ビジネスチャットの見積もりが後から膨らむ理由の多くは、機能そのものではなくどのプランからその機能が使えるかにあります。IPアドレスによる接続元の制限を条件に入れるだけで、月額が4倍まで開きます。この記事では、Chatwork、LINE WORKS、Slack、direct、WowTalkの公式ページに書かれている管理・セキュリティ機能を並べ、要件を先に決めることでプラン選択が機械的に終わることを示します。確認できなかった項目は「記載なし」としてそのまま残しています。
- IPアドレス制限が公式の料金ページに明記されているのは、Chatworkのプロフェッショナル(1,200円)とWowTalkのスタンダード(500円)。
- SAMLベースのシングルサインオンを料金ページに明記しているのはSlackで、ビジネスプラス(1,920円)から。
- 管理者が遡れる記録は、LINE WORKSが監査ログ6ヶ月間、WowTalkがトークログ無制限(スタンダード)。
- 30人で要件を満たす最小プランを比べると、13,500円から57,600円まで開く。
- 「記載なし」は機能が無いという意味ではなく、公式の料金ページで可否を確認できなかったという意味。
先に決めるのは「どの制限を必須にするか」
チャットの選定でセキュリティを検討するとき、製品側の説明を読み比べても判断は進みません。どの製品も安全であることを主張しているからです。判断が動くのは、自社の規程がどの制限を必須にしているかを決めたときです。
実務でよく条件に上がるのは4つです。接続元をIPアドレスで絞ること、業務で使う端末を限定すること、ログインを全社の認証基盤に統合すること、管理者が過去の記録を遡れること。この4つのうち、どれが「あればよい」でどれが「なければ選べない」のかを先に振り分けます。
振り分けが終われば、残りは公式ページの記載を当てはめるだけです。逆に、この作業を後回しにして各社の資料を集めると、条件がそろっていない比較表ができあがります。
同じ機能でも、開くプランの高さが違う

IPアドレス制限を見ると、記載があるのは2製品です。ChatworkはプロフェッショナルにIP制限が含まれ、無料版と有料版の違いを説明するページでは、フリープランについて「社外ユーザー制限、IP制限など非搭載」と書かれています。WowTalkは料金ページの管理機能の欄で、IPアドレス制限がスタンダードのみに○が付いています。
端末の制限は、WowTalkだけが「端末制限(PC、スマホ)」という項目を料金表に持っています。directは機能ページに「ログイン制御」という記述がありますが、どのプランから使えるかは料金表に書かれていません。
シングルサインオンは、Slackが料金プランの一覧に「SAML ベースのシングルサインオン」を置き、ビジネスプラス以上で有効としています。他の4製品の料金ページには、この項目が見当たりませんでした。
管理者が遡れる記録の範囲
4つめの条件、記録の保存については、製品ごとに項目の立て方が違います。利用者が検索できる範囲と、管理者が確認できる記録が別になっている製品があるためです。
| 製品 | 項目名 | 保存の範囲 | 取り出し |
|---|---|---|---|
| Chatwork | — | 管理者向けの記録に関する項目は、公式の料金ページとプラン別機能一覧に見当たらない | 記載なし |
| LINE WORKS | 監査ログ | スタンダード・アドバンストとも6ヶ月間 | ダウンロード可能と明記 |
| Slack | 監査ログ | セキュリティのページに、監査ログやeDiscovery、訴訟ホールドの記載あり。プランごとの範囲は料金ページに記載なし | 記載なし |
| direct | データエクスポート | 有料プランは期間無制限。フリーは不可 | 月1回まで |
| WowTalk | トークログ | シンプルは過去12ヶ月間、スタンダードは無制限 | 記載なし |
LINE WORKSの6ヶ月間は、上位のアドバンストにしても延びません。この長さが足りるかどうかは、監査の周期で決まります。四半期ごとに点検する形なら期間内に収まりますが、年に1回、前年度分まで遡る形にしているなら届きません。その場合は、期限が来る前に取り出して社内の保管領域へ移す手順を作ることになります。取り出せること自体は料金ページに書かれているので、誰がいつ実行するかを決めておけば足ります。
WowTalkは、スタンダードにするとトークログが無制限になります。5製品のなかで、管理者側の記録に期限を設けないと明記しているのはこの製品だけです。
Slackが公開しているセキュリティの範囲

Slackのセキュリティページには、料金ページには載っていない情報が書かれています。データ保護について「Slack では、保存時も送信時も、顧客データをデフォルトで暗号化」と説明され、Slack Enterprise Key Management(Slack EKM)、監査ログ、ネイティブのデータ損失防止(DLP)といったツールが挙げられています。サードパーティのDLPプロバイダーにも対応しているとの記載もあります。
情報ガバナンスの項目には、グローバルな保存ポリシー、訴訟ホールド、eDiscoveryが並びます。取得している認証として、ISO/IEC 27001、27017、27018、27701が示されています。
