法人向けウイルス対策ソフトの選び方|人数か台数か、EDRを誰が見るかで候補は2つに絞れる【2026年】

法人向けウイルス対策ソフトの選び方4軸のイメージ。人数か台数か、EDRを誰が見るかという副題と、1から4まで番号の付いた判断軸のカードが縦に並んでいる

法人向けのウイルス対策ソフトを選ぶとき、機能の一覧を端から見比べても決まりません。どの製品も、ウイルスの検出とランサムウェア対策とファイアウォールは持っています。差がつくのは、自社の端末構成に当てはめたときの必要数と、運用できるかどうかです。

この記事では、見積りを依頼する前に社内で決めておく4つの軸をまとめます。人数で数える製品と台数で数える製品が混ざっていること、EDRは読む人がいないと費用だけが増えること、サーバーとモバイルの扱いが製品ごとに違うこと、そして最小の購入単位に下限があることの4つです。12人の事務所と120人の会社の2つで実際に計算もします。

見積りの前に数えておく数字

  1. ライセンスを割り当てる従業員の人数
  2. 会社が管理しているパソコンの台数(Windowsのエディションの内訳も)
  3. 会社支給のスマートフォン・タブレットの台数
  4. サーバーの台数とOS(Windows Server か Linux か)

判断軸1|人数で数えるか、台数で数えるか

同じ「1台あたり」という言葉が、製品によって違うものを指しています。公開されている条件を並べると、数え方は3通りに分かれます。

保護するOSの数を全部足す

ESET PROTECT Entry

パソコンもサーバーもスマートフォンも、1台につき1ライセンスです。スマートフォンを配るほど必要数が増えます。

PC・サーバーの枠にモバイルが入る

ESET PROTECT Advanced 以上

Android・iOSの数がPC・サーバーの数を超えなければ、追加のライセンスは要りません。2024年8月1日から変わった扱いです。

人の数で数える

Defender for Business

1ユーザーにつき最大5台まで。最小デバイス要件はありませんが、上限は300ユーザーです。

人の数+モバイル2台まで

Kaspersky Next

1ユーザーライセンスでPC・サーバー1台とモバイル2台が対象です。3台目のモバイルからは枠を超えます。

アバスト ビジネス セキュリティとウイルスバスター ビジネスセキュリティサービスは、どちらもデバイス・PCの台数で数えます。つまり、5製品のうち3つが台数系、2つが人数系です。

どちらが有利かは、人数と端末台数のどちらが大きいかで決まります。1人が2台以上使っている職場なら人数系、共用端末があって台数のほうが少ない職場なら台数系が効きます。

判断軸2|EDRを誰が見るか

EDRは、侵入されたあとに何が起きたかを記録して追える機能です。入れれば自動的に安全になるものではなく、記録を読む人がいて初めて働きます。

この点について、カスペルスキーは比較表に「ITスペシャリスト 必要」「管理に必要な時間 週15分程度」と明記しています。Kaspersky Next EDR Foundations も EDR Optimum も同じ記載です。2024年5月の発表資料では、EDR Optimum の推奨利用者像を「小規模なサイバーセキュリティチーム(1〜3人)を持つ企業」としていました。

マイクロソフトは逆の方向で、Defender for Business の設計方針として「専門的な知識は必要ありません」と説明し、ウィザード駆動の設定と既定のセキュリティポリシーを用意しています。どちらが正しいというより、EDRを入れたあとの運用を誰が担うのかを先に決める、という話です。

担当を置けない場合、選択肢は3つあります。EDRなしの構成から始める、外部のマネージドサービスに任せる、パートナーに運用を委託するです。カスペルスキーの Kaspersky Managed Detection and Response は、新規1年1ライセンス9,600円(税別)から、最低150ライセンスという価格が発表資料に出ています。最低構成でも年1,440,000円(税別)からなので、規模が小さい会社には届きません。

