コンテンツマーケティングの担当者であれば、書籍や他社サイトから引用された文章を扱うケースは多々あるはずです。特に書評やニュース紹介といったコンテンツであれば、引用なしにはサイト自体が成立しないかもしれません。
しかし、その「引用」は本当に正しい「引用」でしょうか? 著作権法上、引用には厳密なルールがあります。それを守らずに他人の著作物を利用してしまうと、それはただの「無断転載」でしかありません。場合によっては損害賠償を請求されることもあるでしょう。引用と転載は、似ているようでまったく違うものなのです。
トラブルを回避するためにも、Web担当者は「引用」と「転載」の違いをしっかりと認識しておかなければなりません。今回は、コンテンツマーケティングに欠かせない「引用」「転載」のルールと実践的な方法を解説します。
「引用」と「転載」はここが違う
引用は無断でOK 転載は許可がなければNG
著作権には「複製権」という権利が含まれており、第三者が無断で他人の著作物をコピーをすることは原則的に禁止されています。引用と転載はどちらも他人の著作物をコピーして紹介する行為ですから、本来であれば無断で行うことはNGのように思えます。
しかし例外として、引用にかぎっては許可なく行うことが正当な権利として認められています。もし引用が全面的に禁止されてしまうと、学術的な批評や研究が成り立たなくなってしまうためです。そこで、一定のルールを守ることで誰でも自由に引用ができる仕組みになっているというわけです。
一方、転載は許可なく行うことは許されません。厳密には私的利用であれば著作権侵害にならないのですが、誰でも閲覧できるWebサイトに発表する時点で、それは私的利用の範疇を超えています。コンテンツマーケティングの世界においては、著作物の無断転載はすべてNGだと考えておきましょう。
引用は「自分の主張・意見を補うため」のもの
それでは、引用と転載はどのように使い分けられるのでしょうか。
「引用」というのは、ざっくりと言えば「他人の著作物の一部を抜き出して自分の著作物のなかで紹介する」ことです。
書評であれば、印象に残った一文を載せたうえでその素晴らさを語るというスタイルはめずらしくありません。映画評であればセリフを、時事的な話題を扱う場合には新聞記事を引用しながら持論を展開していくことも多いでしょう。これらはすべて正当な引用です。
重要なのは、これらのケースではあくまでも自分の主張や感想がコンテンツの主役だということです。引用部分は、主張や感想をわかりやすく伝えるための参考資料のような位置づけに過ぎません。つまり、引用は手段であって目的ではないのです。
転載は「他人の主張・意見をそのまま紹介するため」のもの
それに対して「転載」は、「他人の著作物を複製してそのまま発表する」ことです。
たとえば興味深いニュースを発見した際に、それを自社メディアで紹介したくなることはよくあるかと思います。その際、独自の主張や意見などを付け加えずに元の文章をそのまま載せるだけであれば、これは引用ではなく転載となります。「元記事を紹介すること」そのものが記事の目的になってしまっているからです。
「それなら末尾にコメントを付け加えればいいのか」と考える人もいるかもしれませんが、一言二言の短いコメントであるならばやはり転載です。数年前、一部のキュレーションメディアやまとめサイトが著作権侵害だとして問題になりましたが、あれはまさにこのパターンでした。
正しい「引用」の条件とルール
正当な「引用」として認められるためには、以下の3つの条件をすべて満たしている必要があります。
1. コンテンツの独自性があること
上でも触れたように、引用と転載を分ける大きなポイントは「コンテンツの主役はどちらか」という部分です。
独自の主張・意見が文章全体の大半を占めているのであれば、これは正当な引用だといえます。逆に、過半数が他人の文章で独自性がほとんど見られないようであれば、転載だと判断されてしまいます。
かといって、「引用部分が何パーセントまでならOK」と法律で定められているわけでもありません。長い文章をだらだらと付け加えても、内容がなければやはり転載と見なされる可能性が高いでしょう。文章全体として独自性があるかどうかが重要になります。
2. 引用部分と引用元を明示していること
引用部分は、あくまでも他人の著作物です。そのため、誰が見てもはっきり本文と引用部分が区別できるように表示しなければなりません。
具体的には、引用部分のみインデントを増やしたり、引用符(” ”)で括ったり、フォントを変えたりといった方法が考えられます。Webならではの方法としては、引用部分だけ別のスタイルシートを適用するというアプローチが最も簡単かつスマートでしょう。
そして、引用部分の最後には出典を記述することも必須です。これを怠ると、転載どころか盗用扱いされるおそれもあります。
3. 改変していないこと
他人の著作物を引用する際には、絶対に改変をしてはいけません。著作者人格権のひとつに「同一性保持権」という権利があり、著作者の許可なく手を加えてはいけないことになっているからです。
ここでいう「改変」には、句読点や文字の表記、改行位置なども含まれます。たとえば、読みづらいからといって漢数字をアラビア数字に変えたり、難しい漢字だからといって平仮名に開いたりすることも禁止です。引用にあたっては、元の文章から一言一句変えてはいけないのです。
唯一の例外は、Web上で表記できない旧字体・異字体を常用漢字に置き換えるケースでしょうか。しかしこの場合も、字体を変更した旨を併記しておく必要があります。
まとめ
以上、「引用」と「転載」の違いと、Webサイト上での活用のルールを解説してきました。引用コンテンツを扱う機会の多いWeb担当者であれば、最低限の知識として今すぐ覚えておくべきでしょう。
一度慣れてしまえば、ルール自体はさほど難しいものではありません。現在のGoogle検索ではコンテンツの質をますます重視する傾向になっていますから、SEOを意識しながら記事を作成すれば、自然と独自性の高いコンテンツとなるはずです。引用部分の明示と非改変さえ徹底していれば、トラブルになることは少ないでしょう。
コンテンツマーケティングにおいては、やはり何よりコンテンツの質が重要なのです。