ピアボーナスとは?人気ツールを比較して解説!デメリットは?

そもそもピアボーナス・ピアボーナス制度とは?その特徴を解説!

ピアボーナスとは、仲間や同僚から送られるボーナスのことを指します。

たとえば、従業員それぞれにポイントや社内通貨を付与して、自分が「良い働きをした」と思う同僚に渡せるようにします。そして、もらったポイントや社内通貨を定期的に換金できる仕組みを使ってボーナスなどに上乗せします。こうすることで、仲間や同僚からの評価が実際に給与などに反映されるようになります。

ちなみに、換金できるポイントや社内通貨に限らず、ちょっとしたプレゼントや単純な称賛やメッセージカードなど、送りあうモノは導入している企業によってさまざまです。

ピアボーナスが注目されている背景とは?

ピアボーナスが注目されている背景には、従業員一人ひとりを適切に評価し、組織としての連帯感を高めて仕事に取り組まなければならないという経営上の課題があります。

21世紀型の組織について

人口ボーナスが発生していた20世紀とは異なり、21世紀の日本は人口の減少と成長するアジア経済からどのように産業を保護するのかという課題に迫られています。

つまり、20世紀はお手本となる国や企業の模倣をして、低賃金であることを活かしてがむしゃらに働けば人口の増加と共に市場は成長、企業も成長することができました。しかし、21世紀になり、日本の人口は減少に転じ、アジアの各国が20世紀型の成功モデルを行い、日本に追いつけ追い越せと著しい経済成長を遂げています。

このような情勢において、日本の企業は従来の成功事例を模倣して成長する組織から、従業員一人ひとりがスペシャリストとして能動的に働ける組織への変革を求められています。

ピアボーナスで一般的な人事評価制度の欠点を克服する

目標とするべき組織像を実現するためには、人事評価制度も見直さなければなりません。

年功序列や終身雇用が崩壊したと言われて久しいですが、成果主義型の人事評価制度にすれば全て解決するというわけではありません。むしろ、「評価制度」という枠組みを作ること自体が組織の硬直化を招くとも考えられます。

評価制度を作って、評価基準を明確にすれば、そのとおり従業員は行動するかもしれませんが、評価対象とならない仕事や工夫の発展を阻害する可能性があります。しかし、評価制度自体がなければ、従業員を適切に評価して、会社として実現して欲しい目標に誘導することはできません。

このような既存の評価制度の問題点を克服するために注目されているのがピアボーナスです。ピアボーナスには既存の評価制度では評価できない細やかな現場の評価を反映できる可能性があります。

ピアボーナスを導入するメリットはこの4つ!

ピアボーナス制度が既存の人事評価制度の欠点を補える点としては、「評価基準がなくても評価できる」「定量的に評価しづらい業務も評価できる」「すぐに評価、フィードバックができる」という効果があります。また、さらに派生して「組織としての一体感が高まる」効果も期待できます。4つのメリットについてそれぞれ解説します。

評価基準がなくても評価できる

まず1つ目のメリットとして挙げられるのが、評価基準がなくても評価できることです。

評価基準を作るためには、あらかじめ人事部などで評価項目を決めなければなりません。しかし、評価されるべきすべての行動を明文化することはできません。

人事部の気づかない細々としたことが実は現場の作業に役立っているかもしれませんし、大きなイノベーションや業務改革につながることは、評価基準の枠外の行動から発生することも多いです。

よって、従業員一人ひとりの自主性を尊重してイノベーティブな組織を作るのならば、評価基準に列挙できないことも評価できる仕組みを作る必要があります。

ピアボーナスは評価基準に囚われずに、同僚が個人に対して直接評価できる点で優れています。

定量的に評価しづらい業務も評価できる

2つ目のメリットとして定量的に評価しづらい業務も評価できる点があります。

たとえば、営業職は個人やチームの売上のような定量的な基準で評価できますが、企業には定量的には評価しづらい業務もたくさんあります。

たとえば、営業部門でも営業職は売上を持っているのに対して、営業事務は自身で売上を持たずに営業職のサポートを行います。営業職は獲得した売上で評価しやすいですが、営業事務は売上を持っていないので定量的に評価するのは困難です。

しかし、実は営業事務を誰が担当するかによって、営業職の成績が大きく変わることもあります。例えば、見積もりの作成スピードや、クライアントへの電話対応など定量的には評価できないことが実は定量的な結果を支えていたりします。

