多くの経営者が法人自動車保険を加入すべきか悩んでいると思います。
特に最近では、法人自動車保険に関する情報が増えてきているように思います。
そのため、今回は『法人自動車保険とは?法人自動車保険の選び方とメリットデメリット・注意点を徹底解説』という記事のタイトルで、法人自動車保険の選び方、メリット・デメリット・注意点にういてt徹底解説します。
法人向けの自動車保険の2つの特徴と選び方
法人向けの自動車保険の2つの特徴
法人向けの自動車保険には特徴がありますが、その特徴は大きく分けると以下の2点です。
①車を法人名義にすると損金で落とすことができる
自動車保険を法人契約で結ぶと、その保険料は事業の必要経費として落とせるようになります。
しかし、そのためには条件として、社用車を事業目的で使用していなければなりません。
②名義はすべて会社名義になる
社用車を法人向け自動車保険で契約すると、契約者名、被保険者名、車両所有者名のすべてが個人名義ではなく会社名義となります。
今回は個人向け自動車保険と法人向け自動車保険の2つの違いを解説します。
法人契約における自動車保険の選び方
自動車保険の法人契約は「総契約台数」に応じて、以下の3つに分けられます。
そのため、法人の場合、「総契約台数」に応じて自動車保険を選ばなければいけません。
- ノンフリート契約
- ミニフリート契約
- フリート契約
それぞれについて説明します。
フリート契約とは
「所有・使用する自動車」のうち、ご契約期間が1年以上の自動車保険をご契約されている自動車の合計台数が10台以上である契約をフリート契約といいます。
以下が、フリート契約とノンフリート契約の違いを示した表になります。
フリート契約 | ノンフリート契約 | |
---|---|---|
割増引率の適用単位 | 契約者単位 | 自動車一台単位 |
割増引率の決定方法 | 総契約台数と保険料、保険金、前年のフリート割増引率によって決まります。 | 前契約のご契約期間、ノンフリート等級別料率、事故有係数適用期間、事故件数および事故内容によって決まります。 |
また、当然ではありますが、フリート契約とノンフリート契約では、それぞれで保険の条項が異なります。
以下が、リート契約とノンフリート契約のそれぞれの項目を比較したものになります。
項目 | フリート契約 | ノンフリート契約 |
---|---|---|
契約台数 | 10台以上 | 9台以下 |
割引適用単位 | 契約者 | 自動車 |
等級の有無 | 無 | 有 |
事故の影響 | 損害率 | 件数 |
年齢条件 | 無 | 有 |
運転者の範囲 | 無 | 有 |
保険の種類 | 一般用 事業用 |
家庭用 個人用 |
ミニフリート契約について
フリート、ノンフリート契約のほかにミニフリート契約というものがあります。
これは「1保険証券で2~3台以上の車を一括で保険契約して、ノンフリート多数契約割引制度を活用する契約」のことをいいます。
等級別割引・割増率はノンフリート契約のものを使用します。そこに「ノンフリート多数契約割引」の割引率を加えたものが「ミニフリート割引・割増率」となります。
ベースがノンフリート契約なので、10台以上の契約となるようなミニフリート契約はありません。
法人の自動車保険の2つのメリット
①法人の自動車保険専用の補償が存在する
法人契約でなければ契約できない、法人契約ならではの補償は数多く存在します。
今回は代表的な法人の自動車保険専用の補償を紹介します。
補償名称 | 補償内容 |
臨時代替自動車特約 | 契約の自動車の整備・修理・点検などのために整備工場などの管理下にあって使用できない間に、代替として借用中の自動車を契約の自動車とみなして、契約の自動車の契約内容に従い、所定の保険金を支払う特約です。 |
休車費用特約 | 事故により、契約の自動車を修理するために入庫する場合や代替自動車を取得する場合など、契約の自動車を使用できない期間の休車損害に対して定額で保険金を支払う特約です。 |
受託貨物賠償責任特約 | 契約の自動車に積載中の受託貨物について、運送中の自動車事故・火災などの所定の事故により損害が生じ、運送業者などが荷主に対して法律上、運送・寄託契約上の損害賠償責任を負担する場合に保険金を支払う特約です。 |
安全運転教育費用特約 | 契約の自動車を運転し、対人賠償事故または対物賠償事故を起こした従業員などの安全運転教育費用を企業が負担する場合に、その費用に対して保険金を支払う特約です。 |
リースカーの車両費用特約 | 契約のリースカーに生じた盗難や偶然な事故により、リースカーの借主に生じた損害(修理費やリース契約中途解約費用)に対して保険金を支払う特約です。 |
②クーリングオフ制度が存在する
