これから会社を設立される場合、多くの場面で契約をむすばなければなりません。その時に必要になるのが印鑑ですが、実際に、印鑑は法的にもビジネス的にも重要な意味を持ちます。
普段の私生活では、印鑑は、何げなく使っているかもしれませんが、法人で使用するとなると、慎重な使い方をしなければなりません。
そして、会社で使用する印鑑は、経営者だけが使用するだけでなく、従業員も使用することがあるため、なおさらの注意が必要になります。
会社で使用する印鑑の種類は多く、正しい知識で印鑑を運用・保管しなければ、大きな問題が起こる可能性もあります。そのため、今回は会社印鑑の種類や作成する際の注意点、保存方法などについて説明します。
会社印鑑の法的役割とは
会社印鑑には法的拘束力がある
今日の日本では、押印は自署(サイン)よりも重要視されています。
というのは、文書などに押印することは、印章所持者の確定的意思の表示と解されているためです。
意外と知られていませんが、実印、認印など会社印鑑には様々なタイプがありますが、法的効力はどの印鑑も同じです。
例えば契約書に印を押した場合を考えましょう。
契約書の押したのが実印であっても、認印であっても、サインであっても法的効力は同じになります。
どのサインでも「契約に同意した」と扱われます。これはWEBサイトのチェックボックスでの合意、口約束の合意とも同じ扱いです。
いずれの場合でも合意、承認の意思表明をした証であり意味や扱いは同じになります。
会社印鑑はトラブルの際の立証にも役に立つ!
会社を経営していると、契約に「合意した」「していない」で顧客先とトラブルになることも多々あります。
実は会社印鑑はそんな時にも役に立ちます。
例えば、実印というのは法務局に届出が必要な印鑑ですので、合意したことの立証材料となります。
逆にどこにでも市販されている様な印鑑や形として残らない口約束などでは、トラブルになった場合に「そんな約束はしていない」と言い逃れられてしまう場合があります。
そういった問題を起こさないためにも、会社印鑑という存在が大切になってきます。
会社印鑑の5つの注意点
個人の印鑑と法人の印鑑は分けて使おう
まず、注意しなければならないのは、個人印鑑を会社印鑑に使用する人が意外に多いということです。
会社印鑑とは『法人として』独自の性格を持ちます。
そして、個人の印鑑とは全く分離したものです。
個人印鑑で会社印鑑に使用している会社は個人経営と同じで、法人としての無限の可能性を自ら閉ざしていると考えた方が良いでしょう。
会社というのは、当然、公私混合であってはなりません。もし、公私混合な運営がなされているのであれば、取引先や融資先からは厚い信頼を得られないでしょう。
印鑑も同様の理由で、個人印鑑と会社印鑑は分けるべきでしょう。
会社印鑑は1つあれば運営できるが、最低でも4種類持とう
法人を設立し登記する際、管轄法務局に代表者印(法人実印)の届出義務があるため、最低1つは会社としての印鑑が必要になります。
そして、代表者印以外の印鑑(銀行印や角印など)を持つのは法律上、会社の自由です。
そのため、最低一つは持っていれば大丈夫ですが、会社の実印(代表印)を銀行印として届出をしてしまうと、一つの印鑑にすべてリスクが1つに集中してしまうため、会社の実印代表印と銀行印は分けるケースが一般的です。
種類でいうと会社印(角印)、会社実印(代表者印)、会社銀行印、住所印、副印、木彫署名印、割印などがあり、最低でも会社印(角印)、会社実印(代表者印)、会社銀行印、住所印の4種類は持ちましょう。
また、会社印鑑(法人印鑑とも言う)は、株式、合名、合資、有限の会社および銀行、協会、組合、学校、団体などの組織などのどの組織でも使える印鑑です。
捨て印や白紙委任状への押印は避けよう
契約書などの文書で訂正が出たときのために予め欄外などに印鑑を押すことが捨て印、代理人や委任内容が白紙の状態の委任状が白紙委任状といいます。
捨て印や白紙委任状は、悪用されると非常に危険です。
そのため、捨て印や白紙委任状への押印は信用できる相手でも極力避けた方が良いでしょう。
三文判を会社実印にしないように気をつけよう
ホームセンターや文具店で販売されている安い印鑑を三文判といいます。このような印鑑は全く同じ印鑑を入手することもできるため、実印として登録したり、銀行印にすることはとても危険です。
合同会社の印鑑では「代表社員」という言葉を用いよう
合同会社の印鑑(代表者印)を作成する場合は株式会社の印鑑(代表者印)を作成する場合と異なるため、注意が必要です。
株式会社の代表者印を作成する場合、先ほど述べたように印鑑に「代表取締役(之)印」などのように、「代表取締役」という言葉を使用するのが一般的です。
