クラウドストレージの選び方|比較表を読む前に出す6つの数字と、20人で入れ替わる課金の型【2026年】

クラウドストレージの選び方を6つの数字で決める、比較表を読む前に出しておくものと書かれたアイキャッチ画像

クラウドストレージの選定が進まない会社には、共通した詰まり方があります。各社の比較記事を読み込み、機能一覧を横に並べ、それでも決められない。原因は比較の仕方ではなく、比較を始める前に自社の数字が出ていないことです。容量が何GBか、人が何人か、いちばん大きいファイルが何GBか。この3つが出ていれば、候補は2つ程度まで自動的に絞れます。この記事では、現行5製品の公式料金ページを2026年9月10日に読んだ結果をもとに、決める順番を組み立てます。

この記事の要点

  • 比較表を読む前に、総量・人数・最大ファイルサイズ・復元期間・既存契約・検証期間の6つを出す。
  • 課金の型は3つしかない。ユーザー課金で容量無制限、ユーザー課金で容量に上限、容量課金でユーザー無制限
  • ユーザー課金と容量課金の分かれ目はおおむね20人前後。ただし保存量が上限に収まることが条件。
  • 見落とされやすいのは最低利用期間。12か月と定めている製品もあれば、7日以内の按分返金がある製品もある。
  • 単価だけで比べない。メールと会議を含む製品と、ストレージ単体の製品では、そもそも含まれる範囲が違う。

詰まるのは比較表ではなく、その手前

「どのクラウドストレージがいいか」という問いには、条件抜きでは答えが出ません。1人あたり2TBが付く製品が優れているのか、全社500GBで人数無制限の製品が優れているのかは、その会社が何人で何GB持っているかで逆転します。にもかかわらず、選定の場では機能の多寡や知名度から議論が始まりがちです。

実際に手を動かす順番は逆です。自社の数字を先に出し、それを条件として製品側にぶつける。この順序にすると、比較表のほとんどの行は読む必要がなくなります。5製品の課金の型と料金を横に並べたものは法人向けクラウドストレージ比較にありますが、そこを読む前にこの記事の6項目を出しておくと、判断が速くなります。

クラウドストレージ選定で先に出す6つの数字と、それぞれで何が決まるかを段階的に並べたステップ図
この6つが出れば、比較表で見るべき行は数行に減る

手順1から3。容量、人数、最大ファイル

最初の3つは、社内のファイルサーバーを見れば数時間で出ます。順番に説明します。

1. 今のファイルの総量は何GBか

ファイルサーバーと、各PCに散っている共有フォルダを合算します。個人のデスクトップに置かれた業務ファイルも、移行の対象にするなら数に入れてください。この数字がそのまま、容量課金の製品でどのプランを選ぶかを決めます。300GB、500GB、1TB、3TBという区切りのどこに収まるかを見ます。

2. 使う人は何人か。1年後は何人か

現在の人数だけでなく、1年後の見込みも出します。社外の協力会社や取引先にIDを配る予定があるなら、その人数も数えます。ユーザー課金の製品では、配った人数だけ月額が増えるからです。この数字が、ユーザー課金と容量課金のどちらが安いかを決めます。

3. いちばん大きい1ファイルは何GBか

対象フォルダをサイズの降順で並べて、最大値を見ます。これが5GBを超えるかどうかで、選べるプランの下限が変わります。たとえばBoxの場合、Businessは1ファイル5GB、Business Plusは15GB、Enterpriseは50GBと、プランごとに上限が公開されています。5GBを超えるファイルが日常的にあるなら、いちばん安いプランは選べません。

1ファイルの上限は、公式の料金ページに書かれている製品と、書かれていない製品があります。DropboxとGoogle Workspace、Microsoft 365の日本語料金ページでは、この上限の記載を確認できませんでした。大きな単体ファイルを扱う会社は、見積もりの段階で明示的に質問してください。セキュアSAMBAは全プラン100GBと料金表に書かれています。

