スマートフォンの普及は世の中に大きな変化をもたらしましたが、これはマーケティングの分野でも例外ではありません。国民のインターネット利用時間がテレビ視聴時間を上回るようになったことで、動画広告の有効性はますます高まっています。
そこで、動画広告を制作しようと検討している企業も多いことでしょう。たしかに動画広告は商品やサービスのイメージを伝えるのに適していますし、ユーザーのアクションも増えるというデータが出ています。
しかし広告というものは、正しい戦略を練って正しい方向で制作しなければ、狙い通りの効果を得ることはできません。それは制作会社の能力の問題というよりも、依頼する側がきっちりとKPIを明確に設定できているかどうかの差です。
ここで一度立ち止まって、動画広告の制作会社を選ぶ際のポイントを押さえておきましょう。
1.ターゲティングによるアプローチの違い
まずは、訴えかけたいターゲットを明確にしなければなりません。動画広告の場合、ターゲティングによって動画のアプローチがまったく違ってくるためです。
たとえば、インパクトを重視した動画広告は未認知客には効果的ですが、既存客に目新しい情報を提供することにはなりません。反対に、割引やポイント増額キャンペーンなどを押し出した動画広告では、既存客を呼び込む効果はあっても未認知客の心を動かすことはできません。
どれほど映像としてのクオリティが高かったとしても、ターゲティングが不明瞭では動画広告としては失敗なのです。
ですから、マーケティングへの理解のある動画制作会社を選ぶことは必須です。その上で、欲しいアプローチでの実績があるかどうかをチェックするよいでしょう。
2.目的・コンセプトの共有
「みんなやっているからうちもやろう」……そんな安易な考え方で動画広告を制作しようとはしていませんか? 動画広告の目的があやふやだと、マーケティングはほぼ間違いなく失敗します。
広告の目的は多種多様です。そしてコンセプトによっても動画広告のアプローチは大きく変わります。
たとえば、ブランディングのための広告であれば抽象的でイメージを喚起させるようなメッセージの方が効果的ですが、コンバージョンのための広告はメッセージが具体的であればあるほど有効となります。
コンセプト段階で制作会社との意思疎通がうまくいっていないと、期待するような効果を得ることはまず不可能でしょう。ですから、制作会社のヒアリング能力を見極める必要もあります。
3.Webならではの戦略性
動画広告はテレビCMと似ているようで、実はまったく違う性質をもちます。
テレビCMであればどういった層がどの時間に見ているのかを事前に把握した上で出稿できますが、Web上の動画広告は誰がいつどのような環境で見るのか、まちまちです。テレビCMはできるだけ多くの人に見てもらうことを目指しますが、動画広告はターゲット以外には早く離脱してもらった方が効率的です。
また、Webというメディアならではの特性を考慮する必要もあります。
スマートフォンを利用しているときは常にマナーモードだという人も多いでしょう。すると、テロップの有無で広告効果が大きく変わってくることになります。逆に、YouTubeなどの動画サイトに埋め込むのであれば、音声を効果的に利用できます。
いくらテレビCMで素晴らしい実績をもつ制作会社であっても、Webへの理解が浅そうに見える場合は要注意です。
4.予算とスケジュールの管理能力
最後に、広告制作をする上で避けて通れないのが予算の問題です。効果的な広告を打つためには予算を惜しみたくはありませんが、そうはいっても青天井というわけにもいきません。
一度でもホームビデオの編集にチャレンジしたことのある人であればわかるように、動画広告は他の広告と比べると、単純な制作時間の部分だけでも桁違いに大きくなります。一般的に動画制作の料金はクリエイターの拘束日数と比例しますから、ごく簡単なサービス紹介動画であっても20~40万円程度の予算はみておかなければなりません。
そこで重要になってくるのは、こちらの予算を考慮して適切なディレクションをできる制作会社かどうかです。
まとめ
動画広告は、活用次第では単なる宣伝効果以上のメリットをもたらしてくれることもあります。ユニークな動画広告であれば世界中でシェアされることもあるかもしれませんし、まったく意図しない方面から企業イメージが向上することもあるでしょう。
そうした副次的な効果を得るためにも、動画制作会社選びは大切です。まだ歴史の浅い分野だからこそ、ネームバリューに囚われずフラットに選びたいものです。
迷ったときは、クリエイティビティだけに注目するのではなく、Webマーケティングへの理解がどれだけあるのかを吟味するよう心がけると、失敗しない動画広告を作れるでしょう。