在庫が合わないとき、原因を探す前にシステムを入れ替えても解決しません。どの工程でずれているのかによって、必要な機能が違うからです。在庫管理システムの公式ページは、機能ごとに「何のための機能か」を説明しています。その説明を原因の側から並べ直すと、自社に必要な機能が絞れます。2026年10月13日に5サービスの公式の機能ページを順に開いて、原因と機能の対応を整理しました。
この記事で分かること
- 在庫が合わない原因は、入荷・出荷・記録の欠落・引当の考え方・拠点間移動の5か所に分けて切り分けられる
- 入荷のずれには入荷予定の登録と付け合わせが効く。ロジクラは「最も効果的」と明言している
- 記録が残っていない場合は、在庫変動ログや操作履歴がないと原因をたどれない
- 数が合っていても品質区分や有効期限で「使えない在庫」が混じっていると、現場の感覚とは合わない
- 差異を見つける棚卸差異の確認機能が、プランによっては使えないことがある
まず「どこでずれたか」を分ける
在庫数が合わないという状態は、結果です。原因は入る側、出る側、記録の有無、在庫の数え方のどこかにあります。全部をまとめて「在庫管理ができていない」と言ってしまうと、必要な機能が決まりません。
在庫が合わないときに順番に見る5か所
入荷の記録がずれている
発注した数と届いた数が違う。届いたのに記録していない。別の商品を記録した
出荷の記録がずれている
出したのに引き落としていない。違う商品を出した。出荷したタイミングと記録のタイミングが違う
記録そのものが残っていない
誰がいつ動かしたか分からない。後から追えないので原因を特定できない
「使える在庫」の数え方が違う
数は合っているが、不良品や期限切れ、引当済みの分が混ざっている
拠点をまたいで動いている
別の倉庫や店舗へ移したが、移動の記録が片方にしかない
この5つのうち、自社で起きているのがどれかを決めてから機能を見ると、過不足のない選び方になります。5つすべてに対応する必要がある会社は多くありません。
原因1:入荷のずれは「入荷予定」で止める
入荷のずれについて、ロジクラの機能ページには具体的な説明があります。「現場の入荷ズレには入荷予定の作成とその付け合わせ作業が最も効果的です」とされ、入荷予定とは「発注した商品がいつ・何個届くのかという入荷の事前情報のこと」と定義されています。
仕組みとしては、入荷予定を事前に登録しておき、商品が届いたらアプリまたは納品書を使って正しくカウントする流れです。予定と実績を突き合わせる工程が入ることで、「届いたはずなのに記録がない」という状態が起きにくくなります。
同社のページでは、用語の整理もされています。商品を検品して在庫としてカウントすることを「入荷」、入荷した商品を棚やロケーションに入れて在庫と紐づける作業を「入庫」と呼び分けています。この2つを別の作業として扱うかどうかで、ずれが出る場所も変わります。
精度についての記載もあります。同ページには「一般的にはバーコードを導入すれば97%以上の精度を担保できると言われています」という説明があり、ラベルプリンターへの対応が挙げられています。バーコードがない商品に自動でバーコードを付与し、ラベルを印刷できる機能です。
原因2:出荷のずれは引き落としのタイミングを見る
出荷側では、在庫を引き落とすタイミングが論点になります。クラウドトーマスのよくある質問には「在庫引き落としのタイミングはいつですか?」という項目が設けられています。出荷指示を出した時点で引き落とすのか、検品が終わった時点なのかで、同じ瞬間に見える在庫数が変わります。
検品の方法も関係します。ロジクラの出荷機能では、納品書または送り状をスキャンして該当のオーダーと商品を表示させ、アプリのカメラでバーコードをスキャンする流れが説明されています。クラウドトーマスでは、スマートフォンにリングスキャナを付けたハンズフリーでの作業が基本構成です。
出荷の順番にも落とし穴があります。ロジクラの説明では、送り状のCSVエクスポートの順番が納品書と同じ順番になることで、梱包のときに起きる「テレコ」(別の送り先の荷物を入れ違いにすること)を防げるとされています。数は合っていても中身が入れ替わっていれば、返品として戻ってきて在庫がずれます。
原因3:記録が残っていないと原因は追えない
ずれた原因を特定するには、履歴が必要です。履歴を残す機能は、サービスによって名前が違います。
| サービス | 機能名 | 公式の説明 |
|---|---|---|
| ロジクラ | 在庫変動ログ | 在庫の変動の履歴を確認できる。トラブルが発生した場合に、どの時間に入出荷があったかをSKU単位で確認できる |
| ロジザードZERO | 操作履歴参照機能 | 誰が・いつ・どの機能で・どのような操作を・どこ(IPアドレス)から実施したかを確認できる(ハンディターミナル操作履歴はオプション) |
| zaico | 変更履歴の表示 | 誰がいつ、どのデータを操作したかの履歴が残るため、トラブル時の確認もスムーズ |