判断軸3|サーバーとモバイルが同じ枠に入るか

パソコンの台数だけで見積りを取ると、あとからサーバー分が乗ってくることがあります。

サーバーとモバイルの扱い(2026年10月31日に各社の公式ページで確認した内容)
製品 サーバー モバイル
ESET PROTECT Entry 同じ枠で1台1ライセンス 1台1ライセンス
ESET PROTECT Advanced 以上 同じ枠で1台1ライセンス PC・サーバーの数まで追加なし
Microsoft Defender for Business 別ライセンス。1契約60まで 1ユーザー5台の枠内
アバスト ビジネス セキュリティ Windowsサーバーも同じ枠 デバイスとして数える
Kaspersky Next PCと同じ枠で1ユーザー1台 1ユーザー2台まで

マイクロソフトだけがサーバーを別扱いにしています。Windows Server や Linux Server を保護するには Microsoft Defender for Business servers という別のライセンスが必要で、1つのサブスクリプションに追加できるのは最大60ライセンスまでです。

判断軸4|どこで買えるか、いつ値段が変わるか

購入の経路も2つに割れます。公式サイトで決済まで終えられるのがマイクロソフトとアバスト、販売店やパートナー経由になるのがESET、トレンドマイクロ、カスペルスキーです。

ESETの場合、購入形態が4つに分かれていて、それぞれ型番や価格が変わることがあります。新規購入(他社からの乗換を含む)、ライセンス追加、更新(有効期限の延長)、製品切替です。見積りを依頼するときに、どれにあたるかを伝えると話が早くなります。

ESET PROTECTソリューション購入ガイドの公式画面。新規購入、ライセンス追加、更新(有効期限の延長)、製品切替の4つの購入形態と、それぞれの説明が表に並んでいる
購入形態が4つに分かれ、説明上の表記名も決まっている(2026年10月31日に表示)。

時期の問題もあります。2026年10月31日の時点で、2社が価格改定を告知しています。カスペルスキーは2026年11月12日の出荷分から、キヤノンマーケティングジャパンのESET製品は2026年12月1日の受注分からです。ESETは26ライセンス以上だけが対象で、6〜25ライセンスの帯は据え置きになります。

同じ時期に、トレンドマイクロの公式ストアでは新規ライセンスの販売が停止しています(2026年10月31日時点)。新規で入れる場合は販売パートナー経由になるため、導入時期が決まっているなら納期を先に確認してください。

12人・18台の事務所で計算する

従業員12人、パソコン12台とスマートフォン6台の合計18台という事務所で計算します。サーバーはありません。

12人・18台の事務所が1年目に払う金額の試算(税抜、公開価格から計算した概算)
製品 必要な数 単価 1年目の合計
アバスト エッセンシャル ビジネス セキュリティ 18デバイス 初年度3,420円 61,560円
Microsoft Defender for Business 12ユーザー 月額相当449円 64,656円
ESET PROTECT Entry 18ライセンス 5,070円(11〜25の帯) 91,260円

この規模だとアバストがいちばん安くなります。ただし2年目からは更新価格の4,275円になるため、18台で76,950円です。マイクロソフトは1年目から金額が変わらないので、2年目は逆転します。

端末が10台以内に収まるなら、別の選択肢もあります。アバスト スモール オフィス プロテクションは最大10台まで年額15,070円、カスペルスキー スモール オフィス セキュリティは5ユーザーでデスクトップ5台・モバイル5台・ファイルサーバー1台が27,895円(初回購入価格)です。

120人・150台の会社で計算する

次は規模を上げます。従業員120人、パソコン120台、Windowsサーバー10台、会社支給スマートフォン20台の合計150台とします。

120人・150台の会社が1年目に払う金額の試算(税抜、公開価格から計算した概算)
製品 必要な数 単価 1年目の合計
ESET PROTECT Entry 150ライセンス 3,240円(100〜249の帯) 486,000円
アバスト エッセンシャル ビジネス セキュリティ 150デバイス 初年度3,420円 513,000円
ESET PROTECT Advanced 130ライセンス(モバイル20台は枠内) 4,200円(100〜249の帯) 546,000円
Microsoft Defender for Business 120ユーザー+サーバー10の別ライセンス 月額相当449円 646,560円+サーバー分

