筆者の会社はコンサルティング、ウェブサイト制作、ウェブサイトの運営や不動産投資、産業用太陽光発電など色々多岐にわたるサービスを提供していますが、その中で最も重視していることが「貯める」「貯まる」ビジネスを作るということです。その理由を解説します。
弊社の営業利益率80%は異常値か?
弊社の場合
1期目の営業利益率:78.0%(売上6409万円)
2期目の営業利益率:78.5%(売上1億2519万円)
3期目の営業利益率:80.7%(売上1億6410万円)※3Q時点
です。当然、私一人でやっているので経費がほとんど発生しないというのもありますが・・・それなりに高い営業利益率を維持しています。
それどころか、年々売上が拡大しているのに利益率は高くなっています。
これはなぜでしょうか?
「貯める」「貯まる」ビジネスを作ることに集中しているからです。
「貯める」「貯まる」ビジネスって何?
ウェブの制作会社を想像してください。
ウェブの制作会社では、営業マンがいて、ディレクターがいて、デザイナーがいる体制がほとんどで、3人1組で案件を受注して利益を出します。
1人月50万円の販管費だとしたら
最低でも、150万円ほどの売上がなければ、利益は出ません。
経営者は利益も含めて「月300万円がこのチームの売り上げ目標だ。」というと思います。
では、仮にこのチームが月300万円の売上を上げ続けたとして、経営者は売上を拡大するためには何をしなければならないでしょうか?
3人で300万円
6人で600万円
9人で900万円
・・・
と皮算用をすれば「どんどん人を増員する」というのが答えになるかと思います。
これは、人員と売上が1:1で正比例のグラフになるビジネスモデルです。
これのモデルが悪いわけではありませんが・・・
- 人員が増えても、すぐに顧客が増えるわけではない
- 人員が増えても、サービスの質が下がれば大口顧客が離脱して売上が下がる
- 人員が増えると、マネージメントの人間が必要になり、優秀なプレイヤーが実働のない管理者になって売上が減る
- 強敵の競合が表れて、売上が激減する
など、色々な要因があり、利益率は上昇するどころか、規模が拡大するにつれて少なくなってしまうでしょう。さらに急激な業界構造の変化が起こった時に、大規模なリストラが必要になってしまいます。
経営者から見れば、不安いっぱいのビジネスモデルです。
このモデルは過去の売上の貯金が未来に反映されにくいモデルなのです。ゼロとは言いません、「顧客の信頼が貯まる」という側面もあるからです。しかし、それでも常にその月の売上を獲得しなければ、利益がでなくなってしまうのです。
では、fuluやdTVのようなビジネスモデルを想像してみてください。
fuluやdTVは動画配信の定額サービスです。
会員を増やせば増やすほど、月額課金による収入が増えます。
しかし、社員は増やす必要性はあるでしょうか?
会員が2倍になった時に、社員数を2倍にする必要はないのです。
サーバーコストや顧客対応人員という意味では、コストを増やさなければなりませんが、売上の増加の数分の1のコスト増で対応できるはずです。
つまり、2次関数のグラフになるのです。
売上は伸びても、コストの伸びは小さいので、時間が経過すればするほど、勝手に売上も、利益も伸びていきます。
利益率も、売上が上がれば上がるほど高くなっていくのです。
過去の売上の貯金が未来に反映されるビジネスモデルです。極端なことを言えば、1年、2年営業しなくたって、顧客が貯まっているから食っていけるのです。
利益率が上がれば、その利益を原資として再投資をかけることができるので、サービスレベルも高くなり、さらに顧客を獲得できるという好循環が生まれます。
上場企業の中でも、高利益率の企業を見れば、この「貯める」「貯まる」を重視したビジネスモデルを意識しているところが少なくないことがわかります。
- 不動産の管理会社
- 健康食品の定期購入
- 高齢者向けの食品宅配
- クラウド系ビジネス
- 月額課金系のオンデマンドサービス
- 法人向けの福利厚生サービス
・・・
挙げていけばきりがありません。ストックビジネスと呼ぶ方もいるかと思いますが「ストック=貯める」ということですから、同じことです。
仮に業界構造が変化して、同じ手法が通じなくなったとしても、このビジネスモデルの場合
- 売上に対しての社員数(固定費)が少ない
- 今までの利益のストックがある
- 利益率が悪化しても赤字になりにくい
という特徴があります。
大企業はもちろんのこと、中小企業の経営にこそ、この「貯める」「貯まる」ビジネスを取り入れるべきなのではないかと思うのです。
「貯める」「貯まる」ビジネスとは?
売上が「貯まる」ビジネスのことを私はそう呼んでいます。
「貯める」「貯まる」ビジネスを中小企業に取り入れる方法
月額制のサービスを作る
というのが一番手っ取り早い方法です。「B to C」でなくても、「B to B」でも、サービスをちょっと変えれば、これは可能です。
前述したウェブサイトの制作会社の例で言えば
1サイト300万円でサイト制作を受注するよりも
サイト制作と3か月ごとの効果分析、改善をパッケージ化して3ヶ月ごとに50万円もらった方が良い
ということになります。
「えっ、1年だと1回で300万円もらった方がいいじゃん。3ヶ月で50万だと1年で200万円だし。」
と思ってしまう方も多いかと思いますが、少なくとも私は上記の2つのプランでどちらでも受注できるのであれば、迷わずに後者を選択します。
それだけ継続売上の方が経営戦略が立てやすいのです。継続売上の方が離脱をさせないようにサービスを改善するベクトルに力をかけることもできます。
実際には継続的にタッチしている方が、アップセル、クロスセルもやりやすいのです。
抵抗勢力は営業マン
この考え方を中小企業に取り入れるときに一番抵抗勢力になるのは
- 営業マン
- 営業出身の役員(営業出身の経営者本人含む)
です。
なぜなら、営業マンは歩合制で仕事をしている、仕事をしてきた方が多いので、1回で大きくもらった方がインセンティブが大きくなると思っているのです。マインド的にも大きな案件を受注することにモチベ―ションを持つ方が多いのです。
それは間違えではありませんが、プレイヤーの視点であって、経営者の視点ではありません。
まとめ
1:1の売上を得るビジネスモデルの場合
- 売上を増やすためには社員数を増やす必要がある
- 毎月、社員数分の売上をあげなければならない。常に不安定
- サービスの向上よりも、売上・営業の重要性が高まってしまう
- 利益率が伸びない
- 利益率が伸びない=商品開発・設備投資ができない
- 業界構造が変わってビジネスモデルが通用しなくなった時に身動きが取れない
売上を「貯める」ビジネスモデルの場合
- 売上が増えれば、利益率が高まる
- 売上の増加に対して、コストや社員はそれほど増やす必要がない
- 貯まった利益は商品開発・設備投資に回してサービスレベルの向上が可能
- サービスレベルの向上でさらに顧客が増える好循環
- 業界構造が変わってビジネスモデルが通用しなくなった時も十分に利益のストックがある
ということになります。
経営者の意識を「目先の売上の獲得」から「売上を貯める」ためのサービス構築というところに移すことで、中小企業であっても、十分に「売上を貯める」ビジネスモデルの構築は可能だと思います。