DMの開封率は本当に低いのか|本人宛の閲読率63〜81%と、行動する人15〜20%の調査データ【2026年】

ダイレクトメール(DM)の話になると、ほぼ必ず「どうせ大半は読まれずに捨てられる」という前提が置かれます。ところが、同じ設問で10年以上続いている業界団体の定点調査を並べると、この前提は数字と合いません。本人宛に届いたDMは、年によって幅はあるものの、おおむね7割から8割が読まれています。何を直せば反応が増えるのかを考える前に、まず手元の前提を調査結果と突き合わせておきます。

先に結論
本人宛DMの閲読率は、2013年から2023年までの日記式調査で63.1%から81.5%の範囲にあり、11年の平均は75.9%です。直近の2025年調査では56%まで下がりましたが、この回から実施主体が変わっているため、同じ物差しの続きとして読むことはできません。一方、受け取ったあとに何らかの行動を起こした人は2023年で19.7%、2025年で15.2%にとどまります。読まれないことよりも、読まれたあとに動かないことのほうが数字上の壁です。そして2024年10月の料金改定で、はがきは85円、定形郵便物は110円になりました。1通あたりの単価が上がった分、誰に送るかの選別が以前より重くなっています。

「8割は読まれない」は定点調査と合わない

日本ダイレクトメール協会は2012年から、受け取ったDMを1通ずつ記録してもらう日記式の調査を続けてきました。総務省のサイトに置かれた同協会の資料には、2013年から2023年までの本人宛DMの閲読状況が、調査年ごとのサンプル数とともに載っています。

調査年 読んだ 読まなかった 本人宛DMのサンプル数
2013年 71.6% 28.4% 1,573
2014年 78.7% 21.3% 1,373
2015年 80.9% 19.1% 1,429
2016年 81.5% 18.5% 3,917
2017年 74.3% 25.7% 1,225
2018年 79.4% 20.6% 1,305
2019年 74.0% 26.0% 1,233
2020年 63.1% 36.9% 1,937
2021年 79.5% 20.5% 1,282
2022年 75.4% 24.6% 1,264
2023年 75.1% 24.9% 1,076

表1 数値は総務省のサイトに掲載された資料「DMメディアの現状」(一般社団法人日本ダイレクトメール協会、2024年9月25日)12ページの「本人宛のDM閲読状況」から引用(2026年10月28日に取得)。同資料は出典を同協会「DMメディア実態調査2023」としている

読まれなかった側は、最も多い2020年でも36.9%です。「8割以上が捨てられている」という言い方は、この調査の数字をちょうど裏返しにした形になっており、根拠として示されることはまずありません。言い古された表現が独り歩きしていると見たほうが実態に近いはずです。

唯一の例外が2020年で、このときだけ63.1%まで落ちています。この年に何があったかは調査資料に説明がないため、ここでは理由を推測しません。ただし、前後の年がいずれも74%を超えていることから、長期の低下傾向ではなく単年の落ち込みとして扱うのが妥当です。

2025年の調査は56%、ただし前の年と並べてはいけない

この定点調査は、2025年調査から一般社団法人日本メーリングサービス協会に引き継がれました。引継ぎ後の最初の報告が公開されており、主要な指標が数値で示されています。

項目 2025年調査の値
1週間に受け取ったDM 一人あたり平均5.5通
本人宛DMの開封・閲読 56%
本人宛DMの行動喚起率 15.2%
形状の内訳 はがき36%、A4サイズはがき7%、封書15%、大型の封書6%
WEBにアクセスする型のDM 76%が受け取り経験あり、実際にアクセスしたのは53%
パーソナライズDM 52%が通常のDMより高い開封意向
調査時期と対象 2025年12月、首都圏在住の20代から50代の男女
サンプル 事前ネットアンケート7,900、日記式受取DM調査200、対象DM 2,244

表2 数値は一般社団法人日本メーリングサービス協会「『DMメディア実態調査2025』についてのご報告」から引用(2026年10月28日に取得)

56%と75.1%を並べて「下がった」と書かないこと
2025年調査の報告には、この回から実施主体が日本ダイレクトメール協会から日本メーリングサービス協会に替わったと明記されています。調査の設計がどこまで同じかは公表されていません。表1の時系列と表2の56%を1本の折れ線でつなぐと、実施主体の交代による差なのか、受け手の行動の変化なのかを区別できなくなります。ここでは別々の数字として扱います。

壁は「読まれるか」ではなく「読んだあとに動くか」

閲読率が7割を超えていても、受け取った人が次の行動に移る割合はその4分の1程度です。行動の中身まで分解した表が公表されているので、年ごとに並べます。

受け取ったあとの行動 2022年12月 2023年12月 2025年12月
何らかの行動をした 19.3% 19.7% 15.2%
内容についてインターネットで調べた 8.4% 10.0% 7.2%
問い合わせた 4.9% 3.5% 2.8%
家族や友人との話題にした 3.2% 1.8% 1.9%
商品やサービスを購入・利用した 3.0% 2.0% 1.7%
店に出かけた 1.3% 1.4% 1.7%
資料請求した 2.6% 1.1% 公表なし
会員登録した 2.1% 0.8% 公表なし
サンプル数 1,264 1,076 2,244

