勤怠管理システムを入れても、設定を間違えていれば法令違反は防げません。システムが自動で守ってくれるのは、あらかじめ入力した数値までです。何をどこまで入力すべきかは、法律の側から決まります。
このページでは、勤怠管理に直接関わる3つの法律が何を求めているかを条文で確認し、システムのどの設定に落とすかを整理します。製品ごとの機能差は勤怠管理システム比較、選定の手順は勤怠管理システムの選び方、移行と運用は勤怠管理システムの導入と運用にまとめています。
この記事は2026年9月3日にe-Gov法令検索で条文を確認して作成しています。個別の適用については、就業規則と労使協定の内容を踏まえ、社会保険労務士または所轄の労働基準監督署にご相談ください。
勤怠管理に関わる3つの法律

勤怠管理に関係する法律は複数ありますが、実務で設定に影響するのは次の3つです。それぞれ目的が違うため、混ぜて理解すると設定を誤ります。
| 法律 | 目的 | 勤怠システムで対応する内容 |
|---|---|---|
| 労働基準法 | 労働時間の上限と賃金の最低基準 | 所定労働時間、36協定の限度、割増賃金、年次有給休暇、記録の保存 |
| 労働安全衛生法 | 健康確保のための労働時間の状況把握 | 客観的な方法での時間把握、長時間労働者の抽出、記録の保存 |
| 労働時間等設定改善法 | 働き方の改善(努力義務) | 勤務間インターバルの設定と、その超過アラート |
3つ目は努力義務です。違反しても罰則はありませんが、就業規則で定めた場合は自社のルールとして拘束力を持ちます。設定するかどうかではなく、自社で定めた内容と設定が一致しているかを確認してください。

労働時間の上限と休憩・休日
労働基準法32条は、使用者が労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間、1日について8時間を超えて労働させてはならないと定めています。これが法定労働時間です。所定労働時間をこれより短く定めるのは自由ですが、超えることはできません。
休憩は34条です。労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも1時間を、労働時間の途中に与えなければなりません。「8時間ちょうど」は45分でよく、「8時間を超える」と1時間必要になります。残業が発生した日に休憩が45分のままだと、この点で不足します。
休日は35条で、毎週少なくとも1回と定められています。ただし2項により、4週間を通じて4日以上の休日を与える場合はこの限りではありません。変形休日制を採る場合は、起算日を就業規則で定める必要があります。
| 条文 | 定めている内容 | システムで確認する設定 |
|---|---|---|
| 32条 | 1週40時間、1日8時間 | 雇用区分ごとの所定労働時間と週の起算曜日 |
| 34条 | 6時間超で45分、8時間超で60分の休憩 | 休憩の自動付与ルールと、残業時の追加休憩 |
| 35条 | 毎週1回、または4週4日の休日 | カレンダー設定と、変形休日制の起算日 |
| 37条 | 割増賃金 | 時間外・休日・深夜の集計区分 |
36協定の上限は原則と特別条項で違う

法定労働時間を超えて働かせるには、36協定の締結と届出が必要です(36条1項)。協定で定められる時間には上限があり、原則と特別条項で数字が変わります。
原則の限度時間は、36条4項により1か月45時間、1年360時間です。1年単位の変形労働時間制で対象期間を3か月超と定めている場合は、1か月42時間、1年320時間になります。
特別条項を設けた場合の上限は5項と6項です。通常予見できない業務量の大幅な増加などに伴い臨時的に限度時間を超える必要がある場合に限り、次の範囲で定められます。
- 1か月について、休日労働を含めて100時間未満
- 1年について720時間を超えない
- 月45時間を超えられるのは1年について6か月以内
- 2か月から6か月までのどの平均でも、休日労働を含めて1か月あたり80時間を超えない
4つ目は見落とされがちです。単月で100時間未満に収まっていても、直前の数か月と平均すると80時間を超えることがあります。システム側で複数月平均のアラートを設定できるかを確認してください。単月の上限しか見ていない設定では、この違反を検知できません。
なお、新たな技術、商品または役務の研究開発に係る業務については、36条11項により3項から5項までと6項の一部が適用されません。該当する業務がある場合は、区分を分けて管理します。
変形労働時間制とフレックスタイム制の設定
1日8時間・週40時間の原則には、期間を平均して判断する例外があります。就業規則や労使協定でこれらを採用している場合、勤怠管理システム側も同じ仕組みで集計できなければなりません。
| 制度 | 条文 | 期間の単位 | 設定で確認すること |
|---|---|---|---|
| 1か月単位の変形労働時間制 | 32条の2 | 1か月以内 | 起算日と、期間を平均した週の上限時間 |
| フレックスタイム制 | 32条の3 | 3か月以内の清算期間 | 清算期間、総労働時間、コアタイムの有無 |
| 1年単位の変形労働時間制 | 32条の4 | 1か月超1年以内 | 対象期間、特定期間、労働日と労働時間の事前特定 |
