無料の勤怠管理システムはなぜ無料なの?
無料で利用できる勤怠管理システムは、多数存在します。勤怠管理は従業員の給与に直接関係するため、厳密に行わなければなりません。無料の勤怠管理システムを使っても大丈夫だろうかと不安に感じる方もいるでしょう。
そもそも無料の勤怠管理システムはなぜ無料で利用できるのでしょうか。結論からいうと、無料の勤怠システムには何かしらの「制限」があるからです。制限内容は人数や機能、サポートの有無などシステムによって異なります。
これはフリーミアムと呼ばれるビジネスモデルです。フリーミアムとは基本的なサービスを無料で提供し、高度な機能は有料課金制にする仕組みです。
Webサービスでは利用者の95%が無料契約であっても、残りの5%が有料契約をしていれば十分にマネタイズ(収益化)できると言われています。
サービス提供側はまず無料版でユーザーの満足度を高め、必要ならば有料プランへ移行してもらおうと考えます。そのためフリーミアムのシステムであっても、無料版の品質が劣るようなことはありません。不具合や使いづらさもなく、安心して利用できます。
また利用料ではなく広告費でマネタイズしているシステムもあります。
制限の内容については、以下で解説します。
登録人数の制限
勤怠管理を行う従業員数に制限があるパターンです。決められた人数までが無料、それ以上になると人数に応じて数百円ほどの利用料が発生する仕組みが一般的です。10〜30名までの人数制限となっているシステムが多いようです。
従業員数が増えるほど費用がかかりますが、逆に言えば小規模の店舗や企業では、まったくお金をかけずにシステムの導入ができるのです。
機能の制限
打刻管理などの基本的な機能は利用できるものの、データ出力などの高度な機能は有料契約が必要となるパターンです。システムによって制限内容は異なりますので、自社にとって最低限必要な機能が揃っているかどうかの事前確認が重要です。
もし勤怠管理システムの導入を迷っている場合は、一旦無料版を使い、操作性や効果を試してみる手もあります。
データ保存期間の制限
無料の勤怠管理システムはデータ保存の期間に制限がついている場合もあります。従業員の出勤データは、3年間保存しなければならないと法律で定められていますので、データが自動的に消去されてしまう前に、印刷したり別の記録媒体に移したりする必要があります。
無料システムを利用する場合は、このような手間がかかってしまう点に注意しておかなければなりません。
サポートの制限
有料版に限り、電話やメールでサポートを受けられるシステムもあります。サポートがない場合、不明点は公式サイトなどで調べながら操作しなければなりませんが、PCの操作に慣れている方は問題ないでしょう。
無料の勤怠管理システムではどんな機能が使用できる?小規模なら十分?
無料の勤怠管理システムに搭載されている機能について解説します。
打刻機能
従業員の出退勤を正確に管理するための機能です。打刻方法はシステムによってさまざまですが、一般的にパソコンやタブレット端末、スマートフォンから行えるシステムが多いようです。中にはFeliCaカードなどのICカードを利用した打刻ができるものもあります。
労働時間の管理機能
昨今、長時間労働や残業代未払いなどが社会問題となっています。働き方改革などにおいても、労働時間の徹底した管理は必須です。雇用主は各従業員の労働時間を正確に把握し、問題が発生すれば対処しなければなりません。
多くのシステムでは、企業ごとに労働時間を設定できます。法定基準内の労働時間となっているか、従業員・管理者の双方がシステム上で確認できます。従業員の労働時間が設定値を超えた場合、管理者に通知が送られるシステムもあり、管理者は従業員の過剰労働を未然に防げます。
シンプルな管理画面操作
アナログな方式で勤怠管理を行なっている企業は、集計などに手間がかかり、余計なコストがかかってしまいます。組織の生産性を高めるには、単純作業をいかに自動化・効率化できるかが鍵となります。
多くの勤怠管理システムは、洗練されたシンプルな管理画面を搭載しています。ITツールが苦手な人でも直感的に操作でき、打刻の確認や各種修正などもスムーズに行えます。
勤怠管理システムには、上記のような機能が主に搭載されています。小規模な企業や店舗であれば、充分に利用価値があると言えるでしょう。システムの制限条件次第では、完全に無料で使えます。
打刻管理がスムーズかつ正確にできるようになるだけでも、管理者の負担は大幅に削減されます。もし導入を検討しているのであれば、数名まで無料で使えるシステムを試しに使ってみることをおすすめします。
G Suite(Google Apps)・オープンソースを使って無料で勤怠管理する方法がある?
G Suiteは、Google社が提供するクラウド型アプリケーション群です。GoogleドキュメントやGoogleスプレッドシートなどのさまざまなアプリケーションが提供されています。ビジネスに特化したグループウェアです。
勤怠管理は主にGoogleスプレッドシートを用いて行います。
G Suiteは無料で使える?
