溶解処理サービスを使うと証明書が発行されます。ところが、この証明書が何を証明しているのか、いつまで取得できるのかは、サービスによって条件が違います。発行されるから安心、では運用になりません。受け取ったあとに何をすれば社内の記録として機能するのかを整理します。
証明書が示すのは「箱が処理されたこと」であって「何が入っていたか」ではありません。箱は未開封のまま処理されるため、中身を知っているのは依頼した側だけです。したがって、箱の識別子と中身の概要を自社で記録し、証明書と突き合わせられる状態にしておく必要があります。また、発行期限が設けられている場合があります。佐川急便は日次(個別)の証明書を溶解処理後60日間とし、経過後の再発行はできないと明記しています。日本郵便は利用規約で溶解完了日から1年間の再発行を定めています。
証明書は「処理された事実」だけを示す
溶解処理サービスの設計は、情報漏えいを防ぐために「人が中身を見ない」ことを前提にしています。箱は封印され、未開封のまま溶解されます。この仕組みは安全ですが、裏を返せば、処理する側は何を処理したか把握していないということです。
そのため、証明書に書かれるのは、いつ、どれだけの量が処理されたかという事実です。「令和8年4月分として段ボール12箱を溶解した」という形であって、「どの契約書を処分した」という内容までは示せません。監査や社内調査で特定の書類の処分時期を問われた場合、証明書だけでは答えられません。
証明書をファイルに綴じても、あとから「この書類はいつ処分したか」には答えられません。箱の識別子と中身の対応を自社で残して初めて、証明書が記録として機能します。この作業は箱に封をする前にしかできません。
サービスごとに条件が違う
5サービスとも証明書を発行しますが、発行の形、期限、再発行の可否は一様ではありません。公式ページと利用規約で確認できた範囲を並べます。
| サービス | 証明書の名称 | 受け取り方 | 発行期限・再発行 |
|---|---|---|---|
| ヤマト運輸 | 証明書 | 公式ページに記載なし | 公式ページに記載なし |
| 佐川急便 | 溶解処理証明書 | スマートクラブ for businessのWebサイトで発行 | 月次は溶解処理後1年間、日次(個別)は60日間。経過後の再発行は不可 |
| 日本通運 | 溶解証明書 | 公式ページに記載なし(料金に発行手数料を含む) | 公式ページに記載なし |
| 日本郵便 | 溶解完了証明書 | 当該月ごとに翌月5営業日までに、申込書で指定したメールアドレスへ電子データで送付 | 溶解完了日から1年間に限り再発行 |
| 大塚商会 | 機密抹消の証明書 | 溶解処理後に発行 | 公式ページに記載なし |
表1 各社の公式ページおよび日本郵便の紙のリサイクル利用規約第10条の記載による(2026年10月23日取得)。記載がない項目は推測せず「公式ページに記載なし」としている
この表で目を引くのは、期限を公式に明示しているのが佐川急便と日本郵便の2社だけだという点です。残る3社は、発行すると書いてあるものの、いつまで取得できるのかが公開情報から分かりません。導入時に確認すべき項目です。

60日という期限の重さ
佐川急便の公式ページには、証明書発行に関する注意として、月次証明書は溶解処理後1年間、日次(個別)は溶解処理後60日間という発行可能期間が示され、発行期間を経過した場合の再発行はできないと明記されています。
60日は、四半期の締めより短い期間です。期末にまとめて処分し、その四半期の内部統制報告の段階で「個別の箱ごとの証明が要る」と気づいたときには、すでに取得できなくなっている可能性があります。
月次の証明書は1年あるため、年次の報告には間に合います。問題になるのは、特定の案件や特定の箱について個別に示す必要が生じたときです。どの粒度の証明が必要かを先に決めておき、必要なら処理のたびに日次の証明書を発行して保存する運用にしてください。
日本郵便は受け取る手間がない
日本郵便の紙のリサイクル利用規約第10条は、証明書の発行を次のように定めています。
当社は、本サービスにより機密文書箱の溶解が完了したことを証するために、当該月ごとに、当該月の翌月5営業日までに利用者が申込書で指定したメールアドレス宛に電子データで溶解完了証明書を送付します。
同条第2項は、機密文書箱の溶解完了日から1年間に限り、当該機密文書箱の溶解に係る溶解完了証明書を再発行すると定めています。
