人事評価システムの見積りを比べる手順|料金が非公開でも、人数・範囲・契約年数・出口の4つを揃えれば金額は並ぶ

白地に濃紺の見出しで料金が非公開でも比べられる見積りの取り方と書かれたアイキャッチ。前提を揃えないと金額は並ばないという副見出しと、見積りを依頼する前に揃えるものとして対象人数の定義・初期設定を含めるか・契約年数・更新と解約の条件の4項目が番号付きで並んでいる

この記事で分かること

  • 人事評価システムは主要5社とも料金表を出していません。したがって見積りの取り方を間違えると、比較そのものが成立しません。
  • 金額がずれる原因は値引きではなく、前提の不一致です。人数、含める範囲、契約年数、出口の条件——この4つを揃えるだけで比較できる形になります。
  • 同じ文面で各社に送るための依頼テンプレートと、戻ってきた見積書を並べるための対照表の作り方を載せています。
  • 数字が出てこない項目は空欄のまま残します。埋まらなかったこと自体が判断材料になるためです。

システムの導入検討で、3社から見積りを取ったのに金額がまるで比べられなかった——という経験はよくあります。人事評価システムはその典型です。5社の条件を並べた比較ハブでも書いたとおり、公式サイトに金額が一切載っていないため、見積書が唯一の数字になります。その1枚の前提が各社でずれていると、安く見えるほうが実は高い、ということが普通に起こります。

なぜ金額がそろわないのか

原因は単純で、各社が値段を組み立てる単位が違うからです。2026年11月5日に5社の公式ページで確認した範囲では、次のように分かれていました。

値段が動く要素は会社ごとに違う(各社の公式料金ページ・利用規約。2026年11月5日確認)
値段を動かす要素この要素で動く会社公式の記載
利用人数・アカウント数HRBrain/カオナビ/One人事/コチームHRBrainは「ご利用人数に合わせて金額が変動します」、One人事は「月額費用はアカウント数によって異なります」
選んだ機能・製品の数HRBrain/カオナビ/One人事HRBrainは16製品から、カオナビは従業員データベース+8機能から、One人事は5製品から選ぶ
サポートの厚みカオナビ/One人事カオナビは規約で「サポートサービス利用料」が独立、One人事は月額に「サポートオプション費用」がある
初期設定の代行HRBrain/One人事HRBrainはサポート一覧に「初期設定代行(有料)」、One人事はFAQに「有償オプションとして、設定代行やデータ移行」
人数の区分またぎカオナビ人数区分が14段階。500人までは100人刻み
何も動かない(一律)コチーム「機能別プランはなく、一律の料金で全ての機能を使用することができます」

出典: HRBrain 料金/カオナビ 料金/One人事 料金プラン/コチーム 料金/カオナビ クラウドサービス共通ご利用規約(PDF)(いずれも2026年11月5日確認)

この表から分かるのは、「同じ条件で見積もってください」と言わない限り、各社は自社に都合のよい最小構成で出してくるという当たり前のことです。初期設定代行が有料の会社は、それを外した金額を出します。サポートが別立ての会社は、最低限のサポートで組みます。その状態で金額だけ並べても、比べているのは別のものです。

依頼する前に決める4つの前提

見積りを依頼する前に、社内で次の4つを決めて文書にします。ここを決めずに動き出すと、あとから各社へ追加で問い合わせることになり、比較の時期がずれて意味が薄れます。

依頼前に固定する4つの前提

前提1|人数

「現在の正社員数」なのか「評価対象者数」なのか「アカウントを配る人数」なのかを決める。評価者だけに配るのか、被評価者全員に配るのかで人数は倍近く変わる。

前提2|含める範囲

初期設定代行、既存データの移行、管理者研修、社内説明会を含めるかどうか。含めるなら、全社に同じ内容で依頼する。

前提3|契約年数

1年か複数年か。長期契約を条件に値引きを受ける場合、解約時の違約金が重くなる会社がある点も踏まえて決める。

前提4|使い始める時期

評価期の途中からか、次の評価期からか。前者なら初期設定の期間を逆算する必要がある。One人事は「最短1か月でご利用いただけます」とFAQで回答している。

この4つを文書にしてから動く。決まっていないまま各社に聞くと、提案内容がばらけて比較に戻れなくなる。
One人事公式サイトのサポートページの画面。One人事のサポート、迷わせない、つまずかせない、だから定着するという見出しと、サポート満足度95パーセント、継続率MRR12ヶ月平均99.74パーセントという数字、導入実績に基づく支援プログラムという項目が並んでいる
One人事のサポートページ(2026年11月5日取得)。数字には「※1&2.2025年5月自社調べ」という注記が付いている。サポートの範囲と費用の扱いは、見積り依頼時に切り分けて確認する項目。出典: One人事「サポート」

前提2の「含める範囲」が、実際にはいちばん金額を動かします。評価制度の初期設定は、評価シートの構造決め、等級の登録、評価者と被評価者の紐づけ、過去データの取り込みまで含むため、人事が自前でやるには相応の工数がかかります。これを含むと明記しているのはコチームだけで、HRBrainとOne人事は有料であることを公式に書いています。カオナビは支援の存在を書いていますが費用の扱いまでは明示しておらず、あしたのクラウドHRは費用の記載がありませんでした。

