バズマーケティングとは
バズマーケティングとは、商品やサービスに対する口コミを意図的に発生させて、認知度を向上させるマーケティング手法です。
バズは英語の「Buzz」が語源となっており、これは「噂になる」「多くの人がガヤガヤと話す様子」を意味します。バズという言葉は一般生活者にも浸透するほどメジャーなものになりつつあり、SNS上で話題に上がることを「バズる」と表現することもあります。
バズマーケティングは、大勢の人々が一時的に話題にするコンテンツをSNS上に投稿し、ユーザーが拡散するというパターンが一般的です。
バズマーケティングを実施するためには、「魅力的なコンテンツ」を作り、「拡散の導線」を設計する必要があります。
SNSのタイムラインは、ありとあらゆる情報が、怒涛の勢いで流れていきます。そのため当たり障りのない無難なコンテンツが、多くの人の目に止まることはありません。ユーザーがシェアしたいと思わないコンテンツが拡散されることもないでしょう。
バズマーケティングを実施する上では、不特定多数の人の興味関心を引き、かつ自発的に広めたい・シェアしたいと思うような、魅力のあるコンテンツ・トピックを発信しなければなりません。
また、拡散の導線をしっかりと事前に設計することも重要です。フォロワーの少ないアカウントや、利用者の少ないSNS・プラットフォームでコンテンツを発信しても、そもそも閲覧数が少なければ、大勢に拡散することは考えにくいでしょう。
そこでSNS上のマーケティングでは、近年インフルエンサーとのコラボレーションやタイアップを行う企業が増えています。インフルエンサーとは、SNS上で多くのフォロワーを獲得しており、一定以上の影響力を持つユーザーを指します。
インフルエンサーに、自社サービスを利用してもらうことで、多くのフォロワーにリーチすることができます。またインフルエンサーはファンがついていることも多いため、商材の内容次第では、爆発的な拡散も見込めるでしょう。
他にも、バズマーケティングを成功させる上では、ユーザーにインセンティブを与える手法も使われます。例えば、アカウントの投稿をリツイートすることで、抽選で商品をプレゼントする企画などが代表的です。
バズマーケティングを実施するメリット
ここで、バズマーケティングのメリットについて確認しておきましょう。
低コストでマーケティングが実現する
バズマーケティングは、企業にとってさまざまなメリットがあります。まずは、比較的コストがかかりにくいというメリットが挙げられます。魅力的なコンテンツであるほど、SNSを通じて拡散されますが、コンテンツの質はコストと比例するわけではありません。
スマートフォンで撮影したような数秒程度の動画が、あっという間に数百万回もの再生数に達することもあるのです。トレンドや時代背景を見極め、SNSユーザーの心理を把握することで、費用対効果の高いマーケティングが実現します。
信ぴょう性が高い
バズマーケティングは信ぴょう性の高い宣伝ができる点も大きなメリットです。インターネットユーザーは商品の購入前の段階で、あらゆる口コミやレビューを検索することがあります。
ただし、匿名の口コミやレビューは、ステルスマーケティングの横行やアフィリエイトサイトの普及などが影響し、以前ほど信用されなくなりつつあります。
その一方で、インフルエンサーの投稿や身近なフォロワーの意見は、以前よりも重視されるようになっています。「匿名の意見」よりも、「信頼している人や親しい人の意見」の方が信用されるのです。この傾向は、インフルエンサーやSNSを用いたバズマーケティングと相性が良いと言えるでしょう。
認知のきっかけになりやすい
情報収集の主な方法としては、Googleなどで能動的に検索することが当たり前とされてきましたが、オーガニック検索の総数は、年々減少傾向にあります。その一方で新たなチャネルとして普及しているのが、近年はSNSのタイムラインや、ハッシュタグ検索です。
消費者庁が行った「消費生活に関する意識調査」によると、商品やサービスを知ったきっかけとして「SNSで情報を見たこと」と答える割合が、若年層を中心に多くなっていました。
消費者の行動様式は、時代とともに徐々に変わりつつあると考えられます。SNS上で一気に情報を拡散させるバズマーケティングは、こういった時代の変化に合致していると言えるでしょう。
バズマーケティングのデメリット
バズマーケティングのデメリットについても、押さえておきましょう。
意図しない拡散が起こり得る
バズマーケティングは、その結果を正確に予測することが難しいという側面があります。どれほど入念にコンテンツを作ったとしても、うまく拡散されないことも多いです。
さらに、企業が意図した部分と別のニュアンスで拡散される恐れもあります。いわゆる炎上という状態です。バズマーケティングは、その動きを完全にコントロールできない点がデメリットであると言えます。
ネット上のネガティブなイメージは払拭が難しい
