多くの種類があって、それぞれの特徴がわかりづらい法人保険。
今回はランキング形式で法人保険を解説します。
個人向けにはない法人保険の3つの特徴
法人保険には、個人向けにはない3つの特徴があります。
①節税対策として使える
保険料(掛金)は、全額もしくは一部を損金として計上できるため、一般的な節税対策の中でも節税効果が高い方法です。
②社員の福利厚生として利用できる
保障者を社員にすることで、入院や通院が必要になった場合の福利厚生として活用することができます。
③資金形成ができる
解約返戻金がある商品を選べば、退職金の準備、簿外資産の形成、緊急準備金としてなど、様々な資金として貯めることが可能です。
このように、「法人保険にしかない特徴」をしっかりと理解し比較検討することで、より自社に合った保険を選ぶことができます。
詳細の説明は以下で解説します。
法人保険ランキング!1位から6位まで
1位:定期保険
定期保険とは
定期保険とは、死亡保障を目的とした掛け捨ての保険で、保障を受けられる期間が定まったものを言います。
定期保険は、一定期間の掛け捨てですが、割安な保険料で大きな保障を受けられる という点が最大の特徴です。
定期保険の保険期間
定期保険の保険期間は、1年から長いもので100歳までといったものがあります。
定期保険には短い保険期間を設定し、保険期間の満了と共に保険期間が自動的に更新されるといった更新型があります。
定期保険の解約返戻金
定期保険の解約返戻金は、保険期間によって異なります。
保険期間が短期のものについては、解約返戻金がほとんどありません。
定期保険の税務取扱
定期保険は満期保険金のない掛け捨ての保険です。
長期平準定期保険や逓増定期保険に該当しない場合、保険料は全額損金となります。
定期保険の経理処理に関する概要
以下が経理処理に関する概要になります。
- 契約者:法人
- 被保険者:役員または従業員
死亡保険金受取人 | 保険料経理処理 |
---|---|
法人 | 損金算入 |
損金算入 |
2位:逓減定期保険
逓減定期保険とは
逓減定期保険とは、ご契約後保険期間満了までに、保険金額が契約当初の金額から年々一定の割合で減少していくタイプの保険です。
保険金額が年々減少するわけですから、保険料は通常の定期保険より安くになります。
法人で加入される場合は借入金残高の減少に合った形で保障額も減少していくため、保険料を低く抑えながら合理的に事業保障資金の備えとして活用できます。
逓減定期保険の保険期間
逓減定期保険の保険期間は、契約時の年齢によって選択できる期間は限られ、若い方の方がより長い保険期間を設定できます。
法人で加入される場合は、借入金の返済期間に合わせた形で加入出来ますので、合理的に事業保障資金の準備として活用できます。
逓減定期保険の解約返戻金
割安な保障を重視した保険であるため、逓減定期保険には原則解約返戻金はありません。
ただし、保険期間が長期のものは解約返戻金が支払われるものもあります。
逓減定期保険の税務取扱
逓減定期保険は定期保険の一種なため、定期保険の税務取扱に準じています。
3位:長期平準定期保険
長期平準定期保険とは
長期平準定期保険とは、定期保険の中でも特に長期の保険期間を設定するものを言います。
保険期間が非常に長く、終身保険に近い死亡保障が得られます。
解約返戻率が高くなるため、長期平準定期は役員退職金の準備としても活用されることが多い保険です。
長期平準定期保険の保険期間について
長期平準定期保険の保険期間は非常に長く、「95歳満期」や「100歳満期」といった長期の保険期間となります。
法人の税務取扱では、支払った保険料の2分の1が損金処理できます。
長期平準定期保険の解約返戻金について
長期平準定期保険の場合、長期間にわたり高水準の解約返戻金が存在するのが特徴です。
加入後長期間経過すると支払った保険料の100%に近い解約返戻率になります。
この特徴を利用して経営者の退職金準備に活用されることが多いのが一般的です。
長期平準定期保険の税務取扱に関する概要
税法上の長期平準定期保険とは、以下の条件を全て満たすものを言います。
- 保険期間満了時における被保険者の年齢が70歳を超えるもの
- 保険加入時における被保険者の年齢に保険期間を2倍した数を加えた数が105歳を超えるもの
- 逓増定期保険に該当しないもの
長期平準定期保険の税務取扱は、保険期間の経過年数により変わります。
以下が税務取扱いの概要になります
残り期間 | 保険期間の前半6割の期間 |
---|---|
金額損金と前半6割で積み立てた資産を期間の経過に応じ取り崩して損金算入 |
|
4位:逓増定期保険
逓増定期保険とは
逓増定期保険とは、契約後、保険期間満了までに保険金額が契約当初の金額から5倍まで増加する定期保険を言います。
満期保険金がない掛け捨ての保険ではありますが、解約返戻率が契約後早い段階で高率になることが逓増定期保険の特徴です。
