法人カードでガソリン代を下げようと調べ始めると、「ガソリンカード」と呼ばれるカードが仕組みごとにまったく違うことに気づきます。1リットルあたりいくら引く、という単価を公表しているのは4枚のうち1枚だけです。残りはクレジット価格での給油、キャッシュバック、ポイント還元と、効き方が別々です。各社の公式ページに載っている条件をそのまま並べ、実際にいくら下がるのかを計算しました。
先に要点
- 1リットルあたりの値引き単価を公表しているのはENEOS法人カードCB(JCB)だけです。旧称はシナジーJCB法人カードです。
- 値引き単価は前月のショッピング利用額で決まり、一般カードで1〜7円/L、ゴールドカードで4〜10円/Lです。
- 値引きの対象は本会員とカード使用者あわせて月間300リットルまで。灯油は対象外です。
- 旧シェルビジネスカードはapollostationビジネスカードへ名称が変わり、こちらは給油単価ではなく交通費・出張旅費のキャッシュバックで効きます。
- コスモはハウスカードで店頭のクレジット価格で給油する形、楽天ビジネスカードはポイント還元です。
- 年会費は一般カードで1,375円から2,200円。ENEOSは月間300リットルを満額値引きできれば1か月で元が取れます。
4枚は「効き方」がそれぞれ違う

まず全体像を整理します。同じ「法人ガソリンカード」でも、値引きが発生する場所が違います。ここを取り違えると、シミュレーションの前提から狂います。
| カード | 安くなる仕組み | 年会費(税込) | 使えるSS |
|---|---|---|---|
| ENEOS法人カードCB(JCB) 一般カード | 給油1リットルあたりの値引き。現金価格から引かれる | 2,200円(初年度無料) 使用者追加1名ごと2,200円 | 全国のENEOS・エッソ・モービル・ゼネラル |
| ENEOS法人カードCB(JCB) ゴールドカード | 同上。値引き単価が一般カードより高い | 11,000円 使用者追加1名ごと3,300円 | 同上 |
| apollostationビジネスカード (旧シェルビジネスカード) | 利用合計額に応じて翌月の交通費・出張旅費をキャッシュバック。年間で最大180,000円 | 一般1,375円(初年度無料) ゴールド11,000円 | 全国約6,000のapollostation |
| コスモコーポレートカード (JCB) | ハウスカードで店頭のクレジット価格で給油。利用額に応じてJ-POINT | 一般1,375円/ゴールド11,000円 ハウスカードは無料 | 全国約4,000のコスモ石油SS |
| 楽天ビジネスカード | 楽天ポイントの還元。給油そのものの値引きはない | 2,200円。ただし楽天プレミアムカード11,000円が必須で合計13,200円 | SSの指定なし |
楽天ビジネスカードは単独で申し込めません。楽天カードの公式ページは「楽天ビジネスカードのみをお申し込みいただくことはできません」と明記しており、楽天プレミアムカードの付随カードとして発行されます。年会費を比べるときは11,000円を足して考えてください。
ENEOS法人カードCB(JCB):唯一、値引き単価が表で公表されている(ただし新規申込は終了)
このカードは、これから申し込むことができません。JCBの公式ページでは、申込ボタンが置かれる位置が「本カードのお申し込み受付は終了させていただいております。」の掲示に置き換わっており、ページ内に申込リンクがありません(終了日は非公表)。以下の値引き単価は、すでに持っている方向けに公式ページで案内が続いている数字です。給油量ごとにいくら下がるかを比べる基準としては引き続き使えますが、これから作るカードの候補にはなりません。
このカードの値引き単価は、前月のショッピング利用合計額で決まります。SSでの利用分もこの合計に含まれます。JCBが公表している表がこちらです。
| 前月の月間ショッピング利用金額の合計 | 一般カードの値引き単価 | ゴールドカードの値引き単価 |
|---|---|---|
| 70,000円以上 | 7円/L | 10円/L |
| 50,000〜70,000円未満 | 5円/L | 8円/L |
