グループウェアの乗り換えで一番読み違えやすいのは、作業量ではなく日程です。新しい製品の設定は数週間で終わりますが、今の契約をいつ止められるかは契約条件で決まっていて、こちらの都合では動きません。年額契約なら期間の途中で解約できない製品があり、月払いでも申し出から終了まで1か月以上かかる製品があります。
この記事では、各社の公式ページとサポートセンターで確認できる解約条件を整理し、乗り換えの逆算スケジュールと、移行のときに失うものを扱います。データを出せるのは誰か、いつまでに出さないと消えるのかまで含めて確認しました。
解約できるタイミングは契約の型で決まる
まず、今の契約が月額なのか年額なのかを確認します。ここで打てる手が変わります。
| 製品 | 月払いの解約 | 年払いの解約 |
|---|---|---|
| サイボウズ3製品(Office・Garoon・kintone) | 申し込み手続きで可能。ただし新規発注月、ユーザー数を追加した月、コースをアップグレードした月は申し込めない | 「サービス期間の途中で解約はできません」。終了日を迎えると自動的に解約される |
| J-MOTTO | 退会届が到着した翌月末日での退会 | 可能だが「更新月前の年度途中での退会の場合、残りの期間の返金ができません」 |
| desknet’s NEO | 最低利用期間は1ヶ月間。契約単位期間は1ヶ月および12ヶ月 | 解約手続きの詳細は公式の価格ページから確認できなかった |
サイボウズの年額契約は、途中でやめられません。しかも解約手続きは不要で、終了日が来れば自動的に切れます。逆に言えば、乗り換え先の準備がその日までに終わっていなければ、使えない期間が生まれます。更新手続きをせずに放置すると、ある日を境にログインできなくなる構造です。
J-MOTTOの年払いには例外が用意されています。サポートセンターには「年払い契約満了月に退会届が到着した場合は、年払い満了月での退会ができます」と記載があります。満了月に届けば翌月末日まで引っ張られずに済む、という意味です。
J-MOTTOの退会スケジュールを例に読む
解約の申し出から実際に使えなくなるまでの期間は、図で示している会社があります。J-MOTTOのサポートセンターは、契約の型ごとに時間軸を公開しています。

月払いの場合の説明は「退会届が到着した翌月末日での退会となります。(例)4月中(最終営業日まで)に退会届が到着した場合、5月末日退会となります」というものです。4月の最終営業日に届いても、5月いっぱいは契約が続き、その分の会費がかかります。
無料期間中の退会は「無料期間終了月の末日での退会」です。試用してやめる場合は、無料期間の終わりまでに届けば費用は発生しない読み方になります。
この図で確認しておきたいのは「利用不可」の帯がいつ始まるかです。退会日の翌日からは、データを出すこともできなくなります。出力作業を退会日より前に済ませる必要があります。
データは誰が出すのか
移行で最も工数がかかるのが、既存データの持ち出しです。ここは事業者が代行してくれるとは限りません。
J-MOTTOの場合(公式に明記)
サポートセンターの回答は「グループウェアデータの一括提供はできません。お客様側でデータを出力してください」というものです。さらに「データは、退会翌月に削除されます。重要なデータは退会前に出力してください」とも案内されています。出力の期限は退会日、実際の削除は翌月です。
他製品の場合(確認できた範囲)
サイボウズ3製品とdesknet’s NEOについて、解約後のデータ保持期間や一括提供の可否は、当記事で参照した公式の価格ページ・ライセンス案内からは確認できませんでした。契約している製品のヘルプまたは窓口で、退会前に必ず確認してください。
「出力できる」ことと「使える形で出力できる」ことは別です。CSVで出せても、添付ファイルが本文と紐づかない形で落ちてくれば、移行先での復元に手作業が必要になります。無料お試し期間のある製品なら、移行元のデータを試験的に出力して、移行先に読み込めるかを先に確かめられます。
移行できないものを先に把握する
データを移せても、そのままの形では引き継げないものがあります。移行計画では、これらを「作り直す対象」として工数に入れます。
| 対象 | 引き継ぎの見通し | 対応 |