表3 2022年と2023年は「DMメディアの現状」13ページ、2025年は日本メーリングサービス協会の報告による(いずれも2026年10月28日に取得)。複数回答のため内訳の合計は「行動した」と一致しない。2025年のサンプル数は対象DMの総数

どの年も、最も多い行動は「インターネットで調べた」です。紙が届いた時点で完結するのではなく、検索やサイト訪問へ渡していることになります。2025年の報告でも、WEBにアクセスする型のDMを受け取った経験のある人は76%で、そのうち実際にアクセスしたのは53%でした。紙に載せる情報量を増やすより、紙から先の受け皿を用意するほうが、この数字とは噛み合います。

届く1週間に平均5.5通
読む本人宛の56〜75%
調べる7.2〜10.0%がネット検索
買う1.7〜3.0%が購入・利用
受け取りから購入までの各段階に残る割合。閲読の段階で大きく減るのではなく、読んだあとの行動でさらに絞られていく。数値は表1から表3までの範囲

紙とメールで「開封率」という言葉の意味が違う

紙のDMの閲読率は、受け取った人に記録してもらう日記式の調査から出ています。つまり自己申告です。一方、メールの開封率は配信側のシステムが計測した数字で、多くは本文に埋め込んだ画像が読み込まれたかどうかで判定します。画像を自動で読み込まない設定や、プライバシー保護機能によって先読みされる環境では、実際に読んだかどうかとずれます。

紙のDMの閲読率受け取った本人が、1通ずつ読んだかどうかを記録する。母数は届いたDMの数。読んだという本人の認識がそのまま数字になる
メールの開封率配信システムが計測する。母数は到達した通数で、不達分は除かれることが多い。読んだかどうかではなく、画像が読み込まれたかどうかを見ている

この2つを同じ表に並べて「紙のほうが高い」と結論づけることはできません。測っている対象が違うためです。社内で比較するなら、媒体をまたいで比べられるのは最終的な反応数、つまり問い合わせ件数や注文件数のほうです。メールの運用側の論点はステップメール導入はこうする!仕組みと欲しい機能はこれだ!にまとめてあります。

2024年10月の料金改定でコストの前提が変わった

紙のDMで動かせない固定費が郵便料金です。2024年10月に料金が改定され、はがきと定形郵便物はそれぞれ値上がりしました。先ほどの協会資料は、この改定を「消費税対応を除けば30年ぶり、約3割の大幅値上げ」と表現しています。現在の料金は次のとおりです。

送り方 サイズ・重さの上限 料金
はがき 規定のはがきサイズ 85円(往復はがきは170円)
定形郵便物 厚さ1cm以内・50g以内 110円
定形外郵便物(規格内) 50g以内 140円
定形外郵便物(規格内) 100g以内 180円
定形外郵便物(規格内) 150g以内 270円
ミニレター(郵便書簡) 厚さ1cm以内・25g以内 85円
スマートレター 厚さ2cm以内・1kg以内 210円
レターパックライト 厚さ3cm以内・4kg以内 430円
レターパックプラス 厚さ制限なし・4kg以内 600円

表4 日本郵便「手紙(定形・定形外)」および日本郵便「はがき」の掲載料金(2026年10月28日に取得)

古い記事や社内の見積もり表には、はがき52円、封書82円という数字が残っていることがあります。これは2014年から2017年にかけての料金で、現在の85円・110円とは別物です。単価が1.3倍から1.6倍になったという前提で試算を引き直す必要があります。

2,000通を超えると割引が始まる

広告を目的として同一内容で大量に作られた郵便物は、「広告郵便物」として料金の割引を受けられます。日本郵便は条件によって8%から43%の割引になると案内しており、基本割引の表は差出通数に応じて段階的に決まります。

日本郵便 広告郵便物の公式画面。差し出しの都度割引の基本割引率の表で、2,000通からは定形郵便物12%・はがき8%、100万通からは37%・33%と記載されている
出典:日本郵便「広告郵便物」の基本割引率(差し出しの都度割引)の表(2026年10月28日に取得)

この表から、実務で使われることの多い通数帯だけを抜き出して、1通あたりの単価に直すと次のようになります。割引は料金に対して掛かるため、はがきなら85円、定形郵便物なら110円が出発点です。

1回の差出通数 はがきの割引率 はがき1通あたり 定形の割引率 定形1通あたり
2,000通から 8% 78.2円 12% 96.8円
5,000通から 14% 73.1円 18% 90.2円
1万通から 17% 70.6円 21% 86.9円
3万通から 20% 68.0円 24% 83.6円
10万通から 23% 65.5円 27% 80.3円
100万通から 33% 57.0円 37% 69.3円