課金の型は3つしかない

製品名から入ると数が多く見えますが、料金の作りだけを見ると3つに分かれます。ここを押さえると、比較の軸が一気に減ります。

課金の型該当する製品人数が増えると保存量が増えると向く会社
ユーザー課金・容量は無制限Box(Business以上)月額が人数分だけ増える金額は変わらない保存量が読めない会社
ユーザー課金・容量に上限Dropbox、Google Workspace、Microsoft 365月額が人数分だけ増えるプランを上げるか人数を増やす1人あたりの保存量が中くらいの会社
容量課金・ユーザー無制限セキュアSAMBA金額は変わらない容量プランを上げる人数が多く、保存量が読める会社

同じ「ユーザー課金・容量に上限」でも、容量の数え方はさらに分かれます。Dropboxはチーム全体で5,000GBという総量方式、Google Workspaceは1人あたり2TBを組織のプールとして共有する方式、Microsoft 365は1人あたり1TBです。人数を変えたときに組織全体の容量がどう動くかが、この3つで違います。

人数と保存量で、選ぶ型が決まる

会社の人数と保存量の組み合わせごとに、ユーザー課金と容量課金のどちらが向くかを整理した比較表の図
分かれ目はおおむね20人前後。ただし保存量が上限に収まることが前提になる

具体的な金額で確かめます。容量課金の代表として、セキュアSAMBAのビジネスプラン(500GB・月35,000円・税抜)を置きます。ユーザー課金の代表として、1人1,800円を置きます。これはBox Businessの税込1,980円(年払い)を消費税10%で割り戻した値です。

10人なら、ユーザー課金は18,000円、容量課金は35,000円。ユーザー課金のほうが安くなります。20人なら36,000円と35,000円でほぼ並びます。50人なら90,000円と35,000円で、容量課金が55,000円安くなります。ここが分かれ目です。

ただし前提があります。容量が500GBに収まっていることです。50人の会社で保存量が2TBあるなら、セキュアSAMBAはエンタープライズ3TB(月88,000円)になり、ユーザー課金の90,000円とほぼ並びます。人数だけで決めてはいけないのは、このためです。

手順4。何日前まで戻せる必要があるか

4つ目は復元期間です。誤って消したファイル、上書きしてしまった見積書、ランサムウェアに暗号化されたフォルダ。これらを何日前の状態まで戻せるかは、プランによって明確に違います。

Dropboxの場合、Plusが30日、Standardが180日、Advancedが1年と料金ページに書かれています。11倍以上の開きです。他の4製品の日本語料金ページでは、この形で復元期間を明記しているものを確認できませんでした。

決め方はこうです。「消えたことに気づくまで何日かかるか」を考えます。毎日使うフォルダなら翌日には気づきます。年に一度しか開かない申請書類なら、1年経ってから気づくかもしれません。後者があるなら、180日では足りません。

復元期間とバックアップは別物です。セキュアSAMBAの場合、月額に含まれる復元手段はゴミ箱機能で、世代管理されたバックアップは有料オプションと公式に書かれています。「クラウドに置いたからバックアップは不要」という判断をする前に、月額に何が含まれているかを確認してください。

手順5。メールと会議の重複を確認する

5つ目は既存契約との重なりです。Google WorkspaceとMicrosoft 365は、ストレージ単体の製品ではありません。メール、カレンダー、ビデオ会議、ドキュメント作成が含まれています。一方、Box、Dropbox、セキュアSAMBAはストレージとファイル共有が主です。

すでにMicrosoft 365を全社で契約している会社が、単価の安さだけでGoogle Workspaceを追加すると、メールと会議が二重になります。逆に、これから一式そろえる会社が、ストレージ単体の製品を選ぶと、メールサーバーを別に用意することになります。

比べるべきは単価ではなく、その会社が払う総額です。「今払っているもの」から「重複して不要になるもの」を引き、「新たに必要になるもの」を足す。この計算をしないと、単価が安い製品を選んだのに総額が上がる、ということが起きます。

