働き方改革の一環として、単に仕事のやり方を変えるだけでなく、これまでの業務の進め方を見直し、社員一人ひとりの生産性を高めようとしている、または今後、そういった取り組みを行なっていこうと考えている企業は非常に増えています。
例えば、介護や子育てなどで在宅勤務している社員が部や課にいる場合でも、会社で仕事をしているかのように社員同士の意思疎通や情報共有を促すことができるコミュニケーションツールの導入を決定、検討している企業は昨今目立っています。
そのコミュニケーションツールとして、企業での活用が広がっているのがビジネスチャットになります。
個人用チャットでは、LINEやFacebook Messengerなどのアプリで仲間とグループを作り、メッセージをやり取りするるのが一般的ですが、ビジネスチャットはやや事情が異なります。
そのため、今回は『ビジネスチャットの市場規模・シェアの最新情報!どのビジネスチャットが一番使われているのか?』というタイトルで
- ビジネスチャットに関する基礎知識
- ビジネスチャットの市場規模・シェア
- どのビジネスチャットが一番使われているのか?
などについて解説します。
ビジネスチャットの基礎知識について解説!
ビジネスチャットとは
まずは、ビジネスチャットについて解説します。
ビジネスチャットは、主に業務連絡・ビジネス上のコミュニケーションのための利用が想定されたチャット用のツールやサービスのことを指します。
ビジネスチャットは基本的には複数名が参加するグループチャットの形式を取り、複数名でリアルタイムに情報を共有しつつ指示できる手段として使えます。
私用向きのチャット(メッセンジャーなど)に比べて、柔軟なグループの細分化、メンバー管理や権限の存在、セキュア性、他のビジネス向けサービスとの連携、といった要素が充実している点が特徴と言えます。
ビジネスチャットの主なサービスとしては、ChatWork、Slack、kintone、LINE WORKSなどが挙げられます。
導入に至るケースとして以下のようなケースが挙げられます。
導入以前の課題として、
- 一般的なソーシャルサービス利用ではセキュリティ、情報漏洩が心配
- メール使用による顧客とのコミュニケーションでの非効率さが目立っている
といった課題に直面し、
- セキュリティに厳しい大企業とのリアルタイムなやり取りができる
- 事業本部全体で一月あたり2万5千時間以上の業務効率化できる
- 顧客を中心とした子会社、関連会社などグループ全体でのプロジェクト推進ができる
といったメリットに惹かれ、導入の決定をすることが多いそうです。
このように、導入以前の課題に対して、ビジネス用途チャットツールを導入することで、社内外におけるコミュニケーションスピードの向上やツールを前提とした業務プロセス刷新による業務効率化、サービス品質改善の両立などの成果を得られることができます。
ビジネスチャットの人気の理由と今後の展望
では、冒頭でも若干触れましたが、なぜ、ビジネスチャットが今、人気なのかについて解説します。
昨今の働き方改革の煽りをうけてビジネスチャットは非常に注目を集めていますが、人気の理由は以下の4つの点と言えるでしょう。
ビジネスチャットが人気である4つの理由
①メッセージ、チャットの編集、削除、追加を簡単に行える
メールの場合、一度送ってしまった内容を編集したり削除したりする事は出来ないのが現実です。
もし内容に不備があった場合、その旨追加でメールを送った経験のある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
また、宛先を間違えてメールを送ってしまった場合、「先ほどのメールは破棄して下さい」のような不要な連絡をする必要があります。
ビジネスチャットであれば、送信内容の編集や送信内容の破棄等が出来る為、メールのような煩わしい時間を省く事が可能です。
②スマートフォン、アプリ、PCでもやりとりができるため、手段を問わない
2つ目にビジネスチャットはスマートフォン、アプリ、PCでもやりとりができるため、手段を問わない点が挙げられます。
スマートフォンの普及でメールもデバイスに依存しないようにはなってきましたが、やはりスマートフォンでメールを書くのは少し手間だと感じる事もあるかと思います。
ビジネスチャットであれば、専用のアプリも用意されている為、スマートフォンでも気軽に連絡を取る事が出来ます。
③ビジネスチャットはとにかくスピード速く要件を伝えることができる
やはり、ビジネスチャットのメリットとして、スピード速く要件を伝えることができる点は欠かせないでしょう。
メールでは「〇〇さん お疲れ様です。ありがとうございます。」のような挨拶文から始める事も多いかと思いますが、ビジネスチャットは、チャット形式なので、用件のみを伝える事で効率化を図る事が出来ます。
④複数の人数で同時にコミュニケーション、やりとりをする事が可能になる
最後に、複数の人数で同時にコミュニケーション、やりとりをする事が可能になる点が挙げられます。
