法人向けウイルス対策ソフトの乗り換え|残り期間は最大12か月まで足せる、切替は有効期限の4か月前から【2026年】

法人向けウイルス対策ソフトの乗り換え手順のイメージ。前の契約の残りはどこまで戻るかという副題と、旧製品から新製品へ矢印でつながるカード、残り期間を示すゲージが並んでいる

ウイルス対策ソフトを別の会社の製品に替えるとき、気になるのは「いま払っている契約の残りがどうなるか」です。結論から言うと、残りの期間をそのまま返してくれる制度は見当たりませんが、新しい契約の期間に一部を上乗せしてくれる仕組みはあります。

もうひとつ、同じメーカーの中で製品を上げ下げする「切替」にも、通常とは別の価格が用意されていることがあります。しかもその優待価格では、下位製品へ移るより上位製品へ移るほうが安い、という逆転が起きています。この記事では、乗り換えと切替のそれぞれについて、公開されている条件を整理します。

この記事で確かめたこと

  1. ESETの残期間保証サービスは、乗り換え元の残りをクラウド製品で最大3か月、オンプレミス製品で最大12か月まで新しい契約に足す
  2. 乗り換え元がパッケージ製品の場合は、購入予定のESETライセンスの半数以上を持っていることが条件になる
  3. ESETの特別切替は、利用中製品の有効期限日の4か月前から当日までしか買えない
  4. 期限が切れてから手続きすると新規購入の扱いになり、製品認証キーやライセンスIDは引き継がれない
  5. ウイルスバスター ビジネスセキュリティサービスは、インストール時に他社のウイルス対策ソフトを自動で削除するが、サーバーのアプリケーションは削除しない

残りの期間を足してくれる制度がある

キヤノンマーケティングジャパンは、ESET PROTECT ソリューションへ他社製品から乗り換える場合に「残期間保証サービス」を用意しています。利用中の他社製ウイルス対策ソフトウェアの残り期間の一部を、購入する製品の契約期間に追加で適用する制度です。

ESETの残期間保証サービスで追加される最大期間
購入する製品の種別 対象製品 最大保証期間
オンプレミス製品 ESET PROTECT Entry オンプレミス(企業向け・教育機関向け・官公庁向け) 12か月
クラウド製品 ESET PROTECT Complete/Advanced/Entry 3か月

種別による差が4倍あります。ただし企業向けのオンプレミス製品は、新規・乗換・切替の販売が2026年11月30日の受注分で終わります。それ以降、12か月のほうを新規で使えるのは教育機関向けと官公庁向けだけになります。

対象になる他社製品の例として、公式ページには Trend Micro Apex One、Symantec Endpoint Protection、McAfee Endpoint Security が挙げられています。これ以外にも「法人向け各種ウイルス対策製品(パッケージ製品も対象)」とされています。

残期間保証を使うための4つの条件

適用には条件が付きます。乗り換え元の製品について、次の4点を満たす必要があります。

無償版は対象外

製品版であること

有償版であることが条件です。無料で配布されているウイルス対策ソフトからの乗り換えでは使えません。

言語の条件

日本語版であること

海外版を使っている場合は対象になりません。

期限の条件

契約期間内であること

期限切れの製品からは足せません。なお「無制限製品」の場合は、残り契約期間を1年とみなすとされています。

パッケージ製品の条件

購入予定の半数以上

乗り換え元がパッケージ製品の場合のみ、購入予定のESETライセンスの半数以上を所有している必要があります。200ライセンス購入なら100ライセンス以上です。

企業・教育機関・官公庁向けのライセンス製品を持っている場合は、この半数以上の条件はかからず、ライセンス数を問わず適用できるとされています。パッケージ製品をばらばらに買い足してきた事業所だけが、この条件に引っかかります。

申し込みは、ライセンス申込書作成サイトで「新規/乗換」の申込書を作り、乗り換え元の他社製品名・ライセンス数・契約期限を入力したうえで、発注書に添えて販売代理店に提出する流れです。

