法人保険は個人向け生命保険の一般的な選び方とは異なります。
また、加入する際は良く良く考える必要がありますが、多くの人が安易に加入してしまった結果、後悔しているといったケースに陥ってしまっています。
これから加入される方のためにも、今回は『【保存版】法人保険とは?法人保険へ会社が加入するメリットデメリットと注意点』といったタイトルの記事で
- 法人保険とは
- 法人保険へ会社が加入するメリット
- 法人保険へ会社が加入するデメリット
- 法人保険へ会社が加入する際の注意点
などについて解説します。
法人保険とは?法人保険の8つの種類
法人保険とは
まず、法人保険について解説します。
法人保険とは法人が契約者となり会社のお金で保険料を支払う保険のことを指します。
「法人保険」という保険の種類があるわけではありません。
法人で契約しますが、保険の対象は社長や役員などの「経営者」や会社で雇っている「従業員」の2パターンとなります。
従業員が加入するケースは「福利厚生保険」と呼ばれていて、万が一亡くなった場合に「死亡退職金」が遺族に支給されます。
医療保障がついているものであれば在職期間にあった疾病や傷害に対しても保障されます。
経営者が加入するケースは従業員と同様の死亡・医療保障に加えて会社の貯蓄としても役割を持ちます。
会社の経営が万が一の事態に陥った時に解約して積立金を充てる方法もあります。
法人保険の8つの種類
次に、法人保険の種類について解説します。
厳密にいうと、法人保険の種類の種類は無数にありますが、今回は特に代表的な法人保険を紹介します。
①逓増定期保険
保険金額が契約当初の約5倍まで増加するタイプの定期保険です。
契約後、早い段階で解約返戻率のピークを迎えるのが特徴です。
②長期平準定期保険
保険期間が長期に渡る定期保険です。
解約返戻率ピーク期間が長く、経営者の勇退退職金や役員の退職金準備に活用できます。
③生活障害定期保険
死亡・高度障害状態以外の特定の生活障害状態、介護状態になった場合にも保障される定期保険です。
保障範囲が広いのが特徴です。
④法人収入保障保険
保障が契約期間の経過とともに逓減する(減る)保険。被保険者に万が一のことがあった場合、年金形式で毎月定額の保険金を受け取ることができます。
⑤養老保険
貯蓄と保障を両立する保険商品です。
満期を迎えると死亡保険金と同額の満期保険金が支払われるのが特徴です。
⑥法人がん保険
がんに特化した医療保険です。
退職準備金や福利厚生として活用できます。
⑦法人医療保険
法人が契約者、経営者や従業員が被保険者として加入する医療保険です。
退職準備金や福利厚生として活用できます。
⑧法人損害保険
事業を行う上で起こりうる万が一のリスクに備えた損害保険です。
火災保険や自動車保険の他、様々な保険の種類があります。
法人保険へ会社が加入する際に発生する3つのメリット
法人保険へ会社が加入する際、メリットはいくつか発生しますが、大きく分けると3つのメリットに分かれます。
今回は、
- 万が一の事態が発生した場合でも会社経営を安定させることができる
- 事業承継を行う際に、引き継ぐ人の税金を抑えることができる
- 退職金の資金を多く積み立てることができる
の3つを紹介します。
①万が一の事態が発生した場合でも会社経営を安定させることができる
生命保険を法人契約する場合、個人契約との根本的な違いは、経営者に万が一があった場合の保険金の受取人が会社になるということです。
会社が保険金を受け取ることで、あなたが欠けたために被る売上減等のダメージを抑えることが出来ます。
ただし、注意が必要なのは、保険金の受け取り方になります。
保険金を一時金で受け取ると、そこからそれまで支払ってきた保険料のうち資産計上分を差し引いた額が、その年度の「雑収入」として一気に益金に算入されてしまいます。
ですが、実際はほとんどのケースでは、経営者、役員の死亡によるダメージがその年度だけでおさまりません。
圧倒的に多くの会社は、数年間に渡って業績が低迷し、赤字のカバーや借入金の返済に頭を悩ませることになります。
例えば、掛け捨ての定期保険で死亡保険金2,500万円を受け取ると、2,500万円が雑収入として益金に算入されます。
この年度に500万円の営業赤字が発生したとすると、それを差し引いた2,000万円に一気に税金がかかってくることになります。
そして次年度以降に1年度当たり500万円の赤字が出続けると、それぞれの年度に500万円の損気が計上されていくことになります。
こういった不都合を避けるためには、保険金を5年に分けて、500万円ずつ受け取って、それぞれの年度の営業赤字をカバーしていく方が圧倒的に有利です。
また、生命保険を事業保障のためだけに利用したい、他の活用法は考えていない考えているのであれば、収入保障保険を選ぶと多くの場合でコストをより抑えることが出来ます。
