動画はどれほど浸透しているのか
動画コンテンツは、私たちの生活にもはや欠かせない存在となっています。スマートフォンやパソコンで動画を視聴する際に、まず挙げられるのがYouTubeでしょう。アメリカのGoogleが運営するサービスですが、日本国内でも圧倒的なシェアを誇ります。
YouTubeの国内ユーザーは、2018年の時点で6,200万人を超えています。インターネットを日常的に使う人のおよそ8割以上にも達するほど、多くのユーザーが利用しているのです。
特に近年では、YouTuberのマネジメントを行う株式会社UUUMが東証マザーズに上場するなど、動画関連のビジネスも盛んです。「小学生のなりたい職業」の上位にYouTuberがランクインするなど、社会的な話題にもなっています。
テレビからインターネットの時代へ
生活者の動画視聴方法は、テレビからインターネットへと、徐々に移りつつあります。特に近年利用者数を増やしているのが、NetflixやHulu、AmazonPrimeVideoなどの有料動画配信サービスです。
2019年時点の有料動画配信サービスの利用率は17.2%となっています。5年前の時点ではわずか6.9%であったことからも、ここ数年で市場が急成長していることが分かるでしょう。
それぞれの配信サービスは、大々的なプロモーションに力を入れており、例えば日本テレビ系のサービスであるHuluでは、民法ドラマのアナザーストーリーを独占配信するといった施策も行われています。
Netflixはオリジナルコンテンツの制作に注力しており、次世代の映像プラットフォームになるのではないかと期待されています。
https://research.impress.co.jp/report/list/video/500660
未だにテレビの優位性は変わっていない
インターネットの隆盛によってオンライン動画が身近になったとはいえ、テレビの優位性は変わっていません。
例えば、日常的に視聴する動画の種類を調査したデータによると、もっとも多いのが「リアルタイムのテレビ番組の視聴」であり、次いで「録画済みのテレビ番組の視聴」「YouTubeなどの動画共有サービス」という結果となりました。
あくまで現状の主力動画プラットフォームは、テレビであると言えるでしょう。そんな中で、スマートフォンでテレビ番組を視聴するという仕組みが、近年注目され始めています。民法放送のポータルサイトTVerが代表的です。
TVerは、さまざまなテレビ番組を放送局問わず、1週間以内であれば無料で視聴できるというサービスであり、「スマートフォンで動画を視聴する世代」に対応したプラットフォームであると言えるでしょう。
またサイバーエージェントが運営するAbemaTVでは、独自のコンテンツを制作し、配信しています。ユーザーからの直接課金で運営していることもあり、従来のテレビよりも規制の少ない自由な表現が可能になっています。
ただし、日常的に視聴する動画の種類は、年齢層によって変化します。特に10〜20代の若年層では、「SNSの動画」や「動画共有サービス」をよく視聴するという人の数がもっとも多くなっています。
動画広告市場が成長している理由とは?
動画広告市場が急成長しつつある理由について、詳しく解説します。
スマートフォンの普及
モバイル端末の普及によって、誰もが動画を手軽に視聴するようになりました。電車の中やカフェなどにいても、高画質な動画を、長時間楽しめるようになったのです。
フィーチャーフォン全盛期の頃であれば、画面も小さかったので、快適に動画を見ることはできませんでした。しかしスマートフォンやタブレットは、新しい端末になるにつれて画面も大きくなっており、視聴のストレスもなくなってきています。
SNSの普及
SNSの普及も、動画広告市場の成長の大きな要因と言えます。Instagramの動画配信機能IGTVや、インスタライブ、LINE LIVEなど、動画視聴のプラットフォームはどんどん拡大しています。
さらに、TikTokなど、動画に特化したユーザー投稿型のSNSの登場もあり、これらのSNS上で動画広告が展開される事例も増えてきました。
