会社経営をしていると、色々なシーンで「そういえば、あの人こんなことしていたな。」「あー、彼ならこの仕事やってくれるかも。」なんてノリで、色々過去の仕事やプライベートも含めたツテに頼ってしまいがちです。しかし、これは大きな落とし穴があるのでおすすめしません。
知り合いに頼むのは「楽」!
何をするにしても、知っている人に頼む方が絶対に楽です。
- 外注を探す
- 事業パートナーを探す
- 社員を探す
- アルバイトを探す
- クライアントを探す
・・・
一から新規開拓するには大きな労力と時間が必要になってきます。
ですから、ほとんどの中小企業の経営者は知っている人に頼ってしまうのです。また、知り合いと仕事をした方が楽しいという側面もあるかと思います。
しかし、ツテを活用することには大きな落とし穴が待っています。
安易なツテ活用の落とし穴
ツテには限界がある。本来すべきことを見失うリスク
例えば、過去の仕事の付き合いでクライアントを紹介してもらったとします。
ありがたい顧客なのですが、このクライアントは本当に自社のサービスや商品の価値を競合他社と比較して、評価した結果顧客になってくれたわけではありません。
もしかしたら、「競合B社の商品が良かったんだけど、○○さんに紹介されたから、顔を立てて利用した。」と思っているかもしれません。
これが顧客100社のうちの1社であれば、問題はありませんが・・・
3社に1社はツテで捕まえてきた顧客というのであれば、その会社のサービスはツテなしの状況化で、競合他社と戦えていないことを意味します。
人脈を活用した営業活動のおかげで売上が上がった。
という成功体験は裏返せば
人脈を活用した営業活動のせいで本来他社に流れていた顧客を無理やり自社の顧客にした。自社の商品やサービスが競合他社に比べて劣っていることが見えにくくなった。
ともいえるのです。
これで慢心しない経営者であれば、問題ないのですが・・・
人脈営業、ツテ営業が常態化してしまえば
「商品やサービスの質を高めて、競合他社に勝ち、顧客を集めること」よりも「ツテはないか?ツテはないか?」と異業種交流会や懇親会に参加する付き合いの時間が増えるのです。
結局、商品やサービスの質を高めずにツテを追いかける行動ばかりしていては、いつかは人脈が尽きてしまい、競合他社との商品やサービスの差は埋まらないほどに広がっている可能性が高いのです。
ツテの営業に時間をかけている暇があれば、同じスタートラインで競合他社よりも優れた顧客価値を創出して、自然と顧客が増えるようにするのが本来の経営の在り方のはずです。ツテを頼っているとそれが見えにくくなるのです。
切り捨てられないリスク
中小企業の経営者の視点から見れば
「使えない社員はどんどん切る」
が正解だと私は思います。非情なイメージを持つかも知れませんが、だましだましやっていたところで、お互い時間の無駄です。お互い損をするので、素早く切り捨てて、次の人材獲得に動くのが正しい経営判断だと思います。
これは外注でも同じです。
「使えない外注先はどんどん切る」
が正解です。その外注先でないとできないことなんて・・・ほとんどなく、代わりの会社はいくらでもあるのです。
しかし、これがツテで採用した社員やツテでお願いした外注先だったらどうでしょうか?
- 以前勤めていた会社の後輩
- 以前勤めていた会社で懇意にしていた取引先
- 親兄弟
- 同級生
- 地元の友達
・・・
「無理やり、以前の会社を辞めさせて、うちの会社に来てもらったのに、仕事が思ったよりできないからってクビとは言えない。」
というのが普通の人間の人情です。
経営者は冷酷なジャッジもしなければ、会社全体にマイナスな影響が波及してしまうので
- 仕事ができない
- 会社の雰囲気を壊す
- 上司や社長には向かう
社員がいるのであれば、すぐにクビを切るべきです。
しかし、ツテでお願いした社員や取引先は、簡単には切れないのです。他のつながりすらなくなってしまうリスクがあるからです。
切れないどころか、強く支持するのも腰が引けてしまうこともあるのです。
ありもので作るボトムアップのビジネスモデル
ありがちなのは「自分が持っている人脈を組み合わせて、何ができるか?」を考える経営者です。
日本一のラーメン屋を作るために必要な素材は何なのか?販売方法は何が適しているのか?調理方法は何が良いのか?とゴールから逆算して考えるのではなく、
家の冷蔵庫の余り物で、美味しい料理なにができるかな?と考えている状態です。
ボトムアップの考え方でできるビジネスモデルなんてたかが知れているのです。
すでにある人脈でできることを探すのではなく、新規開拓をすることによって、今までなかった発想やアイディアと触れるメリットもあります。
じゃあ、全部一から探すの?
はい。そうすべきだと思います。
数名の家族経営の中小企業で社員を採用しなければならないケースを考えてみます。
知り合いなら、すぐに採用できるかもしれません。
一から探すとなると
- 転職サイトへの求人掲載
- 人材紹介会社への依頼
- 転職サイトや人材紹介会社との打ち合わせ
- 求人概要の作成
- 面接
- 業務規程の整備
- 福利厚生の整備
- 社会保険の整備
- 採用に関するコスト
- 求職者とのメールとのやりとり
など、時間もお金もかかります。
しかし、今後、会社を成長させていくのであれば、どのみち通らなければならない道であり、試行錯誤しながらツテでない社員を採用する方法を探るのが採用ノウハウになるのです。
営業も同じです。
「今月、売上が足らないから、家族や親戚、友達に売れ。人脈を辿れ」なんていう営業部長や社長がいる会社も少なくありません。
しかし、これで今月は乗り切れたとしても、来月はもっと苦しくなります。なぜなら、売れない理由を把握して改善する時間をツテを探す時間に充ててしまっているからです。
問題が解決されていないので来月も同じ売上になり、同じ指令が来ます。同じ人は二度買ってくれませんので、ツテ探しはより難易度が上がってしまうのです。
そんなことするよりも
- 売上が足らない原因を解明する
- 競合他社のサービスを分析する
- 競合他社のサービスを超えるメリットを創出する
- 新しい営業方法を考える
・・・
に時間を使った方が、今月は未達のままかもしれませんが、来月の売上は回復する可能性が出てくるのです。
まとめ
人脈といえば聞こえがいいものですが
ツテを活用しすぎると・・・
- 本来やるべき商品やサービスの価値を上げる努力を見失う
- ダメだった時に冷酷に切り捨てられない
という大きなデメリットがあります。
これに苦しんでいる中小企業の経営者はかなり多いのではないでしょうか。
私自身「知りあいに頼みたい」と思うことは、たくさんありますが、毎回「一から探すことの方が長期的な経営の視点では重要であり、会社のノウハウにつながる。」と思い直して、知り合いに連絡をするのを辞めます。
よほど専門的なものであれば、ツテを使った方が良い結果を生むこともあると思いますが、安易なツテ活用はしない方が良いのです。