同じメーカーの中で製品を変える「切替」

他社からの乗り換えとは別に、同じメーカーの中で別の製品に移ることを、ESETでは「切替」と呼びます。購入形態としては新規購入・ライセンス追加・更新と並ぶ4つ目で、契約中の製品を更新のタイミングで別の ESET PROTECT ソリューションへ変更する場合を指します。

さらに、販売終了になった製品の利用者に向けて「特別切替製品」という優待価格が用意されています。受注開始日は2024年5月8日です。2025年3月31日をもって更新製品の販売が終了したのは、ESET PROTECT Essential クラウド、Essential オンプレミス、Essential Plus オンプレミス、Advanced オンプレミス、Enterprise の5つです。

切替は有効期限の4か月前から当日まで

見落とすと費用が変わるのが、買える期間です。特別切替製品の購入可能期間は、利用中製品の有効期限日の4か月前から有効期限当日までと決まっています。

有効期限を過ぎてから手続きすると、新規購入の扱いになり一般価格での提供になります。しかもライセンス情報は引き継がれません。期限内に切り替えれば、変わるのはシリアルだけで、製品認証キーやライセンスIDはそのまま引き継がれます。

公式ページでも「有効期限まで4カ月を切っている場合は、速やかに」切替製品の検討と販売店への相談を行うよう促しています。更新の案内が来てから動き始めると、間に合わないことがあります。

優待価格では上位製品のほうが安い

特別切替の価格表を見ると、直感に反する並びになっています。ESET PROTECT Essential オンプレミス 企業向けを使っている場合、6〜10ユーザーの帯で切替先ごとの1ライセンスあたり年額は次のとおりです。

ESET PROTECT Essential オンプレミス 企業向けからの特別切替価格(1ライセンスあたり年額、税抜)
ライセンス数 Entry オンプレミス 企業向け Entry Advanced Complete Elite
6〜10ユーザー 3,440円 5,550円 3,890円 4,330円 設定なし
26〜49ユーザー 3,080円 4,170円 3,470円 3,870円 9,990円
50〜99ユーザー 2,550円 3,880円 2,880円 3,210円 9,330円
100〜249ユーザー 2,200円 3,020円 2,130円 2,380円 8,640円
500〜999ユーザー 1,340円 2,550円 1,210円 1,360円 7,330円

6〜10ユーザーの帯では、Entry へ切り替えると5,550円、Advanced へ切り替えると3,890円です。機能が上の製品のほうが1,660円安くなります。100〜249ユーザーの帯でも、Entry 3,020円に対して Advanced 2,130円、Complete 2,380円で、同じ逆転が起きています。

公式ページも、この並びを意図したものとして説明しています。「昨今のランサムウェア攻撃の増加など、サイバー攻撃の高度化・巧妙化が日々進んでいるため、高機能な製品、ESET PROTECT Advanced/Complete以上をおすすめします」という一文が添えられ、機能表でも Advanced と Complete に「おすすめ」の印が付いています。

ESETの特別切替製品の価格表を示す公式画面。ESET PROTECT Entry オンプレミス 企業向け、Entry、Advanced、Complete、Elite の5つの切替先について、6-10ユーザーから5000-9999ユーザーまでの1ライセンスあたり年額が並んでいる
切替先ごとの優待価格。Entry より Advanced のほうが安い帯がある(2026年10月31日に表示)。

なお、優待価格が使えるのは切替の年だけです。「切替後の次年度更新は、各特別切替製品の更新製品をご購入ください」と注記されており、2年目からは通常価格に戻ります。

前のソフトは自動で消えるのか

乗り換えで手間がかかるのが、もともと入っていたソフトのアンインストールです。製品によっては、この作業を自動でやってくれます。

ウイルスバスター ビジネスセキュリティサービスの公式ヘルプには「クライアントの自動移行」という項目があります。クライアントにインストール済みのウイルス対策ソフトウェアをセキュリティエージェントプログラムに置き換える仕組みで、セットアッププログラムが他社のソフトを自動的に削除してから入れ替える、と説明されています。

