どちらのタイプのカードも基本的には同じ機能を有しています。ショッピングをするときや、サービスを受けるときなどに決済として利用できるわけです。その場に現金を持ち合わせていなかったとしても、決済に利用できます。
しかし厳密には法人カードと個人カードには、異なる部分が多々あるのです。
そもそも個人カードは個人を対象として作られているクレジットカードです。一般消費者向けカードといっても良いでしょう。法人カードとは、個人事業主や法人や団体に向けて作られています。
こちらでは、個人カードとの比較をメインとして法人カードのメリットとデメリットをあぶり出していきます。
法人や個人事業主でありながら、いまだに法人カードを利用していない方もいるのではありませんか?もし利用していないのであれば、損をしていることにもなりかねません。
法人カードのメリットとデメリットをチェックし、メリットの中に魅力的なものがあったら作成を検討してみましょう。ビジネスチャンスをつかむきっかけとなるかもしれないほどの、パワーを秘めているのが法人カードなのです。
法人カードと個人カード比較その1:利用限度額
- 法人カードの利用限度額:100万円から300万円のものが多い(500万円程度に設定されることも)
- 個人カードの利用限度額:数十万円から100万円程度
利用限度額には大きな違いがあります。実はここに法人カードと個人カードの大きな差があるのです。
個人カードに関しては、個人の買い物に使うことが多いのです。例えば食品を購入したり、インターネットショッピングに利用したり、最近ではコンビニ決済に利用するケースもあります。
利用の幅は広がってきていますが、個人向けのクレジットカードは月に利用したとしても、数万円から10万円程度でしょう。
月に最大でも10万円程度しか利用しないのであれば、数百万円の限度額は必要ありません。ですからほとんどの個人向けカードの利用限度額は、100万円以下に抑えられているわけです。
法人カードですが、生活費のために利用するわけではありません。会社の事業を行っていくために利用するのです。要は、「会社の経費」をクレジットカードで支払っていくことになります。
会社で利用する備品の購入に、法人カードを利用することもあるでしょう。接待をする時に飲食店などの支払いを、クレジットカードで済ませることもあるでしょう。社員の出張費にかかる交通費や宿泊費用なども、クレジットカードで支払うことがあるわけです。
仮に法人カードの利用限度額が数十万円であるすると、すぐに限度額いっぱいになってしまいます。限度額がいっぱいになってしまえばクレジットカードが利用できなくなってしまうのです。よって個人カードの低い利用限度額では意味がありません。
仮に個人カードを法人が使うとなると、うまく活用できないということになってしまいます。法人や個人事業主は法人カードを選択すべきなのです。
支払口座の設定に注意しよう
法人カードとは大口の支払いにも対応できるカードであることを述べました。そこで重要になってくるのが支払口座の設定です。
法人カードの支払口座の設定ですが、以下の2つの中から選択できます。
- 個人の口座
- 法人の口座
個人事業主であれば、個人の口座の選択で問題ありません。問題となってくるのは法人です。
法人カードは利用限度額が高額背あり、月あたり数十万円から100万円前後利用することも珍しくありません、だからこそ、利用限度額が数百万円に設定されることが多いのです。
だからこそ法人カードの支払口座の設定はなるべく法人口座にすべきなのです。
法人口座に関しては、比較的まとまった資金が入っているケースが珍しくありません。売掛金や受取手形の入金にも利用されているからです。金額が足らなくなる、といった事態が発生しにくいのです。
さらに経費管理のためにも支払口座を法人口座に限定しておくことで、経理の仕事のだいぶ楽になります。
個人カードもゴールドカード以降であれば利用限度額が高額になることも
利用限度額に関しては、カードのグレードが大きく関わってきます。
カードのグレードとは
- ノーマルカード
- ゴールドカード
- プラチナカード
- ブラックカード
ノーマルカードが一般的なグレードであり、ゴールドカード以降になるとグレードが高いカードとなります。サービスなどにも違いがあり、グレードが高くなると高額な年会費が発生することも少なくありません。
仮にノーマルカードの利用限度額が100万円であったとしても、ゴールドカードになると200万円、プラチナカードになると300万円などと設定が変わってきます。
法人カードと個人カード比較その2:追加カードの発行枚数
- 法人カードの追加カードの発行枚数:数十枚から数百枚発行できることも
- 個人カードの追加カードの発行枚数:数枚程度
