グループウェアの選び方|各社の見積もりを同じ土俵に載せる6工程【2026年】

グループウェアの選び方を解説するアイキャッチ。人数の数え方で総額が変わることを示す6つの軸を並べた図

グループウェアの見積もりを3社から取ると、たいてい比べられない書類が3通そろいます。1社は1人あたりの単価、1社は20人までの定額、1社は容量込みの総額で出てくるからです。単価の安い順に並べても、実際に払う金額の順番とは一致しません。

この記事は、複数社の条件を同じ土俵に載せるための6つの工程をまとめたものです。各社の公式ページで確認した実際の条件を例に使いながら、どこを揃えれば比較が成立するかを示します。製品そのものの評価ではなく、比べ方の手順を扱います。

課金対象になる人数の定義をそろえる「ログインする人」なのか「登録されている人」なのか、月末時点か月内最大値かで、同じ組織でも数字が変わります。
課金の型を分類する人数に比例する従量型か、枠で決まる定額型か。この違いが規模による逆転を生みます。
最低利用人数を確認する5人・10人・1,000人と製品ごとに違います。実人数より下限が大きければ、その差は捨て金になります。
容量の数え方をそろえる「人数×GB」か「契約全体でMB」か。ここが最も差が開く項目です。
オプションの人数条件を洗う必要な人数だけ契約できるものと、本体と同数を強制されるものがあります。
契約期間と解約条件を条件表に入れる年額にすると人数を減らせなくなる製品があります。3年使う前提の総額で比べます。
複数社の見積もりを同じ条件に置き直すための6工程

工程1:課金対象になる人数の定義をそろえる

最初の落とし穴が、人数の定義です。契約書に「30ユーザー」と書いてあっても、何を30と数えるかは製品ごとに違います。

サイボウズ公式サイトのライセンスに関するご案内ページの画面。契約ユーザー数はcybozu.comにログインする人を対象にカウントし、同時接続数やパソコンの台数を示すものではないと記載されている
出典:サイボウズ ライセンスに関するご案内(クラウド版)(2026年9月16日確認)

サイボウズは「契約ユーザー数や利用ユーザー数は、cybozu.comにログインする『人』を対象にカウントします。同時接続数や接続するパソコンの台数を示すものではありません。また、1つのユーザーアカウントを複数人で共有することはできません」と定義しています。交代制の現場で1つのIDを回して使う運用は、規約上できません。

J-MOTTOの定義はさらに独特です。サポートセンターの案内によると、課金対象は[会員情報管理]の[ユーザー情報一覧]に表示される件数で、しかも「ユーザー数の集計は毎日実施しており、月内最大値が当月利用分としてカウントされます」とされています。月末に何人いるかではなく、その月に一番多かった日の人数で請求されるということです。

加えてJ-MOTTOは、グループウェア側の管理画面でユーザーを削除しても課金対象は減らないと明記しています。「グループウェアの[管理者設定]>[ユーザー管理]画面でのユーザー削除は利用ディスク容量の削除であり、課金対象となる利用ユーザー数の削除ではありません」という説明です。退職者の整理を片方だけで済ませていると、払い続けることになります。

見積もりを依頼するときは、自社の人数を「正社員○人、パート○人、役員○人、退職予定○人」まで分解して伝えてください。合計だけを伝えると、各社が自社の定義で解釈した数字が返ってきて、後から食い違いが出ます。

工程2:課金の型を2つに分類する

次に、料金表の構造を分類します。実際に確認した5製品では、型が2つに分かれました。

該当製品金額の決まり方人数が増えたとき
従量型サイボウズ Office/Garoon/desknet’s NEO/kintone単価×人数1人増えるごとに単価分だけ増える
定額型J-MOTTO人数の枠ごとに固定額枠を超えた瞬間に10人分がまとめて加算される

この分類が効いてくるのは、人数が動く場面です。J-MOTTOのスタンダードプランは20ユーザーまで月4,000円(税抜)で、1人で使っても20人で使っても金額は同じ。21人になると10ユーザー単位で1,500円が加算され、5,500円になります。21人と30人は同額です。

従量型は人数に素直に比例するので、増減の予測が立てやすい反面、規模が大きくなるほど総額が伸びます。100人で比べると、J-MOTTOが月16,000円に対し、kintoneライトは月100,000円です。

課金の型が違う製品を単価で比べると答えを間違えます。「1人あたり○円」という数字は、定額型では人数によって変わるからです。J-MOTTOは20人で1人200円、100人で1人160円、5人なら1人800円になります。比較表には単価ではなく、自社の人数を入れた総額を書いてください。

工程3:最低利用人数の壁を確認する

単価が安くても、そもそも契約できない場合があります。最低利用人数の条件は、少人数の組織ほど効きます。

製品最低利用人数実人数6人で契約した場合
サイボウズ Office5ユーザー6人分で契約できる(月3,600円・税抜)
desknet’s NEO5ユーザー6人分で契約できる(ライトで月3,600円・税抜)
Garoon10人10人分の月9,000円がかかる(4人分が無駄)
kintone ライト・スタンダード10ユーザー10人分の月10,000円がかかる(ライトの場合)
kintone ワイド1,000ユーザー契約できない
J-MOTTOプランの上限で管理スタンダードなら月4,000円、ライトなら年20,000円

