「部下が指示されたことしかやらず自主的に動かない」
「部下に大事な仕事を任すことができず、自分ばかりが仕事をしている」
上司という立場になると、こうした悩みは誰もが抱えるものです。ついつい「部下が使えない」と愚痴りたくなる気持ちもよくわかります。しかし、それは本当に部下の責任なのでしょうか?
部下を持つようになる前のことを思い出してみてください。その頃は、上司について愚痴ってばかりではありませんでしたか? 今のあなたの部下も「あの上司が嫌いだ」と愚痴っているとは考えられませんか?
使えないと愚痴る前に、部下の育成方法を今一度見直してみましょう。
1. 意図や目的を明確に伝える
まず大切なのは、部下が独立した一個人だとあらためて認識することです。「当たり前だろ」と思われるかもしれませんが、意外とこれができていない人は多いものです。
たとえば、自主的に動かない部下に悩まされている人はよくいますが、その部下とのコミュニケーションは充分にとれていますか? 仕事の目的や目標をしっかりと共有できていますか?
「自分で考えろ」と言われても、前提を共有できていない状態では部下もどう動けばいいのかわかりません。部下は他人ですから、あなたの考えや気持ちを読み取ることはできませんし、あなたの思い通りに勝手に動くこともないのです。
部下が動かない場合には、自分の指示や説明が言葉足らずではなかったかどうかを一度考え直してみましょう。日頃から自分が普通にこなしている仕事ですと、人間はどうしても説明不足になってしまいがちです。
2.任せる仕事はしっかりと任せる
多くの部下が「使えない」のは、能力が足りないからではありません。経験が足りないからです。成功と失敗を繰り返すことで人間は成長していくのであり、はじめから即戦力として使える部下なんてこの世にはいないのです。
にもかかわらず、「使えないから」と上司が自分一人で仕事をしてしまったとしたら、どうでしょうか? 経験を積むことができない部下はいつまでも使えないままですし、あなたの負担が減ることもありません。「自分でやった方が早いし出来もよい」とあなたが思うのは当然ですが、その状況を作っているのは部下に経験を積ませていないあなた自身の責任です。時間に余裕がある仕事は積極的に任せていきましょう。
また、一度仕事を任せたからにはしっかりと最後まで任せる心構えが必要です。途中で口を挟みたくなることもあるかもしれませんが、よほど致命的なミスでもない限りは極力黙っていましょう。いちいち口を挟まれたのでは、部下は「信頼されていない」と思ってしまいますし、自分自身で考えようとしなくなってしまいます。
逆に、助けを求められたときだけ手助けするようにすれば、部下はあなたを信頼し尊敬してくれるようになります。
3.コミュニケーションをとりやすい環境づくりを
使えない部下の代表例として、「ホウ・レン・ソウができない」という点を指摘する上司はよくいます。たしかに社会人にとって報告・連絡・相談は欠かすことのできない伝達事項であり、そこを怠る相手とは仕事をしづらいというのはよくわかります。
しかし、その部下がホウ・レン・ソウを怠りがちなのは、もしかすると「能力的にできない」のではなく「状況的にできない」だけなのかもしれません。たとえば、上司が忙しさのあまり気むずかしい顔でずっとイライラしながら仕事をしていたら、気の弱い部下は「邪魔をしてはいけない」と思ってなかなか声をかけられません。
そうした事態を避けるためには、気を遣うことなくいつでも連絡をとれるような環境づくりが必要です。短時間でも定期的なミーティングを行うとか、日報に連絡事項を書ける欄をつくるとか、対処法はいくらでもあるはずです。風通しのよい職場にしましょう。
4.動くかどうかで部下を評価しない
あなたが思う優秀な部下とは、どのような部下のことでしょうか?
もし、絶えず慌ただしく動いている部下のことを「優秀だ」と判断しているのだとしら、その考えは少し改めたほうがいいかもしれません。なぜなら、そのキビキビした動きは無駄な動きに過ぎないかもしれないからです。
本当に優秀な人間は、効率よく最低限の動きで仕事をこなしていきます。ついでに済ませることのできる用事はまとめて淡々とこなしますので、何度も席を立ったり座ったりする必要はありません。
一見するとマイペースに働いているだけに見える部下のほうが高い成果を残しているというケースは少なくないので、表面だけを見て部下を評価しないようにしましょう。細かい部分まで見落とさないようにしてしっかりと評価してあげれば、部下からの信頼を集めることにも繋がります。
まとめ
せっかくやる気のある優秀な部下でも、経営者や上司の使い方が悪ければ活躍することはできません。逆に、使い方次第では想像以上に大活躍してくれることだってあるでしょう。
部下を使えないと嘆く前に、「どうすればうまく使いこなせるのか」を考える癖をつけましょう。自分のこだわりを捨てて少し視点を変えてみれば、意外なところに優秀な人材が眠っているものです。
「使えない」と思われていた部下を育て上げたときの達成感は格別ですし、なにより部下が一人前になれば自分の負担も減るのですから、感情的にならずに根気よく指導していきたいものです。