ウイルスバスター ビジネスセキュリティサービスの他のウイルス対策アプリケーションから移行する手順を示す公式オンラインヘルプの画面。クライアントの自動移行の説明と、サーバにインストールされたアプリケーションは削除しないという注意書きが並んでいる
自動で削除できるのはクライアントのアプリケーションだけ、という注意書きが付いている(2026年10月31日に表示)。

ただし限界も明記されています。「ビジネスセキュリティサービスは、クライアントアプリケーションのみを削除し、サーバにインストールされたアプリケーションは削除しません」。サーバーについては手作業でのアンインストールが残ります。自動的に削除できるアプリケーションの一覧は、同社のサポートサイトを参照するよう案内されています。

いまのソフトを残したまま監視だけ足す

すべて入れ替えるのではなく、いまの製品を残したまま検知と対応の部分だけ別の会社に任せる、という組み方もあります。

カスペルスキーは2024年10月22日に、脅威検知サービス Kaspersky Managed Detection and Response のライセンス体系を刷新しました。その変更点のひとつが、他社製品環境への導入です。「Kaspersky Endpoint Security for Windows」をEDRエージェントモードで入れると、他社のエンドポイントセキュリティを使っている環境でもMDR機能を利用できます。

このモードではエンドポイント保護機能が無効になり、MDR機能だけが有効になるため、他社製品の保護機能と競合しないと説明されています。同時に、新規ライセンスの最低購入数が250から150に引き下げられました。価格は新規1年1ライセンス9,600円(税別)からです。

最低構成でも年1,440,000円(税別)からになるので、小さな事業所向けではありません。ただし「いまの契約を途中で捨てずに、監視だけ先に強める」という選択肢があること自体は、乗り換えのタイミングを待たずに動けるという意味で知っておく価値があります。

配り方はOSごとに分かれている

乗り換えの実務でいちばん時間を取られるのは、新しいソフトを全台に入れる作業です。どんな配り方が用意されているかは、マニュアルの目次で分かります。

ウイルスバスター ビジネスセキュリティサービスの公式ヘルプでは、セキュリティエージェントの配信方法が3通りに整理されています。インストール用リンクをメールで送る方法、インストーラをダウンロードする方法、そのエンドポイントに直接インストールする方法です。メールで送る方法は、Windowsコンピュータ・Mac・iOSデバイス・Androidデバイスのそれぞれに手順が用意されています。

これに加えて、Microsoft Intune を使ってAndroidデバイスに配信する手順と、Chrome拡張機能をChromebookへ大規模配信する手順が独立した項目になっています。学校や、Chromebookを配っている事業所では、ここが効きます。

ESETは電子納品で、申込後に届くメールにシリアル番号とユーザーズサイトのURLが記載され、プログラムはユーザーズサイトからダウンロードする形です。マイクロソフトは、Defender ポータルで「Assets>Devices」に移動するとプロビジョニングが始まり、完了まで数時間かかる場合があると案内されています。発注した日にそのまま全台へ展開する計画は、どの製品でも現実的ではありません。

他社からの乗り換えは「新規購入」に含まれる

用語の読み替えも必要です。ESETの購入ガイドでは、他社からの乗り換えは独立した購入形態ではなく「新規購入(他社からの乗換含む)」として扱われます。注記には「他社製品からESET製品に乗換の場合は、製品により特典や特別価格設定があります」と書かれています。

つまり、販売店に相談するときは「乗り換えたい」ではなく「新規購入で、乗り換え元はこの製品」と伝えるほうが話が早くなります。残期間保証の申込書も「新規/乗換」という同じ用紙です。

