【2015年度上期】国内リリースの定額制音楽配信サービス4選。今後のカギは?

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2015年度前半、リリースが相次いだ定額制音楽配信サービス。既にご存知の方や実際に使用している方も多いと思いますが、現状の潮流と今後についてまとめてみました。11/20)追記あり

なぜ今盛り上がっているのか?

日本の音楽ソフト産業の市場規模はピークの1998年の約6000億円から半減しました。理由は色々な要因があるので詳細の議論は避けますが、日本だけでなく世界的にも同じようなトレンドですので、国内の業界の努力不足とかそういう問題だけではなさそうです。
音楽ソフト離れの潮流は世界的なのですが、世界と日本では売り上げの中身はここ10年で全く異なってしまいました。2014年の実績で、日本では市場規模におけるCD(パッケージ)の売り上げは未だに80%程度を占めているのに対して、世界的にはCDの売り上げと音楽配信の売り上げが同等程度まで拮抗してきました。既にニューヨークなどの主要都市では、CDの大型実店舗がなくなったと言われています。
急伸した海外の音楽配信市場を引っ張ってきたのが、SpotifyやPandoraなどの定額制音楽配信サービスを展開するITベンチャー。彼らは既に数千万人単位の会員を抱え、世界的にサービスを展開しています。
2000年代後半から、彼らはこぞって、世界第2位の市場である日本上陸を目指していましたが、2015年現在で国内でサービス展開が出来ていません。国内の主要レコード会社が、楽曲配信の許諾を出さなかった(条件が折り合わなかった)ことが原因と言われています。
国内のレコード会社は、IT企業に主導権を握られることと、音楽配信によって、(売り上げを大きく取れる)CDパッケージビジネスへの影響を懸念したようです。
とはいえ、何もしないままだとじり貧になることは明らか。彼らは、外資主導でなく、国内のプレーヤー主導でサービスを検討・準備していました。ここ数年先行してリリースされたキャリア系の定額制音楽配信サービスが少しずつ盛り上がってきたことも後押しした面もあります。そして満を持してリリースになったのが、2015年の今のタイミングになったということだと思います。
 

2015年リリースの国内主要定額音楽配信サイト

2015年に日本国内で立ち上がった主要定額制音楽配信サイトを紹介します。国内勢がリリースになった後に、Appleやgoogleなどの海外勢も国内でサービスリリースというのが興味深いですね。日本市場は国内勢が主導したいという表れなんでしょうか。

1.AWA


http://awa.fm/

  • サービス開始 2015年5月
  • 運営会社 AWA株式会社(avex・サイバーエージェントの合弁)
  • 会員数 400万(無料会員)(2015年8月現在)
  • 楽曲数 約100万曲(2015年末までに500万曲予定)
  • 月額料金プラン Standardプラン 960円  Liteプラン 360円  (サービス開始日から3か月は登録不要で無料)

国内外23社が参加。デザインにこだわり、初心者でも使いやすい。AWAでしか聴けない有名アーティストのプレイリストや自分にマッチした楽曲を探せる機能など、アプリで遊べる設計になっている。

2.LINE MUSIC


https://music.line.me/

  • サービス開始 2015年6月
  • 運営会社 LINE MUSIC株式会社(avex,sony.ユニバーサルLINEの合弁)
  • 会員数 740万(無料会員)(2015年8月現在)
  • 楽曲数 約150万曲(2015年末までに500万曲予定)
  • 月額料金プラン ベーシックプラン 500円  Liteプラン 1000円  (学割適用あり)

国内外23社が参加。LINEの利点を活かし、音楽を友だちと共有できるのが大きな特徴。自分のLINE友だちがよく聞いている楽曲が表示される「フレンズチョイス」などユニークな機能もあり。

3.Apple Music


http://www.apple.com/jp/music/

  • サービス開始 2015年7月
  • 運営会社 apple
  • 会員数 無料会員 1000万人(全世界)
  • 楽曲数 数百万曲以上
  • 月額料金プラン 個人980円  ファミリー1,480円(6人まで共有可 無料利用期間あり)

BeatMusicを買収し、ブランドを変更。洋楽を中心に数百万曲以上のライブラリを誇る。アーティストと繋がることが出来る機能やインターネットラジオ機能などを備えている。Androidには後日対応予定。