G Suiteの費用は、複数のプランが用意されています。Basicプランはユーザーあたり月額680円、Businessプランは月額1,360円となっています。
しかしGoogleドキュメントやGoogleスプレッドシート自体は無料で使用できます。個人で開設しているGoogleアカウントを利用すれば、Gmailやスプレッドシートのツールは誰でも使えるのです。
ではG Suiteはなぜ有料なのでしょうか。一番の理由は、データの保存容量にあります。G Suiteはビジネスに特化したものですので、大量のデータを格納できます。具体的にはBasicプランは30GBのストレージ、Businessプランの場合は容量が無制限となります。
一方、無料のGoogleアカウントで個人利用する場合、15GBまでの制限がついてしまいます。さらにG Suiteはサポートやセキュリティ体制も万全に整っています。ビジネスシーンであれば、G Suiteの利用が推奨されます。
Googleスプレッドシートとは?
Googleスプレッドシートは、クラウド型の表計算アプリケーションです。見た目はExcelとよく似ており、Excelファイルとの互換性を持っています。ビジネスシーンでよく利用する関数やフィルタ、ソート機能が標準で装備されています。
スプレッドシートは、Google Apps Scriptと呼ばれるコードを記述すると、より高度な関数プログラムを自作できます。
Googleスプレッドシートで勤怠管理する方法
Googleスプレッドシートでは、主に「データ入力」「外部ツールとの連携」で勤怠管理を行えます。
データ入力の場合、勤怠情報をスプレッドシート上でまとめて、集計し、従業員それぞれの出退勤情報を一覧表示します。無料で提供されているGoogleスプレッドシート向けのテンプレートファイルも多く存在します。
管理者はG Suiteのスプレッドシートにテンプレートを落とし込み、データを入力するだけで正確な勤怠管理を行えます。もちろん個人利用の範囲であれば、無料で集計作業を実施できます。
スプレッドシートは、外部ツールとの連携も可能です。具体的にはシステム上で「出社」「退社」などの動作を行なったり、ICカードで打刻を行うと、その情報が自動的にスプレッドシート上に集約されます。
もし自社独自の制度や条件がある場合、スクリプトを記述して関数を作成すれば、高度な計算も可能になります。スプレッドシートはCSVファイル形式での出力に対応しているので、即座に出力・保存ができます。
Excelとどう違うの?
スプレッドシートはExcelと非常に似ているシステムですが、ソフトウェアの形態が完全に異なります。Excelはインストール型のソフトウェアであるため、ローカルPC上で書き込み・編集しますが、運用ルールが徹底していないと、予期せぬ上書きやファイルの破損の可能性もあります。
一方、スプレッドシートはクラウド型のシステムです。クラウド型システムはPCにインストールせず、ブラウザを経由して利用する形態のため、複数の端末からリアルタイムでファイルの確認・編集ができます。
この特性により、複数の従業員が同じタイミングで入力を行なった場合でも、データの衝突が起こることはありません。本社から店舗の勤怠情報の確認も容易になります。シートごとにアクセス制限をかけられるため、情報の取り扱いも徹底できます。
スプレッドシートで勤怠管理を行えば、低コストで大幅な業務効率化を実現できるでしょう。
オープンソースで勤怠管理を実現
なるべく費用をかけずに勤怠管理システムを導入するのであれば、オープンソースソフトウェア(OSS)を使う方法もあります。
オープンソースソフトウェアとは、制作者がソースコードを無償ですべて公開しているソフトウェアのことです。利用や再配布が許可されており、独自のものに作り変えることもできます。
ライセンス費用もかからないので、トータルで大幅なコスト削減が実現します。ただしオープンソースソフトウェア(OSS)と明記されていないものは改変や再配布ができないこともあるので注意しましょう。
オープンソースソフトウェアは無償利用可能で、自社の形態に合わせてカスタマイズできますが、社内にソースコードを読み書きできる技術者がいることが前提となります。そのため店舗での利用や中小企業で手軽に導入したいという場合には不向きです。
有料の勤怠管理システムなら何ができるようになるの?