12人の事務所と順番が入れ替わります。台数が増えると帯の単価が下がるESETが前に出て、1年目から単価が変わらないマイクロソフトが後ろになります。アバストは2年目から641,250円になるので、長く使うほどESETとの差が開きます。

EDRが要件に入るなら、ESET PROTECT Advanced が546,000円で、Entry との差は60,000円です。モバイル20台がPC・サーバー130台の枠に収まるため、必要なライセンス数が20減ることで差が縮まっています。

最小ライセンス数という下限がある

金額の計算に入る前に、そもそも買えるかどうかの下限があります。小さい事業所では、ここで候補が消えることがあります。

最小の購入単位(2026年10月31日に各社の公式ページで確認した内容)
製品 最小の購入単位 上限
アバスト ビジネス セキュリティ 1デバイス 1〜100台以上と記載
ウイルスバスター ビジネスセキュリティサービス PC1台 公開されていない
Microsoft Defender for Business 最小デバイス要件なし 300ユーザー
ESET PROTECT Entry/Advanced/Complete 6ライセンス 10,000以上は応相談
ESET PROTECT Elite 26ライセンス 10,000以上は応相談
カスペルスキー スモール オフィス セキュリティ ファイルサーバー保護は5ユーザー以上 公開されていない
Kaspersky Managed Detection and Response 150ライセンス 公開されていない
ESET PROTECTソリューションの機能比較を示す公式画面。Elite、Complete、Advanced、Entry、Entryオンプレミスの5製品について、ランサムウェア修復機能、クラウドサンドボックス、フルディスク暗号化、脆弱性・パッチ管理などの対応が黒丸で示され、最小ライセンス数の行も並んでいる
ESETの製品ごとの機能差と最小ライセンス数。Elite だけ26からになっている(2026年10月31日に表示)。

本番に近い規模で試せるかどうか

決める前に試せる範囲も、製品で差があります。アバストの無料体験版は30日間で、公式ページには「完全無料です。体験版は、最大100台のデバイスで使用できます」と書かれています。100台まで使えるので、部署単位ではなく全社に近い規模で動かせます。

トレンドマイクロの体験版は、リアルタイム検索とアップデートを30日間利用できるもので、製品版にいつでもアップグレードできると案内されています。ただし同時に保護できる台数の上限は公開されていません。

マイクロソフトは公式ページに「無料で試す」の導線があり、試用の条件が注記で示されています。1か月の無料試用期間が終わるとサブスクリプションは自動的に有料へ切り替わること、サインアップにはクレジットカードが必要なこと、有料開始から7日間はキャンセル期間で按分計算の払い戻しがあることの3点です。

カスペルスキーとアバストは、購入後に合わなかった場合の30日間返金保証も用意しています。試用で確かめきれない部分があるときは、ここが保険になります。

業務用アプリが誤検知されたときの逃げ道

実際に入れてから困るのが、業務で使っている独自のアプリケーションがブロックされる場面です。製品側に除外の仕組みがあるかどうかは、マニュアルの目次で確かめられます。

トレンドマイクロの公式ヘルプでは、検索除外の設定が細かく分かれています。ファイル・フォルダ・拡張子の除外、ワイルドカードによる除外、システム変数と環境変数のサポート、スパイウェアやグレーウェアの承認済みリスト、挙動監視の除外リストがそれぞれ独立した項目です。

同じヘルプには、アプリケーションコントロールの注意書きもあります。カーネルレベルでブロックするため「許可されているアプリケーションに必要なファイルが予期せずブロックされたり、短時間、ファイルへのアクセスが遅延する場合があります」と書かれています。強い機能ほど、業務側に影響が出る可能性があるということです。