| 20,000〜50,000円未満 | 3円/L | 6円/L |
| 10,000〜20,000円未満 | 2円/L | 5円/L |
| 10,000円未満 | 1円/L | 4円/L |
算定の期間には少しずれがあります。前月の月間ショッピング利用合計金額は前々月16日から前月15日まで(SSでの利用は前々月11日から前月10日まで)、当月の利用期間はSSでの利用が前月11日から当月10日までです。カード年会費はこの合計金額に含まれません。
月間の給油量で、いくら下がるのか
値引き対象は本会員とカード使用者をあわせて月間300リットルまで、ガソリンと軽油の合計です。301リットル目からは値引きが付きません。この上限を踏まえて、給油量ごとの月間値引き額を計算します。
| 月間の給油量 | 一般1円/L | 一般7円/L | ゴールド4円/L | ゴールド10円/L |
|---|---|---|---|---|
| 100リットル | 100円 | 700円 | 400円 | 1,000円 |
| 200リットル | 200円 | 1,400円 | 800円 | 2,000円 |
| 300リットル | 300円 | 2,100円 | 1,200円 | 3,000円 |
| 400リットル | 300円 | 2,100円 | 1,200円 | 3,000円 |
400リットルの行で金額が増えないのは、300リットルの上限があるからです。社用車が多く月に400リットル、500リットルと給油する会社ほど、1枚のカードで受けられる値引きの割合は下がっていきます。
年会費との損益分岐
一般カードの年会費は2,200円(初年度無料)です。月間300リットルを7円/Lで値引きできれば月2,100円なので、1か月と少しで年会費を取り返せます。ゴールドカードは年会費11,000円で、10円/Lなら月3,000円。4か月で追いつきます。
注意したいのは使用者追加の年会費です。一般カードは使用者追加1名ごとに2,200円。値引きの上限は本会員と使用者あわせて月間300リットルなので、カードの枚数を増やしても値引きの総量は増えません。年間の最大値引き額25,200円に対して使用者を11名追加すると、年会費の合計が24,200円になり、値引きでまかなえる範囲を超えます。
JCBは「1枚目のカードの年会費が無料の場合、追加のカードも無料となります」と注記しています。初年度は使用者を追加しても年会費がかからないので、実際の給油量を1年かけて測ってから枚数を決めるのが無駄がありません。
値引きの対象はガソリンと軽油だけで、灯油は対象外です。また、エッソ・モービル・ゼネラルコーポレートカードを付加して利用した分は値引きの対象になりません。1リットルあたりの値引き額は小数点以下切り捨てです。
apollostationビジネスカード:旧シェルビジネスカードの現在の姿

シェルと出光の2ブランドがapollostationへ統合されたことに伴い、このカードは2023年12月下旬から順次、名称と券面デザインがapollostation仕様へ変わりました。JCBはサービス内容に変更はないと案内しています。
このカードの効き方
- 利用合計金額に応じて、翌月の交通費・出張旅費が年間で最大180,000円キャッシュバックされます。
- SS専用カードまたはFUELカードのみを発行した場合、このキャッシュバックは適用されません。
- SS専用カードはapollostation内のすべての商品に、FUELカードはガソリン・軽油・灯油にのみ使えます。
- SS専用カードとFUELカードは全国約6,000のapollostationでのみ利用できます。年会費はどちらも無料で、使用者追加も無料です。
給油1リットルあたりの値引き単価は公表されていません。したがって「1リットルあたり何円引き」という形での比較はできず、出張の交通費をどれだけこのカードで払うかで得られる金額が決まります。ガソリン代だけを見て選ぶカードではありません。
コスモコーポレートカード:ハウスカードを無料で必要枚数持てる
コスモの仕組みは他の3枚と毛色が違います。JCBブランドのコスモコーポレートカードと、コスモ石油SS専用のコスモコーポレートハウスカードを組み合わせて使う形です。
このカードの効き方
