共有メールのセキュリティ要件は4点で決まる|SSO・IP制限・MFA必須化がプランを縛る【2026年】

共有メールで決める4つのセキュリティ要件と、SSO・IP制限・MFA必須化がプランを縛ることを示したアイキャッチ

問い合わせ管理システムを選ぶとき、料金と機能で候補を絞ったあとに情報システム部門から要件が出て、候補が1つに減る。よくある流れです。この分野では、シングルサインオンやIPアドレス制限といった要件が、そのまま上位プランの指定に変わります。要件を先に決めておけば、料金の比較のやり直しを避けられます。ここでは、決めるべき4つの要件と、現行サービスがそれをどのプランに置いているかを整理します。

この記事の結論

決めるのはアクセス制限・本人確認・権限・送信前の確認の4点です。この4つで、選べるプランがほぼ決まります。

Re:lationはシングルサインオン・IPアドレス制限・多要素認証をビジネスプラン以上に置いています。MFAの必須化はプロ以上です。

メールワイズはIPアドレス制限とBasic認証が無料で標準搭載。外部からの安全なアクセス(セキュアアクセス)は別料金です。

要件を先に固めないと、料金で選んだあとに「そのプランでは使えない」となり、比較をやり直すことになります。

なぜ要件を先に決めるのか

共有メールの製品は、基礎機能を下位プランにも入れて、セキュリティ機能を上位プランへ寄せる構成が多くなっています。Re:lationを例にとると、チケット管理・ステータス管理・二重返信防止・担当者振り分け・送信前確認は全プランで使えますが、シングルサインオン認証、IPアドレス制限、MFA(多要素認証)機能はビジネスプラン以上です。MFA必須化に至ってはプロとエンタープライズに限られます。

つまり、料金表の下のほうを見て予算を立てても、社内規程がSSOを求めていればその瞬間に候補から外れます。逆に、要件が「担当者が分かればよい」程度なら、下位プランで十分足ります。順番を逆にすると、比較を2回やることになります。

決めるのは4点だけ

図1 共有メールで決める4つのセキュリティ要件

1 どこから入れるか

社内ネットワークからだけにするか、自宅や外出先からも入れるか。IPアドレス制限を使うかどうかの判断です。

2 本人をどう確かめるか

IDとパスワードだけにするか、多要素認証を足すか。必須化するか任意にするか。シングルサインオンで社内の認証基盤に寄せるか。

3 誰に何を見せるか

受信箱ごとのアクセス権、返信できる人と見るだけの人の区別、外部スタッフの扱い。

4 送る前に誰が見るか

送信前の確認画面、上長の承認、添付や宛先のチェック。誤送信を止める工程をどこに置くか。

現行サービスは、この4点をどこに置いているか

各社の公式サイトに機能として掲げられている範囲で並べます。○は公開されている機能、△は上位プランやオプション、-は今回参照したページで確認できなかったものです。

表1 セキュリティ関連機能の対応状況(各社公式サイトの表示。2026年10月1日確認)
要件メールワイズyaritoriRe:lation楽楽自動応対
IPアドレス制限○(無料で標準搭載)○△(ビジネス以上)○
多要素認証-○(SMSによる二要素認証)△(ビジネス以上)○(2段階認証)
多要素認証の必須化--△(プロ・エンタープライズ)-
シングルサインオン--△(ビジネス以上)○
権限の区分-○(管理者・メンバー・閲覧者)○(全プランでユーザ権限設定)○(操作権限)
送信前の確認・承認-○(下書きの共有)○(送信前確認・警告/全プラン)○(申請・承認)
添付ファイルの扱い--△(添付アラートは全プラン、ウイルスチェックはスターター以上、URL化はプロ以上のオプション)○(自動暗号化)
監査ログ--△(ビジネス以上・オプション)-
外部からの安全なアクセス△(セキュアアクセス 月額250円/1ユーザー)---

