そもそも人事評価システムとは?
人事評価システムとは、社員に関する情報を管理し、適正な評価を下すための業務用ツールです。社員それぞれの経歴や能力を数値化してまとめます。データを分析し、その結果を元に個々人の給与や昇進を決定します。
能力によって最適な人材配置を行うなど、組織づくりにも役立ちます。新たなプロジェクトのメンバーを選定する際の判断基準にもなるでしょう。
公正かつ効率的な人事評価が実現
社員の評価をExcelなどのファイルや書類で管理している企業も少なくありません。その場合、人事評価業務ではかなりの手間を要します。データ分析やシミュレーションにも限界があるでしょう。時間や工数を割けば、余計に人件費もかかってしまいます。
さらに人事評価は、「人が人を判断する」という性質上、曖昧な基準で行われてしまいやすいです。印象や人間関係に左右される部分も大きく、客観的な評価を下すのは難しいでしょう。
ですが専用のシステムを使えば、これらの課題は一気に解決されます。
人事評価システムは、社員の情報や評価基準、人事評価のワークフローをすべて見える化します。データベースの情報を一覧で把握したり、人事配置をシミュレーションしたりとさまざまな作業が一つのシステムで完結するのです。
余計な時間や工数を割く必要がなくなり、大幅な業務効率化が期待できるでしょう。
人事評価システムの最大の魅力は、公正な判断が実現することです。データを元にして検討を行うので、主観を徹底的に排除した評価を下せます。またシステム上のデータを複数の人事担当者で共有し評価を行えば、判断基準を一定に保てるようにもなります。
一般的な人事評価では、売り上げなどの定量的なデータを軸に判断されますが、人事評価システムではコミュニケーション能力や勤務態度など定性的なデータからも、多角的に人材を評価できるようになります。
能力のある人材が正しく評価される仕組みは、社員のモチベーションアップにも直結します。組織全体の生産性向上にも貢献するでしょう。
人事評価システムができること・機能を解説!
人事評価システムで一体何ができるようになるのか、具体的に解説します。
評価の可視化
人事評価システムでは、社員それぞれの仕事の成果や能力を見える化できます。「これまでどんな業務に携わってきたのか」「保有している資格やスキル」などの膨大な情報を分かりやすく整理して、一覧形式で表示します。
人事評価システムではデータベースに情報を格納するので、過去の評価もストックされていきます。企業規模が大きくなるほど、社員それぞれの経歴やスキルを把握するのは難しくなりますが、専用のシステムを利用すれば、過去と現在の情報を元に正しく評価を行えます。
目標・進捗管理
人事評価システムは、チームのマネジメントにも効果を発揮します。社員の目標達成のための道のりを作り、行動計画を策定できます。目標達成に必要な期間やプロセス、現状の課題を正しく把握できるようになるでしょう。
マネージャーやチームリーダーが適宜フィードバックを行うことで、個人のパフォーマンスを最大限に引き出せるようになるのです。
データの一括管理
人材についての情報は、さまざまな所に散らばってしまうこともあります。その結果、情報の連携がうまくいかないことも少なくありません。
例えば目標管理シートを部署ごとに独自のフォーマットで管理している場合など、すべての社員を同じ視点から判断するのは困難になるでしょう。
人事評価システムは、社員の目標進捗から成果まで一つのシステム上にまとめられるようになります。
MBO評価
MBO評価とは、設定した目標の達成度に応じて評価を決める人事評価手法です。経営学者のピーター・F・ドラッカーが提唱した手法として、広く知られています。個人と組織の目標をリンクさせ、個人のパフォーマンス向上や組織の業績アップを図ります。
MBO評価において、目標の設定は一方的に決められるものではありません。社員の意思で定めた目標に対して上司がその都度改善を提案しながら、組織全体の目標達成につなげていく仕組みです。
多くの人事評価システムでは、このMBO評価の手法がサポートされています。既に自社で実践している場合も、より正確な評価が可能になるでしょう。
360度評価
360度評価とは、上司や同僚など立場の異なる複数の視点から、人材を評価する手法です。多面評価とも称されます。これにより可能な限り主観を排除した公正な評価が実現します。
周囲からどのように見られているのかを認知でき、自らの行動を改めるきっかけにもなるでしょう。従来のような上司から部下への一方通行の評価を補完する手法として注目されています。
人事評価システムは、360度評価に対応したものも多く提供されています。
360度評価は、評価者の数や属性が増えるほど正確な結果になります。しかし工数がかかってしまい、作業も複雑になりやすいという側面もあります。
人事評価システムを活用すれば、これらのプロセスを簡略化できます。
クラウド型のシステムを導入すれば、社員は自分の端末からシステムにアクセス可能です。業務に支障を発生させず、速やかに評価作業が完了します。360度評価の導入により、人事担当者の負担軽減にもつながるでしょう。
人事評価システム導入のメリット・デメリットをまとめました!