同じ文面で送る依頼テンプレート

前提が決まったら、全社へ同じ文面を送ります。口頭で伝えると各社の担当者が自分の解釈で受け取るため、文字にして送るところまでを1セットにしてください。

そのまま使える依頼項目(8項目)

  1. 対象人数は◯名(内訳:評価者◯名/被評価者◯名)。この人数で初期費用と月額の総額をご提示ください。税別・税込の別も明記してください。
  2. 初期設定の代行、既存データの移行、管理者向け説明会を含めた場合と、含めない場合の両方の金額をご提示ください。
  3. 契約期間は◯年を前提とします。複数年契約で割引がある場合は、割引後の金額と、割引の条件を満たさなくなった場合の扱いもご教示ください。
  4. 契約期間中に人数を減らす、機能を外すことは可能でしょうか。可能な場合の手続きと、金額への反映時期をご教示ください。
  5. 契約を更新しない場合、いつまでに、誰宛てに、どの方法で通知する必要がありますか。申込書・契約書の該当箇所をお示しください。
  6. 契約期間の途中で解約する場合に支払う金額の計算式をご教示ください。
  7. 無料トライアルの期間と、使える機能の範囲をご教示ください。また、トライアル終了後に自動で有料契約へ移行するかどうかもお示しください。
  8. 上記のうち規約ではなく申込書で定まる項目がある場合は、どの項目かをご教示ください。
8項目のうち4〜8は金額ではなく条件を聞くもの。ここを揃えないと、安い見積りが「抜けにくい契約」とセットになっていることに気づけない。

項目5と項目8を入れているのには理由があります。更新を止める期限が規約に書かれていない会社があるためです。One人事の利用規約第8条は、延長しない旨の通知について「申込書等その他当社所定の方法により別途定める期日までに」としており、日数が書かれていません。

つまり公開された規約だけを読んでも、いつまでに動けばよいのか分からないということです。見積り段階で申込書の文面まで確認しておかないと、1年後に期限を過ぎてから気づくことになります。

戻ってきた見積書を並べるための対照表

各社から回答が戻ったら、金額だけを並べた表は作らないでください。金額と条件を同じ行に置くと、判断がぶれなくなります。次の列構成をおすすめします。

見積り対照表の列構成(記入例つき)
列何を書くか記入例
A|初年度総額初期費用+月額×12。税の扱いを揃える◯◯円(税別)
B|次年度以降の年額初期費用を除いた年額。値上げの可能性の記載も◯◯円(税別)
C|初期設定の扱い含む/別途◯◯円/自社対応別途◯◯円
D|契約期間年数と、自動更新の有無1年・自動更新あり
E|更新を止める期限何日前・何か月前か、月末区切りか。通知の手段も満了の1ヶ月前まで・文書
F|減らせるか期中に人数や機能を減らせるか不可(規約で途中解約に含まれる)
G|途中解約の負担計算式。返金の有無満了までの全額・返金なし
H|試用の条件期間・範囲・終了後の自動契約の有無30日・全機能・自動契約なし
I|回答がなかった項目空欄にした項目を列挙E(申込書待ち)

記入例は書き方を示すためのもので、特定のサービスの条件ではない。実際の値は各社の回答と規約で埋めること。

I列を必ず設けてください。回答が得られなかった項目を空欄のまま社内へ提出することに意味があります。決裁の場で「この会社だけ解約条件の回答がない」と見えるのと、埋まっているように見えるのとでは、判断が変わります。推測で埋めると、その推測が社内で事実として一人歩きします。

依頼する前に、自社側で確かめておく3つ

前提を決めるには、自社の現状が分かっている必要があります。ここが曖昧なまま各社へ問い合わせると、提案内容が「御社の課題をヒアリングさせてください」から始まり、金額が出るまでに何週間もかかります。

ひとつめは、評価制度そのものがあるかどうか。すでに運用している制度をそのまま載せ替えるのか、制度の設計から作り直すのかで、必要なサービスの範囲が変わります。あしたのチームは人事評価制度の構築・運用を別の事業として持っており、利用規約も「クラウドサービス利用規約」と「役務提供サービス利用規約」に分かれています。コチームも研修サービスとコンサルティングサービスを規約の料金区分に挙げています。制度を作り直す必要があるなら、システム単体の見積りだけでは足りません。

ふたつめは、評価対象者の数え方。評価者と被評価者の両方にアカウントが要るのか、入力は紙で集めて人事が代理入力するのかで、必要なアカウント数は大きく変わります。コチームの利用規約は、各月末日時点の利用アカウント数が申し込み時点を超えていれば自動的にプランが変更され翌月に追加請求されると定めています。最初に少なく申告して、あとから増やすという進め方は、この条項がある会社では想定どおりに運びません。

みっつめは、いま評価データがどこにあるか。Excelなのか、既存の人事システムなのか、紙なのか。移行の作業量が見積りの「データ移行」の金額を左右します。HRBrainは連携できるサービスを28件公開し、API連携とCSV連携の両方に対応すると書いています。移行元がその一覧にあるかどうかで、手作業の量が変わります。