| スマートマットクラウド | 重量計測による自動記録 | いつ・どれだけ・どこで動いたかが自動でたまる。人が記録する工程がない |
| クラウドトーマス | データ出力 | よくある質問に「どのようなデータが出力可能か」「システムの操作履歴を確認できますか」の項目がある |
この表で性格が違うのはスマートマットクラウドです。ほかの4サービスは「人が記録した内容を履歴として残す」仕組みですが、重量計の方式は「人が記録しなくても残る」仕組みです。記録漏れが常態化している現場では、履歴機能を足すより記録そのものを自動化するほうが早い場合があります。仕組みの違いはスマートマットクラウドの料金と契約条件で整理しています。
原因4:数は合っているが「使える在庫」が違う
棚にある数とシステムの数が一致していても、現場の感覚と合わないことがあります。出せない在庫が混ざっている場合です。

ロジザードZEROの在庫状況照会では、商品IDごとに品質区分(A品・B品など)、出荷予定数、入荷予定数、出荷可能数、在庫数、販売可能数を確認できると説明されています。在庫数と販売可能数が別の項目として並んでいることが、この問題を言い表しています。
同社の品質区分管理では、A品・B品・不良品のステータス管理ができ、区分によって引当の指定が可能とされています。有効期限管理では「引当不可日数」を指定でき、日数に応じて自動的に引当不可にできます。「あと3日で期限が切れる在庫を、今日の出荷に引き当てない」という制御です。
zaicoにも同じ考え方の機能があります。ロット・期限など種類別の管理と、期限の設定(期限アラート)はベーシックプラン以上の機能として掲示されています。費用の内訳とサポートの範囲はロジザードZEROの料金にまとめています。
原因5:拠点をまたぐ移動は両側に記録が要る
倉庫が2か所以上ある場合、移動そのものが差異の原因になります。出した側だけ減らして、受けた側で増やし忘れると、合計は合いません。
ロジザードZEROの複数倉庫対応では「入出荷処理を同じWMSで連携するので、正確な移動処理が実現できます」と説明されています。ロジクラでは、Premiumプランの機能として「拠点間入出荷」が挙げられています。拠点間の移動を1つの処理として扱えるかどうかが、この原因への対応になります。
zaicoでは拠点単位の在庫管理が全プランで使えますが、「基本料金内で作成できる拠点の数はプランごとに異なります」という但し書きがあり、具体的な拠点数は料金ページに掲示されていません。複数拠点で使う前提なら、問い合わせで確認する項目になります。
ロケーション管理を入れるかどうかで変わること
在庫がどこにあるか分からない状態は、数のずれとは別の問題ですが、結果として同じ症状になります。探して見つからなければ「無い」と判断され、発注が重なるからです。
ロケーション管理についての各社の説明
フリーロケーション管理に対応。入荷した商品を現場の担当者が空いている棚を選んで保管し、スマホから棚番・ロケーションを紐付ける。倉庫スペースを活用しつつ出荷時に素早く探せるとしている
在庫照会をロケーション軸で行える。「在庫ズレが起きた際のアテをつけるのにロケーション軸の検索が役立ちます」と明記。空ロケーション一覧出力の機能もある
よくある質問に「ロケーション番号のルールはどうなっているか」「固定ロケ運用の場合、入荷処理時にロケのナビゲーションはあるか」という項目が設けられている
拠点(管理物品の保管拠点)ごとにユーザーへ権限を付与できる。他の拠点のデータを誤って編集・削除する心配がないとしている
ロジザードZEROがロケーション軸の検索を「在庫ズレのアテをつける」用途として説明している点は、実務的です。商品軸で探しても見つからないとき、棚のブロック単位で中身を一覧できると、置き場所の間違いを早く見つけられます。同社の在庫照会では、ロケーションのブロックごとに商品ID、入荷日、在庫数、品質区分を確認できるとされています。
ロジクラのPremiumプランでは、ロット管理とロケーション管理が機能として加わります。Liteには含まれないため、ロケーション管理を前提にするならプランが決まります。プランごとの機能差と超過料金はロジクラの料金とプランで整理しています。
記録を自動化するという別の解き方
ここまでの機能は、どれも「人が正しく記録すること」を前提にしています。記録する人を置けない現場では、前提そのものが成り立ちません。
スマートマットクラウドの公式ページは、この前提を外した説明をしています。「IoT重量計『スマートマット』に在庫を載せて、いつも通り使うだけ。いつ、どれだけ減ったのか。いつ、どれだけ入ったのか。全部が在庫データとして残ります」という書き方です。重さの変化がそのまま記録になるため、記録を忘れるという工程が存在しません。
ただし、すべての品目に向くわけではありません。公式のよくある質問では、向く物として「液体・粉体(原料や薬品等)、巻物(溶接ワイヤー等)、多量で数えるのがストレスなボルトナット、中身が見えづらい段ボールの中身、触ると危険な重量物」が挙げられ、クリーンルームや鍵付き倉庫のようにアクセスしづらい場所ほど導入価値が高まるとされています。
