筆者は、中小企業に6社勤めていた経験があります。その中で「増収増益ができる中小企業」と「利益が出ない中小企業」の差を痛感してきました。そのひとつが「日次管理」というものでした。当然、私も経営の中で、1人の会社ですが・・・日次管理を徹底しているのです。
日次管理とは?
日次管理とは、日次決算とも言われて、1日ごとに経営数値を管理する管理手法のことを言います。
「日々の数値を管理する」という社員数が100人を超える企業であれば、たいていの企業はやっていることですが、それを1人の会社であっても実施する必要があるのです。
私が管理している日次管理の指標
- 月の目標値から逆算した1日の売上の目標額
- 月の目標値から逆算した1日の利益(粗利)の目標額
- 1日の売上の実績(商品区分、営業区分、合計値)
- 1日の利益(粗利)の実績(商品区分、営業区分、合計値)
- 1日の変動費の実績(商品区分、営業区分、合計値)
これだけです。これを31日分、毎日記録して管理しているのです。
もう1000日ほど続けています。30分ぐらいは管理表の記入に時間を使っているので、1日30分、1ヶ月で15時間、1年間で180時間も管理表の記入に時間を費やしているのです。
これって意味があるのでしょうか?
日次管理の私が考えるメリットは、他の日時管理の経営本に書いてあることとは違うと思います。なぜなら、私は1人で経営している中小企業の社長ですので、大手企業のやる日次管理とは意味が異なるからです。
私が考える日次管理のメリット
1.アイディアの源である!
管理がしたいから管理表を作っているのではありません。
- 「この商品の売上は今日いくらだったんだ。」
- 「先週よりもこの営業方法の売上が上がっているな。」
- 「この商品は利益率が落ちている。」
このことは、週次管理でも、月次管理でも、わかることだとは思いますが
実際自分で会社をやっていると「毎日自分で入力しているからこそ気づく変化」というものがあるのです。「違和感」と言い換えてもいいでしょうか。
毎日毎日、数値を商品ごと、営業区分ごとに記録しているので、違和感を拾いやすくなるようなセンサーが働くのです。
しかも、これは脳にインプットされているので、他の作業をしているときに・・・
- 「この商品の売上が落ちていたのはこれが理由かもしれない。」
- 「この方法を使えば、あの営業方法の利益率が上がるんじゃないのか。」
と脳みそと行動が紐づいて、新たなアイディア「施策」を思いつくことが多いのです。
これが最大の「日次管理」のメリットだと考えています。
自分で毎日数字を管理しているから、経営改善のアイディアが出てくるのです。
これをさぼって、週次管理、月次管理にしていたら、脳に商品ごと、営業区分ごとの数値がインプットされておらず、本来得られただろう発見をスルーしてしまっているかも知れないのです。
2.アラートの早期発見
日次管理をしていると異常値を拾いやすくなります。
- 「急激にある商品の売上が下がった。」
- 「急激にあるコストが上がった。」
私の場合は、急にウェブサイトに掲載していた商品がテレビで取り上げられたら、売上が急増することになります。逆にインターネット広告の予算も急上昇することになります。単純にウェブサイトがサーバーエラーを起こして、見えない状態になっていたこともあります。
仮に1日10万円の売上が上がるサイトのサーバーが契約ミスで落ちていたとしたら・・・1日目に気づくか?1週間後に気づくか?で売上は60万円ほどの差がでてしまうのです。
異常値はマイナスばかりではありません。
急激に売上が上昇した商品があるのであれば、その理由を解明して、他の商品に横展開することも可能です。
これが迅速にできるか否かで、競合他社に勝てるビジネスになるのです。
社員数が少ない中小企業ほど、異常値を早く拾って「守り」と「攻め」を競合よりも素早く行うべきなのです。
それでも日次管理ができない中小企業の経営者達の言い訳
理論ではわかっていても・・・多くの中小経営者は日次管理をしていません。
- 「1日30分あれば、その時間は営業に使った方が良い。」
- 「1日で売上がでる商材ではない。数か月先の売上を追っている。」
- 「面倒くさい。はじめやったけど徐々にやらなくなった。」
- 「自分で完璧に把握できているから必要ない」
という方が多いのではないでしょうか。
とくに多いのが「1日で売上がでる商材ではない。数か月先の売上を追っている。」という言い訳です。
不動産業であれば「売上が経つのは2か月後、3か月後なので日次管理に意味がない。」となるのでしょうが・・・そうではないと私は思います。
私の場合はメディア運営ですので、売上で十分に日次管理ができます。
しかし、不動産業の場合であっても
- 顧客の問い合わせ数
- 顧客の対応数
- 顧客の内見数
・・・
と、売上につながる重要な活動指標は日次で管理できるはずです。
日次管理のメリットは
- 経営改善アイディアの創出の源
- 異常値の発見による素早い対応
ですから、売上にこだわる必要すらないのです。
売上にインパクトがある活動指標でも十二分に日次管理は有効に働くはずなのです。
「自分で完璧に把握できているから必要ない」という方もいますが、こういう経営者に限って、細かい数値管理が苦手で、人任せと気分で経営をして失敗します。
ざっくりで経営する感性で経営する経営者というイメージですが、自分の行動指標だって、自分で管理して上げなければ、わからないはずです。
プロ野球選手だって、自分の打率も、防御率も、記録して教えてもらわなければわからないのです。
まとめ
私が「日次管理」が重要だと考える点は
- 日次管理をするからこそ、脳に商品ごと、営業区分ごとの数字がインプットされて、別の行動をしているときに経営改善のアイディアが出てくる
- 異常値を早く拾うことで他の競合他社よりも先駆けて、新しい戦略を取ることができる。もしくはダメージを最小限にできる
という2点です。
「従業員が少ない中小企業に日次管理は必要ない」のではなく
「従業員が少ないからこそ、中小企業に日次管理が必要」なのです。
まずは、騙されたと思って、日次の数値管理を1ヶ月続けてみることをおすすめします。数値を見ることでこそ、経営改善のアイディアが出てくるはずです。