ソーシャルコマースとは?市場規模や日本・中国の活用事例とともに解説!

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ソーシャルコマースとは

ソーシャルコマースとはSNSを通じて行う買い物のことを指します。FacebookやTwitter、instagramなどのSNSの投稿から商品に興味を持ち購買に至ったことがある女性は50%を超えていると言われています。

インターネットを通じた買い物といえば、EC(イーコマース)を思い浮かべるかも知れませんが、通常のEC事業と比較するとソーシャルコマースはSNSをベースにマーケティングの仕組みを構築するので、同じ事業のように見えて色々な違いがあります。

ソーシャルコマースとはどのような手法なのかについて詳しく説明します。

SNSの利用者数・時間、Eコマースの市場規模はどれくらい伸びている?

まずはソーシャルコマースの可能性を説明するために、SNSの利用者数やユーザーの接触時間、市場規模などについて解説します。

SNSの利用者数と利用時間

主要なSNSの利用者は次のとおりです。
 
Facebookの国内月間アクティブユーザー数は2,600万人、全世界月間アクティブユーザーは23億7,500人。

Twitterの国内月間アクティブユーザー数は4,500万人、全世界月間アクティブユーザーは3億3,500万人。

LINEの国内月間アクティブユーザー数は8,000万人以上、全世界月間アクティブユーザーは2億1,700万人以上。

Instagramの国内月間アクティブユーザー数は3,300万人、全世界月間アクティブユーザーは10億人。

たとえば、LINEの国内のアクティブユーザーは8,000万人を超えており、人口の6割以上をカバーしていることになります。Facebookの国内アクティブユーザーはLINEには劣りますが、全世界で見ると月間アクティブユーザーは23億人を超えており、非常に人気のあるツールであることがうかがえます。

メディアには、テレビ、新聞、ラジオなどさまざまな媒体がありますが、中でもSNSは国内はもちろん、世界に展開できる巨大なメディアであることがわかります。

さらに注目すべきはSNSの利用時間です。総務省がまとめた「平成28年 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」というデータによると、テレビの視聴時間はおおむね減少傾向なのに対して、インターネットの平均利用時間は平日、休日ともに一貫して増加傾向にあります。2016年時点で全世代を平均して平日99.8分、休日120.7分をインターネットで消費しています。

ソーシャルメディアに費やす時間の全世代の平均利用時間は、平日25.0分、休日32.7分で、特に女性や、10~20代の若年層の方が利用時間は長い傾向にあります。

Eコマース市場の拡大

インターネットの普及とともにEコマース市場も拡大しています。BtoCのEC市場の規模は2018年時点で、物販系分野は9兆2,922億円と前年度比プラス8.12%の成長を遂げています。取引全体に占める電子商取引の金額の割合を示す指標をEC化率と呼びますが、2010年の2.84%から右肩上がりで増加しており、2018年には6.22%まで拡大しています。

今後もEC化率及びEコマース市場規模の拡大が予想されており、ソーシャルコマースもSNSやEコマースの利用拡大に伴って市場規模が拡大することが期待できます。

ソーシャルコマースとEコマースの違い

ソーシャルコマースはインターネットを通じて買い物をするという点では広義のEコマースに分類されますが、商品の見せ方やマーケティングの仕方は通常のEコマースと若干異なります。ソーシャルコマースと通常のEコマースの違いについて説明します。

検索エンジンとSNS

Eコマースは検索エンジンをメインに集客を行います。すなわち、狙っている検索キーワードで上位に表示されるためのSEO対策を行ったり、検索結果の広告枠に広告を掲載するリスティング広告を利用したりするのがメインの集客策となります。

一方でソーシャルコマースの場合は、通常のEコマースのようにSEOやリスティング広告を利用せずにSNSを通じて集客を行います。SNSでリツートやシェア、広告によるタイムラインへの表示を行うことによってビューやフォロワーを集める集客を行います。

また、通常のEコマースの場合、リピート対策はメールマガジンやDMを活用している場合は多いですが、ソーシャルコマースの場合はSNS上でフォロワーとつながっているのでSNS自体がそのままリピート対策の手段にもなっています。

客観性と関係性

通常のEコマースの場合は、ユーザーはまず商品を比較します。たとえば、ビデオカメラを買う場合だと候補の商品群の中から画質や音質、撮影可能時間や手振れ補正などの機能、メーカー、価格などを比較して客観的に自分にとってお得な商品を選定しようとします。

一方でソーシャルコマースの場合は客観的な評価基準よりも、その商品や推奨している人とユーザーとの関係性に依存して購入される場合が多いです。つまり、商品の比較・検討のステップが発生しにくく、信頼関係さえ構築できていれば「○○というブランドの新作だから」「○○さんがおすすめしている商品だから」という理由でそのまま購入に至る可能性が高いということです。

必要なシステム

必要なシステムもEコマースとソーシャルコマースでは異なります。通常のEコマースの場合は集客のためにオリジナルドメインの自社サイトや楽天市場などのモールにページを制作しなければなりません。