追加カードの発行枚数は、圧倒的に法人カードのほうが勝っています。法人カードとは、社員の人数分の発行も可能とされているのです。
会社の規模によっても社員数は異なるとは思いますが、中規模であったとしても20人から30人の社員を抱えていることもあるでしょう。大規模な会社ともなると、数百人の社員がいることもあります。
経費に関しては社員の多くが関わっているわけです。多くの取引先に対して、様々な社員が営業をけている企業もあるはずです。その場合は、なるべく多くの社員にクレジットカードを持たせるということが必要になってきます。
法人カードはその役割を果たすためにも、追加カードの発行に対応しています。何も子カードだけを多く追加発行できるわけではありません。ETCカードも多く発行できるとのメリットがあるわけです。
特にETCカードに関しては、法人カード1枚あたり5枚発行できるといった仕組みを持っているものもあるほどです。
個人カードの追加カードですが、基本的に子カードは家族分のみとなります。ですから数枚程度に限定されてしまうのです。10枚や20枚発行できるわけではありません。
個人カードにおける家族カードの発行条件には以下のようなものもあります。
- 本会員と生計を同一にする配偶者・親・子供(高校生をのぞく18歳以上)の方
出典:「JCB」公式サイト
ETCカードについても何十枚も発行できるわけではありません。基本的にクレジットカード1枚あたり、1枚のETCカードしか発行できないわけです。
法人カードの追加カードですが、もちろん家族である必要はありません。会社に所属している社員であればOKとなっているわけです。
豆知識|追加カードの審査は実施されない
個人カードも法人カードも一緒ですが、どちらの追加カードも基本的に審査は実施されません。親カード(本会員カード)を取得している方の信用で、家族カードは発行されることになるからです。
社員ひとりひとりが審査をされるわけではありません。個別の審査は行われずに追加カードは発行されるのです。(極端な話をすれば、ブラックリストに掲載されている方に対しても家族カードであれば発行可能です)
法人カードと個人カード比較その3:ビジネス系のサービス
- 法人カードのビジネス系サービス:あり
- 個人カードのビジネス系サービス:基本的になし
法人カードとは、法人に向けられて作られているクレジットカードです。
法人が利用してメリットを感じなければ作成した意味がなくなってしまいます。そこで法人カードの多くがビジネス系のサービスに重点を置いているわけです。
法人カードのビジネス系サービス例
- カード会員限定のイベントへ参加できる
- 会員制ビジネスラウンジが利用できる
- ビジネス・コンサルティング・サービスが利用できる
- ビジネス情報のデータベースサービスが利用できる
- ビジネスデスクが利用できる
- クラウド型経理精算ソフトと連動している(一定期間無料で利用できる)
1.カード会員限定のイベントについて
法人カードなので、経済の分野で活躍する著名人を招いて行う、会員限定イベントのことを指しています。その道のトップランナーである方を迎えて、成功の秘密などを聞き出せる極めて有益なイベントとなっています。
カード会員限定イベントに関しては、異業種交流会の側面もあります。様々な方面で活躍している方と出会えるチャンスになるので、人脈を広げるということも期待できるわけです。
2.会員制のビジネスラウンジについて
個人事業主であると、事務所などを設けていないというケースも多いです。特にフリーランスで仕事をしている方の多くは、自宅などを利用しパソコン一つで作業していることも珍しくありません。
しかし、商談相手を自宅に招いて会議をするというのには問題があります。「そもそもオフィスがない」ということで、自身の信用を下げてしまうこともあるのです。
そこでおすすめなのが、法人カードに付帯していることのあるビジネスラウンジサービスです。
3.コンサルティングサービスについて
従業員が数名程度しかいない企業であると、経営の相談ができる人が身近にいないというケースも珍しくありません。そもそも経営ノウハウがないまま、突っ走ってしまうということは危険なのです。
経営上の問題が出てきたのであれば、解決する方法を見出していかなければなりません。そこで役立ってくれるのが法人カードのビジネス・コンサルティング・サービスです。
4.ビジネス情報のデータベースサービスについて
新しい取引先の詳しい情報が知りたい、ということもあるでしょう。そういった時に役立つのがデータベースサービスです。有名なのは「ジー・サーチ(G-Search)」です。
様々な企業の情報が調べられ、各決算の情報も確認できます。
- 売上高がどの程度あるのか?
- 利益はどの程度あるのか?
