば、高い効果も期待できるでしょう。
動画広告のコストパフォーマンスを高める上で重要なのは、ハイクオリティな動画ではなく、ユーザー視点で作られた動画です。多額の費用をかければ、その分効果があるというわけではない点に注意しましょう。
出稿前に動画広告における指標を知っておきましょう
動画広告における代表的な指標は、CPVとCPMです。それぞれの概要を見てみましょう。
CPVとは何か
CPVとは「Cost Per View」を意味するマーケティング用語で、広告1回再生あたりのコストを意味します。これは従来のCPC(1回クリックあたりのコスト)とはまったく異なる指標で、動画広告独自のものです。
「1回あたりの再生」とカウントされる基準は、運用するプラットフォームによってさまざまです。再生されたとカウントされる前に動画がスキップされたり、画面が閉じられたりした場合、課金はされません。
CPVの広告の料金は、「入札型」と「予約型」で異なります。入札型は広告を出す回数を、入札で決定する方式です。相場や上限は定められておらず、その都度変わっていきますので、定期的に運用し続けなければなりません。
予約型の場合は、再生された分だけ料金が請求される方式です。1回再生あたり3〜20円が相場となっています。
CPMとは何か
CPMとは、「Cost Per Mille」を意味するマーケティング用語で、広告1000回表示あたりのコストを意味します。再生されたかどうかは考慮されず、単に広告がどれだけ表示され、認知されたかによって、費用が発生します。
動画広告で一般的な料金体系
動画広告では、一般的に以下のような料金体系で運用されます。
動画広告はCPV課金であることが多い
再生数に応じた課金であるCPVは、動画広告でもっともポピュラーな課金体系です。動画広告がしっかりと再生された段階で、コストがかかるため、無駄な広告費がかかりにくいというメリットがあります。
どの程度で再生されたと見なすかどうかは、プラットフォームごとに違いがあり、例えばYouTubeでは、30秒再生された時点で1回再生とカウントされます。
インプレッションに応じた課金
インプレッションとは、サイトに表示された回数を示す指標です。「印象」を意味する単語で、「どれだけ認識されたか」によってコストが変動します。あらかじめ用意されたディスプレイ広告に動画広告を出す場合は、この指標が採用されることが多いようです。
クリック数に応じた課金
広告がクリックされるたびに、広告費がかかる方式です。アドセンス広告など、ウェブ上で頻繁に目にする広告は、この仕組みとなっていることが多くなっています。動画広告でも、バナーに動画を流すといった場合には、クリックされた数によって課金される仕組みになっていることがあります。
各アプリ・メディアの特徴と動画広告単価
アプリ・メディア別の動画広告の特徴について解説します。
YouTube
動画広告の出稿メディアとして、第一候補に上がるのがYouTubeです。国内の利用人口も多く、スマートフォンで動画を視聴する際の代表的なアプリであると言えるでしょう。YouTube広告は、リスティング広告やアドセンス広告など、デジタルマーケティングで用いる広告と、料金体系が異なります。
インストリーム広告
インストリーム広告とは、メインの動画コンテンツが始まる前や合間に流れる動画広告です。一般的には15秒〜数分程度のものが多く、5秒経過した段階で、スキップできる仕様となっています。
インストリーム広告は、さらに以下のように分類できます。
まずは「プリロール動画広告」で、これは動画が始まる前に流れる広告を指します。
次に挙げられるのが「スキッパブル広告」で、これは文字通りスキップ可能な広告を指します。ただし最初の5秒間はスキップできません。
最後が「ノンスキッパブル広告」で、これは強制的に動画をすべて再生させる広告です。Apple製品の商品プロモーションなどで見かけることが多いでしょう。15秒程度のものが一般的であり、ノンスキッパブル広告を出すためには別途審査が必要となります。
インストリーム広告の入札価格は、おおよそ3〜20円となりますが、ジャンルによって大きく変動します。具体的には、不動産や投資、転職、美容などのジャンルは高単価であると言われています。一方、料理や旅行などの広告は単価が低くなることが多いようです。
動画広告でもっとも大切な点は、最終的にユーザーに何かしらの行動をとってもらうこと、つまりコンバージョンすることです。商品の購入や申込み、サイト閲覧などを達成するためには、一定数以上の視聴者を確保しなければなりません。
