中小企業の経営であっても、中小企業の経営だからこそ、競合他社の商品やサービスを分析することは非常に重要なことです。今回は競合を分析する方法と競合に勝つ方法について解説します。
彼を知り己を知れば百戦殆うからず
「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」ということわざがあります。
これをビジネスに当てはめれば
- 自社の強みや弱み
- 競合他社の強みや弱み
の両方を理解していれば、ビジネスで負けることはないということになります。
逆に言えば、敵の情報を知らずに戦っていても、勝てる可能性は低いことを意味します。
自社と顧客のことのみを考え続けるイノベーションだけで成功するスティーブ・ジョブスのような天才もいるので、絶対とは言いませんが・・・
私のような凡人が会社経営をするのであれば、敵の情報を徹底的に分析したうえで、勝つ方法を見出す必要があります。
筆者の実体験
筆者はウェブサイトの制作やウェブマーケティングの提案をしますが・・・、競合他社を理解していないクライアントは度六ほど多いのです。
「ウェブサイトを作りたい。」というときに
「こんなデザインが良い。」
「こんなサイトにしたい。」
「こんな機能が欲しい」
・・・
とイメージをいっぱい話してきますが・・・
私は
「落ち着いてください。まず自社の商品の強みと弱み、競合他社の強みと弱みについて教えてください。」
と言います。それを理解しなければ「ウェブサイトでどうやって勝つのか?」戦略が描けないのです。
しかし、競合他社と自社の状況を明快に答えられる方は非常に少ないのが現状です。
面白いことに、現場の担当者の方が競合他社のサイトを毎日見ているせいか、競合他社について回答できるのですが、経営者や幹部の方が漠然とした競合の状況しか知らないケースが多いのです。
本来は(例えば化粧品メーカーの場合)
競合としてベンチマークしているのはターゲットが近く、シェアも同じぐらいのB社とC社です。
B社は商品価格が安く、芸能人を使っている商品で知名度が高い。ウェブサイトもブランドより
C社は医学的なエビデンスを重視して、ドクターコスメとして科学的データで推している
自社の強みは○○という成分と素材の含有量であり、顧客の実感でも絶対に競合他社には負けません。
と言ってもられば
- 素材の凄さをいかに顧客に伝えられるようにウェブサイトを設計するか?
- どういうウェブマーケティングの方法を取るのか?
という視点で戦略を練ることが可能ですが、それがなければ
「イメージを先行させてウェブサイトを作りたいのであれば、他のデザイン会社にお願いしてください。」
と正直に言います。
結果の出ないクライアントの言う通りのウェブサイトを作っても、意味がないので断ってしまうのです。
競合と自社を比較する比較表の極意
1.比較できるものはすべて取り込んでエクセルで比較表にする
なんでもかんでも比較します。
メーカーであれば商品のことだけを比較しがちなのですが、それで不十分です。
- 商品の裏側には会社の規模やグループ会社の違い、予算の違いなどがあります。
- 集客で見れば、広告手法の違い、広告コストの違い、ターゲットの違いなどがあります。
- ウェブサイトで見れば、アイキャッチで訴求している文言、キーカラー、ページ数などの違いがあります。
ここでは絞り込む必要もなく、可能な限り色々な要素を比較すべきです。わからないところは不明で構いません。
カテゴリ | 比較項目 | 自社 | B社 | C社 |
---|---|---|---|---|
商品 | 商品価格 | 4000 | 3500 | 5200 |
– | お試し商品 | 1ヶ月 | なし | 1週間 |
– | タレント器用 | なし | 有名モデル | なし |
– | 客単価 | 6000 | 4500 | 不明 |
– | 平均継続月 | 4.5か月 | 3.2か月 | 1.6か月 |
– | ・ ・ ・ |
・ ・ ・ |
・ ・ ・ |
・ ・ ・ |
商品
- 価格
- お試し
- 成分・原材料
- 含有量
- パッケージデザイン
- ターゲット
- 原価
- 配送方法
- 到着までの期間
- 同梱物
・・・
マーケティング
- タレント
- PRリリース
- 広告予算
- CMの有無
- ECサイトの有無
- 折込チラシ
- DM
- リスティング広告
- SEO順位
- アフィリエイト広告
- 客単価
- 継続期間
- リピート率
- CPO
・・・
会社
- 従業員数
- グループ会社
- 担当部署の人数
- 上場の有無
・・・
ウェブサイト
- 色
- キャッチコピー
- 訴求ポイント
- ページ数
- コンテンツの内容
- 成果地点
- 成果ボタンの数
- 動線
- 機能
- セキュリティ対策
・・・
CRM
- カスタマーセンターからの連絡頻度、連絡タイミング
- 後追いのDMツール
・・・
と挙げていけばきりがありませんが、敵を倒すための情報というのは多すぎるということはないのです。
2.競合は2社で十分。自社よりもシェアの高い会社を想定する
競合の対象は2社あれば十分です。
多すぎると分析がぼやけてしまいますし、掘り下げることに時間がかかってしまうからです。
また、同時に自社よりも強い敵を設定しましょう。弱い敵と比較しても意味がないのです。強い、弱いというのはシェアで判断します。
自社よりもその業界のシェアが大きい会社を2社ピックアップして、倒すための分析を行うのです。
3.分析したら実行プランに移行する
「競合他社の方が優れている」かつ「コスト(時間)をかけずにできる」
→ 即実行
「競合他社の方が優れている」かつ「コスト(時間)がかかる」「効果が薄い」
→ 無視
「競合他社の方が優れている」かつ「コスト(時間)がかかる」「効果が高い」
→ 基本的に無視。状況に応じて実行
「自社の方が優れている」かつ「効果が高い」
→ 社内の経営資源・リソースを徹底的に投入する
という方法を取ります。経営資源・リソースというのは、お金や人員、物資、設備などを意味します。
「競合分析をしておいて、経営資源・リソースを投入するのは自社の強みなの?」
と疑問を持つ方も多いかと思いますが
コトラーも言っているように、小さいセグメントでいいから1位になることが、中小企業が生き残るための最善の方法だと考えます。
だからこそ、競合分析をして
「他社のいいところを真似る」ということもするのですが
それ以上に「自社の強みを強化して敵を突き放す」ことの方が重要なのです。
「自社の強みだけでいいのであれば、競合分析は必要ない」と思う方もいるかと思いますが、自社の強みを競合分析せずに理解している経営者はそれほど多くないのです。
徹底して競合分析するからこそ、自社の強みが正確に把握できるのです。
まとめ
中小企業の競合分析の手順は
- 自社よりもシェアの高い2社を競合に設定する
- 徹底して比較できる項目を洗い出して比較表を作る
- 「他社の強み」ですぐにできることはすぐに採用する
- 「他社の強み」でコストがかかるもの、時間がかかるものは無視する
- 「自社の強み」にこそ、経営資源を集中し、競合他社を突き放す
という手順になります。
小さいセグメントでも、強みにリソースを集中できれば、シェア1位になれる可能性が高いのです。
小さいセグメントで1位になってから、他のセグメントに攻め込むのが王道なのです。
「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」です。