ピアボーナスを導入することによって、定量的には評価できないけれども大切な従業員の働きについても評価できるようになります。

すぐに評価、フィードバックができる

3つ目として良い行動をした従業員をすぐに評価、フィードバックできます。

人事評価は一般的に半年や1年に1回など定期的に行います。しかし、従業員の良い行動は早く評価、フィードバックした方が業務の改善スピードが早くなりますし、日々の業務の中で忘れてしまうかもしれません。

よって、素早く評価・フィードバックを行った方が良い場面では一般の人事評価制度よりも素早く対応できるピアボーナスの方が優れています。

ピアボーナスにより、良い行動をした同僚をすぐ評価することによって組織内の業務改善スピードが高まり、評価された側も何がどの位評価されたのかを明確に認識できます。

組織としての一体感が高まる

4つ目のメリットとして、ピアボーナスには組織としての一体感を高める効果もあります。通常の人事評価は上司や部下、広くても同じ部署で働く同僚くらいまでしか評価には加わりませんが、ピアボーナスでは社内の全ての仲間が個人の評価に関わる可能性があります。

上司や部下から高い評価を得ることは、会社全体で高い評価を得ることには一致しません。多くの部署間の連携のハブになっている従業員や、会社の雰囲気を明るくしてくれている従業員など通常の人事評価では評価しにくい人材でもピアボーナスならきちんと評価できます。

部署の垣根を超えた、称賛や高評価によって組織としての一体感を高める効果が期待できます。

ピアボーナスを導入する際の注意点・デメリットをまとめました!

ピアボーナスにはメリットがある一方でデメリット・注意点もあります。代表的なピアボーナスに関する注意点・デメリットを3つ紹介します。

客観的な評価基準ではないので、メインの評価制度にはできない

まず、ピアボーナスは一般的な人事評価制度の欠点を埋めるための制度ですが、取って代われる制度ではありません。

あくまでも、定期的な人事評価では評価できない現場の細やかな評価を迅速に行うための制度であって、ピアボーナスだけで人事評価をしようとしてもうまくはいきません。ピアボーナスだけですべてを判断すると評価が本当に公平に行われているのかが保証されませんし、評価基準がなければ評価する方も大変です。

売上などの定量項目で判断したり、あらかじめ定められた定性項目を360度で評価したりした方が、評価の公平性は高いでしょう。

ボーナス原資やシステム導入などに費用が必要

ピアボーナスをどのような形で導入するかにもよりますが、多かれ少なかれボーナスの原資やシステム導入などの費用が必要になります。

小さい組織ならば、システムなしでなんとなく手づくりのカードなどを使って運用できるかもしれませんが、一定以上の大きさの組織になるとピアボーナス用のシステムを導入しないと制度の収集がつかなくなる可能性が高いです。

ピアボーナスのシステム導入に関するコストは後程説明します。ピアボーナスの原資については各社の判断によりますが、給料を切り崩してピアボーナスの原資を作ると反発が起きると考えられるので、別に予算を用意するか、ボーナス原資の一部をピアボーナス化する方法が考えられます。

運用を従業員の自主性だけに任せると上手くいかないかもしれない

ピアボーナスに限らずどのような制度でも、ただ制度を導入しただけでは従業員に浸透せずに終わるケースもあります。ピアボーナスを導入して組織としての一体感を高めるためには、きちんと従業員がピアボーナスを送りあえる環境が必要になります。

ただし、ピアボーナスを送りあうのをノルマのようにしてしまうと、組織の一体化の効果が減少したり、なんとなく近しい同僚に送りあって制度が形骸化する可能性もあります。

従業員の自主性に任せつつも、どのようなときに使えば良いかを伝え、積極的にピアボーナスを送りあってもらえるように啓蒙する必要があります。

ピアボーナスをうまく活用するために必要なこととは?