手順6。最低利用期間とトライアルを先に読む

最後は契約条件です。ここは料金表に書かれていないことが多く、見落とされます。同じ「月額いくら」でも、止められるタイミングがまったく違います。

セキュアSAMBAのよくあるご質問の画面。最低利用期間は12ヶ月となっておりますと書かれている
料金表ではなく、よくあるご質問に書かれていた条件。契約期間は探しにいかないと出てこない(出典:株式会社kubellストレージ、2026年9月10日時点)
製品公式に書かれている契約・解約の条件無料で試せる期間
Box年間プランは1年契約。更新日まで解約もシート数の削減もダウングレードもできない。月間プランは更新日の3営業日前までにキャンセル。返金なし14日間
Dropboxサービス提供期間の満了日の少なくとも30日前までに書面で通知。数量を減らす部分的な解約も同じ。料金は返金不可公式ページに30日間の記載
Google Workspace年間プランは1年契約と表示。請求は月単位。解約条件は料金ページで確認できず14日間
Microsoft 365年間サブスクリプションで自動更新。有料開始から7日間はキャンセル可能で按分返金。キャンセルすると関連データはすべて削除1か月
セキュアSAMBA最低利用期間は12か月。短期利用は個別相談14日間(フリープランは期間無制限・2GB)

この表の意味するところは単純です。試せる期間と、失敗したときに止められるタイミングを先に知っておく、ということです。1か月試せて7日以内なら返金される製品と、14日試して12か月契約になる製品では、検証にかける労力の配分が変わります。

5製品を同じ土俵に並べ直す

ここまでの6項目が出たら、あとは当てはめるだけです。参考として、現行5製品の入口のプランを同じ列に並べます。金額はいずれも公式ページの表示で、税の区分はそろえていません。

比較軸Box BusinessDropbox StandardGoogle Workspace StandardMicrosoft 365 Business BasicセキュアSAMBA ビジネス
月額の表示1,980円(税込・年払い)1,500円(年払い)1,600円(年間プラン)1,049円(税抜・年払い)35,000円(税抜)
課金の単位ユーザーユーザーユーザーユーザー容量
容量の数え方無制限チーム全体で5,000GB1人あたり2TBのプール1人あたり1TB全社で500GB
最少人数3名3人1人1人制限なし
人数の上限上限なし公式ページに記載なし最大300人最大300ユーザー無制限
1ファイル上限5GB公式ページで確認できず公式ページで確認できず公式ページで確認できず100GB
メール・会議含まない含まない含む含む含まない

この表を上から順に自社の数字と突き合わせると、たいてい2つか3つに絞れます。たとえば「12人、保存量300GB、最大ファイル2GB、メールは既にMicrosoft 365」という会社なら、容量課金は割高、メールは重複するのでGoogle Workspaceは外れ、残るのはBoxかDropboxか、既に契約しているMicrosoft 365のストレージをそのまま使うかの3択です。

「45人、保存量450GB、最大ファイル30GB、メールは独自サーバー」という会社なら、1ファイル30GBでBox Businessは外れ、人数45人で容量課金が有利になり、セキュアSAMBAのビジネスプランが第一候補になります。条件が変われば答えも変わる、というのはこういう意味です。

やりがちな間違い

単価だけで並べる

含まれる範囲が違います。メールと会議が入っている製品と、ストレージだけの製品を同じ列に並べても比較になりません。

税の区分をそろえない

Boxは税込、Microsoft 365とセキュアSAMBAは税抜と明記しています。DropboxとGoogle Workspaceは料金ページで確認できませんでした。