ESETにも、検索対象からの除外やデバイスコントロールの除外に相当する設定があります。導入前の検証では、ウイルスを検知できるかよりも、普段使っているアプリが止まらないかを見たほうが、本番で困りません。

4つの軸を使う順番

ここまでの軸を、実際に動かす順番で並べます。

  1. 端末台帳を人・PC・モバイル・サーバーの4つに分ける。この4つの数字がないと、どの製品の見積りも依頼できません
  2. EDRの要否と、見る人の有無を決める。見る人がいないなら、EDRなしの構成か外部委託かの二択になります
  3. 最小の購入単位で候補を絞る。6台以下ならESETは価格表の範囲外、26台未満なら Elite は選べません
  4. 残った候補で1年目と2年目の金額を出す。初年度割引がある製品は、2年目の金額でも並べ直します
  5. 購入経路と納期を確認する。販売店経由の製品は申込書のやり取りが入り、価格改定の受注日も関係します
機能表の読み比べは、この5つが終わってからで間に合う。

管理ツールをどこに置くか

もうひとつ、あとから変えにくいのが管理ツールの置き場所です。自社でサーバーを立てて管理するオンプレミス型と、提供元のクラウドにある管理画面を使うクラウド型の2通りがあります。

ESET PROTECT Entry は、クラウド型とオンプレミス型のどちらも選べると説明されています。カスペルスキーも、Kaspersky Next の特徴としてオンプレミス管理とクラウドコンソールによる管理を選べることを挙げています。一方、マイクロソフトとアバストはクラウド型の管理が前提です。トレンドマイクロは、オンプレミス型を同梱していた Hybrid のオンプレミス版が2026年3月31日でサポート終了となりました。

ネットワーク分離の方針があってオンプレミス管理が必須の組織では、この条件だけで候補が2つに絞られます。逆に、管理サーバーの保守を自社で持ちたくないなら、クラウド型のほうが運用の手間は減ります。ESETの公式ページでも、クラウド型管理ツールであればサーバーの保守・運用が不要でバージョンアップ作業も自動になる、と説明されています。

よくある失敗

ひとつ目は、初年度の金額だけで比べることです。アバストの3プランはいずれも20%割引後の金額が表示されており、2年目からは割引前の価格になります。エッセンシャルで1台あたり855円、アルティメットで1,317円の差です。

ふたつ目は、パソコンの台数だけを伝えて見積りを取ることです。人数で数える製品と台数で数える製品が混ざっているので、前提の違う数字が返ってきます。比較できる形で揃えるには、4つの数字を分けて伝える必要があります。

みっつ目は、OSのエディションを確認しないことです。Microsoft Defender for Business が管理できるクライアントOSは、Windows 10/11のビジネス・プロフェッショナル・Enterprise と Mac だけで、Windows Home は対象外です。量販店で買ったノートパソコンをそのまま使っている事業所では、ここで候補から外れます。

よっつ目は、発注のタイミングを後回しにすることです。価格改定は受注日や出荷日が基準なので、見積りを受け取った日ではありません。ESETのよくある質問では「申請書類に不備がある場合、受注処理が遅れる可能性があるため、余裕をもってお申込みください」と注意されています。

決めたあとに残しておくもの

選定の過程で作った4つの数字と、各社から返ってきた見積りは、契約書と一緒に残しておくと次の更新で効きます。更新のたびに同じ調査をやり直さずに済み、台数が増えたときに帯が変わるかどうかもすぐ判断できるからです。

とくに記録しておきたいのは、見積りが希望小売価格から何パーセント引かれていたかです。ESETのように価格表が公開されている製品なら、次の更新で提示された金額が前回より有利か不利かを自分で判断できます。価格が公開されていない製品では、前回の見積り額そのものが唯一の基準になります。

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各製品の条件と金額は、次のページに分けて書いています。

乗り換えと更新の具体的な条件は、次の2本に分けて書いています。

出典

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