オンライン秘書に頼めない仕事は2種類|法律が止めるものと、各社が断るもの【2026年】

オンライン秘書に依頼できる業務の線引きを4枚のカードで示した図。法律が止めるものは4つの士業、記帳代行は頼める、給与計算は頼める、各社が断るものは社ごとに違う

オンライン秘書に「経理をお願いしたい」と伝えたとき、どこまでやってもらえるのかは、サービス側の都合だけで決まるわけではありません。税務申告書の作成や社会保険の手続き代行のように、法律が有資格者以外に禁じている仕事があるからです。これを知らずに依頼すると、途中で「ここから先はできません」と止まり、業務が宙に浮きます。

この記事では、頼めない仕事を2つに分けて整理します。1つは法律が止めているもの、もう1つは法律とは関係なく各サービスが対象外としているものです。前者はe-Gov法令検索で条文を確認し、後者はフジ子さん・タスカル・HELP YOU・i-STAFF・CASTER BIZの公式サイトの記載から拾いました。いずれも2026年10月20日時点の内容です。

先に結論

  • 記帳代行は頼めるが、税務書類の作成と税務相談は頼めない。税理士法が税理士以外にこの3つを禁じています。
  • 給与計算は頼めるが、社会保険の申請書の作成と提出代行は頼めない。社会保険労務士法が有償での代行を制限しています。
  • 契約書の作成やクレーム対応の代理も境界がある。弁護士法第72条が報酬を得る目的での法律事務の取扱いを禁じています。
  • 法律とは別に、各社が自分で線を引いている。HELP YOUはマイナンバーとクレジットカードを扱う業務と決済業務を対象外とし、タスカルは訪問に対応しないと明記しています。
  • できない部分を外に繋ぐ仕組みを持つ社もある。タスカルは対応が難しい業務をパートナー企業に紹介すると案内しています。
  • 条文の引用はすべてe-Gov法令検索の現行法令から取っています。法令は改正されるため、重要な判断では確認日時点の条文を自分で当たってください。

法律が止めている仕事(1)税理士法

経理をまるごと任せたいという依頼で最初に当たるのがここです。税理士法第52条は「税理士又は税理士法人でない者は、この法律に別段の定めがある場合を除くほか、税理士業務を行つてはならない」と定めています。

では「税理士業務」とは何かというと、同法第2条第1項が3つを挙げています。税務代理(税務官公署に対する申告・申請・請求・不服申立てについて代理または代行すること)、税務書類の作成(税務官公署に提出する申告書・申請書等を作成すること)、税務相談(申告等や申告書等の作成に関し、租税の課税標準等の計算に関する事項について相談に応ずること)の3つです。

重要なのは同条第2項です。税理士は税理士業務のほか、税理士の名称を用いて「税理士業務に付随して、財務書類の作成、会計帳簿の記帳の代行その他財務に関する事務」を業として行うことができる、と書かれています。記帳代行はここに出てくる業務で、第1項の税理士業務には含まれていません。つまり記帳代行そのものは税理士の独占業務ではなく、オンライン秘書に頼めます。

e-Gov法令検索の税理士法第52条の条文画面のキャプチャ。税理士業務の制限として、税理士または税理士法人でない者は税理士業務を行つてはならないと定められている
e-Gov法令検索「税理士法」第52条(https://laws.e-gov.go.jp/law/326AC1000000237)の画面キャプチャ。2026年10月20日取得。条文の部分だけを切り出しています。
表1 経理の依頼で引かれる線(税理士法)
やりたいこと オンライン秘書に頼めるか 根拠
領収書・請求書をもとに会計ソフトへ入力する 頼める 記帳の代行は税理士法第2条第1項の税理士業務に含まれない
月次の残高を確認して一覧にする 頼める 財務に関する事務にあたり、独占業務ではない
請求書を発行して送る 頼める 税務官公署への提出書類ではない
法人税の申告書を作ってもらう 頼めない 税務書類の作成(同項第2号)
この費用は経費にできるか相談する 頼めない 税務相談(同項第3号)。課税標準等の計算に関する相談にあたる
税務署への申告を代わりにしてもらう 頼めない 税務代理(同項第1号)

