バーチャルオフィスを実際に使ってみてわかるコスト削減効果とデメリット

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インターネットなどの事業で起業するときの選択肢として「バーチャルオフィス」があります。この記事は、BIZEEの運営者が2016年に資本金100万円で起業したときにバーチャルオフィスを利用した記録を軸に、コスト削減の効果と、当時つまずいたデメリットを整理したものです。あわせて、2026年9月18日時点の料金と制度を各社の公式サイトと法令で確認し直し、いま同じ判断をする人が見るべき数字を並べています。

バーチャルオフィスとは?

バーチャルオフィスとは、実際に事務所を構えずに、住所・郵便物の受取・法人登記といったオフィスに必要な機能だけを借りるサービスのこと

を言います。

機能に合わせたプランがいくつもあり

  • 住所の利用(ホームページ・名刺・特定商取引法の表記)
  • 法人登記
  • 郵便物の受取・転送
  • 電話番号(転送)・電話秘書代行
  • FAX番号
  • 会議室の時間貸し

などの機能が利用できます。

起業時にはどうしても実際に事務所を構えるコストが捻出できないケースもあるので、起業時に利用するケースが多いのです。起業後十分に利益が出てきてから、実際の事務所を構えることも可能です。

レンタルオフィス・シェアオフィスとは別のもの

バーチャルオフィスを「レンタルオフィスの別名」と書いている記事がありますが、借りているものが違います。

種類借りるもの専有の作業スペース主な使いどころ
バーチャルオフィス住所と郵便・電話などの機能なし(会議室は時間貸しのことが多い)自宅で仕事ができるが、自宅住所を出したくない
レンタルオフィス個室または専有の区画あり少人数でも自社の執務スペースが要る
シェアオフィス共用スペースの利用権基本はなし(フリーアドレス)外で作業する場所と住所をまとめたい

表1:3つのサービスの違い。詳しい比較はバーチャルオフィスとは?とレンタルオフィスとは?で扱っています。

2026年9月時点のバーチャルオフィス料金

2016年当時と比べていちばん変わったのは、月額の相場と契約形態です。主要3社が公式サイトで公表している料金は次のとおりでした。

サービス法人登記できる最安プランいちばん安いプラン入会金・保証料
GMOオフィスサポート月1転送プラン 1,650円/月転送なしプラン 660円/月(登記・郵便物受取とも不可)入会金0円・保証料0円
DMMバーチャルオフィスベーシックプラン 年間契約2,530円〜/月(30,360円/年の一括前払い)ミニマムプラン 660円/月(年間契約のみ)入会金5,500円・保証金0円
レゾナンスバーチャルオフィスコース 990円/月同左入会金は週1回転送・1年払いのキャンペーン時0円

表2:各社の公式料金ページで2026年9月18日に確認した金額(税込表示)。GMOオフィスサポートは料金改定の予定が告知されています。郵便物の転送実費は別途かかります。地域別のサービス比較は東京のバーチャルオフィス厳選15選にまとめています。

法人登記まで含めて考えると、おおむね月1,000円〜2,500円、年間で1万2,000円〜3万円という水準です。単純な住所貸しだけなら月660円のプランもありますが、法人登記も郵便物の受取もできないので、会社の本店として使うことはできません。

バーチャルオフィスのコスト削減効果

一般的に都内のマンションの一室でも事業用に借りるとなると

  • 家賃 10万円/月
  • 敷金・礼金 20万円
  • 仲介手数料 10万円
  • 火災保険料 1万円
  • オフィス家具 20万円
  • 光熱費 1万円/月
  • 保証会社 5万円

ざっくり計算しても、1年目で188万円ぐらいのコストが発生してしまいます。

これに対して、2016年に利用したバーチャルオフィスは

  • バーチャルオフィス費用:10,800円/年
  • 法人登記
  • 郵送物の受取・転送
  • 郵便の転送費用などの実費

という内容で、法人登記を都内にして、郵送物の受取・転送をしてもらって、実費込みで1年2万円ほどでした。当時の条件は

  • 住まいは実家
  • パソコンだけで仕事ができた
  • 仕事の連絡は携帯電話のみ
  • 打ち合わせはカフェか、先方のオフィス

ですので、登記と郵便物の転送ができれば十分だったのです。

図1:1年目にかかるコストの比較

都内マンションの一室を事業用に借りる初期費用56万円(敷金礼金20万円+仲介10万円+家具20万円+火災保険1万円+保証会社5万円)+ 月額11万円 × 12カ月 = 約188万円

バーチャルオフィス(2016年に利用したプラン)年額10,800円 + 郵便転送の実費 = 約2万円

バーチャルオフィス(2026年9月の公表料金で置き換えた場合)法人登記ができる最安プランで年間1万2,000円〜3万円

賃貸の金額は当時の想定に基づく試算で、各社が公表している数値ではありません。地域・物件・契約条件で大きく変わります。

オフィスを借りる場合と比べれば2桁違うコストで起業できたことになり、削減効果そのものは今も変わりません。一方で、起業時には気づかなかったデメリットもありました。

使ったからわかるバーチャルオフィスのデメリット

法人口座が作れない

起業後に行う法人口座の開設に、かなり手間取りました。

というのも、メガバンクや地方銀行の場合、法人口座の開設審査で「事業の実態」を確認され、事務所の有無が問われるからです。

これは金融機関の自主的な運用ではなく、法律で確認が義務づけられているものです。犯罪による収益の移転防止に関する法律(犯罪収益移転防止法)第4条第1項は、銀行などの特定事業者に対し、口座開設のような取引に際して

