RPAで一番やっかいなのは、作った本人が異動したあとに残るシナリオです。何を処理しているのか分からないのに毎晩動き続け、止めてよいかの判断もつかない。これが「野良ロボット」と呼ばれる状態で、各社の公式ページでも対策機能として名指しされています。
防ぐ方法は増やすのではなく、1本目を作る時点で記録・権限・引き継ぎの3つを決めておくことです。本数が増えてから後付けするほうが手間が大きくなります。契約を止めるときに何が手元に残るかも、同じタイミングで確認しておくと詰まりません。ここでは、各社が公開している対策機能と契約条件を2026年11月4日時点の記載で並べます。
この記事の要点
- 野良ロボットを防ぐ機能は、権限設定・実行ログ・シナリオ解析として各社が公開している
- ロボット用のアカウントを人のアカウントと分けると、誰の操作かをログから追える
- エラーが起きたときに誰が気づくかを決める。メール通知やスケジュール実行の記録が使える
- 担当者が替わるときは、シナリオのエクスポートと、画面解像度による座標のずれを確認する
- 解約時に何が残るかは製品で違う。契約の刻みと日割りの有無も公式ページで確認できる
野良ロボット対策として公開されている機能
| 製品 | 公開されている仕組み | 提供の形 |
|---|---|---|
| アシロボ | 3段階の権限設定。使用者が意図的にシナリオを書き換える動きを防げると説明されている | 標準 |
| マクロマン | スクリプト解析(野良ロボット対策)。他社RPAのスクリプトには対応せず、マクロマンで作ったスクリプト限定 | プレミアムプランのみ |
| BizRobo! Basic | ロボットと開発ユーザーを集中管理。品質を保ちながら組織を広げられるとFAQに記載 | サーバー型のプラン |
| WinActor(WMC) | 現場に開発権限を広く渡しつつシナリオを統制し、稼働状況の可視化で遊休ライセンスを削減すると記載 | 管理製品を別に契約 |
| Power Automate | データ損失防止(DLP)、実行専用ユーザー ロール、コンピューター グループの管理などが文書化されている | Premiumライセンスの範囲 |
注目したいのは、対策が標準で付く製品と、上位プランや別製品になる製品があることです。マクロマンのスクリプト解析はプレミアムプランの項目で、WinActorの統制機能は管理製品(WMC)を別に契約する構成です。「野良ロボット対策が必要になったときに追加費用が発生するか」は、導入時に確認しておく項目になります。
ロボット専用のアカウントを用意する
記録を残すうえで効くのが、アカウントの分離です。アシロボの公式Q&Aには、多くの利用者が派遣社員や新入社員の入社と同じ扱いで、作業を実行するために必要な専用のID・パスワード・メールアドレスをロボットに付与していると書かれています。
人のアカウントを使い回すと、操作のログがその人のものと混ざります。あとで「この更新は誰がやったのか」を調べるとき、ロボットと人を切り分けられません。アシロボは何時何分何秒までの全ログを取得でき、秒単位のログを定期的に上司へ送信することもできると説明しているので、アカウントを分けておくほどログの価値が上がる構造です。
Power Automate 側では、資格情報の扱いが個別に文書化されています。Azure Key Vault の資格情報、CyberArk の資格情報、証明書ベースの認証という3つの方法があり、ロボットが使うIDとパスワードをシナリオの中に直接書かずに済む構成が用意されています。
エラーに誰が気づくかを決める

無人で動かす場合、止まったことに誰も気づかない時間が生まれます。BizRobo! の公式ページには、スケジュールしたロボットがきちんと動いて処理したのか、エラーが起きたときはどうするのかを管理することが運用面では重要であり、BizRobo! mini ではスケジュール実行の記録が取れると書かれています。
通知の仕組みも製品ごとに公開されています。アシロボはスケジュール実行後にメール通知ができ、ログを添付して指定のアドレスへ送付できると説明しています。手動実行でもエラー時にメールを送れるとされています。マクロマンの上位機能には、エラー終了後に発生位置から処理を再開する「エラー再開」があり、最初からやり直す手間を減らせるとされています。
BizRobo! の公式FAQには、RPAは落ちる可能性を前提とした上で運用していくことが大事だと書かれています。絶対的な安定を求めるならシステム開発が必須だとも述べられており、提供会社自身が限界を認めている箇所です。エラーをゼロにする前提ではなく、起きたときに誰が気づいて何をするかを決めておくほうが現実的です。