|---|---|---|
| ワークフローの承認経路 | 製品ごとに設計が違うため、そのままの移植は期待しにくい | 移行先で作り直す。様式の数だけ工数がかかる |
| 過去の申請履歴 | 承認済みの記録は文書として出力できても、システム上の状態としては再現しにくい | PDFやCSVで保管し、参照専用にする |
| アクセス権の設定 | 権限の単位が製品ごとに異なる | 移行先の仕様に合わせて設計し直す |
| 掲示板・メッセージのコメント | 本文とコメントの階層構造が製品間で一致しない | 必要なものだけ手動で移す。全件移行は現実的でない |
| カスタムで作った業務アプリ | desknet’s NEOのAppSuite、kintoneのアプリ、サイボウズ Officeのカスタムアプリはいずれも独自形式 | データは出せても定義は作り直し |
| ファイルのバージョン履歴 | 最新版は出せても履歴は残りにくい | 必要なバージョンを個別に出力する |
4か月前から始める工程表
ここまでの条件を踏まえると、逆算の起点は「今の契約の終了日」または「解約の申し出期限」です。月払いで申し出から終了まで1か月以上かかる製品を前提に、4か月前から動く形にしています。
並行運用の期間をどう設計するか
新旧を同時に動かす期間は、短いほど混乱が少なくなります。ただし短すぎると、新環境の不具合が見つかったときに戻れません。
長くしすぎた場合
どちらに書けばよいか分からなくなり、情報が両方に散ります。予定が片方にしか入っていないために会議が重複する、といった実害が出ます。費用も二重にかかります。
短くしすぎた場合
切り替え当日に問題が出ても戻る先がありません。特にワークフローは、承認途中の申請が宙に浮きます。回付中の案件がゼロになる日を選ぶ必要があります。
実務的な落としどころは、書き込みは新環境のみ・閲覧は両方という形を2週間から1か月続けることです。旧環境を読める状態に保ったまま、書き込み先を1つに絞れば、情報が散らずに参照もできます。月額契約なら、この参照期間の分だけ費用が延びますが、1か月分の費用で移行の失敗を防げるなら安い保険です。
年額契約を使っている場合は、期間の途中で解約できない製品であれば、終了日まで旧環境が残ります。追加費用なしで参照期間を取れるので、この点だけは年額契約が有利に働きます。
ユーザー数の整理を忘れない
解約の前段として、契約人数の見直しも合わせて行います。減らせるタイミングが製品ごとに決まっているためです。
| 製品 | 人数を減らせるタイミング | 注意点 |
|---|---|---|
| サイボウズ3製品(月額) | 新規発注月と追加月を除き任意のタイミング。変更発注日の翌月1日から適用 | 翌月1日からなので、月末に手続きしても当月分は減らない |
| サイボウズ3製品(年額) | 契約更新時のみ | 期間途中は追加のみ可能 |
| J-MOTTO(月払い) | 契約ユーザー数は20で固定。実利用人数を減らせば翌月の超過料金が下がる | [会員情報管理]側で削除しないと課金対象が減らない。集計は月内最大値 |
| J-MOTTO(年払い) | 変更操作はいつでもできるが、適用は年会費更新のタイミング | 更新月まで金額は下がらない |
退職者のアカウントを止めているだけで削除していないケースは珍しくありません。移行を機に棚卸しすると、契約人数と実利用人数のずれが見つかることがあります。
パッケージ版からクラウドへ移る場合
自社サーバーで運用している場合は、期限が別に設定されていることがあります。サイボウズはGaroonの公式サイトで「パッケージ版 Garoonは、2027年10月より順次ライセンスの販売を終了し、2033年1月末をもってサポート終了いたします」と告知しています。
クラウド版への移行については、パッケージ版のサービスライセンス有効期限をクラウド版へ引き継ぐことはできないと案内されています。両者は別契約です。ただし「クラウド版をご契約後もパッケージ版の使用権は消滅いたしません」ともあり、パッケージ版を動かしたままクラウド版を契約して並行運用する形は取れます。
desknet’s NEOは、公式の価格ページに「パッケージ版からのデータ移行」というサービスが個別見積もりで掲載されています。「パッケージ版をご利用中のお客さまの環境をクラウドに移行するサービスです」と説明されており、自社で全部やる以外の選択肢が用意されています。金額は問い合わせになります。
