Webに関わる仕事をしていながら「SEOを知らない」という人は、今やどこにもいないでしょう。ビジネスでサイト運営をするにせよ、副業でアフィリエイトをするにせよ、しっかりと勉強してSEOを意識したサイトづくりをしないと成果は望めません。
しかし、そのSEO戦略が本当に有効なものかというと、必ずしもそうは言えません。なぜなら、サイト運営の初心者はつい近視眼的な視野で大きなアクセスを求めてしまいがちだからです。
短期集中的に爆発的なアクセスがあれば、たしかに達成感はあるでしょう。ですが果たして、そうした一時的な集客がどれほどコンバージョンに繋がるでしょうか?
質の高いアクセスを効率的に得るために重要な戦略、それがロングテールSEOです。
ビッグワードSEOとロングテールSEOの違い
2つのSEO戦略
キーワードによるSEOのアプローチは、「ビッグワード」と「ロングテール」の2種類に大別することができます。
SEOと聞いたとき多くの人が思い浮かべるのは、ビッグワードSEOの方でしょう。こちらは、世間から強い関心を抱かれているであろうキーワードを用いることで集客しようというSEO戦略です。旬のキーワードを上手に活用できれば、爆発的なアクセスを稼ぐことも夢ではないでしょう。
一方ロングテールSEOでは、瞬間風速的なアクセスを求めません。ニッチなキーワードを用いて、ターゲットを限定した上でアクセスを稼いでいくのがロングテールSEOの戦略です。そのかわり、少ないながらも安定した集客を狙うのが特徴です。
ビッグワードの強みは集客力の高さですが…
具体的な例を出せば、「ラーメン」というキーワードはビッグワードです。ラーメン好きの人は全国に大勢いますから、検索数が多くなるのは当然です。よほどラーメンが大嫌いだという人でない限りは、誰しも一度は検索したことがあるのではないでしょうか?
ところが「ラーメン」というキーワードだけでは、あまりにも情報が漠然としています。近所のラーメン屋の評価を知りたい人も、自作ラーメンスープのレシピを探したい人も、ラーメンのガイドブックを買いたい人も、「ラーメン」というキーワードには全員が引き寄せられてしまいます。
その分アクセスは増えますが、同時に「これは自分が求めていた情報ではない」と感じて即座に離脱してしまうユーザーも多くなります。集客数のわりにコンバージョンに繋がる期待は低いわけです。いわばビッグワードSEOは「数撃てば当たる」的アプローチだといえます。
コンバージョン率を高めるならロングテールを強化
では、この「ラーメン」というキーワードを、よりニッチな条件を追加した複合キーワードにするとどうなるでしょうか?
たとえば「ラーメン 秋葉原 黒ごま担々麺」というキーワードであれば、秋葉原に立ち寄る用事のない人が検索することはほぼありませんし、自作レシピを求めている人が検索することもまずありません。このキーワードで検索するのは、「秋葉原で黒ごま担々麺を食べたがっている」人ばかりです。
複合キーワードはターゲットを狭めるので、ニッチ需要にピンポイントで訴えかけることができます。だからこそ、適切にキーワードを配置することができればコンバージョン率も高まります。
ロングテールSEOを重視すべき理由
アクセスの80%はニッチキーワードから
注目すべきは、「アクセスの大多数はニッチキーワードから生まれている」という点です。アクセス解析を見ると、つい目立つビッグワードに気を取られてしまいますが、冷静に考えればニッチキーワードをすべて合算したアクセスの方が遥かに多いと気付くはずです。
ビッグワードとニッチワードの比率は一般的に2:8と言われており、サイトの規模が大きくなるほどこの数値に収束すると考えられています。これは、「Amazonの総売上のうちランキング上位の商品が占める売上はわずか2割に過ぎない」という事実から導き出されたもので、ロングテールSEOの考え方のベースとなっている法則です。
ニッチワードの方がコンバージョン率が高く、おまけにアクセス総数も多いわけですから、集客においてこれを無視する理由はありません。
他サイトと競合しにくい
ニッチキーワードを厳選して配置すれば、競合ページを大きく減らすことが可能です。
