インターネットなどの事業で起業するときの選択肢として「バーチャルオフィス」というものがあります。実際に筆者もバーチャルオフィスを使ってみました。バーチャルオフィスを実際に使ってみてわかるメリットとデメリットについて解説します。
バーチャルオフィスとは?
バーチャルオフィスとは、実際に事務所を構えずにオフィスに必要な機能を提供してもらうサービスのこと
を言います。
レンタルオフィスと呼ばれることもあります。
機能に合わせたプランがいくつもあり
- 電話番号(転送)
- 電話対応
- FAX番号
- 郵便物の受取
- 法人登記
- オフィススペース
- 倉庫
- 物流
などの機能が利用できます。
起業時にはどうしても実際に事務所を構えるコストが捻出できないケースもあるので、起業時に利用するケースが多いのです。起業後十分に利益が出てきてから、実際の事務所を構えることも可能です。
バーチャルオフィスを利用した理由
利用した背景
- インターネットを中心にしたビジネスモデルなので事務所が不要だったこと(実家の自宅で十分)
- 実家は親の名義なので法人登記をするのは遠慮したかったこと
- 起業時のコストは最小限に抑えたかったこと
の3つです。
そもそも、筆者の会社は資本金が100万円と小規模で起業したので、事務所を構えるほどのコストを売上が見えない中で捻出することはできなかったのです。
バーチャルオフィスのコスト削減効果
一般的に都内のマンションの一室でも事業用に借りるとなると
- 家賃 10万円/月
- 敷金・礼金 20万円
- 仲介手数料 10万円
- 火災保険料 1万円
- オフィス家具 20万円
- 光熱費 1万円/月
- 保証会社 5万円
ざっくり計算しても、1年間で188万円ぐらいのコストが発生してしまいます。
これが実際に事務所を借りるとなれば・・・300万円~400万円ぐらいは見ておく必要があるのではないでしょうか。
私が借りたバーチャルオフィスの場合
- バーチャルオフィス費用:10,800円/年
- 法人登記
- 郵送物の受取・転送
- 郵便の転送費用などの実費
ですから、法人登記を都内にして、郵送物の受取・転送をしてくれて、1年で2万円ぐらいでした。
私の場合は
- 住んでいるのは実家
- パソコンだけで仕事できた
- 仕事は携帯電話のみ
- 打ち合わせはカフェか、先方のオフィス
ですので、登記と郵便物の郵送ができれば、それで十分だったのです。
100分の1のコストで起業できたと思えば、十分すぎるほどのコスト削減効果といえます。
一方で、起業時には気づかなかったデメリットもたくさんありました。
使ったからわかるバーチャルオフィスのデメリット
法人口座が作れない!
起業後に行う法人口座の開設にかなり手間取りました。
というのも、メガバンクや第一地銀などの場合、法人口座の開設には「事務所が存在していること」という条件があったからです。
これは金融庁が金融機関に対して「法人口座の開設時に事業の実態の調査をすることを厳しく指導していた」からです。
振り込め詐欺、出会い系、悪徳業者が法人口座を開設して、悪用するケースが多かったため、「ちゃんとした事業を行っている会社かどうか?をチェックしてから法人口座を作らせろ。」というお達しがあったのです。
そのため、メガバンクや第一地銀に法人口座の申込みをすると、法人の営業担当者が実際に訪問したうえで、口座開設という流れになるのです。
バーチャルオフィスの場合は登記した住所にはバーチャルオフィスの事務所はありますが、私の会社としてはポストしかありませんから、訪問なんてできるわけがないのです。
結果
- メガバンク 法人口座開設できず
- 千葉銀行 法人口座開設できず
- 住信SBIネット銀行 法人口座開設できず(固定電話が必要)
- PayPay銀行 法人口座開設できず(固定電話が必要)
・・・おいおい、俺は銀行の法人口座すら作れないのか。と大きくつまづいてしまったのです。
結果的に
- 楽天銀行
- 第二地銀である京葉銀行
で法人口座の開設ができましたが、起業してから2ヶ月ぐらい経ってから口座がやっとできた形になります。これはバーチャルオフィス利用の盲点でした。
本人限定受取や宅配が受け取れない!
バーチャルオフィスには本人はいないので
- 法人カードを作ったり
- 契約書のやりとり
- 法人向けサービスの利用
などの
- 本人限定受取
- 配達証明
- 宅配
などの受取・転送がバーチャルオフィス側ではできません。
不在連絡票などをPDFで送ってもらえるので、郵便局に直接行って受け取っていました。
月2回ほど、電車で1時間ぐらいかけて郵便局に受け取りに行く。
これだけでも時間的なコストで見ればそれなりのコスト負担とロスになってしまいます。
また、郵便が来てから手元に届くまでに1週間~2週間のタイムラグが出てしまうため、インターネットのサービスを利用するケースでも、利用できるまでに時間がかかってしまうデメリットもあるのです。
営業上のデメリット
打ち合わせが増えてくると名刺交換の機会も増えてきます。
- ざっくばらんに話せるクライアント
- ビジネスモデルを理解してもらえるクライアント
であれば、「今はまだバーチャルオフィスなんですよ。早くオフィス持ちたいですね。」で済みましたが
- これから開拓するクライアント
- 規模の大きいクライアント
との打ち合わせなどでは、バーチャルオフィスと言ってしまうと「会社の信頼性に疑いを持たれてしまうのでは」と思い、バーチャルオフィスであることを言えませんでした。
そういうクライアントの担当者ほど「今度はこちらから伺いますよ。」といわれて焦ってしまうのです。うまくかわして、相手方のオフィスに話を切り替えていました。
当然、採用はできない
バーチャルオフィスでやっている間は、社員の雇用はできません。
アウトソーシングなどで対応するしかないのです。
これもデメリットのひとつと言えます。
結果的にバーチャルオフィスはどうなの?
- 起業直後
- スタートアップの企業
- 打ち合わせが必要のない企業
- インターネット中心の企業
であれば、デメリットはあるものの、コスト削減の効果が絶大なので利用する価値のあるサービスだと思います。
筆者も今はオフィスを構えていますし、法人口座もメガバンクで作れていますので
オフィスのコストを賄える利益が十分にでるまではバーチャルオフィスを使う
という選択自体は間違っていなかったと思います。
起業を検討している方は、コスト面でバーチャルオフィスを利用することを選択肢にしても良いのではないでしょうか。