乗り換えの段取り

ここまでの条件を、動かす順番に並べます。

  1. いまの契約の有効期限を確認する。同じメーカー内の切替なら期限の4か月前から、他社への乗り換えなら残期間保証の対象になるかどうかがここで決まります
  2. 乗り換え元の製品名・ライセンス数・契約期限を控える。ESETの残期間保証は、申込書にこの3つを書く必要があります
  3. 体験版で業務用アプリが止まらないか確かめる。アバストは最大100台まで30日間、トレンドマイクロは30日間の体験版を用意しています
  4. サーバーのアンインストールを誰がやるか決める。自動移行はクライアントだけなので、サーバー分の作業時間を見込みます
  5. 発注して、納品を待つ。ESETは電子納品でシリアル番号とユーザーズサイトのURLがメールで届きます。マイクロソフトはプロビジョニングに数時間かかる場合があります
期限の確認が最初に来る。ここを飛ばすと優待価格が使えない。

乗り換え先の条件も先に見る

残期間保証や優待価格に気を取られると、移った先で使えない端末が出ることがあります。乗り換え先を決める前に確認したいのは次の3点です。

乗り換え先を決める前に確認する条件(2026年10月31日に各社の公式ページで確認した内容)
確認すること 引っかかりやすい製品 内容
WindowsのエディションがHomeではないか Microsoft Defender for Business 管理できるのは Windows 10/11 のビジネス・プロフェッショナル・Enterprise と Mac のみ
サーバーが同じ枠に入るか Microsoft Defender for Business 別ライセンスが必要で、1サブスクリプションにつき最大60まで
データの保管場所の指定があるか Microsoft Defender for Business データセンターは欧州連合・英国・米国・オーストラリアの4か所から選ぶ
オンプレミス管理が要るか ウイルスバスター ビジネスセキュリティサービス Hybrid に同梱されていたオンプレミス版は2026年3月31日でサポート終了
いま新規契約できるか ウイルスバスター ビジネスセキュリティサービス 公式ストアの新規販売は停止中。販売パートナー経由になる

切替で引き継がれるもの、変わるもの

同じメーカー内で製品を変えると、契約の情報はどこまで残るのでしょうか。ESETの特別切替については、はっきり書かれています。「製品はシリアルのみ変更、その他ライセンス情報(製品認証キーやライセンスID)は引き継がれます」。

管理画面での登録をやり直す必要がない、という意味です。これは期限内に切り替えた場合に限られます。有効期限が切れてから買い直すと新規購入になり、ライセンス情報も引き継がれません。製品認証キーが変わると、全台に入れ直す作業が発生する可能性があります。

また、特別切替では使えるプログラムも変わります。ESET PROTECT Essential で提供されていた「ESET Endpoint アンチウイルス」は継続して使えますが、現行製品ではネットワーク保護強化機能を載せた「ESET Endpoint Security」が使えるようになり、公式ページはこちらへの変更を勧めています。ファイアウォール、迷惑メール対策、Webコントロール、セキュアブラウザーの4機能が追加される形です。

残り期間が戻らない製品のほうが多い

ここまでESETの制度を中心に書きましたが、同じような仕組みを公開している会社はほかに見当たりませんでした。マイクロソフト、アバスト、トレンドマイクロ、カスペルスキーの日本語の公式ページには、他社製品の残り期間を新しい契約へ足す制度の記載がありません。

その代わりに用意されているのが、試用期間と返金保証です。アバストは30日間の無料体験版(最大100台)と30日間返金保証、カスペルスキーも30日間返金保証、マイクロソフトは1か月の無料試用と有料開始から7日間のキャンセル期間を示しています。乗り換え元の契約が残っている間に並行して試しておけば、実質的に重複する期間を短くできます。

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各製品の条件と金額、選び方の軸は次のページにまとめています。

更新と解約のタイミングについては次のページで扱っています。

出典

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