グループウェアの見積もりを3社から取ると、たいてい比べられない書類が3通そろいます。1社は1人あたりの単価、1社は20人までの定額、1社は容量込みの総額で出てくるからです。単価の安い順に並べても、実際に払う金額の順番とは一致しません。
この記事は、複数社の条件を同じ土俵に載せるための6つの工程をまとめたものです。各社の公式ページで確認した実際の条件を例に使いながら、どこを揃えれば比較が成立するかを示します。製品そのものの評価ではなく、比べ方の手順を扱います。
工程1:課金対象になる人数の定義をそろえる
最初の落とし穴が、人数の定義です。契約書に「30ユーザー」と書いてあっても、何を30と数えるかは製品ごとに違います。

サイボウズは「契約ユーザー数や利用ユーザー数は、cybozu.comにログインする『人』を対象にカウントします。同時接続数や接続するパソコンの台数を示すものではありません。また、1つのユーザーアカウントを複数人で共有することはできません」と定義しています。交代制の現場で1つのIDを回して使う運用は、規約上できません。
J-MOTTOの定義はさらに独特です。サポートセンターの案内によると、課金対象は[会員情報管理]の[ユーザー情報一覧]に表示される件数で、しかも「ユーザー数の集計は毎日実施しており、月内最大値が当月利用分としてカウントされます」とされています。月末に何人いるかではなく、その月に一番多かった日の人数で請求されるということです。
加えてJ-MOTTOは、グループウェア側の管理画面でユーザーを削除しても課金対象は減らないと明記しています。「グループウェアの[管理者設定]>[ユーザー管理]画面でのユーザー削除は利用ディスク容量の削除であり、課金対象となる利用ユーザー数の削除ではありません」という説明です。退職者の整理を片方だけで済ませていると、払い続けることになります。
工程2:課金の型を2つに分類する
次に、料金表の構造を分類します。実際に確認した5製品では、型が2つに分かれました。
| 型 | 該当製品 | 金額の決まり方 | 人数が増えたとき |
|---|---|---|---|
| 従量型 | サイボウズ Office/Garoon/desknet’s NEO/kintone | 単価×人数 | 1人増えるごとに単価分だけ増える |
| 定額型 | J-MOTTO | 人数の枠ごとに固定額 | 枠を超えた瞬間に10人分がまとめて加算される |
この分類が効いてくるのは、人数が動く場面です。J-MOTTOのスタンダードプランは20ユーザーまで月4,000円(税抜)で、1人で使っても20人で使っても金額は同じ。21人になると10ユーザー単位で1,500円が加算され、5,500円になります。21人と30人は同額です。
従量型は人数に素直に比例するので、増減の予測が立てやすい反面、規模が大きくなるほど総額が伸びます。100人で比べると、J-MOTTOが月16,000円に対し、kintoneライトは月100,000円です。
工程3:最低利用人数の壁を確認する
単価が安くても、そもそも契約できない場合があります。最低利用人数の条件は、少人数の組織ほど効きます。
| 製品 | 最低利用人数 | 実人数6人で契約した場合 |
|---|---|---|
| サイボウズ Office | 5ユーザー | 6人分で契約できる(月3,600円・税抜) |
| desknet’s NEO | 5ユーザー | 6人分で契約できる(ライトで月3,600円・税抜) |
| Garoon | 10人 | 10人分の月9,000円がかかる(4人分が無駄) |
| kintone ライト・スタンダード | 10ユーザー | 10人分の月10,000円がかかる(ライトの場合) |
| kintone ワイド | 1,000ユーザー | 契約できない |
| J-MOTTO | プランの上限で管理 | スタンダードなら月4,000円、ライトなら年20,000円 |
6人の会社がGaroonを選ぶと、4人分を使わないまま毎月払います。年間で43,200円です。単価900円という数字だけを見て「サイボウズ Officeの1.5倍」と判断すると、実際の負担(3,600円に対して9,000円で2.5倍)を見誤ります。
逆に、人数が増える見込みがあるなら下限は問題になりません。1年後に12人になる予定なら、最初から10人分を払っても大きな損にはなりません。工程1で分解した人数に、採用計画を足して判断してください。