ここで注意が要るのは、これらの機能がどのプランで使えるかがセキュリティページには書かれていないことです。データ損失防止について料金プランの一覧を見ると、有効になっているのは最上位のEnterprise+だけで、ビジネスプラスの欄では無効の扱いです。セキュリティページの記述だけを見て、ビジネスプラスでも使えると判断すると、見積もりが合わなくなります。
どの製品でも、機能を紹介するページには「できること」が並び、料金ページには「どのプランでできるか」が書かれています。検討で使うのは後者です。機能ページに載っているという理由だけで要件を満たしたと判断せず、料金表の該当プランの欄を必ず確認してください。
要件を入れたときの月額

30人で計算すると、LINE WORKSスタンダードが13,500円、WowTalkスタンダードが15,000円、directのプレミアム(21〜50名)が33,000円、Chatworkプロフェッショナルが36,000円、Slackビジネスプラスが57,600円です。最も低い金額と最も高い金額の差は4.2倍あります。
ただし、この5つは同じものを買っているわけではありません。Slackのビジネスプラスにはシングルサインオンとユーザー管理の自動化が含まれ、WowTalkのスタンダードには端末制限とIPアドレス制限が含まれます。要件が「シングルサインオン」ならSlack以外は候補から外れますし、要件が「IPアドレス制限」ならSlackの料金ページには記載がありません。
フリープランで足りない範囲
無料プランは、管理機能がもっとも制限される場所です。公式ページの記載を並べると、次のようになります。
| 製品 | 無料プランの管理機能 |
|---|---|
| Chatwork | プラン別機能一覧では「ユーザーの管理」に制限あり。無料版と有料版の違いのページでは「社外ユーザー制限、IP制限など非搭載」と記載。二段階認証はアプリ認証のみ |
| LINE WORKS | 料金ページのフリープランのカードに「管理者機能(制限あり)」と記載 |
| Slack | 料金プランの一覧では、SAML SSOとSCIMがフリーとプロの欄で無効 |
| direct | 料金表でデータエクスポートと一括登録がフリーは不可。有料版は一括登録が100名ずつ可能 |
| WowTalk | 無料プランなし。2週間のトライアルはスタンダードプランが対象 |
実務で最初に困るのは、退職者の処理です。管理者機能に制限があると、アカウントの停止や権限の変更がすぐにできない可能性があります。人の出入りがある組織で無料プランを本番運用にすると、この作業が積み上がります。
二段階認証については、Chatworkがフリーでもアプリ認証に対応しており、スタンダード以上でアプリ認証とSMS認証の両方が使えるとプラン別機能一覧に記載があります。ログイン時の本人確認だけであれば、無料や下位のプランでも一定の手当てはできる構成です。
社外の相手を入れるときの制御
管理側の関心は、社内の端末やログだけでは終わりません。社外の人をチャットに入れる運用では、その人がどこまで見えるかを制御できるかどうかが問題になります。ここも製品ごとに考え方が違います。
Chatworkは、フリープランで組織外のコンタクトが1ユーザーあたり20人までと制限され、スタンダード以上で制限なしになります。無料版と有料版の違いを説明するページには、フリープランについて「社外ユーザー制限」が非搭載と書かれており、社外との接続を管理側で絞る機能は有料側にあることが分かります。
directはゲストモードを全プランで使えると料金表に記載しています。公式の機能ページでは、ゲストメンバー同士がお互いの存在を知らない状態でつなげる仕組みとして説明され、特許第6243382号を取得しているとあります。複数の協力会社を同じ案件に入れながら、互いの参加を見せない運用ができる形です。
Slackは、フリーが1対1の外部メッセージ、プロ以上でグループの外部メッセージが使えます。相手も同じ製品を使っていることが前提になるため、招く相手の環境によって使えるかどうかが変わります。LINE WORKSは、相手のLINEアカウントとトークできると機能ページに記載があり、相手側の登録作業が要らない形です。WowTalkの料金ページには、社外の相手を招く機能の項目が見当たりませんでした。
制御の観点で整理すると、社外を入れる前提の製品ほど「誰が誰を見られるか」の設定が細かく、社内利用に絞る製品ほど接続そのものを閉じています。どちらが優れているかではなく、自社の運用がどちらかを先に決める話です。
要件の書き方が判断を早くする
社内で要件を整理するとき、機能の名前だけを並べると製品ごとの呼び方の違いで詰まります。「監査ログ」「トークログ」「データエクスポート」は、どれも管理者が過去を確認するための仕組みですが、名前も範囲も違います。
- 誰が。管理者だけか、利用者本人も遡れる必要があるか。製品によってこの2つが別のプランに分かれています。
- 何を。メッセージ本文か、ログイン記録か、ファイルの授受か。求めるものによって該当する機能名が変わります。
- いつまで。6か月か、1年か、期限なしか。6ヶ月と明記している製品、12ヶ月の製品、無制限の製品があります。