法律が止めている仕事(2)社会保険労務士法

人事や労務を任せたい場合はこちらです。社会保険労務士法第27条は「社会保険労務士又は社会保険労務士法人でない者は、他人の求めに応じ報酬を得て、第二条第一項第一号から第二号までに掲げる事務を業として行つてはならない。ただし、他の法律に別段の定めがある場合及び政令で定める業務に付随して行う場合は、この限りでない」と定めています。

制限の対象になるのは同法第2条第1項の第1号から第2号までで、労働社会保険諸法令に基づく申請書等の作成、その提出手続の代行、事務代理(申請等について行政機関に対して行う主張や陳述の代理)、紛争解決手続の代理などが並びます。これらは社会保険労務士の独占業務です。

一方、給与の計算そのものは第2条第1項の第1号から第2号までには出てきません。勤怠データを集計して給与額を算出する作業や、給与明細を作成する作業は、オンライン秘書に頼める範囲にあります。i-STAFFは人事の業務例として勤怠管理、スカウト代行、面談調整、一次面接官代行、採用受付オペレーションを挙げており、HELP YOUは労務のサービス例として勤怠管理、給与計算、社会保険手続き、入退社対応、年末調整サポートを挙げています。社会保険手続きという語が入っている場合、どこまでを指しているのかは契約前に具体的に確認しておく必要があります。

e-Gov法令検索の社会保険労務士法第27条の条文画面のキャプチャ。業務の制限として、社会保険労務士または社会保険労務士法人でない者は、他人の求めに応じ報酬を得て第2条第1項第1号から第2号までに掲げる事務を業として行つてはならないと定められている
e-Gov法令検索「社会保険労務士法」第27条(https://laws.e-gov.go.jp/law/343AC1000000089)の画面キャプチャ。2026年10月20日取得。条文の部分だけを切り出しています。

「報酬を得て」「業として」という2つの条件が付いている点に注意してください。社会保険労務士法第27条の制限は、他人の求めに応じて報酬を得て、反復継続して行う場合に働きます。自社の従業員が自社の手続きをするのは対象外です。オンライン秘書に委託すると、まさにこの「他人の求めに応じ報酬を得て」に当たるため、制限が効いてきます。

税理士法第52条には「報酬を得て」という文言がありません。税理士業務については、無償であっても税理士以外は行えないという建て付けになっています。2つの法律で条件の立て方が違うため、同じ感覚で読まないようにしてください。

法律が止めている仕事(3)弁護士法と行政書士法

弁護士法第72条は「弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない」と定めています。

オンライン秘書の文脈でこれが効くのは、取引先とのトラブル対応を代わりにやってほしいという依頼です。クレームの一次受けをして内容を記録し、自社の担当者へ渡すところまでは事務ですが、相手方と交渉して和解の条件を詰める行為は法律事務にあたります。契約書についても、ひな形を清書したり、指示どおりに数字を埋めたりする作業と、条項の意味を判断して助言する行為は別です。

行政書士法第19条は「行政書士又は行政書士法人でない者は、他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て、業として第一条の三に規定する業務を行うことができない」と定めています。官公署に提出する書類の作成が中心で、許認可の申請書類を外注したい場合はここに当たります。ただし但し書きで、他の法律に別段の定めがある場合と、定型的かつ容易に行えるものとして総務省令で定める手続について総務省令で定める者が電磁的記録を作成する場合が除かれています。