しかし、これに対して、合同会社の場合、代表者は、「代表取締役」という言葉を用いず、「代表社員」という言葉を用います。
そのため、もし、自身で印鑑を作成される場合には、必ず、印鑑作成業者に、「合同会社」なので、「代表社員(之)印」「代表者(之)印」などのようにして、取締役という言葉を使わないようにと伝えなければなりません。
一般の印鑑作成業者の場合、「合同会社」であろうが、「株式会社」であろうが、すべて「代表取締役印」で統一している可能性があるため、特に作成次に注意が必要です。
なお、すでに作ってしまった場合、前述した大きさの条件を満たしていれば、印鑑登録上、法律上に関しては問題ありません。
4つの会社印鑑の種類と作成する際の注意点
会社実印(代表社印)
上記が会社実印 『pinterest』より引用
会社を設立するとき必要になる印鑑が会社実印です。
設立登記の際には、法務局に代表者印(法人実印)の届出をする義務があるので、会社を設立するためには必ず用意しなければいけない非常に大切な印鑑となります。
もちろん、会社実印は登記の内容を変更しなくてはいけないときにも、使用することになります。
多くの会社の場合、会社実印は鍵付の保管庫などで厳重に保管しています。
会社実印は日常的な業務でも使用することもできますが、濫用を避ける意味でも、会社設立に際しては用途に沿った別の印鑑もあわせて用意しておくのが良いでしょう。
サイズや形状については細かいきまりはありません。しかし、慣例として18.0mmの丸印の会社がほとんどです。
印影の周囲に会社名が入り、内側には会社の形態にあわせて「代表取締役印」「代表社員」などの文字が入ります。
会社実印を作る際、注意しなければいけない4つの点
- 組織名が極端に長い場合は省略した内容で彫刻及び登記・登録をすることができます。また、登記する際の団体名と「回文」に彫刻する文字は違う内容でも登記すること自体可能です。
- 変形、破損の恐れがあるゴム印は、設立登記の印鑑として使用できません。特に金融機関においてはゴム印は、認められないことがほとんどです。
- 代表者印として登記する場合、サイズは1辺が最小で1cm以上、最大で3cm以内の正方形でなければいけません。収まらない場合は登記が不可能になります。
- 代表者印は二重丸での作成が基本になります。もちろんそれ以外でも可能ですが、代表者印の98%以上は二重丸での作成だそうです通常、「回文」に社名、団体名や組織名を彫刻し、「中文」に代表者の役職名等を彫刻します。
銀行印(会社銀行印)
上記が銀行印 『印鑑の匠ドットコム』より引用
銀行印とは、銀行で口座を開設、融資を受ける時に必要になる印鑑です。
多くの人が実印と銀行印を一緒にしていますが、それはあまりいいことではありません。
実印と銀行印を一緒にしていて紛失や盗難に遭った場合、金融機関への変更届だけでなく、実印の登録廃止や改印手続きもしなければならず、大変な手間がかかってしまいます。
そのため、防犯上の理由からも銀行印は実印とは別で持っておく方が良いでしょう。
銀行印を作る際、注意しなければいけない2つの点
- 銀行印は二重丸での作成が一般的ですが、一重丸でも使用可能です。通常、「回文」に社名、団体名や組織名を彫刻し、「中文」に『銀行之印』と彫刻するのが一般的です。
- 銀行印の場合、サイズの規制は特にありません。しかし、金融機関によっては極端に大きいサイズの場合は受け付けてくれない場合があるので、注意が必要です。
社印(角印)
『印鑑本舗.com』より引用
会社経営に携わったことがなくとも、社印だけは一度は目にしたことがある人が多いと思います。
社印は見積書、請求書、領収書、納品書などに押印します。
契約書など、大事な書類では会社実印と併せて押印することもあります。
慣習的に社印は正方形の角印で作られることが多く、また会社の運営においては最も頻繁に使用する印鑑でもあります。
印鑑の形状にきまりがないとはいえ、契約書などで他社と並列で押印することがあります。
そのため、形がバラバラだと見映えが悪くなってしまいます。
一般的に、実印は丸印、社印は角印といったケースが多いです。
社印を作る際、注意しなければいけない5つの点
- 法人用の認印(社版)としての利用も可能です。
- 文字のバランスをとるために語尾に「印」「之印」を付けることも可能です。
- 個人の名前、名義で彫刻することも可能です。
- 基本的に会社や法人・個人事業主・資格取得者・その他事業団体等の組織の名称を彫刻します。
- 縦読みでの彫刻が一般的ですが、英字や数字が入る場合は横読みでの彫刻をおすすめします。
住所印
上記が住所印(ゴム印)『印鑑本舗.com』より引用
住所印はゴム印と呼ばれることもあります。