この設計の利点は、担当者が操作しなくても証明書が届くことです。佐川急便はスマートクラブのWebサイトで利用者が発行する形のため、発行を忘れると期限が来ます。日本郵便は自動的に送付されるため、少なくとも受け取り漏れは起きません。ただし、送付先は申込書で指定したメールアドレスです。担当者が異動したときに届出をしないと、退職した社員のアドレスへ送られ続けます。規約の第14条は、申込書の内容に変更が生じるときはその20日前までに変更事項届出書を提出するよう求めており、提出されなかったことに起因して生じた損害について責任を負わないと定めています。
出典:日本郵便の紙のリサイクル利用規約 第10条・第14条(日本郵便 機密文書溶解サービスに掲載のPDF、2026年10月23日取得)
箱と中身の対応をどう残すか
証明書を記録として機能させるには、箱を特定できる識別子が要ります。サービスによって識別の仕組みが違います。
| サービス | 箱を識別する仕組み | 自社側でやること |
|---|---|---|
| 佐川急便 | 専用送り状と封印シール | 送り状の番号と箱の中身の概要を控える |
| 日本郵便 | 専用ゆうパックラベル。規約で署名欄への署名を定めている | ラベルの追跡番号と中身を控える。署名した人を記録する |
| 大塚商会 | バーコードシール | シールの番号と中身を控える |
| 日本通運 | 1枚の送り状で複数個を扱う | 送り状の番号と、その回で出した箱それぞれの中身を控える |
| ヤマト運輸 | 会員サイトから資材注文と回収依頼 | 回収依頼の記録と箱の中身を突き合わせる |
表2 各社の公式ページおよび日本郵便の利用規約に記載された手順から整理した(2026年10月23日取得)
どのサービスでも、やるべきことは同じです。箱を識別できる番号と、その箱に入れた書類の概要を1行で残します。「令和4年度 経理 請求書控」程度で十分です。1枚ずつ目録を作る必要はありません。後から「あの年度の請求書はいつ処分したか」に答えられる粒度があればよいのです。
証明書が実際に要る場面
証明書を発行しても使う場面がなければ、手間だけが残ります。逆に、必要になってから慌てても間に合いません。どういう場面で求められるのかを押さえておくと、どの粒度で保存すべきかが決まります。
| 場面 | 求められる粒度 | 必要な準備 |
|---|---|---|
| 内部監査で文書管理の運用を確認される | 年次または月次の処分実績 | 月次証明書を年度ごとに保管する |
| 取引先から情報管理体制の説明を求められる | 処分の仕組みと実施の事実 | サービスの契約内容と証明書の控え |
| 特定の書類の処分時期を問われる | 箱単位の個別の証明 | 箱の識別子と中身の記録、日次の証明書 |
| 環境に関する取り組みを報告する | 処分量とリサイクルの事実 | 年間の処理箱数の集計 |
| 情報漏えいが疑われ経緯を調べる | 処分の日時と経路 | 証明書に加えて輸送状況の記録 |
表3 証明書が参照される場面と、そのときに必要になる記録の粒度を整理した
このうち3行目だけが、箱単位の個別の証明を必要とします。そして佐川急便では、この個別の証明が60日で取得できなくなります。自社の業務で3行目の場面が起こり得るかどうかが、処理のたびに日次の証明書を発行すべきかどうかの判断基準になります。起こり得るなら、処理の都度発行して保存する手順を組んでください。
証明書では補えないもの
証明書は処理が完了したことを示しますが、輸送中に何かが起きた場合の補償とは別の話です。日本郵便の紙のリサイクル利用規約第22条は、引き受けた機密文書箱の滅失または毀損により個人情報、顧客情報等の機密情報が漏えいし、利用者に損害を与えた場合は、当社の規定する補償内容および限度額の範囲内でその損害を賠償すると定めています。そして、補償内容と限度額は利用申込みの際に説明するとされています。
いくらまで補償されるのかを事前に調べる手段はなく、申込の場で初めて示される仕組みです。公式ページには運送保険個人情報漏えい特約条項等の概要がPDFで掲載されており、補償限度額等は申込者が個人の場合と法人の場合で異なると注記されています。ヤマト運輸の公式ページにも機密文書リサイクルサービスの運送保険の案内が用意されています。
大量の個人情報を含む書類を出す予定があるなら、証明書の条件と同じ場面で、この補償の限度額も確認してください。処理が完了したという記録と、途中で失われた場合にどこまで補償されるかは、別々に押さえておくべき項目です。
運用の手順に落とす