6人の会社がGaroonを選ぶと、4人分を使わないまま毎月払います。年間で43,200円です。単価900円という数字だけを見て「サイボウズ Officeの1.5倍」と判断すると、実際の負担(3,600円に対して9,000円で2.5倍)を見誤ります。

逆に、人数が増える見込みがあるなら下限は問題になりません。1年後に12人になる予定なら、最初から10人分を払っても大きな損にはなりません。工程1で分解した人数に、採用計画を足して判断してください。

工程4:容量の数え方をそろえる

料金表の端に小さく書かれている容量が、実務では最も差が開く項目です。

数え方製品30人のとき超過したとき
人数×GBサイボウズ Office/Garoon/kintone150GB(5GB×30人)Garoonとkintoneはディスク増設が月1,000円/10GB
人数×GB(2本立て)desknet’s NEO150GB+ドライブ30GB20GBごとに月2,000円。増設時に一時的なサービス停止が発生
契約全体でMBJ-MOTTO400MB(300MB+10ユーザー追加分100MB)50MB毎650円(総容量1GBまで)/600円(1GB超)

30人で比べると、150GBと400MBです。比率にすると375倍の差があります。これは片方が不当に少ないという話ではなく、設計思想の違いです。J-MOTTO自身が「ディスク容量を300MB〜とコンパクトにして、1ユーザーあたり月額220円(税込)と低価格を実現している」と説明しており、価格と容量を交換した製品だと明示しています。

では400MBで足りるのか。J-MOTTOのサポートセンターには判断材料が公開されています。スケジュールの予定データは100件で約0.08MB、1万件で約8MB(件名に全角5文字のみ入力した場合)という参考値と、「約6〜7割の会員様はディスク容量超過がなくご利用されています」という実績です。裏を返せば3〜4割は超過しているということでもあります。

容量の見積もり方(現実的な手順)

現在の共有フォルダのうち、グループウェアに載せる予定のフォルダだけを選んでサイズを測ります。次に、過去1年でそのフォルダが何MB増えたかを調べます。この2つがあれば、3年後の必要容量が出ます。

やりがちな見積もり方

「ファイルはあまり置かないから300MBで足りるはず」と決めること。ワークフローの添付、掲示板の画像、報告書のPDFは、意識せずに積み上がります。実測していない前提は、契約後に差額として返ってきます。

容量を見積もるときの手順と、避けたい進め方

工程5:オプションの人数条件を洗う

本体の単価がそろっても、オプションの契約条件で総額が変わります。ここは製品ごとの差が大きく、見積書には表れにくい部分です。

必要な分だけ契約できる例
Garoonのセキュアアクセス(月250円/1ユーザー)は、公式に「Garoonとユーザー数をそろえる必要はありません。例えば外出する方の分だけを契約することも可能です」と案内されています。100人中20人だけ契約すれば月5,000円です。
本体と同数を求められる例
desknet’s NEOの交通費・経費精算(1ユーザー100円)は「基本プランと同ユーザー数での契約となります」という条件付きです。100人契約なら、使うのが経理3人でも月10,000円かかります。
別の人数を契約人数に含める例
desknet’s NEOのRoomMgr(20,000円)は、iPad端末用のユーザーを基本プランの契約人数に含める必要があります。会議室の台数分だけ本体の契約人数も増えます。
コースに紐づく例
kintoneのゲストユーザーは、公式のライセンス案内に「kintoneのゲストユーザーの契約コースは、kintoneの契約コースに準じます」とあります。本体がスタンダードならゲストも700円、ワイドなら1,440円です。
そもそも申し込めない例
J-MOTTOのAppSuiteは「新規お申込み受付を終了いたしました」と公式に告知されています。将来使う前提で見積もりに入れることはできません。
オプションの契約条件のパターン。同じ機能でも人数の縛りが製品ごとに違う

見積もり依頼の際は、使いたい機能ごとに「何人分の契約が必要か」を明示的に質問してください。単価だけを聞くと、本体と同数が必要な製品の総額を低く見積もることになります。

工程6:契約期間と解約条件を条件表に入れる

最後に、途中でやめられるか、人数を減らせるかを条件表に加えます。ここを入れないと、3年使ったときの総額が比較できません。

確認項目確認する理由実際に確認できた条件の例
年額にすると割引があるか割引がなければ年額を選ぶ理由が薄いサイボウズ3製品はいずれも年額=月額×12か月で割引なし。J-MOTTOのスタンダード年払いは2か月分の割引あり
年額契約で人数を減らせるか減らせないと、退職が出ても翌年まで払い続けるサイボウズは「契約ユーザー数の削減は契約更新時のみ可能」
年額契約を途中解約できるか移行の意思決定が期末に縛られるサイボウズは「サービス期間の途中で解約はできません」。J-MOTTOは可能だが「残りの期間の返金ができません」
コースを下げられるか過剰なコースを選んだときの出口サイボウズの月額契約はダウングレード可。J-MOTTOはスタンダードからライトへ戻せない
解約の申し出から終了までの期間移行スケジュールを逆算するためJ-MOTTOの月払いは「退会届が到着した翌月末日での退会」
契約開始日の決まり方期初に合わせたいときに効くdesknet’s NEOは「月中での契約は翌月1日から契約開始」。サイボウズは「発注日の翌月1日から」で発注月は無償