「-」はその機能がないという意味ではなく、公開されている機能一覧で確認できなかった、という意味です。要件に必須の項目があれば、その1点を各社に確認してください。

アクセス制限は「標準か、有料か」で分かれる

IPアドレス制限は4サービスとも扱いがありますが、条件が違います。メールワイズは「IPアドレス制限、Basic認証は無料で標準搭載です」と明記しています。Re:lationはビジネスプラン以上の機能で、セキュリティページには「アクセス元IPアドレスを制限することも可能です。(プランにより有償)」という注記もあります。

制限をかけると、外から入れなくなります。在宅勤務や出張先からの対応がある場合は、そこをどう開けるかが次の論点です。メールワイズは、外出先や自宅から安全にアクセスするための「セキュアアクセス」を有料オプション(月額250円/1ユーザー、年額3,000円/1ユーザー)として用意しており、「クラウド版『メールワイズ』とユーザー数を揃える必要はありません」と注記しています。全員分を買う必要はなく、外から入る人の分だけ足せる形です。

制限は「かけるか」ではなく「誰に、どこまで」

Re:lationのIPアドレス制限は「接続元IPアドレスを制限するユーザを指定できる」と説明されています。全員に一律でかけるのではなく、対象のユーザーを選べる仕様です。

要件を決めるときは、「IP制限が要るか」ではなく「誰に、どの範囲でかけ、例外をどう扱うか」まで書いておくと、製品側の仕様と突き合わせやすくなります。

本人確認は、必須化できるかどうかまで見る

多要素認証は3サービスに記載があります。yaritoriはSMSによる二要素認証、楽楽自動応対は2段階認証、Re:lationはMFA機能をビジネスプラン以上に置いています。

ここで差が出るのが「必須化」です。Re:lationは「MFA必須化」を独立した機能として持ち、対応プランはプロとエンタープライズです。説明は「ユーザのログインに際し、MFA認証(多要素認証)を必須にできる」。任意で使えることと、全員に強制できることは別の話で、社内規程が後者を求めている場合はプラン指定が一段上がります。

シングルサインオンは、Re:lation(ビジネス以上)と楽楽自動応対に記載があります。すでにIdPを運用していて、退職時のアカウント停止を一元化したい会社では、この1点が選定の決め手になることがあります。

権限は「見るだけの人」をどう扱うか

権限設計で見落としやすいのが、返信はしないが状況は見たい人の扱いです。管理職、他部署の担当、委託先。全員に返信できる権限を渡すと、誤送信の母数が増えます。

図2 権限を決める3ステップ

  1. 区分を決める yaritoriは「管理者」「メンバー」「閲覧者」の3区分です。管理者はユーザー招待、チームの作成とメンバー登録、メールアドレスの追加・更新・削除に加え、プランや請求先情報の変更ができます。運用担当と決裁者を分けている会社は、この請求権限の所在を確認してください。
  2. 受信箱との対応を決める yaritoriは「チームごとに管理するメールアドレスとアクセスできるメンバーを設定することができます」としています。Re:lationも「部門・部署や製品毎など、業務に合わせて受信箱を作成可能」で、ユーザ権限設定は全プランです。
  3. 閲覧専用の枠を確認する Re:lationのプロには「閲覧ユーザー5名」が含まれます。返信できるユーザーとは別枠で、見るだけの人を持てる設計です。閲覧者の人数が多い会社は、この枠の有無で総額が変わります。

送信前の確認は、3つの方式がある

誤送信を止める工程は、製品によって置き方が違います。大きく3つです。

表2 送信前後のチェックの置き方(各社公式サイトの表示)
方式該当する機能止まる場所
送信前に確認画面を出すRe:lationの「送信前確認・警告」(全プラン)、「送信前チェック機能」(ビジネス以上。宛先・本文などを確認しないと送信できない)自分で止める
第三者が承認する楽楽自動応対の「送信内容チェック(申請・承認)」、yaritoriの「下書きの共有(メールの承認機能)」他人が止める
送った直後に取り消す楽楽自動応対の「送信キャンセル」送ったあとに止める