4つの士業の線を1枚にまとめる

図1 法律が止めているものと、手前にある事務作業

税理士法

税務の3業務

税務代理・税務書類の作成・税務相談。その手前にある記帳代行と財務書類の作成は独占業務ではありません

社会保険労務士法

申請書の作成と提出代行

報酬を得て業として行う場合が対象。給与の計算や明細の作成は対象外です

弁護士法

法律事務

報酬を得る目的での鑑定・代理・仲裁・和解。記録の作成や一次受けは事務にとどまります

行政書士法

官公署への提出書類

報酬を得て業として行う場合が対象。但し書きに総務省令による例外があります

オンライン秘書に頼めるのは、いずれも「手前」にある事務作業です。境界に近い依頼では、最終的な判断と提出を自社または有資格者が行う形に設計すると安全です。

法律とは別に、各社が引いている線

法律の制限とは別に、サービス側が自分の都合で受けない業務があります。こちらは社ごとに違うため、同じ「オンライン秘書」でも頼める範囲が変わります。

表2 各サービスが公式に対象外としているもの(2026年10月20日時点)
サービス 対象外としているもの 記載の場所
HELP YOU オンラインで完結しない業務/決済業務/マイナンバーやクレジットカードなどの機密情報を取り扱う業務/その他対応できないと判断した業務 公式トップページのよくあるご質問
タスカル 訪問等(オンラインアシスタントのため対応しない) FAQ 業務について
フジ子さん 中国語・韓国語の翻訳/利用者のクライアントとの直接のやりとりや直接の依頼受付 よくあるご質問
i-STAFF 公式ページで明示的な対象外の列挙は確認できず —
CASTER BIZ オフライン業務は「一部」対応(ファイリング・名刺スキャン・書類整理など) サポートページのよくある質問

HELP YOUがマイナンバーを扱う業務を対象外としている点は、労務の依頼を考えるときに効いてきます。公式サイトは労務のサービス例として年末調整サポートを挙げていますが、マイナンバーの収集や記載そのものは範囲外という整理になります。どこまでを自社で持ち、どこからを渡すかを先に決めておく必要があります。

逆方向の対応もあります。i-STAFFは「オフィスに溜まった領収書・名刺・書類など、弊社宛に送付頂ければ、各書類の整理やファイリングも行う事が可能」「ハガキや請求書などの発送業務についても対応」と書き、そのうえで情報漏えいを防ぐためオフライン業務は本社勤務スタッフが対応すると明示しています。オンラインで完結しない作業を出したい場合は、i-STAFFとCASTER BIZが候補に残ります。

対応できない部分をどう繋ぐか

法律で止まる部分や、サービスが受けない部分をどう処理するかも、事前に決めておく論点です。

タスカルは、対応が難しい業務についてパートナー企業を紹介する仕組みを公式サイトに掲げています。「様々なサービスをタスカルを通じてワンストップでご利用できる環境を提供しております」という説明です。フジ子さんは、利用者のクライアントと直接やりとりすることや直接依頼を受けることはできないとしたうえで、利用者からの依頼を受けて成果物を利用者へ渡す形であれば可能だと回答しています。制作会社や代理店が再委託に近い形で使う場合は、この線引きに沿って契約を設計することになります。

実務的には、士業に頼む部分と事務に出す部分を工程で分けるのが分かりやすい方法です。たとえば経理なら、日々の記帳と請求書の発行をオンライン秘書に、決算と申告を税理士に振ります。労務なら、勤怠の集計と給与計算をオンライン秘書に、社会保険の手続きを社会保険労務士に振ります。どちらも、データの受け渡しの形と担当の境目を最初に決めておけば回ります。

工程を分けて設計する

境界に近い業務でも、工程を切って担当を分ければ、大半はオンライン秘書に出せます。独占業務に当たるのは工程の終わりのほうに寄っていることが多く、その手前の作業量のほうが圧倒的に多いからです。