SNS上で意図しない拡散、炎上をしてしまった場合、多くのユーザーが商品や企業に対して、ネガティブなイメージを抱くことになってしまいます。このようなイメージは、なかなか払拭することが難しく、企業のブランドイメージを損ねる結果となってしまいやすいです。
特に人権問題やジェンダーなど、センシティブな社会問題に触れるような内容のコンテンツは、さまざまな立場の視点を取り入れ、入念に精査した上で、発信するという姿勢が欠かせません。
バズマーケティングと勘違いしやすいマーケティング手法
バズマーケティングとよく似ているため、勘違いしやすいマーケティング手法について解説します。
炎上商法
炎上商法とは、批判が殺到するようなコンテンツを故意に発信するやり方です。ユーザーのネガティブな感情を喚起させ、拡散を煽る手法であり、ウェブメディアなどにおいてページビュー獲得を目的として行われることがあります。
ネガティブな感情は人々にさまざまな行動を取らせるため、広く拡散されることになりますが、これはバズマーケティングではありません。企業やメディアの信用を失うことになり、長期的に見ればマイナスと言えるでしょう。
ステルスマーケティング
ステルスマーケティングとは、レビューの捏造やいわゆる「サクラ」のような投稿を行う手法です。あたかも宣伝でないように見せておきながら、実際には金銭の受け取りが発生します。
タレントが自身のブログなどで、質の低い商品をプロモーションを行うといった事例が一時多発し、「ステマ」という言葉が広まりました。
これは一見バズマーケティングのように思えるかもしれませんが、厳密にはそうではありません。ステルスマーケティングは、「消費者を騙している」ことになるため、真実が明るみにでれば、消費者からの信頼は暴落します。
バズマーケティングは、あくまで口コミを広めるための手段であり、決して評判を捏造するものではないという点は、理解しておきましょう。
バズマーケティングの種類・手法
バズマーケティングの種類と手法について、解説します。
動画の活用
動画を活用したバズマーケティングです。YouTuberやインフルエンサーとのコラボレーションが動画で行われることも多く、SNSで拡散されやすいことからも、近年急速に普及しています。
特に数秒程度の「おもしろ動画」は、怒涛の勢いで拡散されることがあり、一気に認知を広げる可能性を秘めています。
キャンペーン
TwitterやInstagramで見かけることの多いバズマーケティングの手法です。商品を購入し、ハッシュタグとともに写真を投稿することで、プレゼント企画に応募できます。より自然な形で、SNS上の露出を増やすことができるメリットがあります。
またTwitterでは、投稿をリツイートしアカウントをフォローすることで、プレゼントに応募できる企画もあります。Twitterのリツイート機能をうまく活用することは、バズマーケティングを行う上で欠かせません。
このようなキャンペーンを随時行うことで、多くの人がSNSを通して、商品を目にするようになるのです。
感情に訴えかけるコンテンツは広まりやすい
「泣ける」「笑える」など、人間の感情に訴求するコンテンツは拡散されやすい傾向にあります。例えば、家族をテーマにしたエピソードを一般公募し、キャンペーンに利用するといったマーケティングも実際に行われています。
認知を高めるだけでなく、企業のイメージアップやブランディングにもつながる施策であると言えるでしょう。
インスタ映えするコンテンツ
バズマーケティングには、投稿したくなるデザインのコンテンツを作ることが重要です。商品を企画する段階から、バズマーケティングを意識することで、効果的なプロモーションが可能になります。
例えば、イベントや観光スポットなどは、「インスタ映え」するような華やかなコンテンツを用意することで、ユーザーが自発的に写真を投稿してくれます。その結果、写真を見たフォロワーが同じ体験を求めて、現地を訪れるといった連鎖を生み出すことができるようになるのです。
ウェブメディアの記事コンテンツ
ウェブメディアの記事を、SNSで拡散させるマーケティング手法です。特にヤフーニュースやグノシーなどのニュースサイト・ポータルサイトに転載されることで、数百万単位のユーザーへ訴求が可能になります。
ただし記事コンテンツは、最後まで読まれなかったり、曲解されてしまったりという可能性もありますので、題材の切り口や表現方法には、注意が必要です。
バズマーケティングが効果的な商材
バズマーケティングが効果的な商材を紹介します。
コスメ商品
コスメ商品は、バズマーケティングに向いています。インフルエンサーを起用することで、若い世代へ訴求が可能ですし、メイクアップや商品紹介などは動画との相性も抜群です。
なによりビジュアル的に華やかになるので、特にInstagramやYouTubeでは、多くのインプレッションを獲得できるでしょう。
イベント
イベントの告知やプロモーションにも、バズマーケティングは有効です。イルミネーションなど華やかなスポットでは、Instagram上への投稿も見込めます。
飲食店