担当者が替わるときの引き継ぎ
- シナリオを書き出すアシロボにはエクスポート/インポート機能があり、ファイルでの取り出しと取り込みがどちらも約1秒で完了すると記載されています。別のアシロボへ移すこともできます。
- 何を処理しているかを文書に残すシナリオのファイルだけでは、何のための処理かが分かりません。対象業務、動かす時刻、連絡先を1枚にまとめます。
- 使っているアカウントを確認するロボット専用のIDとパスワードがどこで管理されているかを引き継ぎます。退職者のアカウントで動いている状態を残さないようにします。
- 端末を替えるならライセンス手続きを行うマクロマンは、パソコンの交換・廃棄や担当者変更で利用端末が変わる場合、ライセンスの返却・変更を連絡する必要があると明記しています。アシロボは一覧画面の「パソコン入替」ボタンから自分で入れ替えられます。
- 解像度のずれを確認するアシロボのQ&Aには、パソコンを入れ替えると画面解像度の影響で座標の取り直しや画像認識の取得が必要になる場合があると書かれています。引き継ぎ後に一度は実行して確かめます。
壊れにくいシナリオの作り方

座標に頼らない
HTMLやキーボード操作で組む
アシロボのQ&Aでは、HTMLやキーボード操作でシナリオを登録すると、パソコン入れ替え時の修正が少なくて済むと案内されています。
共通部分を部品にする
別シナリオの呼び出し
各業務に共通するパーツを作って他のシナリオから呼び出せば、登録作業を減らせると説明されています。直すときも1か所で済みます。
エラー処理を入れておく
分岐と続行確認
文字・数字・画像・ファイル有無による分岐、エラー処理、続行確認(人の判断を挟める)といった機能が用意されています。
環境に関わる設定も同じページにまとまっています。閉域ネットワークでの利用、プロキシ設定、英語版の切り替え、簡単PC引越し機能が挙げられています。引っ越しの機能が製品側にあるかどうかで、端末更改のときの作業量が変わります。社内のパソコンを数年おきに入れ替える予定があるなら、導入前に確認しておく項目です。
更新のタイミングで確認すること
年単位で契約する製品では、更新のたびに2つのことを確認します。1つは、使っているバージョンがまだ保守の対象かどうかです。WinActorは、本体とFLA、WinDirectorのそれぞれについてライフサイクルポリシーを公開しており、バージョンの定義と販売・更新・保守の期間が記載されています。WinDirectorのポリシーには、動作保証されるWinActorのバージョンも書かれています。
もう1つは、ツール自体の更新をどう扱うかです。アシロボはバージョンアップを1〜2ヶ月に1回の頻度で行っており、画面右上のボタンを押すだけで更新できるとしています。手数料は0円です。Power Automate は、自動更新を有効にする手順と、更新またはロールバックする手順の両方が文書化されているため、止めて検証してから適用する運用も選べます。
更新が自動で当たる製品では、シナリオが急に動かなくなる可能性を運用に織り込む必要があります。重要な処理を動かす前に、更新直後の実行結果を確認する習慣をつけておくと、原因の切り分けが早くなります。ブラウザの拡張機能に依存する処理は、ブラウザ側の仕様変更でも影響を受けます。
解約するときに何が残るか
| 製品 | 契約の刻み | 解約の扱い | 作ったシナリオ |
|---|---|---|---|
| アシロボ | 初回6ヶ月、以降1ヶ月 | 契約終了日は解約申込月の翌月末日。日割り計算なし | エクスポートでファイル化できる |
| ロボパットAI | 1か月単位 | 繁忙期だけ追加するなど月ごとの切り替えが可能と記載 | 公式ページで確認できなかった |
| マクロマン | 月額(プレミアムは年間・年度契約に対応) | フリープランへ戻す条件は価格ページで確認できなかった | フリープランのまま使い続けられる |
| BizRobo! | 年額 | 公式の料金欄では確認できなかった | 公式ページで確認できなかった |
| WinActor | 年間ライセンス | 販売代理店との契約条件による | 公式ページで確認できなかった |
| Power Automate | 年払いの価格表示 | 契約条件は別ページへ誘導 | 価格ページでは確認できなかった |
マクロマンは、有償プランから戻ったあともフリープランで基本機能を使い続けられる点が他と違います。計画実行などの上位機能は使えなくなりますが、作ったスクリプト自体を手放すことにはなりません。アシロボは体験版から製品版へシナリオを引き継げると明記しており、エクスポートでファイルにできるため、契約が終わってもシナリオの内容は手元に残せます。