人事評価システム導入のメリット・デメリットを解説します。
メリット
人事評価システムにはさまざまなメリットが存在します。
業務の効率化
システム上にデータをまとめ、さまざまな業務の効率を実現できます。ルーティンワークや煩雑な業務を削減すると、人事担当者やマネージャーは、部下へのフィードバックを丁寧に行なったり、人員配置を検討するなど、より本質的な仕事に時間を割けるようになります。
社員のモチベーションアップ
公正な人事評価は、社員のモチベーションアップにもつながります。どれほど結果を出しても認められなかったり、理不尽な人事配置が行われれば、真面目に頑張る人や優秀な人ほどモチベーションが下がっていくでしょう。
個々の社員のモチベーションが下がれば、組織の生産性低下を招きます。優秀な社員の離職を引き起こす可能性もあります。
人事評価システムでは、より具体的かつ数字をベースとした評価が行われます。上司からのフィードバックも質の高いものになります。
自分の仕事が適正に評価されていると感じれば、仕事へのやる気も高まってくるでしょう。昇給や昇進など、目に見える形でしっかりと評価を与えることが組織には欠かせないのです。
適切な人材配置
組織の生産性を高めるためには、人材の最適な配置が求められます。事務処理の能力が高い人が、不向きな営業職に配属されるといった状況は、企業・社員双方にとって損失です。できる限り避けるべきでしょう。
人事評価システムを利用すれば、社員一人ひとりの能力を客観的指標を元に把握できます。人材配置のシミュレーション機能を搭載したシステムも多数存在します。人的リソースをうまく活用するためにも、専用システムの利用は重要です。
評価基準が明確になる
人事評価システムの導入により、基準が統一される利点もあります。人材評価において、相対的な評価は避けなければなりません。
例えば、同じ部署に分かりやすい成果を出す社員がいる影響で、本来評価されるべき人材が埋もれてしまうなどの場合です。これでは不平不満を抱く社員が出てきてもおかしくありません。
評価基準は統一された基準を元に行う必要があります。データを元にした人材評価であれば、さまざまな角度から適正な判断を下せるのです。
デメリット
人事評価システムにはデメリットも存在します。
コストがかかる
人事評価システムは、導入にコストがかかります。導入の際だけではなく、ランニングコストも考慮しなければなりません。必要な機能によっては追加で料金を払うことにもなるでしょう。
また新たなシステムを社内に導入するとなれば、事前に比較検討を行ったり話し合いを重ねたりする必要があります。導入後も社内の人材に関するデータを全てまとめるなどの際は、大きな手間がかかるかもしれません。
本当に費用対効果があるのかを慎重に検討しましょう。
自社の評価制度にマッチするシステムを探さなければならない
企業によって人材評価で重視するポイントは異なります。システムの特性もそれぞれ違いがあります。そのため、システムの内容によっては自社の人事評価制度に適していないことも考えられます。
自社にとって本当に必要な機能は何かを事前に決めておく必要があります。最低限の機能だけ導入し、必要になるに応じて拡張していくのが確実な方法です。
人事評価システムの費用相場はどれくらい?高価格システムの違いは?
クラウド型の人事評価システムであれば、月額2〜6万円ほどのものが多いようです。機能やプラン内容に応じて上下しますが、一般的には月額数万円で利用できます。
高価格システムは、多機能であったり、そのシステム独自の機能が搭載されていることがほとんどです。
近年特に注目されているのが、従業員のメンタルヘルスケア機能です。
組織内での人間関係に悩んだり、誰にも相談できない問題を抱えることがないように、仕事へのモチベーションや精神的・体調的な問題を、上長や担当者が事前に把握できる機能が搭載されていたり、専門のドクターとの連携体制が取られているシステムも提供されています。
具体的にはアンケートに答えてもらい、その内容から心身の状態を分析したり、周囲との人間関係が良好かどうかを解析する機能などです。社員一人ひとりのメンタルや体調に配慮することで、休職や離職を防げるようになります。
こういった独自の機能が必要である場合は、高価格なシステムを選ぶ必要があります。
また導入する企業の状況や課題をヒアリングし、機能をカスタマイズする形態のサービスは費用が高額になることが多く、見積もりが必要であるのが一般的です。
無料の人事評価システムはある?おすすめはどれ?