ビジネスチャットでは、複数人と会話をする為のグループを作成したり、ダイレクトメッセージ(以下DMと記載)で複数人に送る機能があります。
例えば、何らかのプロジェクトに関する会話であればグループを作成して会話をしたり、突発的に複数人に話を聞きたい時にはグループを作らずDMでメッセージを送信したりします。
また、ビジネスチャットではメンションという機能で誰に向けての発信なのかが分かるようにする事が出来ます。
例えば100人程いるグループの中で特定個人向けに(他の人には情報共有や横からの意見を求める目的で)情報を発信する事が出来ます。
今後の展望
ビジネスチャットの導入は、働き方改革の推進を後押しすることを可能とします。
これらを導入している企業は、社内外とのコミュニケーション効率化、及びチャットツールを軸としたビジネスプロセスの見直しによる生産性の向上、個人用のソーシャルメディア利用が引き起こすシャドーIT化の防止によるガバナンス・セキュリティの強化といった効果を享受しています。
このように、企業が働き方改革を進める中で、ビジネス用途のチャットツールを導入する企業は増加していくと予想されており、今後、ビジネスチャットの導入は、避けられないと言えるかもしれません。
ビジネスチャットの市場規模、シェア、その他各種アンケート結果
以下がビジネスチャットの市場規模、シェア、その他各種アンケート結果になります。
ビジネスチャットサービスの市場規模
マーケティング&コンサルテーションの株式会社富士キメラ総研(本社:東京都中央区日本橋小伝馬町 TEL:03-3664-5839 社長:田中 一志)の「2017 コミュニケーション関連マーケティング調査総覧」における調査によると、ビジネスチャットサービスの市場規模は以下のようになるそうです。
<ビジネスチャットサービスの予想市場規模>
2017年度見込 | 2021年度予測 | 2016年度比 |
---|---|---|
60億円 | 130億円 | 3.5倍 |
上記の調査について解説します。
この調査では、企業内においてメールよりも少ない文字数で気軽にテキストベースのコミュニケーションが取れるサービスを対象としたそうです。
時代背景から説明すると、2010年代に入り、個人向けの携帯電話サービスにおいてスマートフォンが普及するなかで、メールよりも手軽にコミュニケーションが取れることなどからチャットサービスが急速に拡大してきたそうです。
そうした中で、法人向けにおいても私用のスマートフォンと個人向けのチャットサービスを業務利用するケースがみられたが、私用のスマートフォンで業務情報を取り扱うことはセキュリティ面および管理面での問題が懸念されていました。
この様な背景から、個人向けチャットサービスのコミュニケーションの手軽さをそのままに、暗号化、ログといったセキュリティ面、ユーザー権限の様な管理面を向上させたビジネスチャットサービスが登場したとこの調査では結論付けています。
ビジネスチャットサービスは主に社内メールの代替としてコミュニケーション活性化を目的に、需要は増加していくとみられると考えられているそうです。
ビジネスチャットのシェア、その他各種アンケート結果
以下がビジネスチャットのシェア、その他各種アンケート結果になります。
<会社で公式にビジネスチャットツールを導入している企業がどのようなツールを導入しているのかに関するアンケート>
伊藤忠テクノソリューションズ株式会社の『情報通信事業グループ情報通信第3本部ICT技術統轄部』のアンケートによると、以下のような結果になったそうです。
調査対象 | 全国、売上規模100億円以上、従業員数200名以上の企業に勤務する経営者・ 役員、及び係長・リーダークラス以上の役職者 |
---|---|
調査方法 | インターネット調査 |
有効回答数 | 412(PC使用企業206、携帯電話/タブレット使用企業206) |
調査期間 | 2017年2月3日~2月4日 |
上記のアンケートに関しては、
- 「Skype」が 30.5%、
- 「Facebook」が 15.3%
- 「Microsoft Teams」が 11.9%
だったそうです。
上記グラフは、会社で公式にビジネスチャットツールを導入している企業が、どのツールを導入しているのかを表しているものです。
主に業務でPCを利用する企業ではSkypeが最も使われており、主に業務で携帯/タブレットを利用する企業ではLINEが最も使われています。
PCを使用する企業と、携帯/タブレットを使用する企業で利用状況に少し乖離があるツール(LINE、facebook、LINE WORKS、chatwork)に着目してみると、主に携帯/タブレットを使用して業務にあたっている企業は、オフィス内ではなく外出先でビジネスチャットを利用する事が多いことがわかります。
そのため、スマートフォンでの利用に慣れているツールやSNSとして情報発信する事を目的にしたツールがより利用される傾向にあるものと想定されます。