- 自己資本率はどの程度あるのか?
上記の情報も確認できるので、「あまりにも赤字額が大きい企業との取引は避けたい」といった時に有効活用できるわけです。
ちなみに「ジー・サーチ(G-Search)」の利用に関しては、法人カードなしでも利用できます。
しかし年会費が3,300円(税込み)かかるサービスとなっています。特定の法人カードであれば(アメリカン・エキスプレス・ビジネス・ゴールド・カードなど)、年会費無料で利用できるのでお得です。
5.ビジネスデスクについて
プラチナカードなどの上級タイプの法人カードに限定されるタイプのサービスとなっています。
- レンタルオフィスの手配
- 会議室の手配
- ビジネスラウンジの手配
- 航空機のチケットの手配
- 新幹線のチケットの手配
- 税務相談や法律相談をするための専門家の紹介
上記のようなサービスを実施しているのです。
6.クラウド型経理精算ソフトについて
法人カードの導入の目的の一つに、経費精算業務の効率化があります。その経費精算業務の効率化をさらにすすめてくれるのが、クラウド型経理精算ソフトです。
クレジットカードの利用とクラウド型経理精算ソフトが連動することで、経費の管理が自動的にできるようになるわけです。クレジットカードの利用明細をソフトに取り入れることで、伝票の自動的な作成までできてしまいます。
クラウド型経理精算ソフトの利用料金が無料になるわけではありません。「1カ月間から2カ月間の利用料金が無料になる」といったサービスになっていることが多いです。
ちなみに法人カードの特典サービスになることもあるクラウド会計ソフトの「freee」は、1カ月あたりの利用料金は5,258円(税込み)となっています。仮に2カ月無料となると、1万円以上もお得になる計算です。
個人カードではビジネス系のサービスは受けられないのか?
一方で福利厚生で使えるような優待サービスは実施されています。施設の利用料金が割引されるのです。
しかし法人カードでも優待サービスは受けられるので、個人カードのみのメリットというわけではありません。
法人カードと個人カード比較その4:ポイント還元率(マイル還元率)
- 法人カードのポイント還元率:低い
- 個人カードのポイント還元率:高い
法人カードのポイント還元率は、「0.5%以下」に設定されていることがほとんどです。法人カードではポイントが、圧倒的に取得しにくいのです。
個人カードについてはポイント還元率が高く設定されています。1.0%以上に設定されていることも珍しくありません。法人カードをポイント目的で利用するということは、実際に考えにくいわけです。
ではシミュレーションをしてみましょう。シミュレーションでは、法人カードのポイント還元率を0.3%とし、個人カードのポイント還元率を1.0%とします。
利用額 | 法人カードのポイント取得 | 個人カードのポイント取得 |
---|---|---|
10万円 | 300円相当 | 1,000円相当 |
50万円 | 1,500円相当 | 5,000円相当 |
100万円 | 3,000円相当 | 1万円相当 |
300万円 | 9,000円相当 | 3万円相当 |
仮に法人カードを年間300万円利用したとしても、ポイント還元率が0.3%であれば、1万円分のポイントも獲得できないということになります。
「法人カードをポイント取得のために利用する意味はない」ということがここに証明されてしまいました。
法人カードの中には、利用額の一部しかポイント付与対象にならないこともあります。仮に月に100万円利用したとしても、30万円しかポイント付与対象に該当しなければ30万円に対するポイントしか与えられません。
使えば使っただけのポイントが、付与されるわけでもないのです。
個人カードのポイント還元率は本当に高いのか?