主に利用するケースは角印と同様ですが、住所印は、会社名の他に会社住所・電話番号などを記載して作るため、住所などを手書きすることを省くことができる便利な印鑑です。
その他の日本でよく使われている会社印鑑
上記の4つの印鑑ほど重要ではありませんが、会社印鑑として有効で、大企業、歴史のある企業などでは、他にもいくつかの印鑑を持っている場合があります。
大企業、歴史のある企業などと付き合いがある方は印鑑の種類についても勉強しておいた方がよいでしょう。
副印
上記が副印 『Amazon』より引用
副印とは、会社印の代用品で、会社印の副の役割を務める印鑑のことを指します。
社印が数百人を超える企業の場合、この副印を持っていることがほとんどです。
会社印は、社長自らが保管して、社員には滅多に持たせるべきものではありません。
しかし、副印の場合、社長の代理人、または社員が社外に出て各種交渉、契約、集金、出張などで社名の印鑑を必要とするときに備えて持たせ、交渉などのサインの際に使用されます。
木彫署名印(小切手署名印、手形署名印)
上の図が小切手署名印 『有限会社 大谷印舗』より引用
下の図が手形署名印 『横浜実門堂』より引用
木彫署名印は、「小切手署名印」と「手形署名印」の2つに分かれます。
本来は木彫印が正式ですが、現在においては、ゴム印の代用も多く使われており、市販されています。
小切手署名印とは、住所・商号(社名)・代表者の氏名を入れた印で小切手専用に使うための印です。
手形署名印とは、商号(社名)・代表者の肩書・代表者の氏名を入れた印で手形専用に使うための印です。
役職印
上記が役職印 『はんこ屋さん21』より引用
役職印は、副社長、専務、常務、取締役、監査役、支配人、支店長、出張所長などの役職をあらわす印鑑のことを指します。
役職印は、いずれも本人の姓と役職名とを抱き合わせにつくるのが正しい作法になります。
会社内の重役の印鑑は、印の相性を重視すべきと言われています。例えば、社長が象牙の角印、副社長が水晶の円印、専務が小判型の水牛印というように、各自の印が対立しているのは好ましくないと言われています。
割印
上記が割印 『印鑑通販ガイド』より引用
割印は契印ともよばれ、捺印したものを2つに割るのを前提として作れられた印鑑を指します。
したがって、割印のつくり方には長方楕円型が多いですが、これは2つに割るのを目算したために便宜的にこの型を用い、大正時代からこの型にはまりこんでいるようです。
しかし、これは便宜的なものであり、本式は正円型につくるべきものです。社印や代表印をこれに代用する事は倒産を招く意味を持っています。
法人印鑑にはこのほかに、事業所、組合、神社寺院、学校、医院や福祉法人、弁護士、司法書士などの印があります。
印鑑の正しい保管法
印鑑は、会社を運営するにあたり継続的に必要なものであり、長く使っていかなければいけません。
印鑑をできるだけ長く使うために以下の2点を気をつけましょう。
必ずケースに入れて保管する
柘は、急な温度変化や乾燥や湿気が非常に苦手です。
そのため、柘よりも耐久性がある黒水牛や琥珀でも、実は乾燥が弱点で、5年以上経つと黄ばんだり、耐久性が失われたりします。
また、太陽光や部屋の照明に長時間晒されると、ひび割れが起きてしまうこともありますし、エアコンの風を当て続けるのも良くありません。
そして、黒水牛や琥珀は硬い床に落としたり、机の角などにぶつけたりすると、破損してしまうことがあります。
※耐久性の高いチタン印鑑でさえも何回も落とすと破損する恐れがあります。
保管方法として、黒水牛や琥珀をオリーブオイルを古い歯ブラシなどにつけて、印面を軽くこするって乾燥を防ぐこともできます。
やはり少々面倒です。簡単に他人が使わないようにという意味でも、印材を長持ちさせるという意味でも、使わないときは必ずケースに入れて、大事に保管することをおすすめします。
必ず印面に残った朱肉はふき取る
印鑑を使った後、印面に残った朱肉の処理を皆さんはしていますか。
もし朱肉が詰まれば、押印結果が思わしくないこともありますし、特に柘は、ほかの印材に比べて朱肉の油分による劣化が早い傾向があります。
そのため、長持ちさせるためにも法人印を使用した後は、必ずティッシュか柔らかい布で朱肉を拭き取ってください。
まとめ
いかがだったでしょうか。
今回は会社印鑑の種類や作成する際の注意点、保存方法などに関して詳しく説明しましたが、やはり、会社の印鑑は非常に重要な役割を果たすため、慎重に考えて使用するべきです。
特にこれから創業される場合、印鑑を見え張って何回も印鑑を使用するのではなく、なぜ、印鑑の使用が求められるのか、また、どの印鑑を使用するべきかなど、考えながら使用することをおすすめします。
そうすることで、会社として信頼の向上に繋がるのではないかと思います。