多くの保険会社の場合、安心して契約できるように、インターネットでの契約には「クーリングオフ制度」を設けてあります。
契約者はクーリングオフの申出を行うことにより、申込み(契約)の撤回、解除を行うことができます。
クーリングオフの申出があった場合には、すでに支払をした保険料を速やかに返戻されます。
そのため、安心して、保険に加入できます。
法人の自動車保険の2つのデメリット
ただ、残念ながら、法人の自動車保険にもデメリットがあるのは事実です。
今回は法人の自動車保険の2つのデメリットを解説します。
①自動車保険の法人契約は特約を設定することができない
自動車保険の法人契約では個人契約にあるような特約を設けることはできません。
運転者の状況に応じた個別の特約はありません。受託して運送している荷物の損害を補償する「受託貨物賠償責任特約」といった法人契約だけの特約は存在しますが、必ずしも契約者や運転者にあった保険に加入できるとは限りません。
②自動車保険の法人契約は補償内容を自分で決めることができない
法人契約は多くの場合で対人・対物賠償や人身傷害補償・搭乗者損害保険などの基本的な補償内容が決まっています。
補償範囲が一律で自分の希望する補償プランにできない保険会社がほとんどです。
手厚い補償やより安い保険料を望むのであれば個人契約の方が契約内容の自由度が高いためおすすめです。
法人の自動車保険で気になる9つの注意点・疑問点
今回は、多くの人が疑問に思うであろう法人の自動車保険で気になる9つの注意点をわかりやすく解説します。
①自動車保険を法人契約から個人契約に変えることは可能か?
結論から言うと、法人契約した自動車保険を個人契約に変更することは、基本的にはできないと思った方がよいでしょう。
基本的に、法人契約で長年の実績があったとしても、個人契約をする際には新規契約になります。
新規契約になるということは、つまり、ノンフリート等級が6から再スタートするということを意味します。
ノンフリート等級が下がってしまうと、保険料が高くなってしまいます。
法人契約で上がった等級を何とか利用したいと思う気持ちは分かりますが、基本的には法人契約を個人契約に変更することはできません。
例外のケース:法人が解散し、同様、事業を行う個人事業主となる場合
例外として、法人契約を個人契約に変更できるケースはあります。
それは、自動車保険の記名被保険者に設定されている法人が解散し、同様事業を行う個人事業主となった場合です。
⑴法人が解散→⑵代表取締役が個人事業主として事業を引継→⑶法人名義の自動車保険を個人名義に変更
このケースであれば、自動車保険を契約していた同じ自動車を対象にしたまま、記名被保険者を法人から個人に変更できます。
必要となる証明書類は、自動車保険の保険会社ごとに違います。
法人契約から個人契約に変更する必要に迫られたら、契約している自動車保険会社に相談してください。
②自動車保険を個人契約から法人契約に変更できるのか
上記では、自動車保険を法人契約から個人契約に変えること点を説明しましたが、次に、個人契約の自動車保険を法人名義に変更するケースについて、説明します。
自動車保険の個人契約を、法人契約に変更できるのは、個人事業主の方が、法人を設立したときです。
もともと使用していた車両の、個人契約の自動車保険を、新規で設立する法人の名義に変更するといった場合になります。
具体的には以下のような流れとなります。
⑴法人を設立した→⑵代表取締役が個人で所有していた車を法人名義に変更
⑵自動車保険の契約者が法人で記名被保険者が個人の場合
ちなみに、契約者が法人で、記名被保険者が個人の場合には、手続きを行えば、特に問題なく法人から個人に契約者・利用者を変更できます。
これはつまり、自動車保険が契約者ではなく、記名被保険者を中心に契約される契約だからといえます。
③記名被保険者は誰にすべきか
結論から言うと、記名被保険者は「その車を主に運転する人」に設定すべきです。
所有者が法人となっている車で自動車保険を契約しようとしたとき、記名被保険者は法人・個人どちらでも設定することができます。
ただし、記名被保険者は「その車を主に運転する人」である必要があります。
社長がひとりで法人成りをして、社長本人が車を主に運転するのであれば記名被保険者は個人となります。
また、法人成りをした際に契約者のみを法人にし、記名被保険者を個人のままにするのであれば、これまでの等級を継承することができます。
記名被保険者に設定できる個人は下記のとおりです。
- 記名被保険者に設定できる個人
- 本人
- 社長の配偶者
- 同居の親族
- 別居の未婚の子
④法人の車両は1日自動車保険が利用することが可能できるのか
結論から言うと、多くの場合、1日自動車保険は法人名義の車は対象外となっています。