実店舗を構える飲食店でも、SNSを用いたマーケティングが行われています。例えばリツイートすると無料のお食事券がプレゼントされる企画や、ユニークな新商品を投稿して拡散を狙うといった方法が代表的です。
バズマーケティングを成功させるコツ
バズマーケティングを成功させるためには、以下の点に注意しましょう。
ターゲットに合わせてプラットフォームを選ぶ
商品やサービスを届けたい層に合わせて、プラットフォームを選択することは重要です。例えば、若年層の女性に向けたプロモーションであれば、Instagramがベストです。
またマーケティング手法に合わせて、プラットフォームを選ぶという視点も欠かせません。それぞれのSNSにはシェアされやすいコンテンツと、そうでないコンテンツがあります。記事コンテンツを届けたいのであれば、感想とともにシェアできるTwitterに照準を合わせると良いでしょう。
ビジネスパーソンを対象としているのであれば、Facebookも効果的です。
何より重要なのは「分かりやすさ」
バズマーケティングでうまく拡散されるためにもっとも重要なのが、分かりやすさです。ひと目見ただけで何が映っているのかが分かり、かつ興味を持ってもらえるようなものである必要があります。
例えば動画の場合、可能な限り尺を短くするといった工夫が欠かせません。また動画に字幕を入れておくことで、ミュート設定にしている人にも、見てもらえるようになります。SNSの情報の流れは、非常に速いため、最初の数秒で興味が沸かなければ、スキップされてしまうと考えましょう。
トレンドを観察する
インターネット上のトレンドは、目まぐるしく変化してきます。数ヶ月前に流行したものが、もはや古いとされることも往々にしてあるのです。そのためバズマーケティングを行う担当者は、SNSのトレンドを日々チェックしておく必要があるでしょう。
コンテンツの内容には細心の注意を払う
コンテンツが炎上してしまった場合、非難の投稿がSNS上に飛び交ったり、企業の信用が失われてしまったりすることが考えられます。炎上の事実はインターネットに残り続け、一度失った信用を取り戻すのにも時間と労力がかかります。
そのためコンテンツを発信する際には、常に細心の注意を払うことを意識しておきましょう。
日本・海外のバズマーケティング成功事例
日本と海外のバズマーケティングの事例を紹介します。
はなまるうどん
はなまるうどんがエイプリルフールに発表した広告は、SNS上で大きな話題となりました。内容としては当時話題なっていた巨大なダイオウイカを天ぷらとして販売するというものです。
すでに世の中でトピックとして流行っていることを利用し、ついシェアしたくなる面白いコンテンツを制作した事例であると言えるでしょう。実際にSNS上で拡散され、ウェブサイトへのアクセスは従来の24倍にも跳ね上がったそうです。
グリコ
お菓子メーカーのグリコは、自社製品の「ポッキー」と「プリッツ」にちなんで、11月11日にTwitterのつぶやきで世界記録を狙うというユニークなマーケティングを行いました。
具体的には、11月11日の24時間以内に、ユーザーに「ポッキー」という文言の入った投稿をしてもらうというものです。この結果、24時間に最もツイートされたブランドとして、ギネス世界記録を達成しました。
ユーザーが参加し、共同で何かを成し遂げるというプロセスは、バズマーケティングを成功させる上で重要な視点と言えるでしょう。
セブン-イレブン(タイ)
最後に海外のバズマーケティングの事例を紹介します。タイのセブン-イレブンが、「教師の日」に公開した動画が、SNS上で話題となりました。
この動画は、商品をプロモーションするのではなく、貧しい子供のために学校を運営する校長先生が主人公の、ドキュメンタリータッチのショートムービーです。実話に基づくシナリオとなっており、YouTube上では700万回以上再生されています。
バズマーケティングのおすすめ本3選!
バズマーケティングを学ぶ上でおすすめの本を紹介します。
デジタル時代の基礎知識『SNSマーケティング』 「つながり」と「共感」で利益を生み出す新しいルール
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バズる動画・ライブ配信 確実に拡散するしくみ インフルエンサーマーケティングの基本がわかる本
本書では、動画を活用したバズマーケティングの手法について、解説されています。特にInstagramやイチナナライブなどのプラットフォームで行われる「ライブ配信」についての事例が紹介されている点は、時代のトレンドを掴んでいると言えるでしょう。
シェアしたがる心理~SNSの情報環境を読み解く7つの視点~
Instagramのハッシュタグの活用事例とともに、人はどういった時にシェアをするのかを、さまざまなデータとインタビューをもとに解説しています。シェアしたくなる心理を深く考察でき、SNSのトレンドだけでなく、人間の本質的な部分に目を向けることができるでしょう。