年額に割引がない製品で年額を選ぶと、支払い回数が減るかわりに解約と減員の自由を失います。損得の計算ではなく、単純に選択肢が狭くなるだけです。経理上の事情がないかぎり、最初の1年は月額で契約し、使い続けることが確定してから年額へ移すほうが、判断の余地を残せます。

6工程を1枚にまとめる

ここまでの内容を、そのまま見積もり比較表の項目に落とせます。各社から回答をもらう前に、この列を用意してください。

比較表の列単位書き方の例
課金対象の定義ログインする人/登録されている人/月内最大値
自社人数での月額実人数を入れた金額。単価ではなく総額
最低利用人数実人数との差分も併記
3年後の人数での月額採用計画を反映した人数で再計算
標準容量GB/MB自社人数で計算した実数
3年後の必要容量との差GB/MB不足する場合は増設費用も加算
必要なオプションの総額本体と同数が必要かどうかを明記
年額の割引率0%なら年額を選ぶ理由を別途書く
減員の可否月額/年額それぞれについて
解約までの期間申し出から終了までの最短期間
36か月の総額上記を合算した比較の結論

この11列が埋まらない項目は、そのまま各社への質問リストになります。回答が「ケースによります」で返ってきた場合は、自社の人数と容量を具体的に示したうえで再度確認してください。数字で答えられない条件は、契約後に想定外の請求になりやすい項目です。逆に、全社が同じ形式で回答できた項目は、比較の軸として信頼できます。

やってはいけない比べ方

単価の安い順に並べる

定額型が混ざると順位が意味を持ちません。また最低利用人数を無視すると、契約できない製品が上位に来ます。

最上位プランどうしで比べる

kintoneのワイドコースは最小1,000ユーザーです。中小企業の比較表に3,000円という数字を載せると、実態とかけ離れます。

機能の数で比べる

使わない機能が10個増えても業務は変わりません。自社で使う機能を先に列挙し、その有無だけを見てください。

導入社数や実績で決める

数が多いことは自社に合うことを意味しません。工程1から6の条件が合っているかどうかが判断材料です。

比較を歪める4つのやり方

無料お試しで確かめること

条件表が埋まったら、上位2製品を実際に触ります。お試し期間は製品によって差があり、確認した範囲ではサイボウズ Office・Garoon・kintone・desknet’s NEOが30日間、J-MOTTOが最大3か月です。J-MOTTOの仕組みは「入会のお申込み月から翌月末までの無料期間があり、その期間内で支払方法を決定すると、更に1ヶ月無料期間を延長して利用できます」という構成で、月初に申し込むほど実質の日数が長くなります。

限られた期間で見るべきなのは、機能の有無ではなく運用に乗るかどうかです。次の3つを優先してください。

確認項目やり方分かること
いちばん重い申請を電子化できるか現在使っている紙の様式のうち、項目数が最も多いものを1つ作りきるフォームの項目数と承認経路の再現性。ここが通らなければ他が良くても運用に乗らない
いちばんITが苦手な人が使えるか説明なしでスケジュールの登録と掲示板の閲覧をしてもらう教育コストの見積もり。管理者が触って判断すると必ず楽観的になる
既存のメール環境に接続できるかメール機能を使う予定があるなら最初に試す対応プロトコルと認証形式が合うかどうか。合わなければメールは別運用になる

お試し環境のデータを本契約へ引き継げるかどうかは、各社の公式ページからは条件を確認できませんでした。本番同様のデータを入れて検証する場合は、申し込み前に各社の窓口へ確認してください。

まとめ

見積もりが比べられないのは、営業の説明が不十分だからではなく、各社が違う単位で値段を付けているからです。課金対象の人数、課金の型、最低利用人数、容量の数え方、オプションの人数条件、契約期間と解約条件。この6つを自社の数字に置き直せば、比較は成立します。

そのうえで、36か月の総額と、途中でやめられるかどうかを並べてください。入口の月額だけで決めると、2年目以降に効いてくる条件を見落とします。

各製品の実際の条件はクラウド型グループウェア比較に人数別の試算とともにまとめています。個別の条件はサイボウズ Office クラウド版Garoon クラウド版desknet’s NEO クラウド版J-MOTTOグループウェアkintoneの各記事で扱っています。

契約後の設定はグループウェアの導入と初期設定、既存製品からの移行はグループウェアの乗り換えと解約をご覧ください。

出典

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