加えて、機械的な警告もあります。Re:lationには添付漏れを防ぐ「添付アラート機能」と、複数の異なるドメインへ送るときに警告が出る「ドメインアラート機能」があり、どちらも全プランです。楽楽自動応対には「添付ファイル自動暗号化」があります。

どこで止めるかは、窓口の性格で決めます。個人情報を扱う窓口や、金額を伝える窓口は第三者の承認を入れる価値があります。一方、件数が多く定型の窓口に承認を挟むと、処理が滞ります。全部に承認をかけるのではなく、対象を絞るのが現実的です。

製品の機能とは別に、提供側の体制も見る

機能の一覧とは別に、提供会社側の取り組みが公開されていることがあります。Re:lationのセキュリティページは「組織としての取り組み」と「搭載機能」を分けて書いており、前者では情報セキュリティマネジメントの国際規格であるISO27001および27017(ISMS)の取得、2026年のAWSファンデーショナルテクニカルレビュー(FTR)通過による「AWS認定ソフトウェア」認定、24時間365日の監視、PCI DSS推奨のTLS1.2以上に限定した暗号化接続、データベースの毎日のバックアップ(10世代分を暗号化して複数のデータセンタに分散保管)が挙げられています。

この種の情報は、社内のセキュリティチェックシートに回答するときに必要になります。製品を選ぶ段階で、規格の取得状況とバックアップの方針が公開されているかを見ておくと、あとで資料を探す手間が減ります。

Re:lationのセキュリティページで、ISMS取得・AWS認定ソフトウェア・24時間365日監視・TLS1.2以上・バックアップ・BCPとDR対策が並んでいる画面キャプチャ
Re:lation「セキュリティ」。組織としての取り組みが6つのカードで示され、その下に搭載機能と対応プランが続く。

セキュリティチェックシートで聞かれること

導入の最終段階で、取引先や自社の情報システムからチェックシートが回ってくることがあります。共有メールの製品で聞かれやすいのは、おおむね次の項目です。どこまで公式サイトで確認できるかを、あらかじめ把握しておくと回答が早くなります。

規格の取得状況は、Re:lationがISO27001および27017の取得をセキュリティページに明記しています。監視体制も「24時間・365日体制で監視されています。万一の障害発生時も昼夜問わず対応いたします。」と書かれています。通信の暗号化は「Re:lationへのアクセス暗号化接続方式をPCI DSS推奨のTLS1.2またはそれ以上に限定しています。」という表現です。

バックアップについては「データベースのバックアップは毎日行われており、10世代分を暗号化して複数のデータセンタに分散保管しています。」と、頻度・世代数・保管方法まで公開されています。世代数まで書かれている例は多くないため、チェックシートの回答に使える水準です。あわせて「全てのお客様毎に独自サブドメインのURLを提供」という記載もあります。

これらは製品の機能ではなく、提供会社の運用です。機能一覧だけを見比べても出てこないため、要件を洗い出す段階でセキュリティ専用のページがあるかどうかを確認しておくと、後工程が軽くなります。

要件を決めてから比較する手順

図3 順番を逆にしないための3手

先に情報システムへ聞く

SSOの要否、IP制限の要否、MFAを必須化するのか任意か、監査ログの保存要件。この4つを先に確定させます。

要件をプランに翻訳する

Re:lationならSSOとIP制限でビジネス以上、MFA必須化でプロ以上。この時点で見積もる価格帯が決まります。

残った候補で料金を比べる

ここではじめて、人数と窓口数を当てはめて総額を出します。順番を逆にすると、比較をやり直すことになります。

各サービスの料金と契約条件を同じ表で見たい場合は、問い合わせ管理システム比較5選にまとめています。プランごとの機能の線引きはRe:lationの料金とプラン、標準搭載とオプションの分かれ方はメールワイズ クラウド版の料金と条件で確認できます。