有料の勤怠管理システムは、上記で解説した制限がなくなります。無料プランを使ってみて、もっと機能を拡張したいと思った際には、有料プランの導入をおすすめします。一般的には手厚いサポートが受けられるようになったり、給与計算やシフト管理ができるようになるようです。
特に実店舗の運営において、シフト作成機能は重宝します。アルバイトのシフト作成は従業員数や労働条件によって、複雑な作業になりがちです。こういった業務は店長や責任者にとって大きな負担となり得ます。
勤怠管理システムでは、従業員のシフトを簡単に作成できる機能を持ったものもあります。勤務日が連続して従業員に負荷がかかっていないかなども確認しながら、より効率的なシフトを作成できるでしょう。
有料プランでは、登録できる従業員数や支店数の制限もなくなり、大規模な組織でも利用できるようになります。ただしプランのグレードによってはいくつかの制限が存在する場合もあるので注意しましょう。
ずっと無料の勤怠管理システムおすすめ5選!
無料で利用できるおすすめの勤怠管理システムを紹介します。
利用人数に制限がある無料システム
まずは従業員が一定数以下であれば無料で利用できるシステムです。
Pochikin
スタイリッシュなデザインが特徴のPochikinは、永久無料で利用できる勤怠管理システムです。CSVでの出力やテンプレートを用いた集計などすべての機能が利用可能です。深夜残業などの複雑な計算も簡単に実行できます。
注意点は最大50名までしか登録できないことです。人数制限を解除する有料プランはありませんので、将来的に人材が増える予定の企業には不向きです。しかし小規模の組織にとって、永久無料という点は魅力的です。
フリーウェイタイムレコーダー
10名まで無料可能な勤怠管理システムです。従業員が11人を超えた場合でも月額1,980円〜と格安で使えます。最大の特徴はコストパフォーマンスの高さにあります。低コストにも関わらず、タイムカード集計やICカード打刻、PDFやCSVでの出力などさまざまな機能を利用可能です。
こちらも小規模の企業であれば、コストをほとんどかけずに効率的な勤怠管理を実現できるでしょう。
機能に制限がある無料システム
機能に応じて費用が変わるシステムを紹介します。
IEYASU(イエヤス)
IEYASUは主にベンチャー企業を対象とした勤怠管理システムです。日報機能や給与計算などの機能が充実しています。開発には1,000社以上の企業をサポートした人事実務の専門家が関わっており、プロのノウハウが集結した高品質のシステムと言えます。
無料プランでも十分問題ありませんが、有料プランではデータ保存期間の制限がなくなったり、勤怠アラートが利用できたりと、さらに便利に使えるようになります。
ジョブカン勤怠管理
ジョブカン勤怠管理はベンチャーから大企業まで、幅広く利用されているシステムです。4万社以上に導入された実績を持ち、ITトレンド年間ランキングでは4年連続でナンバー1となっています。
基本的な勤怠管理から労務管理まで、一台ですべて行えます。無料プランでは機能が大幅に制限されているため、使用感を試してみて有料版を契約するといった流れがおすすめです。
サポートに制限がある無料システム
勤怠管理システムの中には、サポートに制限があるものも存在します。
MosPオープンソース勤怠管理
オープンソースで勤怠を管理できるシステムです。休日出勤申請から給与計算まで60以上の機能が無料で利用できます。OSSをダウンロードし、自社内でカスタマイズする場合のみ完全無料となります。もし導入に際してサポートが必要という場合は、別途費用がかかる仕組みです。
機能の要望に応じてその都度、見積もり・開発・テストを行うため、やや大掛かりになってしまいますが、既存のシステムでは対応できない組織にとっては最適なシステムでしょう。
無料で試せるおすすめの勤怠管理システムおすすめ3選!
次に無料で試しに使えるシステムを紹介します。
利用期間に制限があるシステム
まずは無料利用に期間の制限があるシステムを紹介します。
シュキーン
シュキーンは、スマートフォンやタブレットから利用できる勤怠管理システムです。従業員の労働時間やチームの忙しさをビジュアライズして表示して分析する統計機能も搭載されており、働きすぎの従業員がいれば一目で把握できます。
無料トライアルで試してみることができ、期間は2ヶ月間と比較的長めに設定されています。トライアル期間中は、シフト機能や勤怠データ管理まですべての機能が無料で利用可能です。
機能に制限があるシステム
一部機能に制限があるシステムを紹介します。
スマレジ・タイムカード
スマレジ・タイムカードは30名まで無料で利用可能なクラウド勤怠管理システムです。顔認証や位置情報による正確な出退勤管理ができます。登録者が31人以上になると1人あたり月額100円の費用がかかります。
無料プランは機能が最小限に抑えられていますが、有料契約のプレミアムプランではシフト作成や給与計算が、エンタープライズプランでは労務アラートまでの高度な機能を利用できるようになります。
e勤怠
e勤怠は、最小限の機能で構成された簡易的な勤怠管理システムです。タイムカードや回覧板機能などが搭載されています。登録は10名まで可能で、それ以上の場合は追加費用がかかります。また無料版はデータ保存容量が10MBまで、保存期間が30日という仕様となっています。