| 1週間単位の非定型的変形労働時間制 | 32条の5 | 1週間 | 対象事業と規模の要件、1日10時間までの上限 |
フレックスタイム制で清算期間が1か月を超える場合、32条の3第2項により、清算期間を1か月ごとに区分した各期間で週平均50時間を超えないという条件が加わります。清算期間全体の平均だけを見ていると、この判定が漏れます。3か月の清算期間を採用する会社は、月ごとの週平均50時間判定ができる製品かを必ず確認してください。
1年単位の変形労働時間制では、32条の4の2により、対象期間の途中で退職・入社した労働者について、実際に働いた期間を平均して週40時間を超えた分に割増賃金が必要です。期中の入退社が多い会社では、この精算を自動計算できるかが実務上の差になります。
1週間単位の非定型的変形労働時間制(32条の5)は、対象となる事業と規模が厚生労働省令で限定されており、1日10時間までという上限があります。採用できる会社が限られる制度なので、該当するかどうかを先に確認してください。
割増賃金の率と深夜の扱い
37条1項は、時間外労働と休日労働について、通常の賃金の計算額の2割5分以上5割以下の範囲で政令が定める率以上の割増賃金の支払いを求めています。政令(平成6年政令第5号)では、時間外は2割5分、休日は3割5分と定められています。
同項ただし書により、1か月について60時間を超えた時間外労働は5割以上です。60時間を超える月がある会社は、集計区分が分かれているかを確認してください。
37条4項は深夜労働です。午後10時から午前5時までの間の労働には割増賃金が必要です(厚生労働大臣が認める地域・期間は午後11時から午前6時まで)。時間外かつ深夜であれば、それぞれの割増が重なります。
| 種類 | 最低の割増率 | 根拠 |
|---|---|---|
| 時間外労働(月60時間以内) | 2割5分以上 | 労基法37条1項・平成6年政令第5号 |
| 時間外労働(月60時間超の部分) | 5割以上 | 労基法37条1項ただし書 |
| 休日労働(法定休日) | 3割5分以上 | 労基法37条1項・平成6年政令第5号 |
| 深夜労働(22時〜5時) | 2割5分以上を加算 | 労基法37条4項 |
37条3項には、月60時間を超える部分の割増賃金の支払いに代えて有給の休暇を与える仕組み(代替休暇)もあります。労使協定が必要で、年次有給休暇とは別のものです。使う場合は、システム側で区分できるかを確認してください。
法定休日と所定休日を区別できているかも重要です。週休2日の会社で、就業規則が日曜を法定休日と定めているなら、土曜の出勤は3割5分ではなく時間外の2割5分です。この区別ができていないと、支払いすぎか不足のどちらかが起きます。
年次有給休暇と年5日の取得
39条1項により、雇入れの日から6か月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者には10労働日の有給休暇を与えなければなりません。以降は2項により、継続勤務年数に応じて日数が加算されます。
| 6か月経過日からの継続勤務年数 | 加算日数 | 合計付与日数 |
|---|---|---|
| (6か月時点) | — | 10日 |
| 1年 | 1労働日 | 11日 |
| 2年 | 2労働日 | 12日 |
| 3年 | 4労働日 | 14日 |
| 4年 | 6労働日 | 16日 |
| 5年 | 8労働日 | 18日 |
| 6年以上 | 10労働日 | 20日 |
39条7項は、いわゆる年5日の時季指定義務です。付与日数が10労働日以上である労働者について、そのうち5日は基準日から1年以内に、労働者ごとに時季を定めて与えなければなりません。ただし8項により、労働者自身が請求して取得した日数や計画的付与で与えた日数は、その分(5日を上限)を差し引けます。
実務で問題になるのは、入社日がばらばらだと基準日もばらばらになる点です。基準日を統一する運用(斉一的取扱い)を採る場合、前倒しで付与することになるため、システム側で任意の基準日を設定できるかを確認してください。
年5日の管理は、残日数だけを見ていても足りません。基準日ごとの1年間で何日取得したかを数える必要があります。年度単位や月単位の集計しかできない設定では、基準日が統一されていない会社で判定を誤ります。
労働時間の状況の把握と記録の保存
労働安全衛生法66条の8の3は、面接指導を実施するため、厚生労働省令で定める方法により労働者の労働時間の状況を把握しなければならないと定めています。
その方法は労働安全衛生規則52条の7の3に書かれており、タイムカードによる記録、パーソナルコンピュータ等の電子計算機の使用時間の記録等の客観的な方法その他の適切な方法とされています。同条2項は、把握した労働時間の状況の記録を作成し、3年間保存するための必要な措置を求めています。
一方、労働基準法109条は、労働者名簿、賃金台帳、雇入れ・解雇・災害補償・賃金その他労働関係に関する重要な書類を5年間保存しなければならないと定めています。保存年数が異なるため、次のように整理しておくと運用が楽になります。
| 対象 | 保存年数 | 根拠 |
|---|---|---|
| 労働時間の状況の記録 | 3年間 | 労働安全衛生規則52条の7の3第2項 |
| 労働者名簿・賃金台帳・労働関係の重要書類 | 5年間 | 労働基準法109条 |