そして費用対効果を高めるためには、できるだけ広告費をかけないことが前提となります。データを見ながら改善を繰り返し、最適な価格で広告を出稿することが重要となります。
そのため、はじめは少額の入札からはじめるべきであると言えるでしょう。いきなり高額の広告費をつぎ込むのではなく、低予算ではじめてみて、費用対効果を見極めるというプロセスが重要になるのです。
ディスプレイ広告(TrueViewディスカバリー広告)
YouTubeでインストリーム広告と同じくらい目にする広告がディスプレイ広告です。
これは、画面に表示されることで課金される仕組みの広告で、YouTubeでは検索結果の最上位や、関連動画のサムネイル部分に表示されます。一見他のメインコンテンツと同じように見えますが、黄色く「広告」や「PR」といった表記がなされています。実はYouTubeのディスプレイ広告は、
インストリーム広告を出稿している企業であれば、自動的に表示される仕組みとなっています。新たに別途課金する必要はありません。こちらも入札価格は、3〜20円前後で設定し、少しずつ入札価格を上げていくとよいでしょう。
バンパー広告
バンパー広告は、およそ6秒間程度のショートムービーの動画広告です。すべて視聴されるまでスキップされない仕様であるため、作り手の届けたい映像を最後まで見せることが可能になります。
しかし6秒間で伝えられるほどにまで要点を絞り、かつ印象に残るような動画を作らなければなりません。届けたい情報をほぼ確実に伝えることができる一方で、動画制作のハードルが高くなってしまうというデメリットがあると言えるでしょう。
またバンパー広告は、CPVではなく、CPM課金となります。1,000回再生された段階でどれくらいコンバージョンするかを、あらかじめ想定して動画を制作しなければなりません。
Facebook動画広告
Facebook動画広告は、任意の期間、最低100円から入札して出稿できます。対象のセグメントを設定できるため、ユーザーの興味関心にあわせて広告を配信できます。自社サイトへの流入やアプリ広告はもちろん、Facebookページ(アカウント)の閲覧者を増やす目的でも導入されています。
Twitter動画広告
Twitter動画広告は、プロモツイートとも称されます。最大の特徴は、ユーザーのツイート内容に合わせて適切にターゲティングされた広告を配信する仕組みです。
例えば、日常的に小説に関するつぶやきをしている人のタイムラインには、書店や出版社のプロモツイートが流れるようにパーソナライズされます。Twitterは国内のアクティブユーザーも多いため、より費用対効果の高いマーケティングが期待できるでしょう。
ニコニコ動画広告
国内で人気の動画プラットフォームであるニコニコ動画でも、動画広告を出すことができます。特にニコニコ動画はアニメなど日本のカルチャーに興味関心のあるユーザーが多いので、商品やサービス次第では非常に高いコンバージョンが期待できます。
ニコニコ動画の広告は予約型をとっており、入札・継続的な運用は必要ありません。一週間単位の掲載で、価格は1回の視聴につき0.8円からと設定されています。
Yahoo! Japan動画広告
ポータルサイトのYahoo! Japanにも、動画広告を出すことができます。Yahoo! Japanのトップページに、大々的に広告が表示されているのを見かけたことがある方も多いでしょう。
Yahoo! Japanでは、ディスプレイ型で動画広告が表示されます。Yahoo! Japanは検索やニュースの閲覧などで日常的にアクセスするユーザーも多いため、さまざまな層へ認知を広めることが可能になります。音声はデフォルトでミュートとなっていますが、画像のみの広告よりも、ユーザーの注意を引くことができるでしょう。
ただし、Yahoo!ニュースのバナー枠は最低でも500万円、トップページの大枠は最低5,000万円と、出稿には非常にコストがかかります。
動画広告を出稿する際の選び方
「コスパが良い」という基準で動画広告の出稿先を選ぶのであれば、もっともおすすめなのがYouTubeです。
動画広告の市場でも、インストリーム広告の出稿先としてYouTubeがほとんどを占めており、不特定多数のユーザーにPRできるという点でも、他のメディアより優れていると言えるでしょう。
別のメディアへ動画広告を出す場合、商品やサービスのペルソナが利用しているプラットフォームを選ぶことも欠かせません。例えば20代女性をターゲットとした商品であればInstagram、ビジネスマン向けのサービスであればFacebookのように、属性や年齢に合わせて選択しましょう。