一方で、解約後にシナリオをどう扱えるかを公式ページに書いていない製品が多いのも事実です。年額で契約する製品ほど、途中で止めたときの扱いを契約書で確認する必要があります。
開発を現場に広げるときの前提
本数を増やす段階で必ず出てくるのが、誰が作るのかという話です。情報システム部門だけで抱えると本数が伸びず、現場に任せると統制が効かなくなる。この二択をどう扱うかについて、各社の公式ページはそれぞれ答えを出しています。
BizRobo! のFAQには、現場開発者に丸投げでは品質の担保は難しいため、RPA運営チームを設置して現場を支援する仕組みが必要だと書かれています。そのうえで、BizRobo! Basic ではロボットや開発ユーザーを集中管理できるため、品質を担保しながらの組織拡大が可能だと説明されています。ツールの機能より先に体制の話が来ている点は、実務的な書き方です。
WinActorは、利用体制を3つの型に分けて推奨ライセンスを示しています。現場が導入して現場で開発する型ならノードロックライセンス、全社で研修を行い現場で開発する型と、専任者が開発する型ならフローティングまたはAI連携ライセンスが勧められています。体制を決めてからライセンスを選ぶ順番です。
マクロマンは、現場担当者による業務改善に使えるローコード設計だと説明したうえで、プレミアムプランに半年に一度のオンライン研修とスクリプト解析を用意しています。無料で広く配りつつ、統制が必要になった部署だけ有償化するという組み立て方ができます。どの製品を選ぶにせよ、開発できる人を増やすほど、作ったものを見る仕組みが要るという関係は変わりません。
運用を始めたあとに点検すること
- 動いていないシナリオがないか対象業務がなくなったのに動き続けている処理は止めます。WinActorのWMCは稼働状況の可視化で遊休ライセンスを削減できると説明しています。
- 実行時間が延びていないか処理する件数が増えると所要時間も延びます。夜間に順番で流している場合、時間内に終わらなくなる前に気づく必要があります。
- 権限が広がりすぎていないか異動した人の権限が残っていないかを定期的に見ます。
- 使っているアカウントが生きているかロボット用のパスワード変更期限を把握しておきます。
- 作った人しか分からない処理が増えていないか説明できる人が1人しかいない処理は、その人が不在の間に止まります。
- ライセンス数と実際の利用が合っているか端末を減らしたのに契約がそのままになっていないかを確認します。
よくある質問
野良ロボットとは何ですか。
誰が作ったのか、何を処理しているのかが分からなくなったまま動き続けるロボットのことです。アシロボは3段階の権限設定で意図的なシナリオの書き換えを防げるとしており、マクロマンはプレミアムプランにスクリプト解析(野良ロボット対策)を用意しています。
エラーが起きたときはどうすればよいですか。
まず気づく仕組みを作ります。アシロボはスケジュール実行後のメール通知にログを添付して送れるとしており、BizRobo! mini はスケジュール実行の記録が取れると説明しています。マクロマンの上位機能には、エラー発生位置から再開する機能があります。
担当者が辞めるとシナリオは使えなくなりますか。
シナリオのファイル自体は残ります。アシロボにはエクスポート/インポート機能があり、別の環境へ移せます。問題になるのは、ロボットが使っているアカウントと、処理の内容を説明できる人がいなくなることです。引き継ぎの対象はファイルだけではありません。
解約したら作ったシナリオは消えますか。
製品によります。マクロマンは有償プランから戻ってもフリープランで基本機能を使い続けられます。アシロボはエクスポートでファイル化できます。他の製品については、解約後のシナリオの扱いを公式ページで確認できなかったため、契約前に確認してください。
関連記事
出典
ディヴォートソリューション「アシロボ6つの特徴」(2026年11月4日確認)
ディヴォートソリューション「よくあるご質問」(2026年11月4日確認)
ディヴォートソリューション「アシロボ 無料体験版と価格」(2026年11月4日確認)
コクー株式会社「マクロマンの料金・プラン比較」(2026年11月4日確認)
オープン株式会社「BizRobo! mini」(2026年11月4日確認)
オープン株式会社「BizRobo! Basic&Lite」(2026年11月4日確認)
NTTアドバンステクノロジ「WinActor Manager on Cloud」(2026年11月4日確認)
Microsoft Learn「プレミアム RPA 機能」(2026年11月4日確認)
株式会社FCE「RPAツール ロボパットAI 料金プラン」(2026年11月4日確認)