例えば、
- セブン-イレブンから申し込み可能な三井住友海上の1day保険
- 契約者数トップを誇る東京海上日動火災のちょいのり保険
など現在販売されている1日自動車保険は、あくまで個人向けの商品となっています。
法人で登録されている車で起こした事故による治療、賠償、修理などに関する費用は、法人が加入している自賠責や任意保険を利用することになります。
ただし、全ての法人名義の車が対象外というわけではなく、なかには例外規定が設けられているものもあります。
例外:使用者欄が個人名
借りる車が所有権留保条項付売買契約で購入していた場合、自動車車検証の所有者欄には、自動車販売店などの法人名が記載され、使用者欄に個人名が記載されている場合は1日自動車保険の対象となります。
所有権留保条項付売買契約とは、ディーラーなど販売店が自動車を販売する際に、現金一括ではなく、ローン契約などを利用する場合、販売代金の全額領収までの間は所有権を購入者に移行せずに留保する契約のことを言います。
車をローン等で購入する人は多く、使用者は個人で実質的には利用・所有していることから例外として1日自動車保険が適用されています。
⑤法人名義で複数台の車を所有する場合、1つの契約にまとめるべきか
法人名義の車で2台目、3台目を購入した場合、同じ保険会社で、一つの契約にまとめることを基本的におすすめします。
というのは、一つの契約にすることで自動車保険の管理も簡単になるだけでなく、「ノンフリート多数割引」が適用される商品が多くあるためです(多くの場合、5台までだと○○%割引などの割引が適用されます)。
また、法人で有している車が10台を超えた場合は「フリート契約」に移行することになりますが、その際も契約がバラバラになっている場合よりも手間がかからず、スムーズに移行することが可能です。
⑥保険契約者が個人でも保険料を法人の経費にできるのか?
結論から言うと、保険契約者が個人でも保険料を法人の経費にすることができます。
というのは、この点を法律の点から考えると、実質所得者課税の原則(法人税法第11条)が採用されるためです。
(実質所得者課税の原則)
第十一条 資産又は事業から生ずる収益の法律上帰属するとみられる者が単なる名義人であつて、その収益を享受せず、その者以外の法人がその収益を享受する場合には、その収益は、これを享受する法人に帰属するものとして、この法律の規定を適用する。
上記を簡単に説明すると、「表面上の名義ではなく実質的な所有者等に所得を帰属させる」というものです。
従って、法人で車を使用しているのであれば、個人で保険に加入していたとしても会社で経費計上(損金算入)する事ができます。
⑦法人契約の車が交通事故にあった場合、対応はどうすればいいのか
まずは警察へ届け出ることをおすすめします(けが人がいる場合は救急車の手配も必要になります)。
その後に、保険証券等に記載の事故対応窓口へ電話すべきです。
目撃者が周囲にいる場合、証言をメモし、必要であれば証人になってもらうよう依頼しておきましょう。万が一のトラブルの際に第三者は効果的です。
また、その場では軽傷だと感じても、必ず医師の診断等を受けるようにしましょう(後に、意外と怪我が重かったというケースも考えられます)。
事故が起きた際の対応には各社独自のサービスがあります。
例えば、セコム損保の自動車保険の場合、現場急行サービスというものがあり、セコムの緊急対処員が現場に掛け付け、必要な対処を行ってくれますので、万一の際にも的確な対応を行ってくれます。
⑧法人の自動車保険を解約した場合、保険料の返金はあるのか
法人の自動車保険の保険期間の中途で解約があった場合、基本的には、返戻保険料を計算した上で、返金されることが一般的です。
返戻保険料は、残りの保険期間に応じ、あらかじめ定めた短期料率を適用された上で計算します。
⑨支払いはどういった手段が可能か?
基本的には、
- クレジットカード払い(一括・分割・リボ)
- コンビニ払い(一括)、銀行振込(一括)
- 口座振替(分割)
が利用できるそうです。
まとめ
いかがたったでしょうか。
今回は『法人自動車保険とは?法人自動車保険の選び方とメリットデメリット・注意点を徹底解説』と言う記事のタイトルで、
- 法人自動車保険の選び方
- 法人自動車保険のメリット
- 法人自動車保険のデメリット
- 法人自動車保険の注意点
について解説しました。
しかし、上記でも述べたように、法人の自動車保険はフリーと契約とのんフリー契約では内容が大幅に異なりますし、保険会社によっても契約の中身は変わってくるでしょう。
そのため、法人の自動車保険を選ぶ際は、上記で説明したことに加え、各保険会社の保障内容などを比較しながら、加入することをおすすめします。