会社を創業する際、最初に行うことの1つに、法人名義での銀行口座の開設が挙げられます。法人の銀行口座がなければ、お金のやりとりができず、商売をスタートすることができません。しかし、多くの人は、個人口座同様、簡単に開設できると勘違いしていますが、実際には法人口座の開設は年々、ハードルが高くなっていることをご存知でしょうか?
法人口座の開設の審査が厳しくなっている要因の一つとして、反社会勢力や振り込め詐欺、不正送金に法人口座が利用され、犯罪の温床となっている現状が挙げられます。(以下のような記事のような被害も出ています。)
そうしたことをふまえて、法人口座を不正使用されないために、近年、金融機関は書類、ヒアリングを徹底的に行っています。反社会的勢力などと取引があったりすると銀行の信用問題に発展します。そのため、金融機関は最初の口座開設の審査を徹底して行っているのです。
そのため、今回の記事では、
多くの人が失敗しやすい(法人口座が開設できない)点やメガバンクとネット銀行(今回は楽天銀行を例に挙げています)でどのように審査基準が異なるのか、どのネット銀行が審査基準が低いのかをわかりやすく説明します。
法人口座が開設できない3つの理由
それもそのはずです。前述したように詐欺被害、犯罪等を未然に防ぐために各銀行は法人口座の開設には、厳しい審査を設けています。銀行側がこの企業は実態のない、信用できない、事業が曖昧であると判断したら、口座を開設することができません。
では、どういった理由で「実態がない、信用できない、事業が曖昧である」と判断されてしまうのでしょうか。主な3つの理由を紹介します。
1.資本金が基準より低い
しかし、資本金1円で会社が設立したとしても社会的な信用があるか、会社として継続的に持続できるかと言われたら難しいのが現状です。例えば、金融機関の融資担当者が、初めてお会いした相手に融資判断を下す際に、もし、企業の資本金が1円であったとしたら、「いったい何の事業ができるのだろう?」「いったいどのくらい事業が続くのだろう?」と疑問に思われてしまうでしょう。
お金さえあれば、法人口座が作れるとは限りませんが、さすがに『資本金1円』ということでは、社会の公器としてみられる会社をなぜ創業したのかについて、金融機関の方とコンセンサスを得ることができないでしょう。そのため、信頼についても得ることができず、法人口座の開設もできない可能性が高いです。
因みに、行政書士の先生によると、業種や規模にもよりますが1人から数人体制で設立する際に最も多い資本金の額は100万円から300万円ほどだそうです。
資本金は会社の運営体力つまり、会社の力を表す鏡でもあります。なので、低すぎない資本金で会社を設立すべきでしょう。
いくつかの金融機関は、資本金は出来れば100万円以上で創業することを法人口座開設のパンフレットに記載し、推奨しています。理由としては経営を安定的に行うには自分を含めた社員の給料の数ヶ月分は必要であるからです。
2.自社オフィスの実態、証明が存在しない
審査に落ちる多くの人がつまずくポイントが登記先オフィスの実態がないことです。法人口座を開設する際、必ず提出する必要がある謄本に記載する会社の本籍がバーチャルオフィス(または、現在実際には使用していないオフィス)である場合、口座開設の審査に落ちる可能性が著しく高くなります。
バーチャルオフィスは気軽に借りられ、価格も低く魅力的ではありますが、資本金が基準より低いのと同様に、会社の所在を示すものがなく、実態がないと金融機関の担当者に判断されてしまうため、信用をえることができません。