- 楽天カードの標準的なポイント還元率:1.0%
- Orico Card THE POINTの標準的なポイント還元率:1.0%
- Yahoo!JAPANカードの標準的なポイント還元率:1.0%
- リクルートカードの標準的なポイント還元率:1.2%
- REX CARDの標準的なポイント還元率:1.25%
- DCカード Jizileの標準的なポイント還元率:1.42%
- ANA JCBカード プレミアムの標準的なポイント還元率:2.0%
- ジャックスカードプラチナの標準的なポイント還元率:1.5%
- Reader’s Cardの標準的なポイント還元率:1.25%
ここに紹介したのはポイント還元率が1.0%以上の代表的な個人カードです。これでもまだ一部であり、他にも1.0%以上にポイント還元率が設定されているカードはまだまだあります。
個人カードは、ポイントに特化しているものが多いということになるわけです。さらにポイントをたくさん獲得できる企画を実施しているカードも少なくありません。
例えばライフカードは通常のポイント還元率は0.5%ですが、誕生月は3倍の1.5%のポイント還元率となります。前述したOrico Card THE POINTは入会後6ヶ月間は2倍の2.0%のポイント還元率となるのです。
ポイントという面では、個人カードが圧倒的に有利となっています。
法人カードと個人カード比較その5:年会費
- 法人カードの年会費:年会費無料のカードは稀である
- 個人カードの年会費:年会費無料のカードは多い
個人カードのメリットとなるのが年会費です。一般カードに限定されるのですが、年会費が無料に設定されているものが多くなっています。余計な経費がかからずに利用できるといった特徴が、個人カードの一般タイプにはあるわけです。
法人カードですが、一般タイプであったとしてもほとんどに年会費が発生します。
年会費がかかるということは、仮に「カードを使わなかったとしてもコストが発生する」ということになるわけです。法人カードを使わなかったのにコストがかかるとしたら、もったいない事に感じるでしょう。
個人カードの年会費のかからないものであれば、仮に使い勝手が悪くて使わなかったとしても一切損することはありません。年会費が無料なので使わなかったとしても負担がないのです。
年会費がかからない法人カードとは?
まったくないわけではありません。数はものすごく少ないですがいくつかはあります。
- ライフカードビジネス(スタンダード)
- ビジネクスト・法人クレジットカード
有名どころの法人カードで年会費が無料のものといえば、上記の2つしかありません。ほかは一般カードであったとしても、ことごとく年会費が発生します。
よって基本的に年会費が発生することになるので、「法人カードを利用することで年会費を取り戻せるのか」というところが重要になります。前述したようにポイント還元率は低いので、ポイントで取り戻すのは難しいでしょう。
ビジネス系のサービスで年会費分を取り戻せるかが重要になってくるわけです。
ゴールドカード以降は法人カードと個人カードの年会費に差はなし
一般カードには法人カードと個人カードには大きな差が見受けられましたが、ゴールドカード以降のグレードに関しては年会費に差はなくなります。
双方ともにゴールドカードの年会費の相場は、1万円から3万円程度であり、プラチナカードは2万円から5万円が相場となっています。
一般カードの年会費だけに差があるので、ゴールドカード以降を狙っている方はあまり気にする必要はありません。
法人カード例
アメリカン・エキスプレス・ビジネス・ゴールド・カードの年会費:3万4,100円(税込み)(初年度無料)
個人カード例
アメリカン・エキスプレス・ゴールド・カードの年会費:3万1,900円(税込み)(初年度無料)
まとめ
法人カードと個人カードの特徴を比較し、法人カードのメリットとデメリットを明らかにしました。
個人カードと比較して法人カードのメリットには、
- 利用限度額が高い
- 追加カードの発行枚数が多い
- ビジネス専用のサービスが用意されている
の3つがあります。どれもビジネス目的としての利用には大事なものです。
利用限度額が低ければ会社の経費としての利用はしにくくなります。追加カードの発行枚数も少なければ社員に行き渡りません。使い勝手に問題が生じてしまうのです。
ビジネス専用のサービスにも注目したいところです。
個人カードと比較して法人カードのデメリットには、
- ポイント還元率(マイル還元率)が低い
- ほとんどの法人カードの年会費が発生する
の2つがあります。個人カードと比較するとポイント還元率はかなり低い設定になっています。
ポイント還元率が1.0%以上に設定されている法人カードは、ほとんどありません。中にはポイントが付与されないカードもあるほどです。
年会費にも注目しなければなりません。法人カードで年会費が無料のものは限られてしまいます。コストが掛かってしまうので、気軽に導入できないのが法人カードの大きなデメリットでもあるわけです。
法人カードのメリットとデメリットを個人カードと比較した上で指摘してきましたが、どちらのほうが気になったでしょうか?
メリットに魅力を感じたのであれば、素直に法人カードを作成すべきです。デメリットが気になったとしても、メリットを加味した上で総合的に判断しましょう。
年会費が気になるのであれば「2,000円程度の低年会費の法人カードを選ぶ」といった方法もあります。
ポイント還元率についても、ポイントではなく優待サービスで還元されればOKというように考え方を変えるだけでも、ずいぶん印象が変わってくるはずです。