この特徴を活かし、法人の財務強化対策や役員退職金の準備として活用されることが非常に多いです。
逓増定期保険の保険期間
逓増定期保険の保険期間は、契約時の年齢によって制限されます。
法人の税務取扱では、逓増定期保険の多くが支払った保険料の2分の1を損金として処理することができるので、損金として処理しながら、万一の際の死亡退職金だけではなく、生存退職金の準備として活用する法人も多いです。
逓増定期保険の解約返戻金
逓増定期保険の解約返戻金は、契約後早い段階で高率になるのが特徴です。契約後、数年で支払った保険料の100%に近い返戻率になります。
この特徴を活かし、主に経営者の退職金準備として加入されることが多くなっています。
ただし、あくまで掛け捨ての定期保険の一種なので、返戻率のピークを過ぎると徐々に解約返戻金は減っていきますので注意が必要です。
逓増定期保険の税務取扱
税法上の逓増定期保険とは、以下の条件を全て満たすものをいいます。
- 保険金額が加入時の5倍以内まで増加するもの
- 保険期間満了時における被保険者の年齢が45歳を超えるもの
逓増定期保険の保険料の損金割合は、以下のようになります。
区分 | 税務取り扱い | |
---|---|---|
保険期間の前半6割の期間 | 残りの期間 | |
保険期間満了の時における被保険者の年齢が45歳を超えるもの | 2分の1損金 2分の1資産計上 |
– |
保険期間満了の時における被保険者の年齢が70歳を超え、かつ、当該保険に加入した時における被保険者の年齢に保険期間の2倍に相当する数を加えた数が95を超えるもの | 3分の1損金 3分の2資産計上 |
全額損金に加え、前半6割で積み立てた資産を期間の経過に応じ取り崩して損金算入 |
保険期間満了の時における被保険者の年齢が80歳を超え、かつ、当該保険に加入した時における被保険者の年齢に保険期間の2倍に相当する数を加えた数が120を超えるもの | 4分の1損金 4分の3資産計上 |
5位:終身保険
終身保険とは
終身保険とは、保険期間に定めのない一生涯の保障が確保された保険です。
つまり、必ず保険金を遺族に残すことが出来ます。保険料については、必ず保険金が支払われる性格を持っていますので、当然ながら、掛け捨ての保険と比べると割高になります。
終身保険の保険期間
終身保険は一生涯の保障が確保された保険ですから、保険期間は一生涯です。
ただし、保険料の払込み期間は自由に選べます。
終身保険の解約返戻金
終身保険は必ず保険金が支払われる保険ですから、お支払になる保険料には将来の保険金のための積立部分が含まれています。
そのため、解約返戻金も高水準で、保険加入後何十年か経過すると支払った保険料を上回る額になってきます。
この特徴を活かし、法人で資産形成の手段として活用されています。
保険料は損金として処理できませんが、資産形成として十分に役立つ保険といえます。
終身保険の税務取扱
終身保険は必ず保険金を受け取れる貯蓄性の高い保険であるため、保険料の取扱は資産計上となります。
終身保険の経理処理に関する概要
- 契約者:法人
- 被保険者:役員または従業員
以下が終身保険の経理処理概要を表にまとめたものになります。
死亡保険全受取人 | 保険料経理処理 |
---|---|
法人 | 資産計上 |
6位:養老保険
養老保険とは
養老保険とは、満期保険金のある貯蓄性が高い保険です。
保険期間中にお亡くなりになった時も、保険期間満了まで生存された時も、どちらも同じ金額の保険金を受け取れる保険です。
また、養老保険は従業員の福利厚生プランとしても多く活用されている保険です。
税の軽減をしながら従業員退職金の原資を作れるため、多くの法人が養老保険を活用しています。
養老保険の保険期間
養老保険の保険期間には、5年・10年・15年・・・30年満期や55歳・60歳・65歳満期などがあります。
契約時の年齢によって選択できる保険期間は限られ、当然若い方の方がより長い保険期間を設定できます。
養老保険の解約返戻金
養老保険の保険料には、将来の満期保険金の支払いに備えた積立部分が含まれています。
これにより、お支払いになった保険料が満期保険金の準備資金として積み立てられますので、解約返戻金もそれに合わせて増加することになります。
従って、養老保険は保険期間満了の直前に解約しても満期保険金とほぼ同額の解約返戻金を受け取れますので、急にお金が必要になった場合にも対応できる保険と言えます。
また、この高い貯蓄性を利用し、養老保険は法人で従業員の退職金準備として活用されています。
契約形態によって保険料の2分の1を損金として処理できますので、損金処理しながら退職金の準備もでき、更に保障の確保や資産形成もできる保険です。
養老保険の税務取扱
養老保険は生存保険金(満期保険金)がある保険なので、死亡保険金と生存保険金の受取人の違いによって、その経理処理も異なってきます。
