事業の基本と業績の安定化
全く仕事がないわけではない。
しかし、あるときとないときの「差」が非常に気になる…。
多くの中小企業経営者が嘆く声をよく聞きます。
ある一定量の仕事が定期的に確実に入ってくる、あるいは一定量の顧客が毎月必ず一定量購入してもらえる、というのが理想です。
見込み客を引き込み、それを「顧客化」し、最終的に「常連」に発展させ、「常連」からさらにあらたな見込み客を引き寄せてもらったり、あらたな事業展開でこのサイクルを拡大する。
これを目指してあらゆる行動をとることが事業の基本です。
そんなこと、わかっているけど現実は…とおっしゃる方も多いでしょう。
どうしたらいいかわからず、ただ漠然と業務を行っていくだけでは当然、この理想にはいつまでたってもたどり着きません。
実は、3つのことを行えばこの理想に近づけるのです。
それについてこれからみていきましょう。
「ターゲット」を特定する-戦略化
まず、行うべき一つ目は事業の「戦略化」です。
具体的には、今自分が行っているビジネスがどんな顧客を対象にしているのかを明確にすることです。
一般のユーザーを広く集めるのか、それとも自分自身が設定した基準に当てはまる顧客に絞るのか。
誰を顧客とするか、明確なビジョンを自分自身が持つことにより、自ずと建てるべき目標が決まってきます。
情報を集めよう
事業の戦略化を進めるうえで重要な要素が「情報」です。
そのニーズ、欲求、期待は?
そのクライアントに対し、今ある商品やサービスに需要はあるのか?
競合となる他社はあるのか、あるとしたらその業績は?
これらを念頭においたうえで、「市場調査」を行います。
無作為に選んだ人の中からの聞き取り調査や、アンケート、メルマガを利用した情報収集など、方法は様々ですが、戦略を構築するうえで、上記の4つについては詳細かつ具体的に結果を把握しておかなければなりません。
例えば、どんな業界の属していても、自分が売っている商品の販売量や販売額が、同業他社のものに対して数的にどうなのか、把握しておくのは必然となります。
これらを踏まえたうえで、ターゲットとなるべき顧客の集団がどんなものなのか、特定していきます。
顧客の共通項を探る
市場調査を行いある程度の顧客を特定したら、次に行うことは、その顧客の「共通項」を探る、ことです。
利益をもたらしている顧客に共通する事は何か?
これを探ることで、どんな顧客に何を提供すれば効率的に利益を確保できるのか、が明らかになっていきます。
次に打つ手を考えてみる
仮にここまで行い、ある程度の利益を確保できる見込みがたったとしましょう。
そこで止めてしまっては戦略化の意味がなくなってしまいます。
この「成功」の次の段階をあえて構想してみる、すなわち現在の顧客に対してどのようなサービスを打って、それがどのような効果をもたらすかを考える。
この一連のサイクルをうまく回すことで、たえず利益確保が不確定という不安要素の取り除きに大きな一歩を踏み出すことができます。
ここまで押さえて、はじめて戦略化が概ね行われた、といえるのです。
事業全体を精査する-「分析」
次に行うべきことは、事業全体を精査すること、すなわち「分析」を行います。
その事業をたちあげた時点からこれまでを振り返り、うまくいったこと、ダメだったことを、分析を通して反省・改善していく作業です。
「定量分析」で宝を掘り当てる!
その際に有効な考え方が「定量分析」です。
もともとは化学の分野での用語ですが、起きている現象の数値に注目して分析することを指します。
例えばあるフィットネスクラブが1年間に600万円の広告費を使ったとします。
それにより年会費2万円のコースに顧客が300人集まれば、トントンと普通は思います。
あまり考えのない経営者は、300人集まればもう広告は不要と、広告費の削減を考えます。
しかし、実際に集まった顧客を注意深く分析すると、意外なことが判ってきます。
年会費の2万円以外に、このクラブでは各種オプションが用意されています。
安いもので5000円/月、高いものでは3万円/月のものがあり、300人のうち、10人が5000円のオプションをそれぞれ2つ取り入れ、5人が3万円のものを1つ取り入れていました。
5000×12ヶ月×10人で、600万円。
3万×12ヶ月×5人で、180万円。
結果、780万円が確保出来ている事が判りました。
さらにこれらの人々は次年度も更新することが判明していることから、毎年必ず1380万円が確保できることが判明しました。
そうすると、継続的に広告を打つことでこれらの利益が確保できるわけで、広告が決して無駄ではないことがわかります。
このように分析を行うことで「宝の山」を手に入れることが可能となるのです。
「儲かる仕組み」を打ち立てる-「システム化」
柱の3番目は、これまでの分析の結果をもとにして事業をシステム化することです。
「見込み客→顧客→常連」のサイクルの中から、もっとも優良な顧客を獲得することが事業を行ううえでの最終目標です。
まずはいかに早く確実に見込み客を顧客に発展させ、初回購入に促すための仕組みを構築するか。
それから徐々に大きなサービスや商品への誘導を行い、ステップアップしていきます。
全ての顧客は同じではない
多くの中小企業経営者が犯す大きな間違いとしてあげられるのが、どの顧客も同じ事業システムを適用して行っていくということです。
前述した分析を行っていれば、利益をもたらす顧客が全顧客の何パーセントにあたるのか、見つけ出すことが出来ます。
経済における学説で、全体を構成するうちの一部分によって全体の数値の大部分要素が生み出されているという説、いわゆる「パレートの法則」では、売上の8割は全顧客の2割が生み出しているといわれています。
一回限りの購入で終わる顧客よりも、何度も購入を行う顧客の方が価値が高いのはいうまでもありません。
また自分のために購入を行うのみならず、別の顧客を紹介するような方も同じような価値があります。
過去のデータから顧客化した理由などを探っていき、それらの顧客が何を、どれだけの頻度でどのくらいの期間にわたり購入してくれるのかを知ることで、システム化の大きな助けとなります。
実験してみること
これまで得られた分析結果をもとに事業の仕組みをつくったら、それを対象となる市場で実験投入してみることをおすすめします。
様々な仮説(こうやったらもっと顧客が興味を引くのでは等)を数字と見比べながら、失敗したら軌道修正しつつ、試していくのです。
それによって確実性のあるシステム化へとブラッシュアップすることが可能となります。
ここで必要なのは、ただ「決断」あるのみ。
成功した暁には、より高度な収益を得ることのできる仕組みをつくる自信と展望が開けてくることでしょう。