- 取り出せるか。画面で見られればよいのか、ファイルとして保管する必要があるのか。ダウンロードの可否は製品ごとに記載の有無が分かれます。
この4項目で書いておけば、各社の料金表の該当欄を当てるだけで判断が終わります。製品ごとの用語に合わせて要件を書き直す手間もなくなります。
スクリーンショットとファイルの持ち出し
接続元や端末を絞っても、画面を撮られたりファイルを落とされたりすれば情報は外へ出ます。この観点の機能を料金ページに書いている製品は限られます。
directは、公式の機能ページに管理側の機能として「スクリーンショット制限」を挙げています。画面をそのまま保存されることを防ぐ仕組みで、図面や個人情報を扱う現場では意味があります。ただし、どのプランから使えるかは料金表に書かれていないため、必要な場合は問い合わせて確認する項目になります。
WowTalkは、ファイルダウンロードIP制限をスタンダードの管理機能として掲載しています。ダウンロードそのものを禁じるのではなく、社外のネットワークからは落とせないようにする形です。あわせて、ファイルダウンロード期限がシンプルで過去30日間、スタンダードで無期限と決められています。期限が短いほど、古いファイルが持ち出される機会は減ります。
Slackはセキュリティのページでネイティブのデータ損失防止に触れていますが、料金プランの一覧ではEnterprise+の欄だけで有効です。ChatworkとLINE WORKSの料金ページには、画面の撮影やファイルの持ち出しを制御する項目が見当たりませんでした。この領域は、製品側の機能だけで完結させず、就業規則や端末管理と組み合わせて考える範囲になります。
認証や第三者評価をどう扱うか
ISO27001のような認証は、複数の製品が取得しています。WowTalkはISO27001とISO27017、SlackはISO/IEC 27001、27017、27018、27701を公式サイトに記載しています。認証の有無は、社内の調達基準で必須になっていることがある一方、製品を選び分ける材料としては働きにくい項目です。
調達基準に含まれている場合は、必須の認証を要件に書き、取得しているかどうかを公式サイトで確認する、という扱いで足ります。取得していない製品を除外し、取得している製品同士は他の条件で比べる、という順番です。認証の数が多いほど安全という読み方はできません。対象範囲が認証ごとに違うためです。
なお、匿名の口コミやランキングの評価をセキュリティの判断に使うことはすすめません。管理機能の可否は公式の料金表で確認できる事実であり、確認できない部分は問い合わせて回答をもらうのが確実です。BIZEEでも、この記事では公式ページの記載だけを根拠にしています。
管理機能に関するよくある質問
IPアドレス制限が必須の場合、選択肢はどれですか。
公式の料金ページに記載があるのは、Chatworkのプロフェッショナル(1ユーザー1,200円・最小5ユーザー)とWowTalkのスタンダード(1ID 500円・最低30ID)です。他の3製品については、料金ページで可否を確認できませんでした。
シングルサインオンを使いたい場合はどうなりますか。
料金ページに明記しているのはSlackで、ビジネスプラス(年払い1ユーザー1,920円)からです。他の製品については、料金ページに項目が見当たりませんでした。
ログはどれくらい残せますか。
LINE WORKSは監査ログが6ヶ月間でダウンロード可能、WowTalkはトークログがシンプルで過去12ヶ月間、スタンダードで無制限と記載されています。
無料プランでも管理者機能は使えますか。
使えますが、制限があります。Chatworkは「ユーザーの管理」に制限あり、LINE WORKSは「管理者機能(制限あり)」と料金ページに書かれています。退職者の処理が発生する運用では、この制限が実務の負担になります。
製品ページに載っている機能は契約すれば使えますか。
プランによります。機能を紹介するページには製品全体でできることが書かれており、プランごとの可否は料金ページ側にあります。要件に関わる機能は、必ず料金表の該当欄で確認してください。
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- Slackの料金と機能
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- Chatworkの料金と機能
- LINE WORKSの料金と機能
- directの料金と機能
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参照した一次情報
- Chatwork プラン別機能一覧(株式会社kubell/2026年9月10日確認)
- Chatwork 無料版と有料版の違い(株式会社kubell/2026年9月10日確認)
- LINE WORKS 利用料金のご案内(LINE WORKS株式会社/2026年9月10日確認)
- Slack セキュリティ(Slack/2026年9月10日確認)
- Slack 料金プラン(Slack/2026年9月10日確認)
- direct 料金プラン(株式会社L is B/2026年9月10日確認)
- WowTalk 料金(キングソフト株式会社/2026年9月10日確認)

