日本のライブコマースの市場規模は今後どうなるのか解説!

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ライブコマースとは

ライブコマースとは芸能人やインフルエンサーなど影響力が高いと言われている人達が、ライブ動画を使用してリアルタイムで商品を宣伝、販売する手法のことを指します。

日本でも2017年頃から認知され始めており、徐々にライブコマースによる販売手法が注目を集めています。ECで日本よりも先行している中国ではECの中でもライブコマース市場が急速に拡大しており、日本でもYouTubeやTikToKをはじめとする動画系サービスの普及とともに今後急速な市場の拡大が予想されます。

ライブコマースの種類

ライブコマース事業を行うMofflyがまとめたカオスマップによれば、ライブコマースと一口に言っても細かく分類すれば11個のタイプに分類できます。11個のライブコマースそれぞれの特徴について説明します。

SaaS(埋込型)

企業のECサイトにHTMLを数行加えるだけで、サイト内に簡単にライブコマース機能を付加できるTAGsAPIなどのようなSaaS型のライブコマースサービスがあります。

SaaS型のサービスなのでサーバーなどの設備を用意しなくとも、既存のECサイトでスムーズなライブコマースが実施できます。

越境EC型

roctonaのように、越境ECを行うためのライブコマースサービスがあります。海外に対してライブコマースで魅力的な商品を紹介、その場で決済ができるタイプのECサービスのことを指します。

基本的には通常のライブコマースと同様ですが、決済や商品の発送などの問題で直接やりとりする場合はハードルが高いこともあり、このようなサービスが役立ちします。

ECモール型

楽天やヤフーショッピングなどのECモールが新たな販売手法としてライブコマースを推進しているケースもあります。例えば、楽天ではライブコマースサービスの「Rakuten LIVE」の提供を2019年5月17日から開始しており、「楽天市場」をはじめ、「楽天ブックス」「楽天チケット」などのサービスと連携したサービスを行っています。

SNS型

FacebookやInstagramのようなSNSでもライブコマース機能を付加しているケースがあります。

各SNSは続々とライブ配信機能を追加しており、SNSのライブ配信機能を使って、インフルエンサーが商品をPRしながら、送られてくるコメントに返信するリアルアイムのコミュニケーションが行われています。

有名人型

ライブコマースシステムというよりは、各システムやプラットフォームを通じたライブコマースに芸能人やインフルエンサーを派遣するタイプのサービスを指します。現在日本でこの事業をメインに行っているのはme&starsだけですが、今後芸能人のWebプロモーション進出によりマーケットの拡大が期待されます。

ポータルサイト型

ライブコマースに特化したポータルサイトです。日本ではLIVE PORTALというサービスがあります。ECサイトでもなく動画配信サイトでもなく、ライブコマースに特化して色々な情報が集まるポータルサイトです。

クラウドファンディング型

クラウドファンディングとライブコマースを組み合わせたタイプのサービスもあります。

例えば、日本のクラウドファンディングサービスCAMP FIREではCAMP Fire Fireballというサービスを展開、リアルタイムでプロジェクトのプレゼンを行い、投資家に説明、お金が集められるサービスを提供しています。

テレビ通販型

SHOP CHANNELやQVCなどのテレビを活用したライブコマースもあります。

テレビショッピングがライブコマースの一種なのか議論が分かれるところではありますが、媒体に関わらずユーザーにリアルタイムで商品をアピールし、販売するのであればテレビショッピングもライブコマースの一種になると考えられます。

キュレーション型

C Channnelやsalomee LIVEなど、不特定多数の一般人ではなくサービス側で厳選したインフルエンサーがおすすめの商品を紹介するキュレーションタイプのライブコマースもあります。

ライブコマース運用支援

ライブコマースを実施するためには、動画の撮影をしたり、インフルエンサーなどの商品を紹介する人をキャスティングしたり、ユーザーからの投稿をチェックしたりとさまざまな役割が必要になります。

これらの業務の外注先として、ライブコマースの運用を支援する企業も存在します。

企業EC

企業が自社のECサイト内に独自にライブコマース機能を付加、運営している場合もあります。例えば、ソフマップではアキバ☆ソフマップLIVEというアイドルや声優などを使ったライブコマース事業を独自に行っています。

ライブコマースとテレビショッピングの比較

ライブコマースと類似の販売手法として、テレビを通じて動画で商品のPRを行うテレビショッピングという手法が昔からあります。定義の仕方によってはライブコマースの一種としてテレビショッピングが分類されることもあります。