工程4:容量の数え方をそろえる
料金表の端に小さく書かれている容量が、実務では最も差が開く項目です。
| 数え方 | 製品 | 30人のとき | 超過したとき |
|---|---|---|---|
| 人数×GB | サイボウズ Office/Garoon/kintone | 150GB(5GB×30人) | Garoonとkintoneはディスク増設が月1,000円/10GB |
| 人数×GB(2本立て) | desknet’s NEO | 150GB+ドライブ30GB | 20GBごとに月2,000円。増設時に一時的なサービス停止が発生 |
| 契約全体でMB | J-MOTTO | 400MB(300MB+10ユーザー追加分100MB) | 50MB毎650円(総容量1GBまで)/600円(1GB超) |
30人で比べると、150GBと400MBです。比率にすると375倍の差があります。これは片方が不当に少ないという話ではなく、設計思想の違いです。J-MOTTO自身が「ディスク容量を300MB〜とコンパクトにして、1ユーザーあたり月額220円(税込)と低価格を実現している」と説明しており、価格と容量を交換した製品だと明示しています。
では400MBで足りるのか。J-MOTTOのサポートセンターには判断材料が公開されています。スケジュールの予定データは100件で約0.08MB、1万件で約8MB(件名に全角5文字のみ入力した場合)という参考値と、「約6〜7割の会員様はディスク容量超過がなくご利用されています」という実績です。裏を返せば3〜4割は超過しているということでもあります。
容量の見積もり方(現実的な手順)
現在の共有フォルダのうち、グループウェアに載せる予定のフォルダだけを選んでサイズを測ります。次に、過去1年でそのフォルダが何MB増えたかを調べます。この2つがあれば、3年後の必要容量が出ます。
やりがちな見積もり方
「ファイルはあまり置かないから300MBで足りるはず」と決めること。ワークフローの添付、掲示板の画像、報告書のPDFは、意識せずに積み上がります。実測していない前提は、契約後に差額として返ってきます。
工程5:オプションの人数条件を洗う
本体の単価がそろっても、オプションの契約条件で総額が変わります。ここは製品ごとの差が大きく、見積書には表れにくい部分です。
見積もり依頼の際は、使いたい機能ごとに「何人分の契約が必要か」を明示的に質問してください。単価だけを聞くと、本体と同数が必要な製品の総額を低く見積もることになります。
工程6:契約期間と解約条件を条件表に入れる
最後に、途中でやめられるか、人数を減らせるかを条件表に加えます。ここを入れないと、3年使ったときの総額が比較できません。
| 確認項目 | 確認する理由 | 実際に確認できた条件の例 |
|---|---|---|
| 年額にすると割引があるか | 割引がなければ年額を選ぶ理由が薄い | サイボウズ3製品はいずれも年額=月額×12か月で割引なし。J-MOTTOのスタンダード年払いは2か月分の割引あり |
| 年額契約で人数を減らせるか | 減らせないと、退職が出ても翌年まで払い続ける | サイボウズは「契約ユーザー数の削減は契約更新時のみ可能」 |
| 年額契約を途中解約できるか | 移行の意思決定が期末に縛られる | サイボウズは「サービス期間の途中で解約はできません」。J-MOTTOは可能だが「残りの期間の返金ができません」 |
| コースを下げられるか | 過剰なコースを選んだときの出口 | サイボウズの月額契約はダウングレード可。J-MOTTOはスタンダードからライトへ戻せない |
| 解約の申し出から終了までの期間 | 移行スケジュールを逆算するため | J-MOTTOの月払いは「退会届が到着した翌月末日での退会」 |
| 契約開始日の決まり方 | 期初に合わせたいときに効く | desknet’s NEOは「月中での契約は翌月1日から契約開始」。サイボウズは「発注日の翌月1日から」で発注月は無償 |
年額に割引がない製品で年額を選ぶと、支払い回数が減るかわりに解約と減員の自由を失います。損得の計算ではなく、単純に選択肢が狭くなるだけです。経理上の事情がないかぎり、最初の1年は月額で契約し、使い続けることが確定してから年額へ移すほうが、判断の余地を残せます。
6工程を1枚にまとめる
ここまでの内容を、そのまま見積もり比較表の項目に落とせます。各社から回答をもらう前に、この列を用意してください。