この手順でいちばん飛ばされやすいのがSTEP2です。封をする前の確認は、処分の直前という最も忙しい場面に来ます。しかし、ここを飛ばすと保存年限が残っている書類が混ざり、取り返しがつかなくなります。箱に詰める人と確認する人を分けておくと、確認が形骸化しにくくなります。
STEP5の記録そのものの保管期間も決めておいてください。処分した記録は、処分した書類の保存年限が過ぎた後も参照される可能性があります。「いつ適正に処分したか」を示す資料なので、処分対象より長く持つのが自然です。
誰が封をしたかを残す
5サービスのなかで、封をした人を記録に残す仕組みを明示しているのは日本郵便だけです。利用規約の第6条第2項は、利用方法として、機密文書を専用箱に収納すること、専用ラベルの記載事項に誤りがないか確認すること、専用箱を梱包してクラフトテープ等で封印した後に専用箱の署名欄に署名すること、の3段階を定めています。署名欄が箱に用意されているということは、誰が封をしたかが物理的に残るということです。
他のサービスにこうした定めはありませんが、同じことを社内の運用として組み込むことはできます。箱の識別子と中身を記録する行に、封をした担当者の名前を1列足すだけです。手間はほとんど増えません。
この1列が効くのは、後から誤投入が判明したときです。保存年限が残っていた書類が処分されていたと分かった場合、原因を調べる出発点は「誰が中身を確認して封をしたか」になります。記録がなければ、確認の工程そのものが機能していたのかどうかも分かりません。責任を追及するためではなく、手順のどこが抜けたかを特定するために要る情報です。
あわせて、確認した人と封をした人を分ける運用にしておくと、記録の意味が増します。1人で完結する作業は、急いでいるときに省略されても誰も気づきません。2人が関わる形にしておけば、少なくとも「確認せずに封をした」という状態は起きにくくなります。年に一度の大量処分のように、普段と違う段取りで進む場面ほど、この備えが効いてきます。
委託先を確認するという観点
個人情報を含む書類の処分は、個人データの取扱いを外部へ委ねる行為にあたります。証明書は処理の結果を示しますが、処理する体制が適切かどうかは別に確認する必要があります。
公開情報の範囲では、大塚商会が公式ページで、このサービスは株式会社NXワンビシアーカイブズのサービスであり、両社が機密保持契約を結んでいると明記しています。日本郵便は利用規約第20条で、本サービスに関連する業務の全部または一部を第三者に委託できるとしたうえで、その第三者の行為について利用者に対する責任を負うと定めています。
残る3社は、公式ページに委託先の記載が見当たりません。委託先まで把握する必要がある企業では、申込の段階で確認することになります。証明書の条件と委託の体制は、どちらも導入前に聞いておくべき項目です。
- 証明書の発行期限と再発行の可否
- 証明書を受け取る方法と送付先の変更手続き
- 箱を識別する仕組み
- 実際に溶解処理を行う事業者
- 封をする前の確認を誰が行うか
- 箱の識別子と中身を誰がどこに記録するか
- 証明書を受領したら誰が紐づけるか
- 記録そのものを何年保管するか
ここまでの内容は、どのサービスを選んでも共通して必要になる準備です。料金や回収条件は比較の入口ですが、導入したあとに効いてくるのは、証明書をどう受け取り、どう紐づけ、どこまで残すかという運用のほうです。契約する前に、この運用を誰が担うかまで決めておくと、最初の処分から記録が揃います。
よくある質問
証明書に処分した書類の一覧は載りますか。
載りません。箱は未開封のまま処理されるため、処理する側は中身を把握していません。中身の記録は依頼する側が残すことになります。
証明書を紛失したら再発行できますか。
サービスによります。佐川急便は月次が溶解処理後1年間、日次が60日間で、経過後の再発行はできないと明記しています。日本郵便は規約で溶解完了日から1年間の再発行を定めています。残る3社は公式ページに記載がないため、申込時に確認してください。
証明書は紙で届きますか、データで届きますか。
日本郵便は規約で電子データをメールで送付すると定めています。佐川急便はスマートクラブ for businessのWebサイトで発行する形です。他の3社については公式ページに記載がありません。
処分の記録は何年残せばよいですか。
法令で定められた年限はありません。ただし、処分した書類の保存年限が過ぎたあとも「適正に処分した」ことを示す必要が生じる場合があるため、処分対象の年限より長く保管しておくのが安全です。