決裁に出すときに聞かれること

見積りが揃っても、決裁の場では金額以外のことを問われます。あらかじめ答えを用意しておくと、差し戻しが減ります。

決裁の場で問われやすい5つと、答えの作り方

  1. 「なぜこの会社なのか」——金額以外の決め手を1つに絞って書く。試せる範囲、契約の柔軟さ、セキュリティ要件のどれかに寄せると説明が通りやすい。
  2. 「やめるときはいくらかかるのか」——対照表のG列をそのまま示す。主要5社はいずれも期間中の途中解約を原則不可としており、「いつでもやめられます」という答えは事実と違う。
  3. 「来年も同じ金額か」——B列(次年度以降の年額)と、値上げに関する規約の定めを示す。カオナビの規約には「当社は、社会情勢の変化等に鑑み、サービス料金の改定を行うことがあります」という条項がある。
  4. 「情報セキュリティは大丈夫か」——認証の有無だけでなく適用範囲まで答える。あしたのチームは公式サイトに「ISMS認証の適用範囲は『プロダクト部』となります」と注記している。
  5. 「人が増えたらどうなるのか」——人数区分の刻みと、増員時の扱いを示す。カオナビは人数区分が14段階、コチームは超過時に自動でプランが変わる。
5つとも、見積書の金額欄には書かれていない。依頼テンプレートの項目4〜8で集めた回答がそのまま答えになる。

稟議が通らない理由の多くは、金額が高いことではなく「やめるときの条件が分からない」ことです。年単位で自動更新される契約を、条件を把握しないまま承認する決裁者はいません。逆にいえば、出口の条件を明記した資料を出せれば、金額そのものの議論は短く済みます。

よくある失敗と、その避け方

見積りの段階で起きやすい4つの失敗

人数の定義がずれている

A社には正社員数、B社には評価対象者数で依頼していた、という取り違え。依頼文に内訳まで書くことで防げる。

初期設定の有無がそろっていない

含む会社と含まない会社の金額を並べてしまう。両方の金額を出してもらうと、どちらの軸でも比べられる。

条件を聞かずに金額だけ比べる

安いほうが2年契約で、期中の減員ができない——という組み合わせは起こりうる。金額と条件を同じ行に置く。

回答がない項目を推測で埋める

「たぶん1か月前だろう」と書いた期限が、実は2か月前だったという事故。空欄のまま提出するのが正しい。

4つとも交渉力ではなく、依頼文と対照表の作り方で防げる種類の失敗にあたる。

見積りが出るまでの時間も比べる

金額だけでなく、金額が出てくるまでの速さも実務では効きます。依頼してから回答までに2週間かかる会社と、3営業日で出る会社では、評価期に間に合うかどうかが変わるためです。

公式サイトから読み取れる範囲では、見積りまでの導線に差があります。カオナビは料金ページ上で機能と人数を選んで「見積もりしてみる」に進む形で、入力そのものは自分でできます。One人事も料金プランページに「見積もりを依頼する」のボタンが置かれ、費用の内訳が先に示されています。一方、あしたのクラウドHRは「料金」のリンクが問い合わせフォームへ遷移する形で、金額に関する情報がフォーム送信後にしか得られません。

この差は、検討のスケジュールに直結します。社内の稟議日から逆算して、どの会社にいつ依頼するかを決めるとき、回答が遅い会社を先に動かすのが定石です。依頼文を送った日付と回答が返ってきた日付を対照表に書き添えておくと、次回の検討でも使えます。

なお、資料ダウンロードと見積り依頼は別物です。5社とも「3分でわかる資料」「サービス紹介資料」といったPDFを用意していますが、これらに金額が載っているかどうかは、ダウンロードするまで分かりません。資料を取り寄せただけで比較できると考えず、最初から見積りを依頼するほうが時間を節約できます。

相場を書いた記事を信じてよいのか

「人事評価システムの相場は1人あたり月◯円」と書いた記事は多くあります。参考にしたくなりますが、出典が公式でない数字は、条件が揃っていません。公式サイトに金額が載っていない以上、その数字は誰かの見積書か、取材先の証言か、推計のいずれかです。人数も、選んだ機能も、サポートの厚みも、契約年数も分からない1点の数字は、自社の判断には使えません。

このページでも金額は載せていません。載せられるだけの一次情報が公開されていないためです。確認できたのは「何にお金がかかるか」までで、「いくらか」は見積りでしか分かりませんでした。相場を知りたい場合は、自社の前提で3社以上から取った見積りが、そのまま自社にとっての相場になります。他社の条件で作られた平均値より、よほど役に立ちます。

各社の条件はHRBrain、カオナビ、あしたのクラウドHR、One人事、コチームの各詳細にまとめています。

このページの作り方と出典

記載した各社の条件は、2026年11月5日に公式サイトと利用規約で確認したものだけです。依頼テンプレートと対照表の列構成は、確認できた条件の差からBIZEE編集部が組み立てたもので、特定のサービスを推奨するものではありません。金額は各社とも非公開のため、このページにも載せていません。

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