ピアボーナスは従業員の自主性に任せて運用したいところですが、自主性に任せると制度が浸透しなかったり、形骸化してしまう可能性もあります。ピアボーナスをうまく活用するための3つのポイントについて紹介します。

使うことを強制しない

まず前提として、ピアボーナスを使うことを強制してはいけません。あくまでも従業員一人ひとりの自主性に任せて運用するべきです。

ピアボーナスを使うことをノルマのように課してしまうと、かえって組織の一体化を阻むことになりますし、制度として形骸化してしまいます。よって、ピアボーナスの利用率の目標を設定して、従業員全員で共有するなどの手法は止めておいた方が良いでしょう。

些細なことでもピアボーナスを送って良いことを表明する

ピアボーナスを導入しても、おそらく大抵の従業員はどのようなタイミングで送るべきなのか迷ったり、ちょっとしたことで送ると何か問題があるのではないかと変に勘繰るかもしれません。

ピアボーナスは何に対して送るかも大事ですが、送ること自体も重要です。些細なことでも従業員がピアボーナスを気軽に送れるように、ピアボーナスは個人の感覚で自由に送りあっても良いものだということを共有する必要があります。

ピアボーナスを送った理由について肯定的な評価をしても否定的な評価はしない、制度の導入説明会などで些細なことでも送ってよいことを表明するなどを行った方が良いでしょう。

業務に支障がないように簡単にピアボーナスを送れるようにする

ピアボーナスを送る手続きに手間がかかって、本来業務を圧迫するようであれば本末転倒になります。ピアボーナス制度を導入する際は、送ること自体が手間にならないような制度設計が必要になります。

一番簡単なのは社内システムとしてピアボーナスの仕組みを導入することです。会社のパソコンやスマートフォンから簡単に送れるようにすることで、本来業務を圧迫しないことはもちろんのこと、使用率の向上も見込めます。

ピアボーナスの導入事例・導入企業を集めました!あのメルカリも導入している?

既にチームビルディングに関心のある多くの企業がピアボーナスを導入しています。ピアボーナスを導入している代表的な企業を3社紹介します。

メルカリ

ピアボーナスを導入している代表的な企業として挙げられるのがメルカリです。メルカリには「mertip(メルチップ)」というピアボーナス制度があり、1ポイント=1円で毎週月曜日に400ポイントずつ従業員に配布しています。

何か良い働きをした従業員に特別に付与するというよりも、社内コミュニケーションのなかで自然と使用することによって組織としての一体感を高めています。

また、mertipの利用を促進するために「mertip賞」という社内表彰枠を作り、mertipを一番多く貰った人、一番多くあげた人の両方を表彰しています。

イグナイトアイ

採用管理システムの「SONAR」というサービスを運営しているイグナイトアイではビジネスチャットのSlackと連携できる「HeyTaco!」というピアボーナスサービスを導入しています。

タコス(HeyTaco!では感謝・称賛をタコスのスタンプを送って示す)のスタンプに短いメッセージを添えて、良い行動をした社員に送ります。そして、もらったタコスは数に応じて会社が用意した商品と交換できます。

誰が誰にタコスを送ったかはSlack上ですべて確認することができて、ただタコスを送りあった従業員同士が仲良くなるだけではなく、自分の知らないところ社内で何が起こっているのかが把握できて見た人が組織に親しみをもつ効果があるとされています。

ミュートス

製薬・医療業界に特化したシステム開発を行うミュートスもピアボーナスを導入している企業の1つです。

ミュートスは、社内のコミュニケーションはきちんと取れているし離職率も高いわけではないけれども、漠然と社内の活気が無いという問題意識から社員のエンゲージメント向上のために導入しました。

ピアボーナスの導入1ヶ月後からすぐにエンゲージメントが上昇、人事評価制度では拾いきれないように日々の従業員の細やかな活躍をシステム上で確認できたようです。

無料のピアボーナスツールはある?

日本においてピアボーナスはまだ黎明期の制度なので、ピアボーナスツールも今後新しいものが続々と登場してくると考えられます。よって、まだ無料のピアボーナスツールはほとんどありませんが、すでに1つ「OKWAVE GRATICA」という無料ツールがあります。

OKWAVE GRATICAはQ&AサイトのOKWAVEを運営している、オウケイウェイヴのピアボーナスツールで導入費用も利用料も無料ですべての機能が利用できます。

システムを導入すれば、PC、スマホ、タブレットなどから自由に500枚以上のサンクスカードと共に感謝や称賛を伝えられます。

また、サンクスカードには「OK-チップ」というトークンも添えられます。貯まったOK-チップはシステムのスポンサー企業の優待品・サービスと交換できたり、慈善団体に寄附したりできます。

オリジナルトークンは使用できませんが、導入も利用も無料かつクラウドシステムなのでサーバーコストも発生しないので、まず小規模にピアボーナス制度を試してみる場合には良いツールでしょう。

OKWAVE GRATICA

ピアボーナスの人気ツールを比較!UniposやRECOGは実際どうなの?