表5 割引率は日本郵便「広告郵便物」の基本割引率(2026年10月28日に取得)。1通あたりの金額は、はがき85円・定形郵便物110円に割引率を適用してBIZeeが計算した値で、小数第2位を四捨五入している。印刷費や封入費は含まない

2,000通(はがき)78.2円78.2
1万通(はがき)70.6円70.6
10万通(はがき)65.5円65.5
100万通(はがき)57.0円57.0

気をつけたいのは、公式ページの見出しが「8%~43%」としている一方で、基本割引の表に載っている最大値は定形郵便物の37%だという点です。43%がどの組み合わせで成り立つのかは、この表の中だけでは分かりません。見積もりを取るときは、自社の差出条件でいくらになるかを郵便局に確認してください。

割引を受けるには、事前の承認に加えて、同一内容・同一サイズ・同一重量であること、料金別納または料金後納とすること、といった条件を満たす必要があります。1人ずつ文面を変えるパーソナライズとは、この「同一内容」の条件が正面からぶつかります。

差出側は広告郵便からゆうメールへ移ってきた

協会資料には、日本郵便のDM関連の引受数の推計も載っています。2015年度と2023年度を比べると、内国郵便全体と同じようにDMも減っていますが、その中身の構成も動いています。

区分 2015年度 2023年度 増減
内国郵便の合計 179.8億通 135.5億通 マイナス24.6%
DMの合計(広告郵便+ゆうメール、推定を含む) 58.3億通 45.6億通 マイナス21.8%
広告郵便(推定を含む) 23.0億通 16.9億通 マイナス26.5%

表6 通数は「DMメディアの現状」9ページの「日本郵便のDM関連引受数(推定概算ベース)」から引用し、増減はBIZeeが計算(2026年10月28日に取得)。同ページはDMに占めるゆうメールのシェアを各年度60%台としている

資料は、DMの主体が広告郵便物からゆうメールへ移っている理由を「価格、割引条件等の使い勝手によるもの」と推定しています。ただしゆうメールは信書を送れません。宛名の人に語りかける文面は信書に当たるため、ゆうメールを選んだ時点でパーソナライズの幅は狭くなります。安い送り方を選ぶことと、1人ずつに向けた文面を書くことは、現行の制度では両立しにくい関係にあります。

最初のひと押しに力を入れる根拠はどこにあるか

見出しや封筒の第一印象に力を入れるという定石自体は、調査結果とも整合します。ただし「読まれないから目立たせる」ではなく、「読まれた先で動いてもらう設計が足りない」と読み替えたほうが、数字の形に合っています。

2025年の報告で、通常のDMよりパーソナライズDMのほうが開封したいと答えた人は52%でした。宛名の人に合わせた内容であることが、開封の動機として働いていることになります。一方で、前の節のとおり、パーソナライズを進めると広告郵便物の「同一内容」という割引条件から外れます。単価と反応率のどちらを取るかという選択が、ここで一度発生します。

試算のしかた
1通あたりの総額は「郵便料金×(1-割引率)+印刷費+封入・宛名印字費」です。このうち郵便料金は表4と表5で確定できますが、印刷費と封入費は発注先ごとに変わるため、ここでは金額を置いていません。反応1件あたりの費用を出すなら、総額を「差出通数×行動喚起率」で割ります。行動喚起率は表3の全体値(15.2%から19.7%)を暫定の目安に置き、自社の実績が出た時点で差し替えてください。

よくある質問

DMの開封率を1つの数字で言えますか。
言えません。紙のDMの閲読率は、本人宛に限っても調査年によって63.1%から81.5%まで幅があります。さらに2025年調査は実施主体が替わって56%です。社外の数字は範囲として持ち、自社の数字は反応件数から逆算するのが現実的です。

はがきと封書ではどちらが読まれますか。
公表されている調査では、形状別の閲読率は示されていません。2025年の報告にあるのは形状の構成比(はがき36%、A4サイズはがき7%、封書15%、大型の封書6%)までです。形状と閲読率を結びつけた断定は、現時点の公表資料からはできません。

2,000通に届かない場合、割引はありませんか。
広告郵便物の基本割引は1回の差出通数2,000通からです。これに届かない小口の差出は、協会資料でも「割引なし」に分類されています。通数を増やせない場合は、郵便以外の送り方や、メールとの組み合わせを先に検討することになります。メール配信側の機能の見分け方は大変なお客様フォローをお手伝い!「ステップメール」その利点とは?で扱っています。

DMは広告媒体として縮小していますか。
通数は減っています。一方で、協会資料が引く電通「2023年日本の広告費」では、DM広告費3,103億円にDM制作印刷関連費の推定1,115億円を加えた4,218億円が、インターネットとテレビに次ぐ規模だとされています。通数の減少と、媒体としての順位は別の話です。

この記事が根拠にした資料

いずれも2026年10月28日に取得しました。料金と割引率は変更されるため、発送の前に日本郵便の該当ページで最新の値を確かめてください。

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