また「ほとんどのお客様は一部の在庫・モノから活用いただいています」とも書かれています。全品目を自動化するのではなく、欠品すると影響が大きい品目に絞るのが標準的な使い方だということです。記録の自動化と記録の履歴管理は、どちらか一方を選ぶものではなく、品目によって使い分ける対象になります。
差異を見つける機能がプランに入っているか
原因を切り分けたあとは、実際に差異を見つける工程が必要です。ここで注意したいのが、差異を確認する機能がプランによって使えないことがある点です。

zaicoの棚卸機能のうち、棚卸スキャンは全プランで使えますが、「棚卸差異の確認」はベーシックとプロフェッショナルの機能です。公式の説明では、棚卸前と棚卸後の数量の差分を棚卸差異として確認でき、誤出庫・誤登録・紛失の早期発見と原因の特定につながるとされています。
在庫が合わないことを課題にしてシステムを選ぶなら、差異を見つける機能が契約予定のプランに入っているかを、必ず確かめてください。月額だけを見て最も安いプランを選ぶと、肝心の機能が入っていないことがあります。zaicoのプランごとの機能差はzaicoの料金とプランで整理しています。
ロジザードZEROの棚卸機能では、棚卸を行うロケーションの指定、進捗状況、差異のある場所をリアルタイムに確認できるとされ、「棚卸まで動かない在庫」だけを事前に棚卸することもできると説明されています。全品を止めて数える必要がない運用です。
原因と機能の対応をまとめる
| 原因 | 対応する機能 | 公式に掲示しているサービス |
|---|---|---|
| 入荷のずれ | 入荷予定の登録と付け合わせ、バーコード検品、ラベル発行 | ロジクラ、ロジザードZERO、クラウドトーマス |
| 出荷のずれ | 出荷検品、ピッキング指示、追跡番号の記録 | ロジクラ、ロジザードZERO、クラウドトーマス |
| 記録の欠落 | 在庫変動ログ、操作履歴、変更履歴/重量計による自動記録 | 5サービスすべて(方式は異なる) |
| 引当の考え方 | 品質区分管理、有効期限管理、引当不可日数の指定 | ロジザードZERO、ロジクラ、zaico(プランによる)、クラウドトーマス |
| 拠点間の移動 | 複数倉庫対応、拠点間入出荷 | ロジザードZERO、ロジクラ(Premium)、zaico(拠点数は非公開)、クラウドトーマス |
この表は、機能の優劣を示すものではありません。自社の原因がどこにあるかを決めれば、見るべき列が1つに絞れるという地図です。5サービスの課金単位と料金の公開状況は在庫管理システム比較にまとめています。
公開情報では確認できなかったこと
各機能の精度:どの機能をどれだけ使えば差異が何パーセント減るか、という数字は公開されていない。「バーコードを導入すれば97%以上の精度」はロジクラが一般論として記載しているもので、特定の製品の実測値ではない。
zaicoの拠点数:プランごとに作成できる拠点の数は掲示されていない。
クラウドトーマスの機能ごとの詳細:よくある質問に項目は並んでいるが、回答を読み取れなかったものがある。
導入事例の数字:各社が掲示している改善の数字は、条件をそろえた比較ではない。自社で同じ結果になるとは限らない。
原因の切り分けは、システムを選ぶ前に自社でできます。直近3か月の差異が、入荷・出荷・記録・引当・移動のどこで起きたかを数えてから問い合わせると、提案の精度が変わります。
この記事で参照した一次情報
ロジクラ 入荷・入庫(logikura.jp/function/receiving-inventory/)/在庫(logikura.jp/function/inventory/)/出荷・出庫(logikura.jp/function/shipping-inventory/)
ロジザードZERO サービス概要(logizard-zero.com/services/)/在庫・状況照会機能(logizard-zero.com/services/inquiry/)
zaico 棚卸(zaico.co.jp/features/inventory/)/拠点・ユーザー管理(zaico.co.jp/features/management/)
スマートマットクラウド 在庫管理の機能一覧(smartmat.io/function_list)/クラウドトーマス よくある質問(クラウドトーマス公式 よくある質問)
表の時点: 2026年10月13日。各社の公式ページに書かれている機能の説明のみを記載し、確認できなかった項目はその旨を書いています。機能の有無や対応プランは提供会社の判断で変わるため、申し込みの前に公式ページで現在の掲示を確認してください。
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原因の切り分けが終わったあとに、必要な機能を持つサービスを探す方へ。