InstagramやTikTokでは、映像自体が縦型で配信されることを前提としています。スマートフォン端末の画面に合わせた形態の動画が一般的になるにつれて、縦型フォーマットが普及し、今後は表現の幅も広がっていくと考えられるでしょう。
特に、SNSの普及によって、動画は一方通行のものではなくなりました。インスタライブのリアルタイム配信ではコメントのやり取りなどが積極的に行われます。
動画はコミュニケーションのツールとしても用いられており、新たなカルチャーを生み出しているのです。双方向のコミュニケーションなど、SNSはテレビにない魅力を持っています。
ユーザーの行動の変化
動画広告の普及の背景には、ユーザーの行動の変化も見られます。商品を購入する前には、レビュー動画を見て、実際の使用感や評価を確認するというユーザーも増えてきているのです。
ハウツー動画も人気であり、例えば、家電の使い方が分からない場合は、動画で確認するといった習慣が若年層を中心に形成されています。文章で書かれている説明書よりも視覚的で分かりやすいため、気になったことはまず動画サイトで検索するというユーザーも多いようです。
このようなユーザーの行動の変化に合わせて、企業が自社商品やブランドを知ってもらう目的で、動画を作成する事例が多くなっています。
企業が制作する動画が増えた
企業が積極的に動画コンテンツに力を入れているのも、動画広告市場が拡大している要因であると言えるでしょう。
動画は、テキストや画像と比較できないほど大量の情報を、簡単に伝達することができ、受け手の負担もほとんどありません。そのため、自社商品の紹介やオウンドメディア、ランディングページなどで、動画の活用が進んでいるのです。
動画で一度興味関心を引くことができれば、自社サイトへのアクセスにつなげることが可能になりますし、Instagramなどのプラットフォームでは、そのまま商品を購入することもできます。
いかに魅力的に見せることができるかが重要となりますが、クオリティの高い動画を届けることができれば、高いマーケティング効果が見込めるのです。
動画広告の市場規模の推移と予測
動画広告の市場規模は、驚異的なスピードで拡大を続けています。オンラインビデオ総研(サイバーエージェントが運営)とデジタルインファクトが行った調査によると、2018年の国内動画広告の市場規模は、およそ1,843億円であるという結果になりました。
前年の調査では、1,374億円となっており、1年間で市場は1.3倍もの成長をしたことが分かります。動画広告の市場は、ハイペースで市場を広げていくと予測されています。
同社の今後の見通しでは、2019年に2,312億円、2020年には2,900億円にまで達し、さらに2024年には、4,957億円規模にまで成長すると考えられています。
これらのデータや、有料動画配信サービスの利用者の増加などを踏まえてみても、今後ますます動画コンテンツが重要な要素となることは明白でしょう。動画コンテンツがより普及すれば、それに伴って動画広告も今以上に閲覧されることになります。
商品の認知拡大やブランディング、若年層へのアプローチなどを狙っている企業は、なるべく早い段階で動画広告へとシフトしておくことが懸命です。
https://www.cyberagent-adagency.com/news/454/
5Gの導入により、今後動画はさらに身近なものになる
動画コンテンツの将来を見通す上で欠かせないのが、5Gです。これは5th Generationの略称で、第5世代移動通信システムを意味します。2020年に導入が開始されると言われており、大手キャリアの通信環境は5Gが利用できるものとなっています。
5Gは、従来の4G回線よりも、圧倒的な通信速度が最大の魅力です。4Gであれば10秒はかかっていたダウンロード時間も、一瞬で終わるため、もはやダウンロードを待つという感覚もなくなっていくでしょう。実際に5Gは、4Gと比べ100倍もの通信速度を実現すると言われています。
通信速度の向上により、動画の遅延などもなくなり、リアルタイムなデータ通信が可能になります。今以上にストレスフリーで動画を楽しめるようになるのです。これにより、Webコンテンツは「動くこと」が当たり前となっていくことが考えられます。
動画広告の市場規模を種類・デバイス・媒体ごとに解説!