一方でソーシャルコマースの場合、必ずしも本格的な通販サイトは必要ありません。Amazonに商品ページさせ制作しておけば、ユーザーをSNSからAmazonの商品ページに誘導して商品の購入ができるように設定できます。

さらにInstagramのShopNow機能のようにSNS側にユーザーのショッピングを促すための機能が充実しているSNSもたくさんあります。

ソーシャルコマースはEコマースの一部

上記のような違いはありますが、ソーシャルコマースはあくまでのEコマースの手法の1つです。よってSNSを使ったソーシャルコマースを実施しながら、オリジナルドメインのECサイトを開設し、SEO対策、リスティング広告などでも売り上げを作るという施策も考えられます。

ソーシャルコマースのメリット・デメリット

Eコマースの中でも、ソーシャルコマースに特化することによって通常のEコマースでは実現できないユーザーとの関係性構築やコストを抑えたブランドの展開などが可能となります。ソーシャルコマースのメリット・デメリットについて紹介します。

メリット:顧客を囲い込める

まずソーシャルコマースのメリットとして挙げられるのが顧客を囲い込めることです。ソーシャルコマースにおけるお店とユーザーの関係は単に売る側・買う側の関係ではなく、フォロワーする人・される人という情報を共有する仲間のような連帯感を持った関係性でもあります。

そのためユーザーはそのお店やブランドに愛着を持ちやすいですし、交流によってよりお店やブランドに対するロイヤリティーを高められる可能性もあります。顧客を囲い込むことによって、価格競争に晒されにくい、顧客単価が高いビジネスが可能となります。

メリット:スモールビジネスとしてスタートできる

Eコマースと比較するとスモールビジネスとしてスタートさせやすい傾向にあります。通常のEコマースのように大規模なWebサイトは必要ありませんし、SEOやリスティング広告なども基本的には行いません。SNSを使用した効率的な情報拡散のノウハウがあるなら安価に事業が開始できます。

デメリット:フォロワーを集めて売上をつくるまでに時間がかかる

SNSでフォロワーが簡単に集められるのならば、スモールビジネスとしてスタートできる反面、SNSでフォロワーを集められなければ、売上をつくれません。もちろん、フォロワーを集めるのはSEOと同様に日頃の継続的な努力が求められます。

SNSでの集客にノウハウがない、SNSで映えなさそうな商材の場合は、無理にソーシャルコマース寄りの販売手法を使用しなくても、通常のEコマースの手法でマーケティングをすれば良いかもしれません。

デメリット:定期的な情報発信が必要となる

SEO対策は検索順位が安定すれば、リスティング広告は広告設定が最適化されればその後継続的なアクセスと売上が期待できますが、SNSの場合は継続的な情報発信が必要となります。ユーザーとの関係性がソーシャルコマースでは重要なので、情報発信が滞るとユーザーのロイヤリティーが低下、ひいては売上に悪影響が発生します。

定期的に情報発信を行い、ユーザーとのコミュニケーションを行う必要があります。

ソーシャルコマースの種類

ソーシャルコマースは使っているメディアのタイプやバイヤーとセラーの関係性などによって7つのタイプに分類できます。ソーシャルコマースの7類型に関して紹介します。

C2Cタイプ

売買プラットフォームを利用して個人間で取引するタイプのソーシャルコマースがC2C(Consumer to Consumer)タイプです。例えばヤフオクやメルカリ、アマゾンマーケットプレイスを通じて個人間で商品を売買しているケースが考えられます。

基本的には個人間で行う売買ですが、プラットフォームが成熟してくると、商品販売だけで生計を立てるセラーも現れ始めるので徐々に玄人化する傾向があります。

ソーシャルメディアタイプ

FacebookやTwitter、InstagramなどSNSを通じて商品を販売するタイプのソーシャルコマースです。SNS上でフォロワーを増やし、シェアをされることによって、ショップやブランドの認知を拡大させ、売上アップを狙います。

また、SNSはユーザーとの重要なコミュニケーションチャネルなので、通常のEコマースを行う事業者も少なからずSNSを運用しているケースは多いです。

グループタイプ

グルーポンやルクサのようないわゆる共同購入クーポンサービスのことを指します。ユーザー同士で協力してセラーが指定する購入人数などを満たせばクーポンや割引サービスが受けられるタイプのソーシャルコマースです。

2010年頃に流行したソーシャルコマースですが、スカスカおせち事件などによりブームは下火となりました。ただし、今でも根強いファンのいるソーシャルコマースです。

レコメンドタイプ

AmazonやYelpに代表されるように、同じようなユーザー属性、購入履歴を持つ人が購入している商品や評判を参考にして商品を購入するタイプのソーシャルコマースをレコメンドタイプと呼びます。Webサイト内をユーザーに回遊してもらい欲しい商品に巡りあってもらうのではなく、セラー側から商品提案、レビューにより第三者の観点で商品をレコメンドします。

ユーザーキュレーションタイプ

レコメンドタイプのようにレビューで商品の魅力を訴求するタイプのソーシャルコマースでも、「誰がレコメンドするのか?」をより重視しているのがユーザーキュレーションタイプです。The Fancy、Lystなどのサービスが代表格として挙げられます。