10万人の中でNo.1になることは難しくても、100人の中のNo.1になることは比較的簡単ですよね。爆発的なアクセスを求めないロングテールSEOではありますが、質の高いアクセスならば多いに越したことはありません。競合を回避するというアプローチも重要になってきます。
加えて、ページごとに異なる複合キーワードを設定することで、検索順位の変動による影響を小さく抑えることもできます。リスクを分散しながらリターンも得られる戦略なのです。
ロングテールSEOの具体的な実践方法
検索ボリュームを頼りにキーワードを探す
ロングテールSEOでは、キーワード選びが成否を分けると言っても過言ではありません。キーワード取得ツール等を利用して、検索ボリュームを確認しながらコンテンツと合致するキーワードを見つけていきましょう。
また、その際には、既存コンテンツにおいて集客力の高いキーワードが何であるかも考慮すべきです。現状でアクセスの多いキーワードをベースに複合ワードを設定していくことが、ロングテールSEO成功への近道となります。
複合キーワードは3ワードを目安に
ニッチなキーワードを選べば何でもよいということでもありません。キーワードをいくつも重ねていけばよりニッチ層にアピールすることは可能ですが、それがSEO的に有効かというとまた別問題です。なぜなら、キーワードを多く詰め込みすぎるとコンテンツの主旨がぼやけてしまいがちだからです。
Googleアルゴリズムは年々コンテンツ重視の傾向を強めています。欲張っていくつものキーワードを詰め込むよりは、厳選したキーワードの範囲でいかにコンテンツの純度を高めていくかの方が重要です。
実際に自分で検索するとき、4つ以上のワードで検索することって、そんなに多くありませんよね? 目安としては、3ワードを1セットとして考えるのが理想でしょう。
ロングテールSEOに対する誤解
ビッグワードの軽視はNG
「ロングテールSEOを重視しよう」と考えたときの最もありがちな誤解が、ビッグワードSEOを軽視してしまうことです。
コンバージョン率が低いとはいえ、サイト全体のアクセスを底上げすることは無意味ではありません。特に、まだ充分な認知度があるとはいえないサイトの場合には、ロングテールとビッグワードの両面をケアしていくことが大切です。
指針としては、トップページでビッグワードを、個別ページでニッチワードでロングテールを意識していくと、サイト全体の価値を高めることに繋がるでしょう。
むやみなページ量産は逆効果
ロングテールSEOとは、やみくもにニッチキーワードを配置することではありません。
たしかに一昔前までは、多種多様なキーワードを用いたページを量産することで検索順位を上げようとする手法もポピュラーでしたが、現在のGoogleアルゴリズムには通用しません。それどころかかえって評価を下げることにも繋がります。
Googleアルゴリズムはアップデートされるごとに毎回さまざまなアプローチが加えられますが、「コンテンツの質を重視する」という基本方針は常に一貫しています。今後もこの傾向はますます顕著になるはずです。
質の低いページを機械的に量産するくらいならば、内容の充実したコンテンツを1つずつ地道に増やしていく方が長期的にはプラスです。また、ロングテールのコンテンツの質を高めていけば、それは長期的にはビッグワードをケアすることにも繋がります。
まとめ
あらためて「ロングテールSEO」と言われると身構えてしまう人もいるかもしれませんが、実はこのSEO戦略はそれほど目新しいものではありません。インターネットの最初期から言われていた「コンテンツ・イズ・キング」という標語に、現実が追いつきつつあるだけだからです。
むしろ、目先のアクセスだけを求めていた旧来のSEOが本質から逸れているのだと考えましょう。コンテンツの質を第一義に考えてサイト作りをしてきた人であれば、さほど戸惑うこともなくロングテールSEOを導入できるのではないでしょうか?
「良質なコンテンツと質の高いアクセスを結びつけるための施策」だと捉えれば、ロングテールSEOを実践する意義や価値はすぐに理解できるはずです。