②事業承継を行う際に、引き継ぐ人の税金を抑えることができる
どんな会社でも必ずいつか世代交代、事業承継の問題が出てきます。
相続で承継するにしても、生前に承継するにしても、貴社の後継者は相続税や贈与税、他の相続人への代償交付金などを支払わなければならなくなります。
株式会社の場合であれば、後継者はあなたが持っている株式を相続か贈与で承継することになります。
したがって、後継者の経済的負担をできるだけ軽くしてあげる必要、義務があります。
事業承継にかかる相続税の対策に、個人契約の生命保険が活用できることは割とよく知られています。
ですが、法人契約の生命保険が事業承継に役立つことは意外と知られていません。
例えば、相続税、贈与税の額自体を下げる方法として株式の額を下げるために有効な方法は会社の利益を下げる事なので、保険に加入するために生命保険に加入する会社も存在します。
保険料の全部、または一部が損金に算入される保険に加入すれば、会社の利益を引き下げて、株式の額を引き下げることが出来ます。
その結果、相続税、贈与税が抑えられて、後継者が楽になるという仕組みになっています。
③退職金の資金を多く積み立てることができる
3つ目として、退職金の資金を多く積み立てることができるという点が挙げられます。
法人契約で加入できる生命保険の中には貯蓄性のある商品があります。
つまり、良いタイミングで解約すると、支払った保険料の総額の大部分、あるいは総額以上の額の「解約返戻金」が返ってくる商品です。
貯蓄性の保険商品でよく利用されているものは
- 長期平準定期保険
- 逓増定期保険
- 全額損金定期保険
- 終身保険
などがあります。
法人契約の生命保険を蓄えるために活用するメリットは
- お金を準備する段階で全部または一部を損金に算入して税負担を軽くできる
- 解約返戻金を予定通りに受け取って利用して、最終的に現金・預金で積み立てるより多くのお金を積み立てのと同じ効果を上げる
- 退職金等の多額の費用を支出するタイミングで解約返戻金を受け取ると益金が計上されるので赤字を避けることが出来る。
などがあります。
どの保険も解約返戻金は、返戻率が高いタイミングで受け取る必要があり、解約返戻金の返戻率が高い時期のうちならば1つの年度に金額を受け取ることも複数の年度に分けて「一部解約」しながら受け取ることも出来ます。
全額を受け取る場合の利用法は、退職金や大規模な設備投資です。
一部解約する場合の利用法は赤字の年度に益金を出して赤字の補填に充てることです。
ただし、貯蓄性の保険商品は会社によって向き不向きがあるので注意が必要です。
※今回、紹介した法人保険へ会社が加入する際に発生する以下の3つのメリットは多くの場合、発生するメリットです。
法人保険は個人の保険と同じく様々な種類があるため、以下の3つのメリットが発生しない場合もあります。
- 万が一の事態が発生した場合でも会社経営を安定させることができる
- 事業承継を行う際に、引き継ぐ人の税金を抑えることができる
- 退職金の資金を多く積み立てることができる
法人保険へ会社が加入する際に発生する3つのデメリット
法人保険へ会社が加入する際、メリットはいくつか発生しますが、大きく分けると3つのメリットに分かれます。
今回は以下の3つ
- 法人保険を使う節税は税金の繰り延べにはなるが、支払いを減らすことはできない
- 会社のキャッシュフローを悪化させてしまう可能性がある
- 保険の解約タイミングを見誤ってしまうと、結局、損をしてしまう
を紹介します。
①法人保険を使う節税は税金の繰り延べにはなるが、支払いを減らすことはできない
法人保険を解約した時に受け取る解約返戻金は受け取った時点で雑収入になります。
従って、解約した時に、今まで損金として計上していた金額が、そのまま益金となり、法人税が課されることになります。
つまり、法人保険とは、単に法人税の「繰り延べ」にしかならないということです。
例えば年間保険料1,000万円で、1/2損金の法人保険に加入した場合、毎年500万円が損金になります。
そしてこの保険を10年間掛けていくと総額保険料が1億円になります。
そうすると10年間で5,000万円損金になり、5,000万円が資産計上になります。
そこで10年目に解約をして、返戻率が100%で1億円を解約返戻金を受け取ると元々損金として計上していた5000万円が雑収入(益金)として法人税の対象となってしまいます。
その時に5,000万円以上の赤字またはお金の使い道があれば問題ないのですが、黒字で受取り決算を向えてしまうと、10年間節税した分(5000万円)が一気に課税されます。
そうならないためにも、やはり、いつ解約してそのお金をどう使うのかといった出口戦略を立ててから契約することをおすすめします。
②会社のキャッシュフローを悪化させてしまう可能性がある