表3 工程を分けたときの担当の割り振り例
分野 オンライン秘書に出せる工程 自社または有資格者が持つ工程
月次の経理 証憑の整理、会計ソフトへの仕訳入力、経費精算の突合、請求書の発行と送付、入金の確認 勘定科目の最終判断、決算、法人税・消費税の申告書の作成と提出
給与と労務 勤怠データの集計、給与計算、給与明細の作成と配布、入退社に伴う社内手続きの案内 社会保険・労働保険の申請書の作成と提出代行、行政機関への主張や陳述
取引先対応 問い合わせの一次受け、内容の記録、担当者への引き継ぎ、議事録の作成 相手方との交渉、和解条件の決定、法的な見解の提示
許認可・届出 必要書類の洗い出し、社内からの資料収集、記入内容の下書きの整理、提出期限の管理 官公署に提出する書類の作成、提出の代理
採用 求人票の作成と更新、応募者への連絡、面談日程の調整、採用受付のオペレーション 採否の判断、労働条件の提示

この割り振りで作業量を数えると、どの分野でも左側のほうが時間を食います。月100件の仕訳があれば入力と突合に数時間かかりますが、勘定科目の最終判断は顧問税理士との月次ミーティングで片づく量です。給与計算も、勤怠の集計と計算に時間がかかる一方、社会保険の手続き自体は月に数件です。

採用の分野は、独占業務との接点がほとんど無いため、まるごと出しやすい領域です。i-STAFFは人事の業務例として一次面接官代行まで挙げており、HELP YOUは求人票作成、求人媒体の原稿作成、スカウト送信、応募者対応、面接調整を挙げています。タスカルも採用・労務の区分で募集対応、応募者対応、採用手続き、経費精算を挙げています。最初に外へ出す業務を選ぶなら、法律の線を気にせずに済むこの領域から始めるのが手早い方法です。

依頼する前に確認する5項目

図2 見積もりの打ち合わせで確かめること

  • その業務は士業の独占業務に当たらないか税務書類の作成、税務相談、社会保険の申請書の作成と提出代行、官公署への提出書類の作成、法律事務の5つが代表的です。
  • サービス側が対象外としている条件に当たらないかマイナンバーやクレジットカードを扱うか、オンラインで完結するか、訪問が必要かを確認します。
  • 最終的な提出や判断を誰がするか作業を外に出しても、提出と判断は自社または有資格者に残すのが基本の形です。
  • 止まったときにどう繋ぐかパートナー企業の紹介があるか、自社で士業を手配するかを決めておきます。
  • その確認に使った時間も契約時間から引かれるか打ち合わせや相談の時間が契約時間に含まれるサービスがあります。
契約時間がどこまでに使われるかは、オンライン秘書の契約時間は何に使われるかで各社の公式回答をまとめています。

各サービスが公式に挙げている業務の一覧と、受けない業務の記載は、個別の詳細ページにそれぞれ整理しています。フジ子さん、タスカル、HELP YOU、i-STAFF、CASTER BIZの順に、公式の記載をそのまま引用しています。料金や契約期間を横断で比べた一覧はオンライン秘書比較5選、契約と解約の条件はオンライン秘書の契約期間と解約にあります。

なお、この記事は法令の条文と各社の公式記載を整理したものであり、個別の事案についての法的な助言ではありません。境界に近い依頼を検討している場合は、税理士、社会保険労務士、弁護士、行政書士といった有資格者に確認してください。

出典(いずれも2026年10月20日に確認)

e-Gov法令検索「税理士法」https://laws.e-gov.go.jp/law/326AC1000000237/「社会保険労務士法」https://laws.e-gov.go.jp/law/343AC1000000089/「弁護士法」https://laws.e-gov.go.jp/law/324AC1000000205/「行政書士法」https://laws.e-gov.go.jp/law/326AC1000000004

HELP YOU 公式トップページのよくあるご質問https://help-you.me//タスカル「FAQ 業務について」https://taskar.online/faq/business//フジ子さん「よくあるご質問」https://fujiko-san.com/faq//i-STAFF公式サイトhttps://i-staff.jp//CASTER BIZ「サポート」https://cast-er.com/support/

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