養老保険の経理処理に関する概要
- 契約者:法人
- 被保険者:役員または従業員
以下が養老保険の経理処理に関する概要を表にしたものになります。
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保険料経理処理 |
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6つの種類の法人保険をメリット、デメリット、解約返戻金の有無、経理処理
6つの種類の法人保険に関するそれぞれのメリット
以下が6つの種類の法人保険に関するそれぞれのメリットになります。
定期保険の4つのメリット
- 割安な保険料で大きな保障を確保できる
- 保障額、保障期間の見直しがしやすい
- 事業保障対策、死亡退職金、弔慰金準備に有効
- 支払保険料が全額損金
逓減定期保険の3つのメリット
- 定期保険よりも保険料が割安
- 借入金返済資金対策など、必要保障額が減少していくものに有効
- 支払保険料が全額損金扱い
長期平準定期保険の4つのメリット
- 長期にわたる保障が確保できる
- 事業保障対策、死亡退職金/弔慰金準備、相続/事業承継資金の準備に有効
- 解約返戻金を勇退退職金や急な資金需要に活用できる
- 支払保険料の一部を損金扱いにできる
逓増定期保険の3つのメリット
- 3〜10年程度で解約返戻金の返戻率がピークとなるため、比較的短期の資金準備に活用できる
- 死亡退職金/弔慰金準備、勇退退職金準備、相続/事業承継対策に活用できる
- 支払保険料の一部を損金扱いにできる
終身保険の2つのメリット
- 保障が一生涯続く
- 勇退退職金対策、相続対策資金準備として有効
養老保険の3つのメリット
- 役員/従業員の死亡弔慰金準備など福利厚生の充実に活用できる
- 退職金や設備投資などを計画的に準備できる
- 死亡保険金の受取人を被保険者の遺族とすることで、支払保険料の1/2を損金扱いとできる
6つの種類の法人保険に関するそれぞれのデメリット
以下が6つの種類の法人保険に関するそれぞれのデメリットになります。
定期保険のデメリット
- 解約返戻金がない、あるいはあっても少額であるため、解約返戻金を活用した資金対策は難しい
逓減定期保険のデメリット
- 解約返戻金がない、あるいはあっても少額であるため、解約返戻金を活用した資金対策は難しい
長期平準定期保険の2つのデメリット
- 定期保険に比べ、保険料が割高
- 解約するタイミングによっては、解約返戻金が支払保険料を大きく下回ることもある
逓増定期保険の3つのデメリット
- 解約返戻金はピークを過ぎると減少していき、ピークとなる期間も短いため、解約のタイミングを逃さないようにしなければならない
- 定期保険に比べ、保険料は割高
- 解約するタイミングによっては、解約返戻金が支払保険料を大きく下回ることもある
終身保険の3つのデメリット
- 定期保険に比べ、保険料は割高
- 解約するタイミングによっては、解約返戻金が支払保険料を大きく下回ることもある
- 保険料を損金計上できないため、節税メリットは受けられない
養老保険のデメリット
- 保険料が割高である
6つの種類の法人保険に関する解約返戻金の有無
以下が6つの種類の法人保険に関する解約返戻金の有無を表にしたものになります。
保険種類 | 定期保険 | 逓減定期保険 | 長期平準定期保険 | 逓増定期保険 | 終身保険 | 養老保険 |
解約返戻金 の有無 |
✕ | ✕ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
6つの種類の法人保険に関する 解約返戻金の有無
定期保険に関する解約返戻金の有無
- 全額が損金扱いになる
逓減定期保険に関する解約返戻金の有無
- 全額が損金扱いになる
長期平準定期保険に関する解約返戻金の有無
- 保険期間の前半60%相当期間: 1/2資産計上、1/2損金扱い
- 保険期間の後半40%相当期間: 全額損金扱い(前半分の資産計上分も取り崩して損金算入)
逓増定期保険に関する解約返戻金の有無
- 保険期間の前半60%相当期間:1/2〜3/4資産計上または1/4~1/2損金扱い
- 保険期間の後半40%相当期間:全額損金扱い
終身保険に関する解約返戻金の有無
- 全額が資産計上になる
養老保険に関する解約返戻金の有無
- 1/2資産計上、1/2損金扱い (契約者・満期保険金受取人:法人、被保険者:役員・従業員、死亡保険金受取人:被保険者の遺族)
まとめ
いかがだったでしょうか。
今回は『【目的別】法人保険・法人向け保険人気ランキング』という記事のタイトルで、6つの法人保険を紹介しました。
しかし、法人保険はそれぞれの保険会社によって若干契約内容や契約期間が異なります。
そのため、法人保険を選ぶ際は、必ず、いくつか保険会社の商品を比較し、自社にあう法人保険を選ぶことをおすすめします。