中小企業や個人事業主の場合は、社員が生み出すノウハウよりも、経営者自身が生み出すノウハウの数が圧倒的に多いと思います。私は1人で会社運営をしているので、当然、ノウハウのデータベースも自分自身で生み出したものです。今回はノウハウのデータベース化の方法を解説します。
ノウハウのデータベース化の重要性
経営ノウハウはデータベース化する必要があります。なぜかというと・・・
1.会社の資産となる
あなたにとっての会社の資産とは
- 人材
- クライアント
- 取引先
かも知れませんが、つまるところ経営ノウハウと言うのは、人材、クライアント、取引先を獲得するための方法を実体験を元に編み出すものであり、これらよりも重要な会社の資産であるとも言えるのです。
しかし、経営ノウハウのデータベース化を怠ってしまえば、経営者の頭の中で覚えている範囲での再利用しかできないのです。経験やカンでは、せっかく積み上げたノウハウの再現性に「漏れ」が出てしまうのです。
2.人材の早期立ち上げができる
ノウハウが体系化されていることで、それを元に人材の教育を行えば
元々、給料分の売上を上げるのに3ヶ月かかっていた人材教育が1ヶ月半に短縮できるかもしれません。
人材の立上が早ければ早いほど、会社の成長スピードも、利益率も、向上するのです。
ノウハウのデータベース化ができていなければ、やはり経営陣やマネージャーの資質に人材の立上が左右されてしまうのです。
3.ノウハウの蓄積こそが差別化要素となる
小さなノウハウでも、積み上げていくことで
- 他社よりも品質の高いサービス
- 他社よりも価格の安いサービス
が実現できます。
細かいディティールの改善ノウハウの積み上げ自身が、他社との差別化要素になりうるのです。
ノウハウの積み上げは生産性の向上になり、それがサービスの質や価格の安さにつながり、顧客のメリットになるのです。
1.会社の資産となる
2.人材の早期立ち上げができる
3.ノウハウの蓄積こそが差別化要素となる
という経営にとって大きなメリットがでるからこそ、ノウハウのデータベース化は会社経営で必要不掛けるなものなのです。
ノウハウのデータベース化をするときの注意点
「使えるノウハウ」と「使えないノウハウ」の分類がキモ
「ノウハウ」と一口で言っても、
- 時間や手間、コストがかからない、効果が高い → コスパの高いノウハウ
- 時間や手間、コストがかかる、効果が薄い → コスパの低いノウハウ
の大きく分けて2種類があるのです。
ノウハウを分類せずに盲目的にノウハウを蓄積しすぎれば、そのうち数に埋もれて「何が重要なノウハウなのか?」を見失ってしまい、次第にノウハウを確認することを日常で怠るようになってしまいいます。
日々、実践すべき「エース級のノウハウ」は厳選すべきなのです。
数値で効果を評価する
完全に正確な数字である必要はありませんが、ノウハウは数字とともに蓄積すべきものです。
例えば
既存顧客に事例メールを送ることでそこからの相談、受注につながった。
これも十分ノウハウではありますが・・・
週1回、既存顧客に事例メールを送ることで
送付したメール数の2%の顧客から1週間以内に問い合わせがあり
そのうちの50%がクロスセルでの受注につながった。
というノウハウの方が、ROIを計算しやすいのです。
- メールの作成時間:2時間/週
- 既存顧客200社
- 1週間の相談件数:4社/週
- 受注につながる社数:8社/月
- 客単価:30万円
- 売上:240万円/月
という計算がなりたつので、たった2時間/週、月8時間、時給3000円で販管費を計算すれば、2.4万円のコストで240万円の売上を上げることになります。
100倍の投資効率ですから、非常に優秀なノウハウという評価ができるのです。
「既存顧客に事例メールを送ることでそこからの相談、受注につながった。」だけでは、実際に実行した人は「上手くいったノウハウだったな。」ぐらいは記憶にあるかもしれませんが、他の人には伝わりません。ノウハウのデータベース化の意味がないのです。
ノウハウのデータベース化の実行方法
3つのフェーズに分けます。
1.経営アイディア
経営アイディアの定義
ノウハウになるかもしれない、経営アイディアのことです。
書き方のフォーマットはなく、ひたすら箇条書きにします。
私の場合は「Evernote」にひたすら箇条書きにしています。「Evernote」はクラウド型なので、ケータイからも、パソコンからも、タブレットからも、書き込めるので「思い立ったらすぐに書き込む」のには最適なツールなのです。
3年間で1151件の経営アイディアが貯まっています。
これはアイディアですので、実行していないものもあります。
2.経営ノウハウ
経営ノウハウの定義
経営アイディアを実践して、少しでも「売上増」or「コスト減」につながったものは、ここに分類します。
3年間で246件の経営ノウハウが貯まっています。
経営ノウハウはエクセルで管理しています。ノートなどで管理するアナログ派の方もいると思いますが、ノウハウは修正や改善を繰り返すため、データとしてパソコンやウェブで作成する必要があります。
- No
- 実践日時
- カテゴリ
- 狙い(導入背景)
- 内容
- ROI
- 評価
- 作成者
とそれほど項目は多くありませんが、これを記入してデータベース化します。
重要なのは「内容」の部分で
- どうやってやるのか?
- どのくらいの効果(数値)があるのか?
- どのくらいのコスト(手間、時間、支出)があるのか?
- 注意事項
を記載する必要があります。
3.経営マニュアル
経営マニュアルの定義
経営ノウハウの中で、ルーティーンに組み込むべき効果の高いエース級のノウハウをマニュアル化したものです。
3年間で52件の日々実行しているノウハウがあります。
経営マニュアルもエクセルで管理しています。
フォーマットは自由ですが
- ルーティーン(スケジュール)に組み込むもの
- 日々の活動でわすれないようにパソコンの付箋で常に表示しているもの
があります。
経営マニュアルで重要なポイントは「アップデートをしていく」ということです。
経営ノウハウも、一回作ればそれが未来永劫通用するものではありません。競合に真似されれば効き目がなくなってくる、鮮度があるものなのです。
だからこそ、経営マニュアルに昇格したポテンシャルの高い経営ノウハウは、改善を繰り返しながらアップデートしていくものなのです。
昇格、降格、改善、再投入を繰り返す
- 経営アイディア
- 経営ノウハウ
- 経営マニュアル
は行ったり来たりするものです。
経営ノウハウの効果が小さかったものを「投入方法を変えてみよう」と思えば、経営アイディアになります。
経営マニュアルで活用していたものが外部環境の影響によって使えなくなれば過去の経営ノウハウに戻ります。
常に昇格、降格、改善、再投入を繰り返して、鮮度を保つ必要があるのです。
まとめ
ノウハウのデータベース化では
- 経営アイディア
- 経営ノウハウ
- 経営マニュアル
という3段階で管理することが非常に重要なことなのです。
分類しながら、パフォーマンスを見て、鮮度を保つことで、ようやくノウハウが経営にプラスの効果を与えるのです。
- 打ち合わせの場でも
- 移動中でも
- 作業中でも
まずは経営アイディアを貯めることをおすすめします。
経営アイディアの数が多くなければ、経営ノウハウも、経営マニュアルもできないのです。
私の場合は、3年間でこのぐらいの件数のアイディアをメモしています。
経営アイディア:1151件
↓昇格
経営ノウハウ:246件
↓昇格
経営マニュアル:52件
まずは経営アイディアを貯めることをおすすめします。