人気のピアボーナスツール3種類を比較して、それぞれのツールの特徴について説明します。

サービス Unipos RECOG HeyTaco!
導入費用(イニシャル) 200,000~300,000円 無料 無料
利用料(ランニング) 38,500円/月~ 33,000円/月~ 社員1人あたり1.95ドル/月
ビジネスチャットとの連携 ×
利用状況確認機能
無料トライアル ×

Unipos

メルカリ、ライフネット生命、リンク&モチベーションなど200社以上が導入しているピアボーナスツールです。

導入費用は少し高めですが、ただピアボーナスが送れるだけではなく、共感したメッセージに拍手ができたり、ビジネスチャットと連携できたりと機能性に優れたピアボーナスツールです。セキュリティについても頑強で、国際的なセキュリティ規格の認証を取得しています。

無料トライアルは原則行っていないので、とりあえず導入して使い勝手を試すことはできません。導入するまえに他のツールのチェックも含めて事前の情報収集をした方が良いでしょう。

Unipos

RECOG

ピアボーナスツールではありますが、どちらかといえば社内SNSとして役割が強く、社内のコミュニケーションの活性化のための各種機能が充実しています。

称賛や感謝の気持ちを伝えるレター機能だけではなく、掲示板、チャットルーム、チームページなどさまざまなコミュニケーション方法があります。

レター機能ではポイントを付与することもできて、貯まったポイントは自社でオリジナルギフトサイトを作ってプレゼントと交換することも可能ですし、システム側でもポイントと交換できるギフトを用意しています。

機能は充実していますが、ビジネスチャットとの連携などはできないため、既に社内SNSやビジネスチャットを導入している場合は、コミュニケーションを阻害しないように導入の工夫が必要です。

RECOG

HeyTaco!

海外の企業が提供しているSlackと連携できるピアボーナスツールです。

メンバー同士でタコスを送りあって、タコスの数で商品と交換したりボーナスを支給したりします。利用料は3つのツールの中でも圧倒的に安く導入費用も必要ありません。

ただし、SlackありきのツールなのでSlackを導入していなければ、HeyTaco!も導入できないこと、海外のサービスで日本法人が無いので他2つのサービスと比較すると十分なサポートが受けられないかもしれない点には注意が必要です。

HeyTaco!

ピアボーナス以外にコミュニケーション改善・組織風土改善に役立つサービスはある?

ピアボーナス以外にもコミュニケーション改善・組織風土改善に役立つサービス・制度はいくつも存在します。代表的なサービス・制度を3つ紹介します。

サンクスカード制度

サンクスカードとは従業員が周りの従業員に対して感謝の意を込めてサンクスカードを送れる制度のことです。ピアボーナスと仕組みはほとんど一緒ですが、ポイントや社内通貨を媒介しないので、ボーナス原資は必要ありません。また、シンプルに制度化するならば紙のサンクスカードを流通させるだけでも良いので導入のコストもありません。

いきなりピアボーナスを導入するのは大変だという場合は、まずサンクスカードをから始めてみると良いでしょう。

ちなみに、サンクスカードのシステムとしては「Sharin」「THANKS GIFT」などがあります。

ビジネスチャットツール

オフィスが複数に分かれていたり、外回りやテレワークの社内が多い場合は、物理的に対面でのコミュニケーションが困難となります。

このような場合に、コミュニケーション改善の手法として有効なのがビジネスチャットツールです。ビジネスチャットツールは、一般的なチャットにビジネスに必要な機能を付加した高機能型のチャットツールで、SlackやChatworkなどがあります。

ビジネスチャットを導入することによって遠隔でもコミュニケーションが取りやすくなります。

社内報

社内のコミュニケーション活性化の古典的ながら最も効果的な解決策の1つが社内報です。ある調査では、コミュニケーション不全の防止・抑制策として調査対象企業の約3分の1が導入しているという結果もあります。

社内報を定期的に発行して会社の目標や各部署の状況、イベントなどを共有することが、コミュニケーション改善・組織風土改善の王道の1つです。

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