よくある質問

IPアドレス制限が必須です。どのサービスが使えますか。

メールワイズは無料で標準搭載、yaritoriと楽楽自動応対は機能として掲げています。Re:lationはビジネスプラン以上で、セキュリティページに「プランにより有償」という注記があります。

多要素認証を全員に強制したいのですが。

Re:lationは「MFA必須化」を独立した機能として持ち、対応プランはプロとエンタープライズです。他のサービスについては、必須化できるかどうかの記載を今回参照したページでは確認できませんでした。

シングルサインオンを使いたい場合は。

Re:lation(ビジネス以上)と楽楽自動応対に記載があります。

見るだけの人を安く持てますか。

Re:lationのプロには「閲覧ユーザー5名」が含まれます。yaritoriは「閲覧者」という権限区分があります。

誤送信対策は何を選べばよいですか。

自分で止める(送信前の確認画面)、他人が止める(申請・承認や下書きの共有)、送ったあとに止める(送信キャンセル)の3方式があります。窓口の性格に合わせて、対象を絞って設定するのが現実的です。

在宅勤務がある場合、IP制限とどう両立しますか。

メールワイズは外出先や自宅から安全にアクセスするための「セキュアアクセス」を有料オプション(月額250円/1ユーザー)として用意しており、契約ユーザー数を本体と揃える必要はないと注記しています。

まとめ

共有メールのセキュリティ要件は、アクセス制限・本人確認・権限・送信前の確認の4点に整理できます。この4点を先に決めると、選べるプランが絞られ、料金の比較が1回で済みます。

現行サービスでは、Re:lationがシングルサインオン・IPアドレス制限・多要素認証をビジネスプラン以上に置き、MFAの必須化をプロ以上に置いています。メールワイズはIPアドレス制限とBasic認証が無料で標準搭載で、外部からのアクセスは有料オプションです。楽楽自動応対はSSO・2段階認証・IP制限・添付ファイル自動暗号化を機能一覧に掲げ、yaritoriはSMSによる二要素認証とIPアドレス制限、3区分の権限管理を公表しています。

条件は改定されることがあるため、要件に関わる項目は各社の公式ページで最新の表示を確認するか、直接問い合わせてください。

参照した一次情報

  • インゲージ「Re:lation セキュリティ」https://ingage.jp/relation/security/(組織としての取り組みと搭載機能、機能ごとの対応プラン、IPアドレス制限はプランにより有償である旨)/同「機能一覧」https://ingage.jp/relation/features/(全プランの送信前確認・警告と受信箱設定、プロの閲覧ユーザー5名)2026年10月1日確認
  • サイボウズ「メールワイズ 費用」https://mailwise.cybozu.co.jp/price/(IPアドレス制限とBasic認証の無料標準搭載、セキュアアクセスの料金とユーザー数を揃える必要がない旨)2026年10月1日確認
  • yaritori「機能」https://yaritori.jp/function/(SMSによる二要素認証、IPアドレス制限、メンバーの権限管理、下書きの共有)/同「よくあるご質問 ユーザーごとの権限管理はできますか?」https://yaritori.jp/faq/security-2/(管理者・メンバー・閲覧者の3区分と管理者の権限範囲)2026年10月1日確認
  • ラクス「楽楽自動応対(旧メールディーラー)」https://www.maildealer.jp/(セキュリティ区分のシングルサインオン・2段階認証・IPアドレス制限・添付ファイル自動暗号化・操作権限、品質向上区分の送信内容チェック〈申請・承認〉、問い合わせ管理区分の送信キャンセル)2026年10月1日確認

表示内容は2026年10月1日に各社の公式サイトで確認したものです。機能の対応プランや料金は改定されることがあります。

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