キャンペーン価格で見積もる

Google Workspaceの割引は、新規のお客様のみ、最初に追加された20ユーザー、12か月間限りという条件付きです。標準料金で稟議を組みます。

「無制限」を確認せずに使う

Boxの容量は無制限ですが、公正使用ポリシーで帯域は1ユーザー月1TBまでと定められています。保存と通信は別の話です。

人数だけで容量課金を選ぶ

人数が多くても、保存量がプランの上限を超えれば上位プランになります。容量が先、人数が後です。

移行の手間を計算に入れない

データを移す作業と、社員が新しい操作を覚える期間があります。月額だけが導入コストではありません。

社内で合意を取るときに用意するもの

選定そのものが終わっても、稟議で止まることがあります。担当者の頭のなかでは結論が出ているのに、決裁者に説明する材料が足りない、という形です。ここでつまずかないために、次の4点を最初から資料の形で残しておいてください。

  • 今かかっている費用の内訳。ファイルサーバーの本体、保守費、電気代、バックアップ用の機材、そこにかかっている担当者の時間。クラウドへ移すと消える費用と、残る費用を分けます。
  • 候補2製品の総額。人数を掛けた月額に加えて、必要なオプション、移行にかかる一時費用まで含めます。年額でも出しておくと比較しやすくなります。
  • 止められるタイミング。最低利用期間、解約の通知期限、返金の有無。決裁者がいちばん気にするのは、失敗したときにいくら損するかです。
  • トライアルで確認した事実。実データを入れて何ができて何ができなかったか。感想ではなく、試した項目と結果を並べます。

この4点があると、議論が「どの製品が良いか」から「この条件で進めてよいか」に移ります。前者は好みの話になりがちで結論が出ませんが、後者は判断できます。逆に、比較表だけを持っていくと、決裁者から「他社はどうか」「もっと安いものはないか」と際限なく差し戻されます。

進め方の順序

  1. 数字を出す(1〜2日)総量、人数、最大ファイルサイズ。ファイルサーバーを見れば出ます。
  2. 課金の型を決める(半日)20人を境に、ユーザー課金か容量課金かを仮決めします。
  3. 候補を2つに絞る(半日)1ファイル上限と復元期間で、残った製品をふるいにかけます。
  4. 契約条件を読む(半日)最低利用期間、解約の通知期限、返金の有無を確認します。
  5. トライアルで検証する(2週間〜1か月)実データを入れて、権限、共有、検索、操作感を確かめます。
  6. 移行計画を立てる(1週間)移す順番、止める日、社内への案内をまとめます。手順はクラウドストレージ移行の手順に整理しました。

導入後の権限設計とセキュリティ設定はクラウドストレージの管理者設定とセキュリティにまとめています。製品ごとの詳細は、BoxDropbox BusinessGoogle WorkspaceMicrosoft 365 BusinessセキュアSAMBAの各ページに分けています。

よくある質問

結局どれがいちばん安いですか

人数と保存量で入れ替わります。10人で数百GBならユーザー課金の製品、30人で500GB以内なら容量課金の製品、50人で1人あたり1TB必要ならユーザー課金の製品が有利です。条件抜きの順位は付きません。

容量無制限を選べば失敗しませんか

保存量については心配が要らなくなります。ただしBoxの公正使用ポリシーでは帯域が1ユーザー月1TBまでと定められており、大量の出し入れをする使い方は別の制限にかかります。また単価は5製品のなかで高い部類です。

まず無料プランで試すのは有効ですか

操作感を見る用途なら有効です。ただし無料プランは機能が制限されていることが多く、判断材料としては不十分です。セキュアSAMBAのフリープランは2GBでログが閲覧できません。実際の判断は期間限定のトライアルで行ってください。

社内のExcelファイルを直接編集できますか

製品によって前提が違います。セキュアSAMBAは専用のドライブアプリを入れるとWindowsのエクスプローラー上で直接編集・保存ができると公式に書かれています。Google WorkspaceとMicrosoft 365は、それぞれのオンラインアプリで開く形が基本です。移行前にトライアルで確かめる項目です。

何人から容量課金が有利になりますか

1人1,800円のユーザー課金と、500GBで月35,000円の容量課金を比べると、20人前後で合計額が並びます。それを超えると容量課金が安くなりますが、保存量が500GBに収まることが条件です。

この記事で参照した一次情報

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です