SkypeやMicrosoft Teamsのようなほぼ同水準で利用されているツールに関しては、テレビ・ビデオ会議での利用が多い点や、機能が多くビジネスチャットとしてだけではなく、プラスアルファ(ファイル共有やスケジュール管理等)の機能を利用しているものと想定されるでしょう。
<社員が主に携帯電話/タブレットで 業務中に使うツールに関するアンケート>
のアンケートに関しては、
- 「LINEが24.0%、
- 「Facebookが19.8%、
- 「Skypeが16.8%
で、このように、PCで業務を行う企業と比べて、携帯電話/タブレットで業務を行う企業ではLINE やFacebook 等のSNS のビジネスへの活用が進んでいるそうです。
<ビジネスチャットの導入状況>
次に、ビジネスチャットがどれくらい導入されているのかについて解説します。
伊藤忠テクノソリューションズ株式会社は、2017年 2 月に、売上規模100億円以上且つ、従業員数200名以上の企業に勤務する役職者(有効回答 412 名)を対象に、「大手企業のビジネスチャットツール導入実態調査」を実施しています。
主な調査結果は、以下の通りになります。
会社として公式にチャットツール、ビジネス向けチャットツールを導入しているかという質問に対しての回答は、
- 会社として公式にチャットツール、ビジネスチャットツールを導入している企業は28.1%
- 会社として公式にチャットツール、ビジネスチャットツールを導入していないが 71.8%
になりました。
導入の基準に関しては、「使いやすさ」が21.6%、「セキュリティ」が20.6%、「業務効率化」が15.6%、「安心感(開発している会社に信頼がある等)」が15.1%となり、使いやすさとセキュリティ(安全・安心)が重要な基準となるようです。
<主なビジネスチャットのHPに記載されている導入件数>
以下は、主なビジネスチャットのHPに記載されている導入件数になります。
ビジネスチャット | 導入社数 |
---|---|
Skype | 非公開 |
Hangouts Chat | 400万社以上 |
Slack | 50万の企業・組織 |
Microsoft Teams | 20万社以上 |
ChatWork | 18万5,000社以上 |
Workplace | 30,000以上の企業・団体 |
Talknote | 20,000社以上 |
LINE WORKS | 10,000社 |
InCircle | 1,000社以上 |
Tocaro | 1,000社以上 |
また、以下が、上記の表のビジネスチャットツールの料金になります(一部)。
<Skypeの料金>
- 無料(通話オプションあり)
- Office 365 Business Essentials:1ユーザー650円/月(年間契約の場合は1ユーザー540円/月)
- Office 365 Business Premium:1ユーザー1,630円/月(年額契約の場合は1ユーザー1,360円/月)
- Skype for Business Plan1:1ユーザー2,604円/年
- Skype for Business Plan2:1ユーザー7,200円/年
<Hangouts Chatの料金>
- Basic:1ユーザー600円/月(年額払いの場合は1ユーザーあたり6,000円/月)
- Business:1ユーザー1,200円/月(年額払いの場合は1ユーザーあたり14,400円/月)
- Enterprise:1ユーザー3,000円/月(年額払いの場合は1ユーザーあたり36,000円/月)
<Slackの料金>
- フリープラン:0円
- スタンダートプラン:1ユーザー850円/月
- プラスプラン:1ユーザー1,600円/月
<Microsoft Teamsの料金>
- Microsoft Teams:0円(期間の定めなく主要機能の利用が可能)
- Office 365 Business Essentials:1ユーザー650円/月(年間契約の場合は1ユーザー540円/月)
- Office 365 Business Premium:1ユーザー1,630円/月(年額契約の場合は1ユーザー1,360円/月)
<Microsoft Teamsの料金>
- フリー:0円
- パーソナル:1ユーザー400円/月
- ビジネス:1ユーザー500円/月
- エンタープライズ:1ユーザー800円/月
<ChatWorkの料金>
- スタンダート:0円
- プレミアム:1,000人以下の場合:1ユーザー3ドル/月・1,000〜10,000人の場合:1ユーザー2ドル/月・10,000人を超える場合:1ユーザー1ドル/月
まとめ
いかがだったでしょうか。
今回は、『ビジネスチャットの市場規模・シェアの最新情報!どのビジネスチャットが一番使われているのか?』というテーマで解説しました。
今後、上記でも説明したように、ビジネスチャットは今後、急激に利用の拡大が見込まれるので、皆さんも導入を検討してみてはいかがでしょうか。