- ハウスカードは年会費無料で、使用者を追加しても無料です。全国約4,000のコスモ石油SSでのみ使えます。
- SSでは店頭のクレジット価格で給油できるため、都度の値段交渉が要りません。
- 利用合計金額に応じてJ-POINTがたまります。ただしハウスカードのみを申し込んだ場合、J-POINTの対象になりません。
- ハウスカードの利用金額は、コスモコーポレートカードのショッピング1回払い利用残高に合算されます。請求は一本化されます。
営業車の台数が多く、給油する人が社内に何人もいる会社では、この「無料で必要枚数のハウスカードを配れる」点が効きます。ENEOSのように値引きの総量に上限がある設計ではないので、給油量が多い会社ほど相性がよくなります。
楽天ビジネスカード:給油そのものは安くならない

楽天ビジネスカードには、給油に対する値引き単価の設定がありません。得られるのは楽天ポイントの還元です。給油もショッピング利用の一部として扱われます。
このカードの効き方
- 年会費は2,200円ですが、楽天プレミアムカード(年会費11,000円)の付随カードなので、実質の負担は合計13,200円です。
- カード利用可能枠は楽天プレミアムカードと楽天ビジネスカードの合算で管理されます。
- 楽天ETCカードを付帯する場合、1枚目は年会費無料。2枚目からは1枚につき550円です。
- 登記上の法人代表者と申込者が違う場合、申し込みは受け付けられません。
SSを選ばずに使えること、経費をまとめてポイントに換えられることが利点で、給油の値引きを目的に選ぶカードではありません。社用車が少なく、ガソリン以外の経費のほうが大きい会社向けです。
どれを選ぶかは給油量と社用車の台数で決まる
| 会社の状況 | 向いているカード | 理由 |
|---|---|---|
| 社用車が1〜2台、月の給油が300リットル以内 | ENEOS法人カードCB(JCB) | 値引き上限の300リットルに収まるので、値引き単価がそのまま効く |
| 社用車が多く、月の給油が300リットルを超える | コスモコーポレートカード | ハウスカードを無料で必要枚数配れて、値引きの総量に上限の設定がない |
| 出張の交通費・宿泊費のほうが大きい | apollostationビジネスカード | 交通費・出張旅費のキャッシュバックが年間最大180,000円 |
| 給油以外の経費が中心で、SSを選びたくない | 楽天ビジネスカード | SSの指定がなく、経費全体をポイント還元に回せる |
法人カードの選び方をガソリン以外の観点まで広げたい場合は法人プリペイドカード比較もあわせてご覧ください。
よくある質問
シナジーJCB法人カードは今もありますか
名称が変わりました。現在はENEOS法人カードCB(JCB)として案内されています。JCBは、このカードが2018年10月よりENEOSサービスステーションでもガソリン・軽油値引きの特典を適用していると書いています。値引きの対象になるのは全国のENEOS・エッソ・モービル・ゼネラルです。
シェルビジネスカードはなくなったのですか
apollostationビジネスカードへ名称が変わりました。JCBは「『シェル』『出光』の2ブランドにおける『apollostation』への統合に伴い、2023年12月下旬より、順次名称および券面デザインを『apollostation』仕様へ変更します。サービス内容に変更はありませんので、引き続きご利用ください」と案内しています。
値引きとポイント還元は、どちらが得ですか
給油量によります。ENEOSの一般カードで月300リットルを7円/Lで値引きすると年25,200円です。ポイント還元でこれに並ぶには、還元率1%なら年間252万円の利用が要ります。給油量がまとまっているなら値引き型、経費全体が大きいなら還元型という見方になります。
従業員用のカードは何枚まで作れますか
カードによって扱いが違います。ENEOS法人カードCBは使用者追加1名ごとに年会費がかかり(一般2,200円、ゴールド3,300円)、値引きの対象量は全員あわせて月間300リットルまでです。コスモコーポレートハウスカードとapollostationビジネスカードのSS専用カード・FUELカードは、使用者を追加しても年会費が無料です。