  • 本人特定事項(法人は名称と本店または主たる事務所の所在地)
  • 取引を行う目的
  • 法人の場合は事業の内容
  • 実質的支配者の本人特定事項

を確認するよう定めています。振り込め詐欺などで法人名義の口座が悪用された経緯があり、金融機関はこの確認を厳格に運用しています。

そのため、メガバンクや地方銀行に法人口座の申込みをすると、担当者が実際に訪問したうえで口座開設という流れになることがあります。

バーチャルオフィスの場合、登記した住所にあるのは運営会社の事務所であって、自社としてはポストしかありませんから、訪問を受けようがないのです。

2016年に申し込んだときの結果

金融機関結果示された理由
メガバンク開設できず事業実態の確認ができない
千葉銀行開設できず同上
住信SBIネット銀行(現 ドコモSMTBネット銀行)開設できず固定電話が必要
PayPay銀行開設できず固定電話が必要
楽天銀行開設できた―
京葉銀行(第二地方銀行)開設できた―

表3:2016年に同じ会社で申し込んだときの結果。当時の記録であり、現在の各行の審査基準を示すものではありません。住信SBIネット銀行は2026年8月3日にドコモSMTBネット銀行へ商号を変更しています。

結果的に法人口座はできましたが、起業から2カ月ほど経ってからでした。これはバーチャルオフィス利用の盲点です。バーチャルオフィスで登記するなら、固定電話番号が付くプランを選ぶか、審査の通りやすさとスピードで銀行を選ぶ必要があります。どの銀行が通りやすいかは法人口座が作れない理由とは?と創業直後の法人口座にネット銀行を選ぶ判断で扱っています。

本人限定受取や宅配が受け取れない

バーチャルオフィスに自分はいないので

  • 法人カードの発行
  • 契約書のやりとり
  • 法人向けサービスの利用開始

などで届く

  • 本人限定受取郵便
  • 配達証明
  • 宅配便

は、バーチャルオフィス側では受け取れません。

これは運営会社の方針ではなく、郵便の仕組みによるものです。日本郵便は本人限定受取郵便について「郵便物に記載された名あて人または差出人が指定した代人一人に限り、郵便物をお渡しします」と定めており、受け取りの場所は郵便窓口か名あて人本人への配達に限られます。第三者であるバーチャルオフィスの運営会社が代わりに受け取ることはできません。

当時は不在連絡票をPDFで送ってもらい、郵便局に直接行って受け取っていました。月2回ほど、電車で1時間ほどかけて受け取りに行くことになり、これだけでも時間のコストになります。

また、郵便が届いてから手元に来るまでに1週間〜2週間のタイムラグが出るため、インターネットのサービスを申し込んでも、利用開始までに時間がかかるというデメリットもあります。

法人カードやクレジットカードは本人限定受取で送られることが多いので、バーチャルオフィス登記の会社は、カードの受取住所を自宅にできるかを申込前に確認しておくと詰まりません。

営業上のデメリット

打ち合わせが増えてくると名刺交換の機会も増えてきます。

  • ざっくばらんに話せるクライアント
  • ビジネスモデルを理解してもらえるクライアント

であれば、「今はまだバーチャルオフィスなんですよ。早くオフィス持ちたいですね。」で済みましたが

  • これから開拓するクライアント
  • 規模の大きいクライアント

との打ち合わせでは、バーチャルオフィスだと言うと会社の信頼性に疑いを持たれるのではないかと考えて、言い出せませんでした。

そういうクライアントの担当者ほど「今度はこちらから伺いますよ。」と言ってくれるので、うまくかわして、相手方のオフィスに話を切り替えることになります。

採用はできない

バーチャルオフィスでやっている間は、社員を雇っても働く場所がありません。

アウトソーシングなどで対応するしかないのです。これもデメリットのひとつです。

結果的にバーチャルオフィスはどうなの?

図2:向く会社と、先に手を打つべき会社

向いている起業直後/スタートアップ/打ち合わせが自社で発生しない/インターネット中心で、自宅かカフェで仕事が完結する

先に手を打つ必要がある法人口座を早く作りたい(固定電話プランや、ネット銀行の条件を先に確認する)/本人限定受取の郵便が多い(受取住所を自宅にできるか確認する)/来客や採用の予定がある(レンタルオフィスを検討する)

登記に使う場合は、契約プランが法人登記に対応しているかを必ず確認してください。住所貸しだけの最安プランは登記に使えません。

デメリットはあるものの、コスト削減の効果は大きく、利用する価値のあるサービスです。BIZEEの運営者はその後オフィスを構え、法人口座もメガバンクで開設していますが

オフィスのコストを賄える利益が十分に出るまではバーチャルオフィスを使う

という判断自体は間違っていなかったと考えています。

バーチャルオフィス・シェアオフィス・レンタルオフィスで登記するときの注意点はこちらの記事にまとめています。起業を検討している方は、コスト面でバーチャルオフィスを選択肢に入れてみてください。

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