| 比較表の列 | 単位 | 書き方の例 |
|---|---|---|
| 課金対象の定義 | ― | ログインする人/登録されている人/月内最大値 |
| 自社人数での月額 | 円 | 実人数を入れた金額。単価ではなく総額 |
| 最低利用人数 | 人 | 実人数との差分も併記 |
| 3年後の人数での月額 | 円 | 採用計画を反映した人数で再計算 |
| 標準容量 | GB/MB | 自社人数で計算した実数 |
| 3年後の必要容量との差 | GB/MB | 不足する場合は増設費用も加算 |
| 必要なオプションの総額 | 円 | 本体と同数が必要かどうかを明記 |
| 年額の割引率 | % | 0%なら年額を選ぶ理由を別途書く |
| 減員の可否 | ― | 月額/年額それぞれについて |
| 解約までの期間 | 月 | 申し出から終了までの最短期間 |
| 36か月の総額 | 円 | 上記を合算した比較の結論 |
この11列が埋まらない項目は、そのまま各社への質問リストになります。回答が「ケースによります」で返ってきた場合は、自社の人数と容量を具体的に示したうえで再度確認してください。数字で答えられない条件は、契約後に想定外の請求になりやすい項目です。逆に、全社が同じ形式で回答できた項目は、比較の軸として信頼できます。
やってはいけない比べ方
単価の安い順に並べる
定額型が混ざると順位が意味を持ちません。また最低利用人数を無視すると、契約できない製品が上位に来ます。
最上位プランどうしで比べる
kintoneのワイドコースは最小1,000ユーザーです。中小企業の比較表に3,000円という数字を載せると、実態とかけ離れます。
機能の数で比べる
使わない機能が10個増えても業務は変わりません。自社で使う機能を先に列挙し、その有無だけを見てください。
導入社数や実績で決める
数が多いことは自社に合うことを意味しません。工程1から6の条件が合っているかどうかが判断材料です。
無料お試しで確かめること
条件表が埋まったら、上位2製品を実際に触ります。お試し期間は製品によって差があり、確認した範囲ではサイボウズ Office・Garoon・kintone・desknet’s NEOが30日間、J-MOTTOが最大3か月です。J-MOTTOの仕組みは「入会のお申込み月から翌月末までの無料期間があり、その期間内で支払方法を決定すると、更に1ヶ月無料期間を延長して利用できます」という構成で、月初に申し込むほど実質の日数が長くなります。
限られた期間で見るべきなのは、機能の有無ではなく運用に乗るかどうかです。次の3つを優先してください。
| 確認項目 | やり方 | 分かること |
|---|---|---|
| いちばん重い申請を電子化できるか | 現在使っている紙の様式のうち、項目数が最も多いものを1つ作りきる | フォームの項目数と承認経路の再現性。ここが通らなければ他が良くても運用に乗らない |
| いちばんITが苦手な人が使えるか | 説明なしでスケジュールの登録と掲示板の閲覧をしてもらう | 教育コストの見積もり。管理者が触って判断すると必ず楽観的になる |
| 既存のメール環境に接続できるか | メール機能を使う予定があるなら最初に試す | 対応プロトコルと認証形式が合うかどうか。合わなければメールは別運用になる |
お試し環境のデータを本契約へ引き継げるかどうかは、各社の公式ページからは条件を確認できませんでした。本番同様のデータを入れて検証する場合は、申し込み前に各社の窓口へ確認してください。
まとめ
見積もりが比べられないのは、営業の説明が不十分だからではなく、各社が違う単位で値段を付けているからです。課金対象の人数、課金の型、最低利用人数、容量の数え方、オプションの人数条件、契約期間と解約条件。この6つを自社の数字に置き直せば、比較は成立します。
そのうえで、36か月の総額と、途中でやめられるかどうかを並べてください。入口の月額だけで決めると、2年目以降に効いてくる条件を見落とします。
各製品の実際の条件はクラウド型グループウェア比較に人数別の試算とともにまとめています。個別の条件はサイボウズ Office クラウド版、Garoon クラウド版、desknet’s NEO クラウド版、J-MOTTOグループウェア、kintoneの各記事で扱っています。
契約後の設定はグループウェアの導入と初期設定、既存製品からの移行はグループウェアの乗り換えと解約をご覧ください。

