経営やマーケティングを勉強したことがある経営者の方であれば「PDCA」という事業改善方法を聞いたことがあるかと思います。実践している方も、かなりの数いらっしゃるのではないでしょうか。実は、私の経営哲学では「PDCAは曖昧にやるべき」と考えています。その理由を解説します。
PDCAとは
Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Action(改善)
というサイクルで事業活動を見直しをすることで、改善を継続し、事業活動の生産性を高める手法のこと
を意味します。
例えば
- 「Plan」:タウンページでテレアポをしてアポを取ります。
- 「Do」:タウンページでテレアポをしました。
- 「Check」:アポ率が1.2%でした。アポ率は2.0%に上げないと目標売上に到達しません。
- 「Action」「Plan」:タウンページの業種ごとにトークスクリプトを改変して、再度テレアポをします。
- 「Do」:業種ごとにテレアポをトークを変えて行いました。
- 「Check」:アポ率が1.8%でした。アポ率は2.0%に上げないと目標売上に到達しません。まだ足りません。
- 「Action」「Plan」:アポ率が高い人のトークスクリプトをテンプレート化し、他の人員に適用します。
- 「Do」:アポ率の高い人のトークスクリプトを落とし込んでテレアポをしました。
- 「Check」:アポ率が2.4%でした。目標に達したものの、さらなる改善を検討します
- ・・・
と永遠にエンドレスに改善していくための手法なのです。
営業でも
経理でも
マーケティング・広告宣伝でも
経営でも
・・・
基本的に「PDCA」は有効に機能するのです。
正確なPDCAの問題点
筆者はサラリーマンのときは、上場企業相手にWEBマーケティングのコンサルティングを行ってきました。
- WEBサイトの目標値を確認する
- 仮説を立てる
- 実行プランをAプラン/Bプラン・・と複数立てて実行する
- 結果が良いものを全体に適用して全体の生産性を上げる
という当たり前のフローです。
上場企業相手に数百万円単位の費用をいただいて、コンサルティングするのですから・・・
- 担当者が上司に提出する稟議書
- 担当者が上司を説得するためのプレゼン資料
- 今後のノウハウとして活用できる正確な分析と結果
- 行った施策の結果のレポーティング
をきちんと行って、成果を上げるのが仕事でした。
失敗することもありますが、きちんと数値に基づいたレポートをすれば「この方法はうまくいかない」というノウハウになるため、それほどクライアントにお叱りをいただくことはありませんでした。
「これの何が問題あるの?」
と思う方も多いと思いますが・・・
「時間がかかる」のが最大のデメリットなのです。
ウェブサイトの改善プランを実行する場合
【2週間】プランの作成:他のサイトの事例や過去データなどを提案書に作成する
【2週間】先方の稟議・決済待ち
【1ヶ月】プランAで実行
【1ヶ月】プランBで実行
【2週間】プランAとプランBの結果を検証
【2週間】良かった方のプランを全体に適用
【2週間】レポート提出
ざっと4か月半です。早くても3か月ぐらいはかかってしまうのです。
たしかにこれなら、確実なデータの収集と正確な改善ノウハウの蓄積はできるのですが、時間がかかりすぎるのです。
上場企業のマーケティングであれば、良いのかもしれませんが・・・正直、数人、数十人の中小企業でこんなことしていたら、数字など作れないのです。
中小企業のPDCAは正確性よりも手数
私が会社を経営するにあたって「PDCA」で重視しているのは数です。
3日で1回のPDCAを実行する
これを心がけています。
- 検証するのが1日~2日ですから、厳密にその施策が良かったかどうかはわかりません。
- ABテストをするにしても曜日が違うので、正確な比較検証データとは言えません。
- 同時に複数のPDCAの施策を投入することもあるので、施策のどちらが当たったかもわかりません。
・・・
でも、いいんです。
PDCAの仮説が上手く結果が出たかどうかは「雰囲気」で判断しています。
10年ほどマーケティング畑にいた人間が「雰囲気」で施策を決定すると言ったら、怒られるかもしれませんが・・・
精度よりも、手数重視で動いた方が良いということが実体験からわかってきたのです。
仮に大手企業に提案していた時のものを今やり続けていたら
1年間で実行できるPDCAサイクルは3回です。
しかし、今私が行っている3日で1回のPDCAにすれば
1年間で実行できるPDCAサイクルは120回です。
下手な鉄砲でも数うちゃ当たるのです。
私の実感値で言えば、20回PDCAの施策を投入すれば1回は大当たりで数字が化けます。
「雰囲気」を突き抜けて分析の必要のない成果が出るのです。
経営者の勘は、このような大量のPDCAから生み出されるものなのではないかと今は思います。当然、繰り返し行えば、成功率も高くなるのです。
サラリーマン時代は、社長の発言に「根拠のないこと言うなよ。」とバカにしていましたが、今となっては自分が詳細の分析を放棄して、「雰囲気」で経営をしています。
この下手な鉄砲「PDCA」の欠点は、他の方(部下など)に理論的に説明するのが難しいということぐらいです。
まとめ
「PDCA」は事業活動の改善に有効な方法であるのは確かなことですが
中小企業に必要なのは「PDCA」の精度ではなく、「PDCA」の回転数なのではないでしょうか。