乗り換えでよくある失敗
日程と手順の面で起きやすいこと
- 新製品を先に決めてから解約条件を調べ、年額契約の途中で解約できないことに気づく
- データの出力を退会日以降に予定し、出力できないまま削除される
- 過去データを全件移そうとして、移行作業そのものが期限内に終わらない
- ワークフローの回付中案件を残したまま切り替え、承認が止まる
- 旧環境を即日停止し、参照が必要になった時点で戻れなくなる
- 退職者のアカウントを削除しないまま移行し、新環境でも同じ人数で契約する
- 解約の申し出を月末に出し、締切日の解釈が違って1か月分が余計にかかる
いずれも、契約条件を最初に確認していれば避けられるものです。製品の比較に時間をかけるより先に、今の契約書とヘルプページを開いてください。
よくある質問
解約の申し出はいつまでに出せばよいですか
製品ごとに違います。J-MOTTOの月払いは「退会届が到着した翌月末日での退会」なので、5月末で終えたいなら4月の最終営業日までに到着している必要があります。サイボウズの月額契約は、新規発注月・ユーザー数を追加した月・コースをアップグレードした月を除いて申し込めるとされています。直前に人数を増やしたりコースを上げたりすると、その月は解約を申し込めない点に注意してください。
年額契約の途中でやめたい場合はどうなりますか
サイボウズのクラウドサービスでは、年額サービスについて「サービス期間の途中で解約はできません」と明記されています。終了日まで契約が続き、その日を迎えると自動的に解約されます。J-MOTTOは年払いでも退会自体は可能ですが「更新月前の年度途中での退会の場合、残りの期間の返金ができません」と案内されています。どちらも、支払った分は戻らない前提で計画を立てることになります。
新旧を同時に契約すると費用は二重になりますか
なります。ただし並行運用の期間を1か月に限れば、増える費用は1か月分です。月額契約なら、移行で失敗したときの手戻りと比べて小さい金額に収まります。年額契約で終了日まで期間が残っている場合は、旧環境の費用はすでに支払い済みなので、追加負担なく参照期間を確保できます。
移行作業を事業者に頼めますか
製品によります。desknet’s NEOは公式の価格ページに「パッケージ版からのデータ移行」が個別見積もりのサービスとして掲載されており、クラウドへの移行を依頼できます。一方でJ-MOTTOは「グループウェアデータの一括提供はできません。お客様側でデータを出力してください」と回答しています。他社製品からの移行を代行するサービスの有無については、当記事で参照した公式ページからは確認できませんでした。移行支援が必要な場合は、契約前の相談段階で対応範囲を確認してください。
解約後にデータを見返したくなったらどうしますか
原則として見返せません。J-MOTTOは「データは、退会翌月に削除されます」と明記しています。他製品の保持期間は当記事では確認できていませんが、解約後もデータを預かってくれる前提で計画を立てるのは危険です。必要なものは解約日までに出力し、自社の保管場所へ移してください。出力したファイルが実際に開けるかどうかの確認まで、解約日前に済ませておくのが確実です。
まとめ
グループウェアの乗り換えは、移行作業そのものより日程の制約が厳しい種類の仕事です。年額契約の途中解約ができない製品があり、月払いでも申し出から終了まで1か月以上かかる製品があります。解約日を過ぎるとデータの出力もできなくなります。
順番としては、今の契約の終了日と解約の申し出期限を確認し、そこから逆算して移行先の選定、試用、構築、データ出力、並行運用を並べます。4か月前に着手すれば、どの段階でつまずいても手を打つ余地が残ります。
移行先の候補と条件はクラウド型グループウェア比較にまとめています。各製品の契約条件はサイボウズ Office クラウド版、Garoon クラウド版、desknet’s NEO クラウド版、J-MOTTOグループウェア、kintoneの各記事で扱っています。
見積もりの比べ方はグループウェアの選び方、移行先の構築手順はグループウェアの導入と初期設定をご覧ください。