クラウド型の勤怠管理システムでは、契約が終了するとデータにアクセスできなくなるのが一般的です。解約時に、必要な期間ぶんのデータをCSVやPDFで書き出せるかを契約前に確認してください。保存義務を負っているのは会社であって、システムの提供会社ではありません。
自己申告だけで労働時間を把握している場合、客観的な方法という要件を満たすかが問題になります。管理監督者や裁量労働制の対象者も、労働時間の状況の把握の対象です。「残業代が出ない人は打刻しなくてよい」という運用は、この点で誤りです。
勤務間インターバルは努力義務
労働時間等の設定の改善に関する特別措置法2条1項は、事業主に対し、業務の繁閑に応じた始業・終業時刻の設定、健康及び福祉を確保するために必要な終業から始業までの時間の設定、年次有給休暇を取得しやすい環境の整備などの措置を講ずるよう努めなければならないと定めています。
これが勤務間インターバルの根拠です。義務ではなく努力義務のため、時間数も法律では定められていません。導入するかどうか、何時間にするかは会社が決めます。
ただし、就業規則に「終業から次の始業まで11時間を空ける」と書いた場合、それは自社のルールになります。規則に書いたなら、実際に守れているかを測る必要があります。勤怠管理システムのインターバル判定機能を使う場合は、時間数を就業規則と一致させてください。規則が11時間なのに設定が9時間では、測っている意味がありません。
システム設定に落とすときのチェック項目
ここまでの内容を、設定作業で確認する形にまとめます。導入時と、法改正や規則改定のたびに見直してください。
| 確認項目 | 見るところ | ずれていると起きること |
|---|---|---|
| 所定労働時間 | 雇用区分ごとに設定されているか | 時間外の起算点がずれ、割増の計算が合わない |
| 休憩 | 8時間超の日に60分になるか | 残業日の休憩が45分のままになる |
| 法定休日 | 就業規則の定めと一致しているか | 休日割増の3割5分と時間外2割5分を取り違える |
| 36協定の限度 | 単月と複数月平均の両方でアラートが出るか | 2〜6か月平均80時間の超過を検知できない |
| 月60時間超 | 5割の区分が分かれているか | 割増賃金が不足する |
| 年休の基準日 | 入社日基準か統一基準日か | 年5日の判定期間を誤る |
| 記録の保存 | 3年・5年ぶんを解約後も取り出せるか | 解約と同時に記録を失う |
この表は、システムを選ぶ段階のチェックリストとしても使えます。「対応しています」という説明だけで判断せず、自社の数値を入れた状態で動かして確認してください。無料期間のあいだに1か月分を通せば、設定のずれはほぼ見つかります。
違反したときに何が起きるか
労働基準法の規定の多くには罰則があり、労働基準監督署の調査で違反が見つかれば是正勧告を受けます。ただし、実務でより重いのは未払い賃金の遡及支払いです。集計の設定を誤っていた場合、対象となる全従業員について過去にさかのぼって差額を計算し直すことになります。
労働基準法109条が記録の保存を5年間求めているのは、この確認を可能にするためでもあります。記録が残っていないことは、会社にとって有利には働きません。調査で提出を求められて出せない状態は、それ自体が問題になります。
勤怠管理システムを入れる目的の1つは、この記録を客観的な形で残すことです。打刻の修正履歴が残る設定にしておけば、いつ誰がどの理由で直したかを説明できます。担当者が直接データを書き換えられる運用は、記録の信頼性を下げるため避けてください。
まとめ
勤怠管理に関わる法律は3つです。労働基準法が労働時間の上限と賃金を、労働安全衛生法が健康確保のための時間把握を、労働時間等設定改善法が勤務間インターバルなどの努力義務を定めています。
36協定の上限は原則と特別条項で数字が変わり、特別条項では単月100時間未満、年720時間、月45時間超は年6回まで、2〜6か月平均で80時間以内という4つの制約がかかります。複数月平均の判定ができるかは、システム選定の分かれ目になります。
記録の保存は、労働時間の状況が3年、労働関係の重要書類が5年です。クラウド型では解約後にデータへアクセスできなくなるため、書き出しの手段を契約前に確認してください。
設定は一度作って終わりではありません。就業規則の改定、36協定の再締結、組織変更のたびに見直しが必要です。製品ごとの機能差は勤怠管理システム比較、選定の進め方は勤怠管理システムの選び方、移行と初月の対処は勤怠管理システムの導入と運用を参照してください。
参考にした一次情報
- e-Gov法令検索「労働基準法」(32条・34条・35条・36条・37条・39条・109条)
- e-Gov法令検索「労働基準法第三十七条第一項の時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令」(時間外2割5分、休日3割5分)
- e-Gov法令検索「労働安全衛生法」(66条の8の3)
- e-Gov法令検索「労働安全衛生規則」(52条の7の3)
- e-Gov法令検索「労働時間等の設定の改善に関する特別措置法」(2条)
- 厚生労働省「労働時間・休日」
いずれも2026年9月3日に確認しています。条文は改正されることがあるため、実際の運用にあたっては最新の施行内容を確認してください。

