昨年2015年は、日本のマーケターにとって、今後のマーケティング活動に大きな影響を及ぼす起点となった年ではないかと思います。
その起点の中核を成しているのが“マーケティングオートメーション”。
皆さんは、このマーケティングオートメーションについてどれくらいの事を知っているでしょうか?
マーケティングの自動化、リードナーチャリング、様々な回答が飛んできそうですが、「結局のところマーケティングオートメーションって何?」という方が意外と多いかと思います。
国内においてはまだ若い市場なので仕方のないことではありますが、2015年時点でフォーチュン500社(米国企業における総年商トップ500)の50%以上が導入しているツールとなると、今後マーケティングオートメーションがマーケティング業界の基幹となるのは間違いないでしょう。
そこでここでは、2015年からのバズワードであるマーケティングオートメーションとは何なのか?何が出来るのか?を紹介していきたいと思います。
1.マーケティングオートメーションとは
従来のマスマーケティングは今や過去の産物となりつつあり、企業規模やBtoB・BtoCを問わず現在では“One to oneマーケティング”のニーズが高まりつつあります。
つまり、顧客(ユーザー)一人一人の嗜好に合わせたマーケティングを展開しなければサービス契約やコンバージョンを得るのは難しい時代に突入しているのです。
しかし、顧客(ユーザー)が100人いれば100通りの施策を打ち出さなければならず、これは労働生産性の観点から見て明らかな業務非効率となります。そこで登場したのが“マーケティングオートメーション”です。
世界的にはマーケティングオートメーションの歴史は意外にも古く、初めて登場したのが2000年の「Eloqua(エロクア)」と言われています。
現在では米Oracleに買収され米国でのシェアは5位に留まっています。
1-1. マーケティングオートメーションで実現するもの
マーケティングオートメーションの導入で実現することは、「シナリオの自動化」、「行動履歴の自動化」、そして「履歴管理の自動化」の3つです。それぞれについて、見ていきたいと思います。
1-1-1.シナリオの自動化
シナリオの自動化とは、顧客(ユーザー)が取った行動に応じて予め設定したキャンペーンを打ち出すことです。
簡単な例を以下に出してみます。
(事例)
”Aは近々旅行を計画しており各旅行会社Webサイトでツアーの比較を行っている。B社のWebサイトでは旅行日当日の料金確認やオプション確認、さらには契約ページまで進んだがこの時点で離脱。”
原因として考えられるのが「他社ともっと比較したい」「契約を前向きに考えているが様子を見ている」など、比較的購買意欲の高い理由です。このような離脱をカバーするためにマーケティングオートメーションでは以下のような対策を取ります。
(対策)
”そこで数日後、B社はAが契約ページまで進んだツアーの魅力を解説したメルマガを配信。Aはメルマガを開封したものの契約には至らず。そしてさらに数日後、同ツアーの10%OFFクーポンをメルマガで配信した結果、Aはこれを見て契約に至る。”
上記はほんの一例に過ぎませんが、このようにマーケティングオートメーションは顧客(ユーザー)に合わせ様々なキャンペーンを自動化することが出来ます。
もちろんシナリオ設定によっては1通目のメルマガで契約に至らなかった時点でプログラムを終了するなど、利用者の裁量によってかなり詳細までシナリオを設定することが可能です。
1-1-2.行動履歴データの自動化
シナリオの自動化を行うことは、極論を言ってしまえば、マーケティングの知識が一切ない方でも出来ます。
しかし、”コンバージョンの取れるシナリオ”を作り出すためにはマーケティングに関する知識や経験が欠かせません。そしてもう一つ欠かせないのが顧客(ユーザー)の行動履歴データです。
シナリオの自動化とはいわゆるベストプラクティスをもとにはじき出される最適なキャンペーン施策であり、これを実現するためには顧客(ユーザー)の行動履歴の中でもとりわけコンバージョンに至った“カスタマージャーニー”が重要です。
このデータなしでコンバージョンの取れるシナリオの自動化を実現することはまず不可能でしょう。
行動履歴データなしのシナリオ自動化はコンバージョンが取れないどころか顧客(ユーザー)の離脱にも繋がります。
マーケティングオートメーションでは、そんなマーケティングの中核でもある行動履歴データを個人と紐付けることができ、シナリオの自動化を実現しつつ自社にとってのホットリードを抽出することが出来るのです。
1-1-3. 履歴データ管理の自動化
行動履歴データの自動化と同時に重要なのが、それらデータを適切に管理することです。
マーケティングオートメーションでは履歴データを取得するだけでなく、複雑化する履歴データを顧客(ユーザー)と適切に紐付け、効率的なリード管理を行うことが出来ます。
2. マーケティングオートメーションはBtoCだけじゃない
ここまでの説明で、「マーケティングオートメーションはBtoC向けWebマーケティングツール」という認識を持たれた方が多いと思います。
しかし意外なことに、BtoBマーケティングにおいても非常に重要な役割を果たしているのです。
2-1. オンラインとオフラインを紐づける
BtoBマーケティングと言えば、メルマガ配信やWebサイトでのオンラインマーケティングだけでなく、セミナーやイベント開催などのオフラインマーケティングが非常に重要となります。
セミナーやイベント開催における成約率は約30%とも言われており、多くの企業が重点的にオフラインマーケティングに取り組んでいます。
せっかく高いコストをかけてセミナーやイベントを開催したのですから、成約に至らなかった残りの70%も何とか活用したいと思いますよね。しかし、多くの企業ではハウスリスト化するところ止まりで、活用が出来ていないのが現状です。
そこで有効なのがオフラインマーケティングで得たリスト情報をオンラインマーケティングに反映させることです。
オフラインで成約に至らなかった顧客のシナリオを設定し、オンラインに繋げることで取得したリストを最大限に活用しつつより高い成約率を目指します。
事実、マーケティングオートメーションの導入に成功したBtoB企業の多くはハウスリストの活用率を150%以上向上し、同時に成約率を上げることに成功しています。
このようにオフラインとオンラインを紐づけることで、BtoCマーケティングのみならずBtoBマーケティングでも成約の取れるシナリオを作り出すことが出来るのです。
まとめ
最後に伝えておきたいのが、“マーケティングオートメーションは導入すれば全てを自動化出来る魔法のツールではない”ということ。
実は国内でマーケティングオートメーションを導入する企業の70%が失敗に終わっています。
シナリオや行動履歴データの取得などを自動化することは出来ますが、あくまで補助的なものでありマーケティングの本質である分析・施策を自動化するわけではありません。
マーケティングオートメーションの力を最大限に引き出すには、マーケティングに関する深い知見と行動履歴データを正確に分析し施策を打ち出す能力が必要であることを忘れないでください。