4.Google Play Music


https://play.google.com/music/listen#/sulp

  • サービス開始 2015年9月
  • 運営会社 google
  • 会員数 2,800万人(全世界)
  • 楽曲数 約3500万曲
  • 月額料金プラン 980円 (最初の一か月は無料。10月18日まで有料プランに加入した場合ずっと月額780円)

楽曲数が3500万曲以上と、圧倒的にラインアップが多い。また、ストリーミングだけでなく、楽曲購入できるストア機能や保有する楽曲を5万曲までクラウドに保存できるロッカーサービスなどが特徴的。アルゴリズムが学習して、よりユーザーに合った楽曲を提案してくれるだけでなく、人のプレイリストも楽しめる。日本でサービス展開が全世界で60か国目。

価格戦略

無料期間を設けたうえで有料プランへと誘導するパターンが王道ですが、学割や家族プランなど、狙いたいターゲットを明確に打ち出しているのが特徴的です。
個人的には、Google Play Musicの10月18日までに申し込んだらずっと月額780円(通常は月額980円)といった打ち出しに注目しています。期限を切って割引料金を提示するというのは、早期の有料会員獲得の導線になります。また、ロッカー機能(保有する50,000曲をクラウドに格納)を使うとなると、結局本気の人しか来ないでしょうから、トータルで見た場合、有料会員への誘導の際の離脱率が低くなると思われます。加えて、現時点で、楽曲数やサービスが一番充実しているように見えますので、J-POPのラインアップが他と同程度であれば、シェアをとってしまいそうな気がします。
 

今後のカギは?

まだリリースしたばかりということもあるのでしょうが、無料期間を設定しているサービスを渡り歩いているユーザーが多いという声をよく聴きます。無料サービスが終了したタイミングが本当のスタートということなんでしょうね。
機能や音質などは徐々に均一化していくことが考えられますので、成否を分けるのは以下の3つだと思います。

1.メジャーJ-POPの新曲のラインアップ

日本国内に限って言うとやはりJ-POPのラインアップが重要だと思います。これは原盤を保有しているレコード会社や、長く国内でサービスをしている事業者にはアドバンテージがありますので、この切り札をどう使っていくかが肝になります。レコード会社等は、新曲の許諾を他社向けには遅らせるなどして主導権をとってくると思われます。今後、動画配信サイトのネットフリックスなどで起きているように、配信サイトが有名アーティストの楽曲を独自で制作するような流れも出てくるかもしれません。

2.ライトユーザーへのマーケティング

今、CDを買っているのは、アイドルやアニメなど特定ジャンルのファン層が多くを占めています。CDビジネスは今後も当分は今のような状況が続くでしょう。今後はCDを買わなくなったライトユーザーへいかに訴求するかがカギになります。月額1000円弱の価格が普通と思わせてくれるようなマーケティングが必要になるでしょう。

3.新サービス

楽曲数やプレイリスト機能などで競っても、前述の通り、サービスはいずれ均一化してくることが考えられます。そこで重要なのが、そのサービスの「ならでは感」。サービス内で企画でもいいですし、支払い方法などの利便性面でもいいかもしれませんが、一歩抜きんでるために新たなユーザー体験を提供する必要があると思います。
 

まとめ

ここ10年根付かなかった音楽配信サービスが本当の意味で日本で定着するかどうか、本当に興味深いですね。
外国勢で日本にまだ上陸していない、SpotifyやPandora、amazonなどの動向も気になりますし、先行するレコチョクやdocomoやKDDIなどのキャリア系の一手も楽しみです。
競合が乱立するような業界で働いている皆さんは、自分がマーケティング担当者だったら、どんな戦略をとるのか考えるだけでも色々な気づきがありそうです。この事例を参考にしながら自社のマーケティングに取り入れてみてはいかがでしょうか?
11/20追記)AmazonがPrime会員向けのサービス「プライムミュージック」を始めましたね。年間3,900円で動画も併せて100万曲以上の楽曲を聴くことが出来ます。プレイリストも充実しているようです。いよいよ戦国時代ですよね。個人的には原盤メーカーの頑張りに期待したいです。
 

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