動画広告の市場規模を種類やデバイスごとに解説します。
広告の種類別の市場規模
動画広告の市場において、主に採用されるのが「インストリーム広告」と「インフィード広告」の2種類です。インストリーム広告は、動画コンテンツの再生時に流れる広告です。
YouTubeなどの動画を見る際に挿入されているものとイメージすると分かりやすいでしょう。インフィード広告は、Webサイトなどのコンテンツの合間に表示される広告です。具体的な例としては、Yahoo!Japanのトップページなどで大きく表示されている動画広告などが挙げられます。
動画広告の市場において、インストリーム広告とインフィード広告を合算すると全体の8割ほどにまで達します。つまり動画広告において、主にこのどちらかがメインで採用されていると言えるでしょう。さらに今後もこの2種類の広告が、市場を牽引していくであろうと予測されています。
しかし時代の変化とともに、新たなタイプの広告も登場しており、動画広告の種類は多様化しています。例えば、インフルエンサーマーケティングと呼ばれる、インターネット上で一定層に影響を持つユーザーを活用したプロモーション事例も急増しています。
具体的には、コスメ商品の認知を広げたいという場合、20代女性からの支持を集めるインフルエンサーとコラボして、ライブ配信を行ったり、PR動画を作成しSNSで公開するなどの方法が挙げられます。
デバイス別の市場規模
デバイス別の市場規模を見てみると、スマートフォンが1,563億円と圧倒的なシェアを占めます。動画広告の実に全体の85%は、スマートフォンから視聴されているのです。パソコンからの視聴は意外にも少なく、今後も拡大することはないと見込まれています。
スマートフォンであらゆる作業が完結する昨今、パソコンを所有していない若年層も多いと言われています。パソコン向けの動画広告は横ばいのまま、スマートフォン向けの市場は今後も拡大を続けていくでしょう。
サイバーエージェントの調査では、スマートフォン向け動画広告の市場だけでも、2024年には、4,957億円にも達するという予測がされています。
媒体ごとの市場規模
日本国内において、動画広告の出稿媒体として第一候補となるのがYouTubeです。中でも動画投稿者であるYouTuberとのタイアップ動画広告などの市場規模は、急成長しており、2019年時点で400億円、2020年には579億円にまで成長する見込みです。
2015年にはわずか3億円であったことからも、動画広告の可能性を感じることができるでしょう。その他に近年注目されているのが、InstagramやTikTokなどのSNSです。どちらも一般のユーザーが強い影響力を持つSNSであり、ユーザーとの双方向コミュニケーションが魅力です。
海外における動画広告の市場規模もご紹介!日本との違いは?
海外における動画広告の市場は、日本と比べて遥かに大きな金額となっています。アメリカ国内の動画広告の市場規模は、2019年の時点で140億ドルに達するだろうと予測されています。
これは日本円に換算すると、およそ1兆6,880億円となり、圧倒的に大きな市場が広がっていることが分かります。
アメリカは日本と比べて、動画配信のサービスが多様であるという特徴があります。その分、動画の配信先も豊富となり、ユーザーの特性や興味関心に合わせて、さまざまな広告を配信できるようになります。
またアメリカは、有料動画コンテンツの契約世帯が多く、無料の地上波のテレビ番組はそれほど視聴されていません。このような文化的背景もあり、実はテレビ向けの広告費よりも、インターネット向けの広告費が上回っているという調査結果もあります。
2019年時点のインターネット広告への支出は1,293億4,000万ドルであり、前年比プラス19%と怒涛の勢いで成長しています。そしてこれはアメリカ国内の広告費の54%を占める金額であり、インターネット広告がテレビやラジオ、新聞広告を合わせた広告費を上回ったことになるのです。
この傾向は今後も続いていくと言われており、2023年には国内広告の3分の2はインターネット広告が占めることになるだろうと言われています。
https://www.emarketer.com/Article/Most-Digital-Video-Monetization-Still-Comes-Ads/1012300
動画広告における課題
動画広告における課題についても理解しておきましょう。
不適切な広告の流通
動画広告は、不特定多数の人の目に触れるものであるため、できる限りの配慮が求められます。さまざまな年齢層・ユーザー層が視聴するという点を念頭に置いておかなければなりません。
公共の目に触れるコンテンツとして適切でないものは、なるべく公開すべきでないでしょう。SNSによって意図と異なる拡散がされ、企業やブランドのイメージを落としてしまうことになる恐れもあります。
施策実行のハードルが高い
従来の広告よりも、動画は多くのコストがかかります。企画からシナリオ作成、実際の撮影や編集など、完成まで数々の工程を踏まなければなりません。クオリティの高い動画を作るのであれば、優秀なクリエイターに参加してもらう必要があるでしょう。
気軽に作って試してみるというのは難しく、動画広告は実行のハードルが高い点が課題と言えます。
仮説検証が必要な段階である
動画広告の市場は、現時点では発展途上と言わざるを得ません。確固としたノウハウや方法論があるわけではないので、手探り状態でマーケティングを実施していかなければならないのです。
効果測定を行う上でも、検証の方法や費用が媒体や出稿形態、プロモーションする商品によって、それぞれ異なり、定量的なデータを集められないことも考えられます。動画が完全に視聴された段階で課金されたり、視聴された時間に応じて費用がかかるなど、媒体によってさまざまです。
適切なコストパフォマンスであると判断するためには、あらゆる施策を打ってみて、経験値を蓄積していかなければならないのです。市場は拡大していますが、必ずしも自社にとってプラスの効果が出るとは言い切れない点は、理解しておきましょう。