人事評価システムは無料で使えるものもあります。まずは無料トライアル制度です。一定の無料トライアル期間を設けているサービスも多いので、試しに導入して、費用対効果がありそうだと判断した段階で利用を開始すると良いでしょう。
また初期費用無料というサービスもあります。導入コストがかからないので、ハードルは低くなるでしょう。
上記のパターンの場合、ランニングコストは支払わなければならなくなるので注意が必要です。
完全に無料で利用可能なフリーソフトも存在します。機能や人数の制限がありますが、もし費用をできるだけかけたくない場合は、検討してみるのもおすすめです。
公平クン
無料の人事評価システムの一番のおすすめは公正クンです。10名までの利用制限がありますが、機能は充実していますので、小規模の企業であれば問題なく利用できるでしょう。
複数人による評価システムとなっており、さまざまな指標で人材評価が可能です。評価内容の個人差を自動で補正してくれる便利な機能も搭載されています。
人事評価システムの選び方を解説!
人事評価システムは、以下を基準に選択しましょう。
操作性
操作がしやすいシステムを選ぶのは重要です。特にITツールに慣れてない社員が多い企業は、できるだけシンプルで直感的に扱えるものを選びましょう。
人材配置を検討する際などは、さまざまな条件で検索できるものが使いやすいです。まずは無料トライアル期間を利用し、社内でうまく使いこなせるかの確認をおすすめします。
セキュリティ
企業内のデータを扱うため、徹底したセキュリティは欠かせません。情報が外部に漏えいすれば大きな問題となります。顧客からの信頼低下にもつながります。システム導入前には、必ずセキュリティが万全かどうかの確認も必須です。
サポート体制
システムに不具合が生じてしまうと、業務に影響を及ぼします。想定外のトラブルが起きた際、迅速に対処してくれるサポートがあるシステムが安心です。電話やメールでいつでも問い合わせができるシステムを選びましょう。
コスト
人事評価システムは、毎月のランニングコストがかかります。導入によって仮に業務効率の向上が見られたとしても、それ以上のコストがかかってしまっていれば意味がありません。
本当に導入する価値があるものなのか、一度トライアルで使ってみて検討し、利用料を払うだけの効果があると判断したものを選ぶようにしましょう。
人事評価システム4つを比較!大企業・中小企業・自治体それぞれにおすすめを厳選!
人事評価システムを特徴をピックアップしながら紹介します。
中小企業・ベンチャーに特化、MINAGINE
MINAGINEは組織人事コンサルティングを専門とする株式会社ミナジンが提供するシステムです。最大の魅力は同社が蓄積したノウハウが詰め込まれている点にあります。
人事コンサルティングの第一人者吉田寿氏による監修を受け開発されたシステムで、評価項目はデフォルトで設定されています。導入するだけで、プロの人事評価がすぐに実現するのです。
主に中小企業・ベンチャー企業向けに設計されたシステムとなります。初期費用は400,000円~、月額30,000円〜となっています。
大企業におすすめ、Talent Palette
Talent Paletteの最大の特徴は、高度な分析機能にあります。独自のテキストマイニング技術を駆使して社員の回答したアンケートを解析し、モチベーションや満足度などを明らかにします。
ドラッグ&ドロップで操作できるインターフェイスも魅力です。社員一覧表示を直感的に動かして、人事異動による平均年齢や売上実績の変化を簡単にシミュレーションできます。
主に大企業向けのサービスで、イオン銀行やZOZOなど有名企業で導入実績があります。費用は企業規模によって異なるため、見積もりが必要となっています。
機能の拡張性が抜群、jiina
jiinaは、拡張性の高さが特徴の人事評価システムです。社員の基本情報や評価だけでなく、経営戦略の立案やKPI設定まで設定が可能です。組織マネジメントや働き方改革までこれ一台で完結できるでしょう。
システムは、2,600社以上の企業へのコンサルティング経験を元に設計されています。費用は利用する機能によって異なるため、見積もりが必要です。
万全のサポート体制、ゼッタイ!評価
サポートが万全の人事評価システムです。導入する企業が「6ヶ月で評価制度を運用できるようになる」ことを目標に、評価体制の整備から社員面談まで一貫してサポートします。月に1回は担当者が定期訪問してくれるので、導入企業はその都度相談を行えます。
評価システムの導入に慣れていない中小企業や自治体におすすめです。
導入費用は300,000円、6ヶ月の顧問料は月額200,000円となっています。