法人の保険に加入をすると当然ですが、保険料を支払わなければいけません。
年払保険料が1,000万円の場合、単純に年間1,000万円がキャッシュアウトしてしまいます。
また、保険料は一回払って終わりではなくて毎月、毎年支払う必要があります。
つまり、その分、会社の現金が減ってしまい、キャッシュフローが悪化していきます。
会社を成長させるために、キャッシュ新規事業の投資や人員の拡充に充てたいときは、キャッシュフローの悪化は経営にとって自明的になってしまいます。
つまり、今後、多くのキャッシュが必要になりそうな場合、法人保険による節税は向いていないでしょう。
そうでない場合でも、法人保険に加入する前に、キャッシュフローの試算をしておく事が重要といえるでしょう。
③保険の解約タイミングを見誤ってしまうと、結局、損をしてしまう
先程も述べたように、法人保険は解約した時に解約返戻金を受け取ることが出来ます。
しかし、返戻金は解約するタイミングで大きく違います。
商品によって返戻率のピークは違いますが、特に注意したいのが早期解約をすると40%~80%程度しか戻ってこないという事になります。
解約返戻金をどれだけ受け取れるかはタイミングによって大きく違ってきます。
もちろん、タイミングよくピークで解約できればいいのですが、会社は何が起きるか分からないので、契約した時は保険料を支払っていけると思っていても急に資金繰りが悪化してしまい、解約に追い込まれることもあります。
このような事態を避けるためにも、いつ解約するのかという出口戦略を立てておく必要があるのです。
そして、保険によってピークが早く来るものや遅く来るもの、ピーク期間が長いものや短いものがありますので、その中から、自分の戦略にあった保険を選択する必要があります。
※今回は以下の3つ
- 法人保険を使う節税は税金の繰り延べにはなるが、支払いを減らすことはできない
- 会社のキャッシュフローを悪化させてしまう可能性がある
- 保険の解約タイミングを見誤ってしまうと、結局、損をしてしまう
を紹介しましたが、メリットの件と同じく、法人保険は多くの種類があるため、場合によっては上記のデメリットが発生しない場合もあります。
法人保険に加入する際、気をつけなけらばならない2つの注意点
最後に、法人保険に加入する際、気をつけなけらばならない2つの注意点について解説します。
法人保険に加入する際、生命保険会社や生命保険代理店の方は主にメリットを説明するでしょう。
特に、生命保険会社や生命保険代理店の資料には返戻金が100%を超えなくとも税効果を考慮するとトータルでは得するような記載が必ずといっていいほどされています。
しかし、それらを鵜呑みにするのは危険です。
今回は節税の観点から
- 中小企業で、所得が800万以上の場合、軽減税率を適用できる
- 解約した場合、解約返戻金は収益となり税金がかかる。
といった2つの注意点を紹介します。
①中小企業で、所得が800万以上の場合、軽減税率を適用できる
中小企業(普通法人のうち期末資本金の額若しくは出資金の額が1億円以下であるもの又は資本金の額等が5億円以上である法人等による完全支配関係ない法人)は所得が800万円以下の部分の法人税は15%であり、地方税を考慮した場合でも、約25%前後になります。
そのため、保険会社の資料には大抵、法人税は33%~35%で記載されていますが、所得が800万円以下の場合は25%前後の実効税率で算定すべきです。
その点は注意が必要です。
②解約した場合、解約返戻金は収益となり税金がかかる
次に、法人保険を解約した場合、解約返戻金は収益となり税金がかかる点について解説します。
解約した場合、解約返戻金は資産計上した部分以外は収益になります。
例えば、解約返戻金の収益が500万円だったとしましょう。
一般的に、この500万円に対して約25%や約35%が課税されます。
つまり、150〜200万円前後の税金を払わなければいけません。
しかし、この部分に関しても保険会社の資料では大きく取り扱われていません。
こうなると、節税のために入った生命保険なのに逆にキャッシュアウトが増えてしまったという本末転倒なことになりかねません。
そのため、中小企業の場合、法人保険における法人税の税率計算には、注意が必要です。
まとめ
いかがだったでしょうか。
- 今回は『【保存版】法人保険とは?法人保険へ会社が加入するメリットデメリットと注意点』という記事のタイトルで、
- 法人保険の簡単な説明
- 法人保険へ会社が加入するメリット
- 法人保険へ会社が加入するデメリット
- 法人保険の注意点
について、それぞれ解説しました。
しかし、記事中で何回も説明したように、法人保険は法人保険を提供する会社の商品によって、それぞれの特徴が異なります。
そのため、法人保険に加入する際は、必ず、会社の商品の特徴、メリット、デメリットを比較しましょう。