近年、広告の手法が多様化すると同時に、広告を疎む傾向も強くなっています。テレビは録画して見ることでCMをスキップできますし、インターネット上の広告もブロックするアプリが出回っています。
さらに多くのユーザーは、広告が表示されていても無視することに慣れてしまっています。そこでさらに強引な広告の表示をしてしまうと、却って広告や商品に嫌悪感すら抱かせてしまう可能性もあります。
このように企業の広告は、消費者から疎まれる存在になってきており、消費者の信頼や共感を得ることが困難な時代になっているのです。
その一方で、いとも簡単に多くの消費者から購買意欲を引き出せる人たちがいます。
それが、インフルエンサーと呼ばれる人たちです。
消費者の信頼と共感を獲得するインフルエンサー
企業がマスメディアを使って発信する広告は、商品をなんとしても売りたいという企業サイドで制作されている自画自賛の内容であることから、消費者の信頼や共感を得ることが難しくなっています。
自画自賛の広告が氾濫してくると、消費者は、定の企業に属していない中立的な立場の人たちの意見を欲するようになりました。
そのような中立的な人たちに中でも、特に信頼できる知名度や、共感できる考え方とライフスタイルを持っている人物が発信する情報には、信頼を置き共感を得るような流れが醸成・定着しつつあります。
そのような人物とは、たとえば芸能人やスポーツ選手、モデル、専門家などです。
彼らはインターネット上のブログやSNSを使って自分たちの暮らしぶりや日々感じたこと、考えたことなどを発信。発信された情報に共感や好感を持った人たちがその情報発信者のフォロワーとなります。
そうして莫大な人数のフォロワーを持つに至ったカリスマ的な人気を持つ情報発信者は、多くの人の行動に影響力を持つようになります。
このようなカリスマ的影響力を持った人物を、インフルエンサーと呼びます。
たとえばインフルエンサーがブログである商品を試してみたら、すごく良かった、と体験談を書き込めば、多くのフォロワーはその情報を信頼して共感を持ち、自分たちも同じ商品を購入するのです。
つまり、インフルエンサーは、多くの消費者の購買行動に影響を持っているのです。
その影響力を企業が販売戦略として活用しようというのが、インフルエンサー・マーケティングです。
インフルエンサー・マーケティングとは
ブログやSNSで膨大な人数のフォロワーを持ち、彼らの購買行動に大きな影響力を持つインフルエンサーに、自社の商品やサービスに関する情報を発信してもらおうというのが、インフルエンサー・マーケティングです。
しかし、インフルエンサーはあくまで中立の立場で自分が興味をもったことや得意とする分野に関する情報を発信しているからこそ絶大な支持を得ているため、何でも宣伝してくれるわけではありません。
ここがインフルエンサー・マーケティングの難しいところです。
したがって、企業がインフルエンサー・マーケティングを行う際に最も慎重になるべきことは、自社商品にマッチしたインフルエンサーを見つけ出すことです。
インフルエンサーは必ずしもフォロワーの多さだけで選ぶのではなく、インフルエンサーと企業の指向性が一致している必要があるわけです。
インフルエンサー・マーケティングのメリット
このようなインフルエンサー・マーケティングには、マスメディアを利用した広告には無いメリットがあります。
潜在顧客の獲得
不特定多数に露出させる広告とは異なり、特定の属性を持ったインフルエンサーのフォロワー一人ひとりに直接商品やサービスの魅力を、説得力を持って伝えることができるため、潜在顧客を獲得しやすいと期待できます。
ネット世代へのアプローチ
1980~2000年頃に生まれたミレニアル世代は、SNSをはじめとしたネットからの情報を重視する世代だと言われており、インフルエンサーからの影響も大きく受ける世代だと考えられます。
インフルエンサー・マーケティングは、この世代の購買行動に直接働きかけることができます。
ネット広告よりも信頼性が高い
ウェブ上の広告やSNS上の広告は企業が作った一方的な自画自賛広告であるため、ユーザーの信頼や共感を得ることが難しいです。
一方、インフルエンサーはユーザー(つまり消費者)と同じ目線と立場で商品を評価します。そして時には批判することもあるため、フォロワーからの信頼や共感を得やすいと言えます。
その結果、消費者の購買意欲を引き出す効果も大きくなります。
重層的なルートでフォロワーにリーチする
インフルエンサーは、ネット上では複数のルートで情報を発信しています。たとえばブログ、Facebook、Twitter、Instagram、YouTube、SnapChatといった具合です。
そのため、インフルエンサーに商品を取り上げられると、これらの複数のルートで情報が配信され、幅広いネットユーザーにリーチできます。
オリジナリティーのある伝達力
インフルエンサーという個人の表現力に委ねることで、企業がマスメディア向けに作る広告では生まれない表現方法で商品の魅力がアピールされます。
従って、インフルエンサーとコラボレートする場合は、表現方法について企業側はあまり関与しない方が良いでしょう。(法・道徳的に問題があったり、企業イメージ失墜させるような場合を除く)
フォロワーたちは、そのインフルエンサーの感性を支持しているからです。
そしてインフルエンサーにとって彼らのメディアとフォロワーとの信頼関係は時間を掛けて作り上げてきた貴重な財産です。
企業側は、彼らの財産を尊重する必要があります。
まとめ
インフルエンサー・マーケティングは、マスメディアの広告ではたどり着けなかった消費者にアプローチできる強力なマーケティング手法であると言えます。
テレビCMや雑誌の広告、ウェブ上のバナーでは動かなかった消費者が、自分がフォローしているインフルエンサーがアップした写真や動画、あるいはつぶやきによって動かされる可能性があるのです。
自社の商品やサービスと相性の良いインフルエンサーを探し出すことは難しいことですが、信頼と共感を得る有効な手法として、検討されてはいかがでしょうか。