なぜかというと、反社会勢力や振り込め詐欺などの犯罪にバーチャルオフィスを利用されるケースが多いため、銀行側から不審がられるためです。バーチャルオフィスだと口座を開設できないわけではないですが、審査が通る可能性が低下するのは事実です。実際に、バーチャルオフィスの住所で書類を提出すると、金融機関の方から「これはバーチャルオフィスですね。実態のあるオフィスの記載をお願いします」と言われることも多々あるそうです。
また、固定電話に関してですが、信用度という観点からするとあるに越したことはありません。固定電話は会社の所在を示すもの、実態があることを示すものでもあるので、固定電話で登記を行いましょう。
会社をこれから創業される場合は登記に関しては、バーチャルオフィスではなく、実体のあるオフィス、建物で登記をしましょう。又、電話番号に関しても、信頼性を高めるために、必ず、携帯電話ではなく、固定電話で登記をしましょう。
3.事業内容が明確でなく、複数存在し、首尾一貫していない
まず、何より創業してからはじめに行わなければいけないことは、自身の会社の事業目的を明確化し、首尾一貫した事業構成にすることです(仮に複数存在する場合でも優先順位付けする必要があります)。
そのためにも、どういった事業を行っているのかを明確に説明ができる必要があります。実店舗を持つ金融機関にて法人口座を開設する際は、書類審査だけではなく、事前ヒアリングも行われ、その結果も審査が通るか通らないかに非常に影響します。
事前ヒアリングでは
- 法人の口座を開設する目的は何か
- 主な会社の事業内容は何なのか(謄本に記載されている事業が複数ある場合は、それぞれ内容について、説明する必要がある。)
- 会社の実質的支配者(主に株主)は誰なのか。(議決権の25%を超え、支配的な影響力を有すると考えられる方の氏名・住居・生年月日等の個人情報や会社にどのように影響しているのかを尋ねられる。)
などを尋ねられます。急に聞かれてもなかなか答えられないですよね。会社の事業、経営の方針、目的が不明瞭であったりすると、金融機関の方があなたの会社の実態が把握しづらくなり、不審に思われてしまいます。そのためにも、どういった事業を行っているのかを明確にし、且つ、説明ができる必要があります。
審査を行う前に自身の会社の創業経緯、事業の目的、経営方針を簡潔にまとめておきましょう。口にて口座開設の審査の場合、審査担当者に事業の経緯、会社の経営方針などを説明する機会があります。その機会に備えて、プレゼンの練習もしておきましょう。
また、会社の実態をより明らかにするためにも、会社のホームページ、使用している契約書やパンプレットなどの営業資料も事前に用意しておいた方がよいでしょう。
審査基準が低いのはメガバンク?ネット銀行?おすすめの銀行はここ!!
必ず、提出者(または代表者)本人に関する確認書類、会社(法人)に関する確認書類の両方を金融機関に提出しなければなりません。
個人口座の開設であれば、本人確認書類として免許証などの提出だけで、済んだかもしれませんが、法人の口座開設はそうはいきません。
法人は個人と比較すると、利害関係がより複雑になるため、健全であること、公序良俗に反していないことを示すための資料を数多く提出しなければなりません。
メガバンクの審査基準(必要な書類&ヒアリングで尋ねられる内容)
先ほども述べたように、メガバンクの審査基準には、書類審査、ヒアリング審査があり、両方とも審査が厳しいです。
どんな資料を事前に準備しなければならないの?
どんなことを聞かれるの?