しかし、従来のテレビショッピングとライブコマースにはさまざまな違いがあります。両者の違いについて紹介します。

双方向でコミュニケーションが取れる

まず、ライブコマースとテレビショッピングの大きな違いとして挙げられるのがリアルタイムでコミュニケーションが取れることです。

ライブコマースはリアルタイムでユーザーからの質問にレスポンスをするのでコミュニケーションは双方向的です。一方でテレビショッピングの場合は録画している動画を放送したり、ユーザーがコメントを投稿したりすることが困難なので双方向でのコミュニケーションはありません。

媒体によるユーザーの利便性の違い

ライブコマースはPCやスマホ、テレビショッピングはテレビでライブ配信を視聴します。よって、ユーザーに求められる行動は異なります。

ライブコマースでは配信を閲覧しているスマホでそのまま商品の購入ができるのに対して、テレビショッピングでは電話などで購入の連絡をしなければなりません。

また、テレビでは大画面で配信が閲覧できる反面、スマホのように自由に持ち運びができないので閲覧場所が限定されてしまいます。

更にテレビショッピングはテレビユーザー中心なので比較的高い年代、ライブコマースはスマホでライブ配信を視聴し、通販で買い物をすることに抵抗が無い若年層が中心的なユーザーになると考えられます。

商品をプレゼンする人が異なる

商品をプレゼンする人もテレビショッピングとライブコマースでは若干異なります。テレビは一度にたくさんの人が視聴する、配信コストも高いのでマス受けする芸能人などが中心になって配信を行います。

一方でライブコマースの場合、配信コストがテレビショッピングほど高くないので、視聴者が少なくても損益分岐を超えられます。そのため、芸能人を起用しなくても、特定のユーザー層だけに強い影響を誇るフォロワー数十万人程度のインフルエンサーを使用しても十分な効果が期待できます。

EC市場全体の市場規模とライブコマースの市場規模

EC市場全体が成長しており、ライブコマースも今後市場規模の拡大が予想されます。EC、ライブコマース市場の規模について説明します。

EC市場全体は緩やかに拡大傾向

経済産業省が毎年公表している、「電子商取引に関する市場調査」によれば日本のBtoCにおけるEC市場規模は2018年時点で約18.0兆円まで成長しています。内訳として一番多いのが物販系分野で約9.0兆円、続いてサービス系分野6.6兆円、デジタル系分野約2.0兆円と続きます。

日本の場合、市場が成熟しているので急激に物販市場が拡大するということはありません。全流通に占めるWebでの流通の拡大に伴いEC市場は拡大します。物販系分野において、全体の販売に対してどの程度がWebで流通しているかを占める指標としてEC化率という指標があります。

2018年時点のEC化率は6.22%で前年度の5.79%から8.12%伸びています。2010年代初頭は毎年EC化率が10%以上成長していったので、一時期と比較すると成長は鈍化していますが、それでも年10%弱ということで高い成長率を誇っています。

今後も安定してEC化率は向上することが期待できます。

統計は無いがライブコマースは急速に拡大すると予想されている

ライブコマース市場自体がどの程度成長しているのかについて公表されている統計は存在しません。ただし、EC市場の成長に伴ってライブコマース市場も成長すると考えられます。

また、ライブコマース自体の成長を期待させるいくつかのデータ・ニュースが存在します。

例えば、マクロミルの調査によるとライブコマースの認知状況は30%程度で、特に高いのが10代、20代の若年層で今後もライブ配信を視聴して買い物をする意向のユーザーが85%存在することが証明されています。

今後、若年層のユーザーが購買力を持ってくるのに伴って、ライブコマース市場の拡大が予測されます。

ライブコマースは成長する?衰退する?それぞれの根拠をまとめました

ライブコマースは成長すると予想する人もいれば、衰退するという人もいます。互いに矛盾する意見ですが、それぞれの予想の根拠について説明し、ライブコマースは成長するのか衰退するのかについて予想します。

ライブコマースは衰退する?

ライブコマースが一過性のブームとしてこのまま衰退していくと予想する人が挙げる根拠として、ライブコマース系のサービスの不調・終了が挙げられます。

これまでさまざまなライブコマースサービスが誕生しているけれども明確にライブコマースと言えばこれだ!というサービスが存在しない、苦戦して終了しているサービスもあるためライブコマース市場は拡大しないのではないかという意見です。

たしかに、ライブコマースプラットフォームの「PinQul」やDeNAが運営していた「Laffy」など有名サービスが2018年に終了、メルカリチャンネルも2019年にサービスを終了しています。

他にもShopNow!など有名なサービスはあるもののライブコマースのサービスが流行している様子は見られません。

このような理由からライブコマースは一過性のブームとして終了して、日本のEC市場に根付かないのではないかと考えられています。

中国で活性化するライブコマース市場

このように日本におけるライブコマースサービスは苦戦していますが、EC文化で先行している中国ではライブコマースが流行しています。

中国の大手ECサイト淘宝(タオバオ)が運営するライブコマースサービス淘宝直播(タオバオライブ)だけでも年1000億元(約1兆5,590億円)以上の売上があり、急速にライブコマース市場が拡大しています。2019年の独身の日でもライブコマースが重要な施策であったと言われています。