また、Webサイトの中にはキュレーションメディアと呼ばれるタイプのサイトもあり、自分のおすすめのITガジェットや感動した旅行先などさまざまな商品やサービスをレコメンドするタイプのメディアもあります。

広い意味ではこのようなメディアもキュレーションタイプのソーシャルコマースだと考えられます。

ユーザー参加タイプ

クラウドファンディングのようにユーザーが商品に投資したり、企画に関わったりするタイプのソーシャルコマースのことを指します。代表的なサービスとしてはCAMPFIRE‎やKickstarterなどが挙げられます。

商品の誕生に関わることによって、ユーザーはその商品のファンとなり、予約注文を獲得できるので自己資金が少なくてもさまざまなプロダクトを開発できます。

O2Oタイプ

O2OとはOnline to Offlineのことを指し、ネットでのアドバイスや意見交換を元に実店舗での買い物を行うタイプのソーシャルコマースのことを指します。

実店舗で商品をチェックして通販などで商品を購入するショールーミングの他にも、ネットで商品のスペックやレビューなどをチェックしたりして最終的には実店舗で購入するウェブルーミングという購買行動も近年発生しています。

Webと実店舗は隔絶したものではなく、ユーザーはWebと実店舗の両者を効率的に活用しながら買い物を行います。

ソーシャルコマース活用事例

世界中には従来のEコマースのセオリーに従わず、ソーシャルコマースを行うことにより爆発的に売上を成長させてきた企業がいくつかあります。その中でも代表的な企業を3つ紹介します。

17kg

17kg

10代、20代の女性向けに韓国レディースアパレルを販売している通販サイトです。メインの集客経路はInstagramでフォロワーは50万人以上います。2017年に誕生したサービスながら2019年は前年比売上高500%と急成長しており、2019年6月時点で従業員数は80名以上、ラ・フォーレ原宿への実店舗展開も行っています。

Everlane

Everlane

アメリカ発のアパレルブランドで「Radical Transparency(徹底した透明性)」をコンセプトに掲げて、商品の原価や工場の労働環境などアパレルではタブーとされている情報についても積極的に公開しています。InstagramやSnapchatなどのSNSを通じたユーザーとのコミュニケーションを重視しており、毎年火曜日にはInstagramのストーリー機能を使用して、商品情報の公開や質問に答えています。

グラフィットバイク

グラフィットバイク

ペダル付きの原動機付自転車を販売しているメーカーです。2017年創業の企業でプロダクトの開発費用をクラウドファンディングの「Makuake」で募集したところ約50日間で1億700万円以上の出資を集めて、クラウドファンディングによる資金調達の日本記録を達成しました。

ソーシャルコマースの日本・中国など海外の現状

ソーシャルコマースは単なる一過性のブームではなく、今後も市場規模の拡大が予想されます。海外の状況なども踏まえて現状のソーシャルコマースについて解説します。

急速に拡大するソーシャルコマース市場

世界でもトップクラスのEC大国が中国です。中国の大規模セール独身の日(11月11日)の1日の中国国内のEC売上は6兆円以上と言われています。

その中国で2018年注目を集めたのがソーシャルコマースです。2018年は共同購入サービスの「拼多多」、コーディネートを共有するECサイト「蘑菇街」などのソーシャルコマースサービスが上場しました。

また、日本でも2019年は「EC+ライブ配信」のライブコマースという販売手法が注目を集めましたし、17kgの急成長などソーシャルコマースを上手に活用した企業が成長しています。

女性の50%以上はSNSを見て商品を購入した事があるといわれており、今後もSNSの普及に伴ってソーシャルコマース市場の拡大が予想されます。

新興のD2Cブランドが台頭

ソーシャルコマースの拡大により注目を集めるのが新興D2Cブランドの台頭です。本記事では事例として17kgやEverlane、グラフィットバイクを紹介しましたが、他にもさまざまな新興ブランドが立ち上がり、急速に成長しています。これは日本でも海外でも共通の現象です。

これらのブランドはD2Cブランドと呼ばれており、問屋などの既存の流通を通さずにインターネット(特にSNS)を通じて直接ユーザーとコミュニケーションをとりながらファン客を増やしています。

SNSを有効活用することによって、スモールビジネスとして新興ブランドを立ち上げられる可能性をこれらのブランドは示しています。

インフルエンサーの囲い込みが更に重要に

ソーシャルコマースの拡大により、今後更に重要度が増してくると考えられるのがインフルエンサーの囲い込みです。テレビCMでは芸能人などを起用して商品の購入、イメージアップを図ろうとしますが、ネットではYouTuberやインスタグラマーが注目を集めて、これらの人達の発言が人々の購買に大きな影響を与えるようになりました。

また、近年は単にフォロワー数が多いだけではなく、特定のジャンルに特化したインフルエンサーでありマイクロインフルエンサーの発見、利用に各企業が注力しています。Webマーケティングではマスのメディアを使ったマーケティングからインフルエンサーを基点とする人を押さえるマーケティングに主流が変わろうとしつつあります。

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