メガバンクの審査基準(書類編)
法人の印鑑証明書
最寄りの法務局にて、取得の手続きを行うことができます。
※会社の商号、会社等の住所、印鑑提出者の資格、氏名、出生年月日の記入が必要。
法人設立届出書
法人設立届出書とは、会社が設立されたことと、会社の基本的な内容を各市町村(納税地)の税務署に届け出る書類のことを指します。
※法人設立届出書は会社が所属する納税地の税務署に提出し、その提出期限は会社設立から2ヶ月以内。
公的な本人身分証明書の写し
代表者自身の本人確認ができる書類のことを指します。金融機関によっては、免許証など指定される場合もありますが、一般的には運転免許証、住民票の写し(住民票記載事項証明書)、住民基本台帳カード、各種健康保険証などを使用することができます。
※発行日が過ぎていたり、写真がないもの、鮮明にコピーできていないものは無効のものは使用不可。
履歴事項全部証明書
所謂、会社の会社の謄本と呼ばれる書類で、会社名や住所などの基本的な会社の情報を記載したものです。履歴事項全部証明書(商業・法人登記簿謄本とも記載されてる場合があります。)は法務局(本局、支局、出張所のいずれも可)で取得することができます。
※基本的には会社の代表者が取得。
委任状
各地方自治体の役所にて身分証明書を提示し、委任状の発行に関する資料を提出すると請求することができます。
法人番号確認資料
法人番号通知書がこれにあたります。法人番号指定通知書は、会社の登記を完了後、一週間程度で登記上の所在地宛てに郵送されます。
株主名簿
株主名簿に特に決まった書式はありませんが、株主の氏名、住所、株式数、株式の取得日(会社設立日)を記載する必要があります。
青色申告承認申請書
青色申告の申請をするためには、事前に税務署に届け出が必要です。
※新たに会社を創業された方は、原則として開業日から2カ月以内に「青色申告承認申請書」を提出。
メガバンクの審査基準(ヒアリング編)
実店舗を持つ金融機関で法人の口座を開設する場合、書類審査以外にも、ヒアリングでの審査があります。ヒアリングの内容自体は事業にまつわる基本的なことが尋ねられますが、しっかりとした準備が必要です。
- 主な会社の事業内容は何なのか
※謄本に記載されている事業が複数ある場合は、それぞれ内容について、説明する必要。
- 法人の口座を開設する目的は何か
- 会社の実質的支配者(主に株主)は誰なのか。
これらのヒアリングに備えて、営業が行われている事を示すための営業資料、自社の事業を説明するためのプレゼン資料、顧客がいることを示すための顧客やクライアントとの契約書が必要になります。
ヒアリングされたことを証明するための書類を提示し、且つそれらを逐一、説明、プレゼンする必要があります。書類審査で書類を揃えることができても、ヒアリング審査で落ちる人も多々います。メガバンクのヒアリング審査の厳しさは書類審査以上です。
ネット銀行の審査基準(必要な書類&ヒアリングで尋ねられる内容)
ネット銀行の審査自体はメガバンクと比べると簡単であると一般的言われています。というのは、メガバンクの場合、書類審査以外にも、ヒアリングでの審査がありますが、ネット銀行の場合、書類審査のみで開設可能です。特に楽天銀行は提出すべき書類の数が少ないため、口座の開設が簡単と言われています。
では、楽天銀行で口座の開設するのに必要な書類を見ていきましょう。
結論から言うと、書類審査で提出が必要なのは以下の最低、2点のみです。(楽天銀行のWEBサイト申込を終えた後に、以下2つの必須書類を申込書と合わせて提出しなければいけません。)
- 法人登記内容の確認資料
法人登記内容の確認を行うため、歴事項全部証明書の原本を提出する必要があります。
※発行日から6ヶ月以内のものに限る
※登記上の住所と連絡先住所が異なる場合には下記のいずれかを提出
・公共料金などの領収書(電気、ガス、水道、電話)、国税・地方税などの納税証明書、社会保険料の領収書のうち1点
- 口座管理者の本人確認資料
口座管理者の本人確認を行うため、下記のいずれかを提出する必要があります。
・運転免許証、各種保険証、パスポート、個人番号カード(所謂、マイナンバーカード)、住民基本台帳カード、在留カード
まとめ
法人の口座を開設する際、メガバンクと楽天銀行をはじめとするネット銀行を比較すると、それぞれでメリットとデメリットが異なり、優劣はつけられません。
しかし、もしあなたが金融機関に求める事が
口座の審査が厳しすぎず、簡単に口座を開設できる
ことであれば、とりわけ、ネット銀行の中でも口座の審査が厳しすぎない楽天銀行で口座を開設する事を強くをおすすめします。今まで見てきたように、楽天銀行は提出書類が少なく、又、ネット銀行であるため、ヒアリング審査がありません。これから創業される方、創業はしているが、まだ法人口座を持っていない方は楽天銀行で法人口座を開設して見てみてはいかがでしょうか。