日本市場は黎明期にありPMFを模索している段階

もちろんこのまま日本ではライブコマースが盛り上がらない可能性もありますが、中国での成長を鑑みると、マーケット自体がまだ黎明期でユーザーに最適化されたサービスが誕生していないとも考えられます。

日本のライブコマース市場は中国から2~3年遅れて成長していますし、まだ認知状況は30%程度なので市場が成長する余地はあると考えられます。

また、さまざまなサービスがあり、どのUIが一番使いやすいのかは明確になっていない状況なので、今後市場の拡大と使いやすいサービスが誕生することによって市場が急速に拡大することも予想されます。

ライブコマースと5G

もう1つライブコマース市場の成長を促進するかもしれない要素として5Gの普及があります。5Gとは次世代の通信規格のことで、現在の4G規格の通信よりも更に高速、低遅延での通信が実現可能となります。

ライブコマースは、リアルタイムで動画やコメントのデータを送受信するので回線が遅ければ動画の画質が悪く、レスポンスも遅くなるので利用に不便さを感じます。

5G回線が導入されることにより、高速での通信が可能となればよりライブコマースが便利に利用できるようになると考えられます。

ライブコマースに向いている業界、売れている商材

BtoCのサービスであれば、全ての業界がライブコマースによって業績を拡大するチャンスがあると考えられます。ライブコマースに向いている業界や売れている商材について紹介します。

アパレルが圧倒的に人気

先ほどのマクロミルの調査では、ライブコマースの認知、利用状況と合わせてライブコマースで購入した事のある商品についても調査が行われています。

ライブコマースで買ったことがあるものの上位5位は、「服」(66.3%)、アクセサリー・時計(36.8%)、家電(29.8%)、書籍・雑誌・コミック(27.0%)、音楽CD・DVD・ブルーレイ(27.0%)となっています。

服が66.3%と圧倒的に人気でアパレル系の商材はライブコマースに向いていると考えられます。

使用感が分かりにくいものの方が売りやすい?

ライブコマースの性質を考慮するとスペックで一律で判断できる商品よりも、使用感が分かりにくい商材の方が売りやすい傾向にあると考えられます。

たとえば上位になっている、服ですが同じMサイズでもブランドによってサイズは異なりますし、着用感などは画像などからでは判断できません。

このように店員さんに聞いたり、実際に試着したりしないと決められない商品については、双方向でいろいろなことが相談できるライブコマースの方が通常のECよりも優れていると考えられます。

特徴やストーリーがある商品は販売しやすい

デザイン、機能を落として価格で勝負するタイプの商品よりは、特徴や開発のストーリーがある商品の方がライブコマースでは販売しやすいと考えられます。

ライブコマースで商品を販売するためには、商品のプレゼンをする人の商品に対する熱量が必要となります。よって、何の特徴もない商品よりも、商品にこだわった機能やデザインが搭載されていたり、開発の際に試行錯誤したエピソードがあったりする商品の方が、ユーザーに熱量と共に魅力を伝えやすいでしょう。

説明しないとうまく伝わらないような、細やかなこだわりがある商材の方がライブコマースに向いているでしょう。

ライブコマース利用者の特徴と買う理由

ライブコマースは黎明期の市場なので、ユーザーはあまり多くはありません。どのような人がなぜライブコマースで商品を購入するのかについて説明します。

若年層×男性が多い

マクロミルの調査によると、ライブコマースサービスの認知状況は10代40.0%、20代36.7%、30代29.9%、40代21.5%と若年層の方が認知度は高い傾向があります。また、男性の方がライブ配信を視聴して商品を購入する確率が高い傾向があります。

なぜライブコマースで商品を購入するのか

同調査によるとライブコマースを利用する理由の上位3位は、1位「出品者が紹介する商品を買いたい」、2位「商品の詳細がリアルタイムで質問できる」、3位「ショップ店員と話すように、買い物ができる」となっています。

1位の「出品者が紹介する商品を買いたい」という理由から、ライブコマースはインフルエンサーマーケティングと相性が良いことが推測できます。

すなわち、商品を販売する際は「誰が紹介するのか」が重要であるため、多様なインフルエンサーを押さえることによって、従来のマスマーケティングでは到達できないようなユーザーにリーチ、購買意欲を掻き立てられる可能性があることを示しています。

2位、3位の理由はライブコマースならではの強みだと考えられます。ユーザーの詳細な質問に答えたり、ショップ店員による接客ができたりするのは従来実店舗ならではのメリットですが、ライブコマースの実現によって従来のWeb販売では実現できなかった「接客」ができるようになったことを示しています。

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